遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
そして辿り着いた場所は、空中の何の目印もない場所だった。
ゴッドバードが明確にここだと言ったわけではないが、近づいたおかげか、美海にも確かにここになにかあることは分かった。
「とりあえず、遊作か尊に連絡を」
「何をしている?」
「っ!?」
その時、彼女の周囲の景色が変化する。
空間は黒と白のパネルに置き換わり、チェス盤のような世界に巨大なビショップの駒が現れる。
「あなたは、ビショップ様」
「美海、君の動向について私が把握していないとでも思ったか?」
すると、チェス盤の上に人の形をした何かが現れた。
半透明のつるつるした体に青いラインの入ったそれが右手を美海の方へ伸ばすと、彼女の横に木枯しのようなデータストームが起きる。
「なっ!」
データストームの中からカード型のプログラムが実体化する。
「どうして、このプログラムはイグニスがいないと出現しないはず……あなたは何者ですか?」
「初めまして。私はIGS-000のコピーモデル、タイプαです」
「IGS……
自己紹介をしたそのAIの名称を聞いて、それが何であるかを理解した。
「これはもう、自白しているようなものですよ。ビショップ様、あなたはハノイプロジェクトの関係者ですね」
「……タイプα、データを奪え」
ビショップは答えることなく、AIに指示を出す。
「了解しました」
AI、タイプαは足元にDボードを出現させ、そのまま美海に突進する。
「くっ……」
美海は咄嗟にデータを掴み、Dボードを旋回させてどうにかかわす。
「対象が抵抗しました。これよりデュエルで拘束します」
「いいでしょう。このデータは絶対に渡しません」
「「スピードデュエル!」」
ターン1 美海
「原初海祈シーライブラを召喚!効果でデッキからメガロガーを手札に加える。そしてシーライブラを移動させることで、メガロガーを特殊召喚!」
効果モンスター
星4/水属性/サイバース族/攻 1000/守 1600
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードの召喚·特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「
(2)このカードが他のモンスターゾーンに移動した場合に発動できる。手札から「
効果モンスター
星3/水属性/サイバース族/攻 1300/守 500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、発動するターン、自分はサイバース族モンスターしか特殊召喚できない。
(1)自分フィールドの水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、手札からこのカードを特殊召喚する。
(2)このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの「オリジンブルー」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードはフィールドを離れた場合、除外される。
「シーライブラが移動したことで、手札から原初海祈マイアーカイブを特殊召喚!」
平たい楕円形の甲羅を持つ虫のような生物が現れた。
効果モンスター
星2/水属性/サイバース族/攻 500/守 500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「オリジンブルー」カード1枚を墓地へ送る。
(2)このカードが他のメインモンスターゾーンに移動した場合、墓地の水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のカードを手札に加える。このターン、この効果で手札に加えたサイバース族モンスター以外のカード及びその同名カードの効果は発動できない。
「効果でデッキから、オリジンブルーカード1枚を墓地へ送る。来なさい!未来を繋ぐサーキット!」
美海が手を伸ばす先で、水流が渦を巻いてアローヘッドを出現させる。
「召喚条件は、リンクモンスター以外の水属性のサイバース族モンスター1体!私はメガロガーをリンクマーカーにセット!リンク召喚!リンク1、
現れたのは、水色の鉱石のような髪を持つ人魚だった。
リンク・効果モンスター
水属性/サイバース族/攻 0/LINK 1
【リンクマーカー:右】
リンクモンスター以外の水属性・サイバース族モンスター1体
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「
(2)1ターンに1度、このカードを空いている自分のメインモンスターゾーンに移動させて発動できる。自分のリンクモンスターにバックログカウンター1つを置く。
「デッキから
フィールド魔法
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分の「オリジンブルー」リンクモンスターのリンク召喚に成功した場合に発動できる。そのモンスターに、このターン中にモンスターが移動した回数だけ、バックログカウンターを置く。その後、この効果で置かれたカウンターの数まで、墓地からレベル4以下の「オリジンブルー」モンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
(2)1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。
「エルニーニャの効果!1ターンに1度、このカードを空いているメインモンスターゾーンに移動させ、リンクモンスターにバックログカウンターを置く」
エルニーニャがシーライブラの横に移動し、彼女の胸のブローチに白い光が灯る。
「来なさい!未来を繋ぐサーキット!召喚条件は水属性効果モンスター2体以上!リンク召喚!リンク3!原初海祈タイタニーニャ!」
アローヘッドより呼び出されたのは奇怪なオブジェ、ハート型の巨大な水晶。背面には蝶の羽を象った飾り、先端部に青い女性の形をした彫像がついている。
リンク·チューナー·効果モンスター
水属性/サイバース族/攻 0/LINK3
【リンクマーカー:右下/下/左下】
