遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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遊作と葵ちゃんのデート回


第11話:Blue Love pattern

 ある日のこと、美海が部屋の掃除をしていると、葵が不貞腐れた顔で彼女を見ていた。

 

「あの、どうなさったのですか? 葵様」

「美海、最近藤木君と何してるの?」

「え?」

 

 彼女の質問に、美海は顔をひきつらせた。

 

「その……何故そのようなことを?」

「だって、最近、よくどっか行ってるでしょ?」

「あぁ……」

 

 まさか彼女に鴻上レポートを探しているなどと言えるはずがない。

 ハノイの騎士との危険な戦いに、大事な葵を巻き込むわけにはいかない。

 

(しかし、葵様を不安にさせるわけにはいきません)

 

 ◆

 

「そういうわけで、明日葵様と遊びに行ってきてください」

 

 翌日、草薙のキッチンカーを訪れた彼女は、店番をしていた遊作に注文もせずにそんなことを言い出した。

 

「……注文は?」

「ホットドッグ1つ。マスタード多めで」

 

 遊作が注文の品を手渡す。

 

「で、なにがそういうわけなんだ」

「詳しいことはお話できませんが、とにかく葵様と遊んでください」

(デートなどと言ってしまえば、葵様が遊作を好きなことがバレてしまいます。ここは彼に悟られずに、自然に、葵様とのデートにお誘いしなければ)

 

 ものすごく不自然なうえに、遊作でなければ絶対に気付かれていることに、美海は気付いていない。

 

「俺はレポートを探さなければ……」

「いいんじゃないか」

 

 すると、草薙が店の奥から出てきた。

 

「たまには息抜きもいいだろ。な?」

 

 草薙は全てを察して、美海にウィンクする。

 

「まあ、草薙さんが言うなら」

「では、明日の午後、ここで待ち合わせです」

 

 そう言って、美海は草薙に小さくお辞儀をしてから去っていった。

 

 ◆

 

 そして翌日、日曜日。

 

 葵は自分の部屋で、服を選んでいた。

 

「う~ん、これは狙いすぎ、でも……」

「葵様、遅れてしまいますよ」

「もうちょっとだけだから」

 

 それから十分ほど時間をかけて、ようやく服を決めた葵は、美海の待つ玄関までやってきた。

 

「葵、どこに行くんだ?」

 

 すると、部屋から晃が出てきた。

 さきほど起きたばかりなのだろう。いつもはきっちりしている彼の髪に寝ぐせが少しついている。

 

「え、えーっと、友達と遊びに」

「そうか。美海、葵のことを頼んだぞ」

「もちろんです。晃様」

「じゃあお兄様、いってきます」

 

 晃に見送られて、二人はそそくさと外出する。

 

(葵のあの様子、それにあの服装、まさか男か?)

 

 晃はそのことに感づいて、すぐに自分も支度をした。

 

 ◆

 

 そしていつもの場所で停まっていたキッチンカーまで、葵と美海がやってくると、遊作は既に待っていた。

 

「ご、ごめん、待った?」

「ああ」

「そこは待ってないでしょうが」

 

 美海の言っていることをよく分かっていない遊作は、葵の方を向き直る。

 

「じゃあ行くか」

「ああ待ってください。遊作」

 

 美海は遊作の耳元に顔を近づける。

 

「Aiをこちらに」

「何故だ?」

「そりゃあ、レポート探しに必要ですから」

「……分かった」

 

 その理由に納得した遊作は、デュエルディスクを操作してAiを彼女のデュエルディスクに転送した。

 

「では、いってらっしゃいませ」

「ああ」

 

 二人を見送ると、美海は店の裏に回る。

 

「尊、もういいですよ」

 

 隠れて様子を見守っていた尊が外に出てきた。

 

「それでは、私達も行きましょうか」

「うん。LINK VRAINSに────」

「後をつけましょう」

「え?」

 

 何を言い出すんだと、尊は目を見開く。

 

「い、いや、デートの邪魔しちゃ悪いでしょ」

「何を言っているんですか。デートが滞りなく進み、遊作と葵様の関係を進展させるため、彼らの障害を全て取り除くんですよ」

「で、でもレポートを探しに行かなくちゃ」

「それ葵様より大事なんですか?」

「えー……」

 

 真顔でそんなことを言う彼女に、尊はあきれ果てていた。

 

