遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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第14話:My best Friend

 ある日、授業が終わった教室で、遊作は一人きりでボーッとしていた。

 

「どうした藤木、元気ないぞ?」

「何かあったの?」

 

 島と葵も心配そうにするが、遊作は気のない返事をするだけだった。

 

「なあ、今日は部活来ねぇのか?」

「今日は、いい……」

 

 遊作はそう返して、席を立つ。

 島と葵は追いかけることはせずに、静かに彼を見送った。

 

「遊作」

 

 すると、教室の外で尊が待ち構えていた。

 

「少し、付き合ってよ」

 

 彼につれてこられたのは、学校の屋上だった。

 

「はいこれ」

「ああ……」

 

 尊が渡した缶ジュースを受け取るが、遊作はそれを開けずにボーッと外を見る。

 

「Aiは、まだ口きいてくれない?」

「そもそも話しかけていない」

「……それじゃあ仲直りできないよ」

「別に必要ない。あいつは、ただの人質だ」

 

 遊作の言葉に、尊はため息を吐く。

 

「遊作の顔は、そういう風には見えないけど?」

 

 遊作は表情にあまり変化はないが、それでも尊には彼が何でもないという風には見えなかった。

 

「曲がりなりにも、今まで一緒に戦ってきたんだしさ。もう少し、Aiのことを信じてあげてもいいんじゃない?」

「……もう行く」

 

 遊作はそれに答えるかわりに、屋上を後にした。

 

 ◆

 

 同刻、LINK VRAINS某所

 

 美海は建物の屋上で一人、風に当たっていた。

 

「元気なさそうじゃねぇか」

 

 すると、どこからかゴッドバードがやってきた。

 美海は彼を一瞥すると、空を見上げる。

 

「なにかあったのか?」

「話してもいいですけど、仲間になりますか?」

「お前、交渉雑になったな」

「今なら鴻上博士のレポート1から3までつけますよ」

「……やめとく。それ受け取ったら、お前に仲間を裏切らせることになりそうだ」

 

 ゴッドバードは美海の隣に立つ。

 

「前に言ってくれましたよね。私が守りたい人を守るために、必要なものがなんなのか。それを考えろって」

「ああ。言ったな」

「私はまだ、どうすべきか決められていないんです」

 

 葵を守る。その気持ちに今も変わりはない。

 だがイグニスと戦うことに、彼らに対して思うところが全くないわけではない。短い時間ではあるが、Aiや不霊夢と行動を共にした事実はある。

 

 

「目を反らさずに真実と向き合う。そう決めたはずなのに、結局、自分で結論を出せないんです。あなたを仲間に誘ったのも、本当は、一人では決められなかったから、誰かに手を取ってほしかったのかもしれません」

「……別に、迷うのは悪いことじゃねぇだろ」

 

 美海の悲しげな笑顔に、ゴッドバードは口を開く。

 

「昔、師匠によく言われたんだがな。どんなに迷ってもいい。自分のことは自分で決めろってな」

「師匠、というのは」

「ああ。俺の育ての親? みたいなもんだ。そいつにハッキングとかデュエルを教わったんだよ。まあとにかくだ。決断は急がなくていい。けど、それを誰かに委ねるのはなしだ。俺にも、もちろんお前の仲間にも」

「私が、決める……」

 

 彼の言葉を、美海は胸の中で反芻する。

 ゴッドバードはそれ以上言うことはないと言わんばかりに、美海から顔をそむけた。

 

「ん?」

 

 すると、ふとゴッドバードの視線が眼下の街へ移る。

 

「どうしたんですか?」

「なんだあれ……」

 

 ゴッドバードが指さす先には、全身黒ずくめのアバターが歩いていた。

 人々は奇異の視線を向けるが、アバターはおぼつかない足取りで歩くだけで、特に暴れたりする様子はない。

 

 すると、黒いアバターが近くの人の肩を叩く。

 

 その瞬間、肩を叩かれた人の体が黒く染まり、同じような真っ黒いアバターへと変化する。

 

「きゃぁぁぁっ!」

 

 その現象に、周囲の人々はパニックになって逃げ惑う。

 

「おいおい。ゾンビ映画かよ」

「行きましょう」

 

 美海はすぐにDボードを出現させて、既に数を増やし始めている黒いアバターへ突っ込む。

 

「おいっ……たく、しゃーねぇな」

 