水属性·効果モンスター2体以上
(1)リンク状態のこのカードは相手の効果を受けず、攻撃対象にならない。
(2)このカードのリンク先のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをチューナーとして扱う。その後、このカードのリンク先のモンスターのみを素材としてサイバース族Sモンスター1体をS召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
(3)自分のモンスターの位置が移動する度に、このカードにバックログカウンターを1つ置く。
(4)自分フィールドのモンスターの攻撃力は、このカードのバックログカウンターの数×200アップする。
「
フィールドにシーライブラとメガロガーが浮上する。
「タイタニーニャの効果発動!メガロガーをチューナーとして扱い、シーライブラにチューニング!」
タイタニーニャの体から触手が伸びて、メガロガーのデータを書き換える。
「太古の泉より、その美しき歌声を響かせよ。シンクロ召喚!レベル7、
シンクロ·効果モンスター
星7/水属性/サイバース族/攻 2300/守 2000
水属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1)このカードが効果で隣のメインモンスターゾーンに移動する場合、かわりにリンクモンスターのリンク先となるメインモンスターゾーンに移動できる。
(2)1ターンに1度、自分フィールドのバックログカウンター1つを取り除いて発動できる。このカードと同じ縦列の相手のカードを全て手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。
(3)1ターンに1度発動できる。このカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。
「私はプレシオルタ自身と
移動したことで、タイタニーニャの体の水晶に光が灯る。
最終的にプレシオルタは真ん中のメインモンスターゾーンに移動した。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン2 タイプα
「私のターン、私は征令アライアンスを召喚」
現れたのはスーツのような黒い鎧を着た騎士だ。
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻 1800/守 1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードの召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から「
(2)このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「セントラルオーダーロード」モンスター1体を手札に加える。自分フィールドのモンスターが「セントラルオーダー」モンスターのみの場合、このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、戦士族の「セントラルオーダーロード」モンスターをアドバンス召喚できる。
「デッキから同名モンスターを可能な限り特殊召喚」
アライアンスが剣を構えると、その左右に同じ姿のモンスターが出現する。
「この効果を発動するターン、私はエクストラデッキからモンスターを出せません。そしてアライアンスは特殊召喚に成功した時、デッキからセントラルオーダーロード1体を手札に加えます。そして、自分フィールドのモンスターがセントラルオーダーのみの場合、戦士族のセントラルオーダーロード1体をアドバンス召喚できます。私はアライアンス3体をリリース!」
3体のモンスターが天へと吸い込まれる。
「アドバンス召喚。
天より玉座が降ってくる。
そこに腰かけるようにして現れたのは、巨大な剣を携えた王だった。
効果モンスター
星10/闇属性/戦士族/攻 3000/守 3000
このカードをアドバンス召喚する場合、モンスター3体をリリースしなければならない。
(1)このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。自分の墓地からレベル6以下の「セントラルオーダー」モンスターを可能な限り、守備表示で特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は「セントラルオーダーロード」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。
(2)アドバンス召喚されたこのカードがフィールドに表側表示で存在する場合に発動できる。自分フィールドの「セントラルオーダー」モンスター1体と、相手フィールドのモンスター1体をリリースできる。
(3)アドバンス召喚されたこのカードが戦闘・相手の効果で破壊されて墓地へ送られた場合に発動できる。デッキ・墓地から「征令締結」1枚を手札に加え、このカードを墓地から特殊召喚する。
「グッドウィールはアドバンス召喚に成功した時、墓地のセントラルオーダーを可能な限り、特殊召喚します」
玉座の右横に、二体のアライアンスが控える。
「そして、アドバンス召喚されたグッドウィールは自分のモンスターと相手モンスター1体ずつリリースできます。この効果は1ターンに何度でも発動できます」
「なら、私は墓地のアノマロトレスの効果!」
効果モンスター
星3/水属性/サイバース族/攻 800/守 800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分フィールドのこのカード以外の「オリジンブルー」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、元々の位置にそのカードと同じレベル·種族·属性の「オリジンブルー·トークン」(攻/守0)1体を特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。
(2)墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。この効果は相手ターンでも発動できる。