「デートの邪魔されないために、こうしてAiにもお留守番をさせたわけですから」

「俺もそんな野暮なことしねぇよ」

 

 Aiは心外だと言わんばかりに、美海をジト目で見る。

 

「ほら、急がないと見失ってしまいます」

 

 美海はそう言って走って彼らの後を追う。

 葵のことになると周りが見えなくなる美海に、尊はため息をついた。

 

「友を思い、ひた向きに走る。これが青春というやつだな。尊」

「不霊夢、多分違うと思うよ」

 

 ◆

 

 遊作と葵は、近くの商店街を歩いていた。

 二人の間に会話はなく、見ようによっては険悪なムードに見える。

 

「遊作は何をやっているのですか」

 

 その様子を陰で見守っていた美海は、不甲斐ないコミュ障に対して苛立つ。

 

「まあ、あの二人を二人きりにしたらそうなるよね……」

「何か気の利いた話題でも……」

「あれ~、みんな何やってるの~?」

 

するとそこに、切花が隠れている美海達を見つけて近づいてきた。

 

「あ、えーっと、僕らは……」

「あ、藤木君と財前さんがデートしてる~。邪魔しちゃお────」

 

 瞬間、物陰から飛び出した切花に、美海は目にもとまらぬ速さでラリアットを喰らわせて反対側の路地まで吹き飛ばした。

 

「ん?」

 

 その物音を聞いて、遊作が振り返る。

 

「どうしたの? 藤木くん」

「今、そこに夢乃と美海がいたような……」

「……気のせいでしょ」

 

 葵は不機嫌そうに向き直る。

 

(私と一緒なのに、他の女子のことを考えるなんて……)

 

 そんな葵の気持ちなどつゆ知らず、遊作は葵の隣に立って再び歩き始めた。

 

「ゆ、夢乃さん!?」

 

 遊作達が立ち去った後、尊が慌てて駆け寄ると、切花は完全に目を回して倒れていた。

 

「死んでないよね!? ねぇこれ死んでないよね!?」

「安心してください。峰打ちです」

「ラリアットに峰打ちとかないでしょ!?」

 

 大騒ぎする尊をよそに、美海は遊作達の見守りに戻る。

 二人が近くのカフェに入っていったのを見て、美海も彼らの後を追おうとする。

 

「あれは……」

 

 そこで美海は足を止める。

 

「どうしたの?」

 

 尊が美海の視線の先を追うと、そこには彼らと同じように物陰から遊作達を見守る男の姿があった。

 

「あれって、財前さんのお兄さん、だよね?」

「えぇ、まさか葵様の後をつけてきたんじゃ……」

 

 晃はサングラスをかけて、周りをキョロキョロしている。

 傍から見れば完全に不審者である。

 

「まずいことになりましたね」

「まずいって?」

「晃様のことです。妹に近付く男の身辺を徹底的に洗い出すことでしょう。そうなれば遊作がプレイメーカーだとバレてしまいます」

「いや、そこまでしないでしょ」

「するんですよ。晃様は超シスコンなので、妹のことになると周りが見えなくなるんですよ」

「ぶ、ブーメラン……」

 

 そうこうしているうちに、晃も遊作達と同じ店に入る。

 

「どうしましょう。さすがに晃様に暴力を振るうわけにもいきませんし……」

「暗にボクならいいって言ってるの酷すぎない?」

 

 いつの間にか目を覚ました切花も、二人と一緒に遊作達のデートを覗いていた。

 

「ねぇ、ボクに任せてくれないかな?」

「任せるって……」

「要するに、財前さんのお兄ちゃんを追っ払えばいいんだよね~」

「まあ端的に言えばそうですが……」

「じゃあ、行ってきまーす」

 

 切花も後を追って店内に入る。

 それを遅れて、二人も店の中に入る。

 

 遊作と葵は、葵の緊張がほぐれてきたのか、会話こそ少ないがそれなりにいい雰囲気に見える。

 そして、それを見守る晃の元に、

 

「お待たせ~、お兄ちゃん」

 

 切花がやってきた。

 

「誰だ君は?」

「やだな~ボクだよ~。ネットでお話したでしょ。みんなの妹、切花ちゃんでーす」

 

 切花は晃の隣に座り、そのまま彼に密着する。

 

「お兄ちゃんが~、お小遣いたくさんくれるって言ってたから、来てあげたんだよ」

 