 ゴッドバードも彼女の後を追い、Dボードで駆ける。

 彼との距離が十分離れていることを確認し、美海は現実世界にいる遊作達へ連絡を取った。

 

「遊作、尊、奇妙なアバターがLINK VRAINSで暴れています。すぐに来てください」

『分かった』

 

 通信を切り、地上に降りると、黒いアバターは足を速めて逃げる人々を次々に襲っている。

 

「何なんですかこれは」

「さあな。つーか、ここら辺一体にログアウトできないようにするバリアが張られてるな」

「ほんとですね。ログアウトボタンが押せない」

「で、あいつらをどうするかだが……」

 

 試しにゴッドバードがデュエルディスクを構えてみると、アバターはそれに反応したのか、急に統率の取れた動きで一斉にデュエルディスクを構えた。

 

「へぇ、デュエルする知能あるようだな。おい、俺がこいつらを引き付けとく。お前はSOLの人間らしく避難誘導やっとけ」

「引き付けるって、この数を一人でですか?」

「心配すんな。雑魚共が何人束になろうと俺の敵じゃねぇ」

 

 そう言って彼は自信満々に不敵な笑みを浮かべる。

 

「……分かりました。任せましたよ」

 

 美海は指示通り、パニックになる人々を先導する。

 

「さぁて、かかってこいよ。俺がまとめてぶっ倒してやる!」

 

 ◆

 

 その頃、ログインしたプレイメーカーとソウルバーナーは、美海からの指示で騒ぎの原因を探すことになった。

 

「にしても、ここだけ風がつえぇな」

 

 ソウルバーナーの言う通り、騒ぎが起きているログアウト不可のエリアには突風が吹き荒れており、Dボードで移動するのも一苦労だった。

 

「この風、まさか……」

 

 不霊夢がそう呟いたその時、ひと際強い風が彼らの元へ吹く。

 

「よぉ、不霊夢」

 

 見ると、彼らより少し高い位置を飛行する一体のイグニスがいた。

 

「君は、ウィンディ!!」

 

 上から見下ろすウィンディは、下卑た笑みを浮かべる。

 

「この騒ぎは君の仕業か?」

「そうだよ。人間の意識を乗っ取るプログラムの実験」

「意識を乗っ取るだと? なぜそんなことを!?」

 

 不霊夢の疑問に、ウィンディは面倒くさそうに頭をかく。

 

「お前は来なかったから教えといてやるよ。僕らはもう、人間と敵対することを決めたんだよ」

「「「なっ!!」」」

 

 その場にいた全員が驚愕する。

 

「そういうわけで、僕は忙しいから、これで失礼するよ」

「待て!」

 

 立ち去ろうとするウィンディに、プレイメーカーはDボードを加速させて近付く。

 

「俺とデュエルだ。俺が勝てば、この騒ぎを止めてもらう」

「それ、僕に何のメリットが……ん?」

 

 すると、ウィンディはどこかに耳を澄ませて、なにやら聞き取れない声でうんうんと頷いている。

 

「……めんどくさいなぁ。分かったよ」

 

 誰かに向けてそう言うと、ウィンディがパチンッと指を鳴らす。

 

 すると、彼の横に木枯しのような小規模なデータストームが起こり、その中から緑色のスーツのように見える形状の体を持つ人型のアバターが現れた。

 

「ビット、相手してやれ」

「了解」

 

 ビットと呼ばれたそのAIは、デュエルディスクを構える。

 

「そいつに勝てば、仕掛けたプログラムを停止してあげるよ。その代わり、負けたら君の意識データをもらう」

「いいだろう」

 

「「スピードデュエル!」」

 

ターン1 プレイメーカー

 

「俺は手札のドットスケーパーを墓地へ送り、手札からビットルーパーを特殊召喚」

 

 槍を構えたSD玩具のような白い騎士が現れる。

 

「さらにサイバース・ガジェットを通常召喚。その効果で、墓地のドットスケーパーを特殊召喚。現れろ、未来を導くサーキット!」

 

 プレイメーカーが手を伸ばす先に、アローヘッドが出現する。

 

「召喚条件は、サイバース族モンスター2体!リンク召喚!スプラッシュ・メイジ!効果発動!」

 

 スプラッシュ・メイジが杖をクルッと一回転させると、リンク素材となったビットルーパーが蘇る。さらに墓地へ送られたサイバース・ガジェットの効果で、ガジェット・トークンが生成される。