「このカードを墓地から除外し、プレシオルタをグッドウィールの正面へ移動!」
これにより、プレシオルタはタイタニーニャとのリンクは外れてしまうが、全滅よりはマシだとバウンスのための準備を行う。
「グッドウィールの効果発動」
「その効果にチェーンして、プレシオルタの効果発動!」
タイタニーニャの体から触手が伸び、プレシオルタへエネルギーを供給する。
「1ターンに1度、バックログカウンター1つを使うことで、このカードと同じ縦列の相手のカード全てを手札に戻す!」
プレシオルタが鳴き声を上げる。
重なる音が、グッドウィールを玉座から吹き飛ばし、手札へと返す。
「グッドウィールの効果で、アライアンスとタイタニーニャをリリースします」
アライアンスが報復と言わんばかりに、タイタニーニャに特攻。
触手と剣を刺し違えて、二体のモンスターは墓地へ送られる。
「私はこれでターンエンド」
ターン3
「私は魔法カード、
通常魔法
(1)自分の墓地の「オリジンブルー」リンクモンスター1体を対象として発動できる。そのカードをEXデッキに戻し、EXデッキから対象のモンスターと同名のリンクモンスター1体を特殊召喚する。
(2)墓地のこのカードを除外し、自分のバックログカウンター1つを取り除いて発動できる。自分の墓地から水属性モンスター1体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「墓地のタイタニーニャをエクストラデッキに戻し、再度特殊召喚」
フィールドに水の門が開き、中からタイタニーニャが姿を現す。
「プレシオルタの効果で、自身をタイタニーニャのリンク先に移動させます。移動したことで、バックログカウンターを追加。プレシオルタの効果で、アライアンスを手札に」
プレシオルタが歌声を奏でると、残りのモンスターも手札に戻され、フィールドががら空きになる。
「墓地のメガロガーの効果、プレシオルタを再度移動させ、このカードを墓地から特殊召喚」
移動したことでバックログカウンターが置かれる。
タイタニーニャには、自身のカウンターの数だけ、味方の攻撃力を200アップする能力がある。メガロガー、プレシオルタに攻撃力をそれぞれ足して、その合計はピッタリ4000。相手のライフを削り切ることができる。
「バトルです!プレシオルタで、ダイレクトアタック!」
「私はスキル、コンプライアンスバリアを使用。このターン、ダイレクトアタックによって受けるダメージは0になります」
プレシオルタの攻撃は、半円形のバリアによって防がれてしまう。
「くっ、私はこれでターンエンド」
ターン4
「私は再びアライアンスを召喚。その効果で、墓地のアライアンス2体を特殊召喚。アドバンス召喚!グッドウィール」
先程と全く同じ流れで、敵のエースモンスターが召喚される。
「グッドウィールの効果で、アライアンスとプレシオルタをリリース」
「その効果にチェーン、プレシオルタの効果で、同じ縦列のアライアンスを手札に」
プレシオルタを失うが、コストとなるモンスターをバウンスすることで、どうにか二体目の除去は回避する。
「私は装備魔法、
装備魔法
自分の「セントラルオーダー」モンスターにのみ装備可能
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードを装備したモンスターは、カードの効果でモンスターがリリースされた回数分、一度のバトルフェイズ中に追加で攻撃できる。
(2)このカードを装備したモンスターの発動した効果は無効化されない。
(3)自分フィールドの「セントラルオーダー」モンスター1体をリリースして発動できる。デッキからリリースしたモンスターとカード名の異なる「セントラルオーダー」モンスター1体を手札に加える。
「これで装備モンスターは、カードの効果でモンスターがリリースされた回数分、一度のバトルフェイズ中に攻撃できます。バトル。グッドウィールで、メガロガーを攻撃!」
グッドウィールが玉座に座ったまま、大剣を振りぬくと、その衝撃波でメガロガーもろとも、美海が吹き飛ばされる。
「ぐぁっ!」
美海:ライフ4000→2300
攻撃に構えた閉じた目を開いた瞬間、彼女の目の前に壁が出現する。
「っ!」
ぶつかる直前、Dボードを上に傾けて、激突を回避した。
(あれ、今私……)
障害物を認識するよりも早く、反応していたような気がする。
「グッドウィール、タイタニーニャに攻撃」
先の現象について考えたいところだが、デュエルはまだ続いている。
グッドウィールの攻撃がタイタニーニャへと迫る。
「私は永続罠、リビングデッドの呼び声を発動!墓地からシーライブラを特殊召喚!リンク状態となったことで、タイタニーニャは攻撃対象にならない!」
「では、シーライブラを攻撃」
振り上げた剣がシーライブラへ向く。
シーライブラは破壊されるが、どうにかタイタニーニャを守り、ダメージを抑えることができた・
美海:ライフ2300→300
「私はこれでターンエンド」
ターン5
「私のターン」
ドローしたカードと合わせて、美海の手札は二枚、そのうちモンスターは1体だけ。タイタニーニャは存命しているが、これではシンクロ召喚することができない。
「どうすれば……っ!」
その時、風が吹いた。
見ると、彼女達の進む先にデータストームが迫っていた。
「……今なら、使えるはず」
意を決して、美海はデータストームの中に飛び込んだ。
彼女がサイバースカードと共に、ビショップより渡されたスキル。これまで使いこなすことができなかったそのスキルを、今発動させる。
「自分のライフが1000以下の時、データストームの中から、ランダムなサイバース族モンスター、もしくは「サイバネット」魔法・罠カード1枚を手札に加える。スキル発動!ストームコネクション!」
データストームの中から1枚のカードをつかみ取った。
「これなら、私は魔法カード、サイバネット・マイニングを発動!手札1枚を墓地に送り、デッキからレベル4以下のサイバース族モンスター、シーライブラを手札に加え、召喚。デッキからメガロガーを手札に加え、自身の効果で特殊召喚」
データストームより得たサイバネット・マイニングを起点に、再度モンスターの展開に成功する。
「シーライブラの効果で、手札からアノマロトレスを特殊召喚。タイタニーニャの効果で、メガロガーをシーライブラにチューニング!シンクロ召喚!