 晃に胸を押しつけ、耳元に顔を近づけと、

 

「ボクといいこと、いっぱいしよ」

 

 とどめと言わんばかりに囁いた。

 

 だが、切花の誘惑など、まるで意に介さず、晃はデュエルディスクを操作してどこかに通信する。

 

「もしもし、なんか変な女の子がいるんだ。摘まみだしてくれ」

「え?」

 

 すると、すぐさま黒服の男が店内に侵入し、切花の小さな体を抱えてどこかへ去っていった。

 

「あの子、ものすごく手馴れてましたけど、経験あるわけじゃないですよね?」

「な、ないと思いたいけど……」

 

 美海と尊は、連れ去られる切花を静かに見送った。

 

 裏で起きていることになど全く気付いていない遊作と葵は、会計を済ませて店の外に出た。

 

 ◆

 

 それから美海と尊は、デートの様子を見守り続けた。

 

「藤木くん、観覧車があるわよ」

「乗るか?」

「うん」

 

 駅前の観覧車に二人で乗ろうとしたその時、

 

「葵!」

 

 今まで隠れて様子を窺っていた晃が、飛び出してきた。

 

「お、お兄様!?」

「葵、観覧車はやめるんだ」

「どうしてよ?」

「密室で男と二人きりになるなど……兄として看過できない!」

 

 晃と葵が睨み合う。

 

「あの、財前のお兄さん、あんたは何か勘違いをしてるんじゃ……」

「君にお兄さんと呼ばれる筋合いはない!」

「言ってないんだが……」

 

 遊作はどうすればいいか迷っていると、葵がデュエルディスクを起動する。

 

「お兄様、こうなったらデュエルで決めましょう。私が勝ったら、藤木くんと観覧車に乗ることを認めてもらう」

「観覧車に乗るだけだよな?」

「いいだろう。ただし、私が勝てば一緒に観覧車に乗るのは私だ」

「何故そうなる」

「えぇ、それじゃあ……」

 

 遊作の突っ込みを無視して、二人がVRゴーグルを、ARモードにして装着する。

 遊作も仕方なくゴーグルをつけると、AR空間に二人のライフが表示される。

 

「「デュエル!」」

 

ターン1 財前晃

 

「私は裏守備表示でモンスターをセット。自分フィールドに裏守備モンスターが存在する場合、私は手札からティンダングル・ベースガードナーを特殊召喚!」

 

 正三角形が組み合わさったキューブのような物体が現れた。

 

「さらにカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン2 財前葵

 

「私はフィールド魔法、トリックスター・ライトステージを発動!その効果でデッキからトリックスター・キャンディナを手札に加え、そのまま召喚」

 

 メガホンを持った黄色い衣装のアイドルが現れる。

 

「キャンディナの効果でデッキからマンジュシカを手札に。そしてマンジュシカは、トリックスター1体を手札に戻すことで、特殊召喚できる」

 

 キャンディナが宙返りして、空中でマンジュシカと入れ替わる。

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「お互い、一ターン目は様子見か……」

 

ターン3

 

「私のターン!」

「相手がドローしたことで、マンジュシカの効果で200ダメージ!さらにライトステージの効果で200ダメージ!」

 

 晃:ライフ4000→3600

 

「さらに自分のトリックスターの効果で、相手がダメージを受けた時、手札からトリックスター・ナルキッスを特殊召喚!」

 

 マンジュシカの横に、銃口に花をあしらった飾りがついた玩具の銃を持った少女が現れた。

 

「くっ、私はティンダングル・アポストルを反転召喚!」

 

 前のターンにセットされたカードが開かれ、檻のような物体に尾と翼の生えたモンスターが現れた。

 

「リバース効果で、私のモンスターを三体まで裏守備表示にする」

 

 ベースガードナーと、リバースしたばかりのアポストルが裏守備表示になる。

 

「この効果で裏守備表示になったモンスターが全てティンダングルモンスターなら、その数だけデッキからティンダングルカードを手札に加える」

「ならここで、私はトリックスター・リンカーネーションを発動!相手の手札を全て除外し、相手はその枚数分だけカードをドローする!」

 

 今サーチしたばかりのカードが除外され、晃は新たに五枚のカードをドローする。

 そしてドローしたことで、マンジュシカの効果でダメージを喰らい、誘発したライトステージの効果でもダメージを喰らう。

 