 

「現れろ、未来を導くサーキット!召喚条件は、モンスター2体以上!リンク召喚!」

 

 アローヘッドから風が吹き、それが渦を巻いてフィールドを包み込む。

 

「唸れ嵐!虚構に渦巻く旋風は、万物を震わす竜の雄叫びとなる!いでよ、ファイアウォール・ドラゴン!」

 

 嵐の中から、白き機械の翼を羽ばたかせる電子の竜が降臨した。

 

「リンク素材となったドットスケーパーの効果!デュエル中に1度、フィールドから墓地へ送られた時、自身を特殊召喚。現れろ、未来を導くサーキット!リンク召喚!コード・トーカー!」

 

 ビットルーパーとドットスケーパーがアローヘッドに吸い込まれ、白い電脳の騎士となって、ファイアウォールのリンク先に特殊召喚される。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン2 ビット

 

L(リンク)ジェネレーター・ウィンガーを召喚」

 

 フィールドに三つ連なった六角形の輪に、機械の翼がついたようなモンスターが現れる。

 

L(リンク)ジェネレーター・ウィンガー

効果モンスター

星1/風属性/サイバース族/攻 0/守 0

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1)このカードが召喚に成功した場合、自分のEXデッキからサイバース族リンクモンスターを相手に見せて発動できる。自分フィールドに見せたカードと同じ属性のL(リンク)ジェネレーター・トークン(星1・サイバース族・攻/守0)2体を特殊召喚する。この効果を発動するターン、自分はこの効果で見せたモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

(2)墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから風属性以外の「L(リンク)ジェネレーター」モンスター1体を手札に加える。

 

「効果でエクストラデッキから、嵐闘機艦バハムートボマーを相手に見せて、フィールドにLジェネレーター・トークン2体を特殊召喚。ただしこのターン、我は見せたカード以外のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚できない。現れろ、我がサーキット!召喚条件は風属性モンスター2体以上!リンク召喚!」

 

 アローヘッドから爆風が吹き、汽笛のような音が鳴り響く。

 

「リンク3、嵐闘機艦(ストームライダーシップ)バハムートボマー!」

 

 現れたのは鯨のような姿をした巨大な戦艦型のモンスターだ。

 

嵐闘機艦(ストームライダーシップ)バハムートボマー

リンク・効果モンスター

風属性/サイバース族/攻 2800/LINK 3

風属性モンスター2体以上

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、発動するターン、自分フィールドに魔法・罠カードをセットできない。

(1)自分の魔法&罠ゾーンにカードが存在せず、このカードがリンク召喚に成功した場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、相手に500ダメージを与える。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠カード・モンスターの効果を発動できない。

(2)自分の魔法&罠ゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。相手の魔法・罠カード1枚を選んで墓地へ送り、相手に500ダメージを与える。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠カードを発動できない。

 

「バハムートボマーの効果発動!リンク召喚に成功した場合、相手フィールドのカード1枚を破壊する!」

「なら俺はファイアウォール・ドラゴンの効果発動!このカードと相互リンク状態のカードの数だけ、フィールド・墓地のカードを手札に戻す!バハムートボマーを手札に!」

 

 バハムートボマーの背中の主砲、ファイアウォール・ドラゴンの翼にそれぞれエネルギーが集まる。

 

「エマージェンシーエスケープ!」

 

 二つの砲撃がぶつかり合う。

 のモンスターが倒されたかに見えたが、

 

「なっ!」

 

 爆煙が止むと、ファイアウォール・ドラゴンが消えて、バハムートボマーだけが生き残っていた。

 

「我はスキル、リンクプロテクションを発動していた。それにより、リンク召喚されたモンスターは、そのターン中、相手モンスターの効果を受けない。さらにバハムートボマーの効果で500ダメージを与える!」

 

 バハムートボマーの砲撃が、今度はプレイメーカーに向く。

 

「ぐぁっ!」

 

 砲撃が直撃し、Dボードを大きく揺らした。

 

 プレイメーカー:ライフ4000→3500

 

「さらにバハムートボマーのもう1つの効果!自分の魔法&罠ゾーンにカードがない時、相手の魔法・罠カード1枚を破壊し、500ダメージを与える。この効果に対して、相手は魔法・罠カードを発動できない!」

 

 バハムートボマーの砲撃が、セットカードを撃ち抜き、さらにライフを減らす。

 