フィールドに顕現した水竜が、自身の効果でグッドウィールの正面に移動する。
「プレシオルタの効果で、グッドウィールを手札に!」
これでまた敵のフィールドはがら空きとなった。
「
アノマロトレスの力で、プレシオルタと同じ輪郭を持つ半透明な体のモンスターが出現する。
「モンスターが移動したことで、タイタニーニャにバックログカウンターが置かれる。これでカウンターは計3つ、攻撃力600アップ。バトルです!プレシオルタでダイレクトアタック!」
タイプα:ライフ4000→1100
「アノマロトレスで、ダイレクトアタック!」
◆
デュエルが終了すると、変化した空間は元に戻る。
「やはり、未完成なAIではこの辺りが限界か」
ビショップは特に残念でもなさそうにつぶやく。
「答えてください。あなた達は、イグニスを使って何をしようとしているのですか」
「決まっているだろう。企業が追及するのは、常に組織の利益だ」
「そんなことのために……」
犠牲になった鴻上先生や、遊作や尊、家族のことを思い、彼女の中に怒りがこみあげてくる。
「まあレポートを追うなら好きにするといい。どのみち我々だけではレポートを見つけられない。真実を知り、絶望しないことを祈る」
そんな言葉を残して、ビショップは姿を消した。
◆
美海はデータを持って、草薙のキッチンカーを訪れた。
遊作と尊もパソコンの前に立ち、草薙がデータを解析する様子を静かに見届ける。
「開いたぞ」
開封されたその内容は以下のようなものだった。
『AIと人間の差異はなにか。それは自ら考える意思を持つか否かである。
では意思とはなにか。人には「何かをしたい」と感じる欲がある。
食欲、物欲、睡眠、金銭、性欲、欲があるから人は欲のために何か行動を起こす。そして欲とは本能より生じる。
自ら何かをしたいと考えることで、AIの知能は一つ上のステージに進む。
本能を学習させるために、様々な方法を検証した。
そして導き出した最適な手段がデュエルモンスターだ。
デュエルは闘争本能を高め、イグニスに勝ちたいという感情を学ばせることで、より早くデュエルに勝つ最適解を導き出すだめ、意欲的に学習する
しかし、闘争本能を学んだことが、最悪な結果を生むことになるとは、私は想像していなかった』
「今回も、実験の詳細な内容は記載されていなかったな」
「えぇ、しかしこれを見てください」
美海はレポートの中のある一文を指さす。
「『本能を学習させるために、様々な方法を検証した』、これはつまり、私達が実験台にされるより前に、SOLテクノロジーが何らかの実験を行っていたことを示しています」
「確か美海が、今日戦ったSOLテクノロジーのAIって……」
「IGS-000のコピーモデル、おそらく、イグニスのプロトタイプのようなものが存在していたのかと」
「それが、今SOLが開発しているAIの元になっているわけか」
もしそうであれば、その存在がSOLを告発する証拠になりえる。
「私はレポート探しと並行して、SOLの内情について調べてみます。警戒されているので、どこまでやれるか分かりませんが」
「分かった。俺達はハノイについて調査を進める。やつらも実験に使われたAIを持っていた。関係があるのは間違いない」
各々の方針が決まり、今日はここで解散となった。
(それにしても……)
美海はレポートの最後に記されていた一文が気になっていた。
(闘争本能、それが最悪な結果を生むとは、どういう意味なのだろう?)
◆
某日、電脳空間某所
一体のAIが、石でできた玉座のようなものに腰かけていた。
彼はAiや不霊夢と同じくらいの体格で、黄色い体に白いラインが入っている。
「ウィンディ、彼らに連絡はついたか」
すると、彼の目の前に風が吹き、緑色のイグニスが姿を現す。
「アースとアクアはOKだってさ。不霊夢は今集まるのは危険だとか言ってるよ」
「ふんっ、相変わらず慎重すぎるな。ことは急を要するというのに」
黄色いイグニスは、仲間の顔を思い浮かべて嗤う。
「私のシミュレートでは、彼らは86400秒後にサイバース世界へ侵入する。排除するぞ」
「了解、ライトニング」