 晃:ライフ3600→2400

 

「くっ……私は手札のティンダングル・ジレルスの効果発動!このカード以外の手札1枚を捨て、デッキからティンダングル・ヘルハウンドを墓地へ送る。そしてこのカード裏守備表示で特殊召喚!」

「ナルキッスの効果発動!相手が手札か墓地でモンスターの効果を発動した時、相手に200ダメージ!」

 

 ナルキッスがおもちゃの銃を撃つと、ハート型の弾丸が晃のライフを撃ち抜く。

 

 晃:2400→2200

 

「ライトステージの効果でさらに200ダメージ!」

 

 晃:2200→2000

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「すごいな。相手のターンなのに、もうライフを半分も削るなんて」

 

 遊作が素直に感想を述べると、葵は少し頬を赤らめる。

 その様子に、晃は苛立ちを募らせる。

 

ターン4

 

「私はトリックスター・キャンディナを召喚。その効果で、トリックスター・リリーベルを手札に加える。リリーベルはドロー以外で手札に加わると、特殊召喚できる」

 

 葵のフィールドに4体のモンスターが並ぶ。

 

「出てきて、夢ときぼ……じゃなかった。えーっと、愛と絆のサーキット!」

「愛だと!?」

 

 晃が葵の口上に反応し、遊作を物凄い形相で睨む。

 

「しょ、召喚条件は、トリックスター2体。私はキャンディナとナルキッスをリンクマーカーにセット!リンク召喚!リンク2、トリックスター・ホーリーエンジェル!」

 

 葵の切り札、ホーリーエンジェルが降臨した。

 

「ならば私は罠カード、ティンダングル・ラジアンを発動!」

 

ティンダングル・ラジアン

通常罠

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1)相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターン、対象のモンスターはリリースできず、融合・S・X・リンク素材にできず、可能なら必ず攻撃する。対象のモンスターの攻撃によって発生する自分への戦闘ダメージは半分になり、相手は対象のモンスターで戦闘を行う場合、ダメージステップ終了時まで効果を発動できない。

(2)墓地のこのカードを除外して、手札1枚を捨てて発動できる。デッキから「ティンダングル・ラジアン」以外の「ティンダングル」魔法・罠カード、または効果テキストに「ティンダングル」と記されたカード1枚をセットする。この効果でセットされたカードはセットされたターンでも発動できる。

 

「私はリリーベルを対象に、このターン、リリーベルは特殊召喚の素材にできず、可能なら必ず攻撃する!」

 

 三角形の金属が、リリーベルの体を閉じ込まれるように出現する。

 

「さらに墓地のティンダングル・ラジアンを除外し、手札1枚を捨てて効果発動!デッキからジェルゴンヌの終焉をセットする!」

「くっ、トリックスター・リリーベルは相手に直接攻撃できる。リリーベルでダイレクトアタック!」

 

 リリーベルが手にした巨大なベルで殴打する。

 

「この時、ティンダングル・ラジアンの効果で、戦闘ダメージは半分になる」

 

 晃:ライフ2000→1600

 

「私は罠カード、ティンダングル・ドロネーを発動!自分の墓地にティンダングルモンスターが三種類以上存在し、相手モンスターの攻撃で戦闘ダメージを受けた時、その攻撃モンスターを破壊し、エクストラデッキから、ティンダングル・アキュート・ケルベロスを特殊召喚する!」

 

 リリーベルが囲んでいた三角形の金属から黒いエネルギーが放たれ、中のリリーベルを飲み込む。

 そして、その中から三首の奇怪な犬型のモンスターが姿を現した。

 

「そして罠カード、ジェルゴンヌの終焉を発動。このカードをティンダングルリンクモンスターに装備カード扱いで装備。装備モンスターは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にならない。そしてティンダングル・アキュート・ケルベロスは、墓地にティンダングル・ベースガードナーを含むモンスター三種類以上あれば、攻撃力3000アップする」

 

 攻撃力3000となり、効果耐性まで持ったアキュート・ケルベロスを突破する手段は今の葵にはない。

 

「私はホーリーエンジェルで、セットモンスターを攻撃!」

 

 ホーリーエンジェルで、手札補充の要のアポストルを破壊した。

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

ターン5

 

「ターン開始のドローで、お兄様には400のダメージを受けてもらうわ」

 

 晃:ライフ1600→1200

 

「私はフィールド魔法、オイラーサーキットを発動。バトルだ。私はアキュート・ケルベロスで、ホーリーエンジェルを攻撃!」

 

アキュート・ケルベロスが、ホーリーエンジェルに牙を向く。

 

「墓地のリンカーネーションを除外して効果発動!墓地のキャンディナを、ホーリーエンジェルのリンク先に特殊召喚!リンク先にモンスターが特殊召喚されたことで、相手に200ダメージ!ライトステージの効果でさらに200ダメージ!」

 

 ホーリーエンジェルがキャンディナと手を繋いで踊ると、煌びやかな波動が放たれ、晃にダメージを与える。

 

 晃:ライフ1200→800

 

「そしてキャンディナの効果で、デッキからマンジュシカを手札に。マンジュシカの効果発動!キャンディナを手札に戻して、マンジュシカを特殊召喚!」

 

 キャンディナが宙を舞い、マンジュシカと入れ替わり、ホーリーエンジェルと手を繋ぐ。

 

「リンク先にモンスターが特殊召喚さらたことで、さらに200ダメージ!ライトステージの効果でさらに200ダメージ!」

 

 晃:ライフ800→400

 

「そしてトリックスターモンスターの効果でダメージを与えたことで、そのダメージの数値分、ホーリーエンジェルの攻撃力をアップする」

 

 攻撃力2400となったホーリーエンジェルで、どうにかダメージを軽減した。

 

 葵:4000→3600

 

「バトルフェイズ終了時、アキュート・ケルベロスのリンク先にティンダングル・トークンを守備表示で特殊召喚。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン6

 

(お兄様のライフは残り400、私のフィールドにはマンジュシカが2体いる。次のターン、お兄様がドローしたその瞬間、ライフは0になる)

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 葵は勝ちを確信してターンを終える。しかし、

 

「葵、その油断がお前を敗北させる。私はエンドフェイズに、速攻魔法、皆既月食の書を発動!表側表示モンスター2体を裏側守備表示にする!」

「なっ!」

 

 マンジュシカ二体が、裏側守備表示になり、効果を発動できなくなってしまった。

 

ターン7

 

「私はオイラーサーキットの効果で、ティンダングル・トークンのコントロールを相手に移す」

「マズイ……」

 

 兄の戦術をよく知る葵は、この動きをよく知っている。

 

「私はティンダングル・エンジェルを反転召喚。その効果で、墓地のティンダングル・ハウンドをアキュート・ケルベロスのリンク先に特殊召喚!」

 

 ティンダングル・アキュート・ケルベロスのリンク先に3体のモンスターが並ぶ。

 

「私はジェルゴンヌの終焉の効果!装備モンスターのリンク先全てに、モンスターが存在する場合、それら全てを破壊し、装備モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 現在のアキュート・ケルベロスの攻撃力は4000、この一撃で葵のライフは消し飛んでしまう。

 

「私は罠カード!トリックスター・マジカベールを発動!」

 

トリックスター・マジカベール

通常罠

(1)このターン、自分が受ける戦闘・効果ダメージは0になる。その後、お互いにデッキから1枚ドローする。

 

「ダメージを無効にし、お互いに1枚ドロー」

 

 ジェルゴンヌの終焉が、リンク先の三体のモンスターを飲み込むが、葵は金色のベールに守られてダメージを与えるには至らなかった。

 

「なら私はアキュート・ケルベロスで、マンジュシカを攻撃!」

 

 アキュート・ケルベロスが、セットされたマンジュシカを蹴散らす。

 

「アキュート・ケルベロスの効果でトークンを生成。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン8

 

「葵のターン開始時、私は永続罠、モーリーの盾を発動!」

 

モーリーの盾

永続罠

(1)1ターンに1度、自分のメインモンスターゾーンの「ティンダングル」モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にする。

(2)自分フィールドに「ティンダングル」モンスターが存在する限り、自分は効果ダメージを受けない。

(3)自分フィールドの表側表示の「ティンダングル」魔法・罠カード、または「モーリーの盾」以外の効果テキストに「ティンダングル」と記された魔法・罠カードは相手の効果で破壊されない。

 

「これで私は効果ダメージを受けない。お前の効果ダメージによる勝利はなくなった」

「くっ……」

 

 葵は自分の手札を見る。

 

(このターンで勝たないと、でもどうすれば……)

 

 助けを求めるように、葵は遊作の方を見る。

 彼は葵と目が合うと、静かに頷いた。

 

「……そうだよね。諦めちゃ、私のターン、私はトリックスター・シャクナージュを召喚し、効果発動!手札のトリックスター1枚を捨てて、墓地のトリックスターリンクモンスターを特殊召喚!」

 

 ホーリーエンジェルが彼女のフィールドに蘇る。

 

「だが、ホーリーエンジェルの攻撃力では、アキュート・ケルベロスを突破できない」

「まだまだ。出てきて、愛と絆のサーキット!召喚条件はトリックスター2体以上!私はシャクナージュと、リンク2のホーリーエンジェルをリンクマーカーにセット!」

 

 天に現れたアローヘッドで花が開く。

 

「リンク召喚!リンク3、トリックスター・デビルフィニウム!」

 

 現れたのはシルクハットをかぶり、ステッキを携えた凛々しい麗人だった。

 

「バトルよ!まずはマンジュシカで、ティンダングル・トークンを攻撃!」

 

 マンジュシカがトークンを消し去る。

 

「リンク先のモンスターを失ったことで、アキュート・ケルベロスの攻撃力はダウン。そしてデビルフィニウムでアタック!」

「バカな!」

 

 下がったとはいえ、アキュート・ケルベロスの攻撃力は3000、デビルフィニウムの攻撃力は2200、このままでは返り討ちにあうだけだ。

 

「デビルフィニウムの効果!リンク先にトリックスターモンスターがいる時、相手フィールドのリンクモンスターの数まで、除外されているトリックスターカードを手札に!」

 

 リンカーネーションが葵の手札に加わる。

 

「そして、手札に加えたカード1枚につき、デビルフィニウムの攻撃力を1000アップする!」

 

 攻撃力3200となったデビルフィニウムが、宙を舞い、アキュート・ケルベロスにキックを喰らわせる。

 

 晃:ライフ400→200

 

「ターンエンド」

「私のライフは残っている。モーリーの盾の効果で、マンジュシカの効果は……」

「モーリーの盾の効果は、自分フィールドに、ティンダングルモンスターが存在する時」

「っ!!」

 

 そう。彼のフィールドにいるのは裏守備モンスターのみ。

 裏側表示であれば、そのカードがたとえティンダングルモンスターであっても、モーリーの盾の条件を満たせない。

 

「さあ、カードをドローして。お兄様」

「くっ……私のターン」

 

 ◆

 

 デュエルが終了し、地面に膝をつく兄に、葵はそっと手を伸ばした。

 

「お兄様、観覧車、一緒に乗りましょう」

「いや、だが私は負け……」

「お兄様に、藤木くんを紹介したいし」

 

 そう笑いかける彼女に、晃の心も自然と穏やかなものになった。

 

「藤木君といったか。先程はすまなかった」

「ああ、いや、俺は……」

「だが、私は、まだ君を認めたわけでは……」

「お兄様、行きましょう。藤木くんも」

 

 晃の言葉を遮り、葵は二人の手を取って観覧車へと向かう。

 

 その彼女の表情は、今までで一番笑顔だった。

 

 ◆

 

「ど、どうにか丸く収まったね」

 

 遊作達の様子を隠れて見守っていた尊と美海は、ホッと胸をなでおろした。

 途中でデュエルを始めたところからはどうなることかと思ったが、どうにか修羅場は回避できたようだ。

 

「あーあ酷い目にあった」

 

 すると、どこかへ浚われた切花が、いつの間にか戻ってきていた。

 

「夢乃さん、大丈夫だった」

「ほんと、大変だったよ~。屈強な男達の相手をさせられて、ちょっと汗かいちゃったな~」

「え、相手って……」

 

 わざとらしく服の胸元を掴んで仰ぐ彼女に、尊は恐る恐る尋ねる。

 

「デュエルだけど?」

「だ、だよね……」

「なになに~、穂村くんは一体何を想像したのかな~」

「何も想像してないから!」

 

 ギャーギャー喚く二人は無視して、美海は観覧車に乗った葵達を見る。

 

「葵様、ファイトです」

 

 前途多難な主の恋に、美海は静かにエールを送るのだった。

 

 

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