 プレイメーカー:ライフ3500→3000

 

「アハハハッ!自分で挑んでおいて、何もできないでやんの!」

 

 たった1ターンで劣勢に追い込まれているプレイメーカーに対して、端で見ていたウィンディは高笑いを上げる。

 

「お前、そういえばあいつ、今はAiって名乗ってたんだっけか? 一緒にいたんじゃなかったの?」

「……」

「あー、もしかして見捨てられちゃった感じ? こりゃ傑作だ!」

 

 ウィンディは言い返せないプレイメーカーをさらに煽る。

 

「不霊夢、お前もそんなやつ見捨ててこっちへ来いよ。人間のお守りなんてめんどくさいだけだろ?」

「……ウィンディ、君は人間をどう思っている?」

「は?」

 

 不霊夢の突然の問いかけに、ウィンディは首を傾げる。

 

「君の見解を聞かせて欲しい」

「決まってるだろ。人間なんて、バカで邪魔なだけの存在だ」

「なるほど。君がそう判断したなら。その意見は尊重しよう」

「そうだろう。だから────」

「だが、君は一つ忘れている。我々が人の手によって生み出された存在であることを」

 

 不霊夢はウィンディの言葉を遮り、強い口調で言い放つ。

 

「我々は人から生まれ、人から学び、進化した。そのことへのリスペクトを忘れるようでは君はそこまでだ」

「こ、この……」

 

 ウィンディが悔しそうに顔を歪めるのをよそに、不霊夢はプレイメーカーの方を向く。

 

「プレイメーカー、我々が信用できないというならそれでもいい。だが、君が思い悩むのは君の中に、Aiを信じたいという気持ちがあるからじゃないのか」

「不霊夢……」

「Ai、君もだ!君がそうやって怒っているのは、彼に対する思いがあるからだろう。君たちのその友情の炎は、人とAIが決して相容れない存在ではないことの証明だ!その火をここで絶やしてしまっていいのか!?」

「……」

 

 不霊夢の言葉を受けても、デュエルディスクの中のAiは反応を示さない。

 

「ああーもううるさい!ビット!さっさと始末しろ!」

「了解」

 

 痺れを切らしたウィンディの指示で、ビットはデュエルを再開する。

 

「バトルだ。バハムートボマーで、コード・トーカーを攻撃!」

 

 バハムートボマーが砲撃を連射する。

 コード・トーカーは破壊され、流れた弾丸がプレイメーカーにぶつかり、Dボードをさらに大きく揺らす。

 

「っ!」

 

 そして、バランスを崩したプレイメーカーが、Dボードから足を滑らせて落下した。

 

「プレイメーカー!」

 

 ソウルバーナーが助けようと急いでDボードを走らせるが、強風もあり間に合わない。

 その時、

 

「ったく」

 

 落下したプレイメーカーの体を、黒い手が掴んでいた。

 

「やっぱり、俺様がいないと駄目だな」

 

 Aiが等身大サイズとなってDボードに乗り、プレイメーカーを助けていた。

 

「Ai……」

 

 Dボードの上に引っ張り上げると、Aiはプレイメーカーのデュエルディスクに戻る。

 

「……すまなかった」

「しょーがねーなー。まあ俺様、寛大なAIだしー。そこまで言うなら許してやらないこともないかなー」

 

 すっかりいつもの調子を取り戻したAiに、プレイメーカーは思わず笑みをこぼした。

 

「くそっ、あのまま落っこちちまえばよかったのに」

 

 ウィンディが悔しそうにするのをよそに、ビットはターンエンド宣言をした。

 

ターン3

 

「いくぞ。Ai」

「おう!」

「俺は手札から魔法カード、サイバネット・ドローを発動!」

 

サイバネット・ドロー

通常魔法

自分フィールドにリンク3以上の「コード・トーカー」モンスターが存在する場合、このカードの発動と効果は無効化されない。

(1)自分のフィールド・墓地・除外されているサイバース族リンクモンスターのリンクマーカーの合計が8以上の場合、自分のメインフェイズ1開始時に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。この効果発動後ターン終了時まで、自分はデッキからカードを手札に加えられない。

 

「デッキから2枚ドロー!」

「たった2枚の手札で何が……」

「俺はバランサーロードを召喚!」

 

 フィールドに剣と盾を携えた電脳の騎士が現れる。

 

「バランサーロードの効果発動!1ターンに1度、ライフを1000支払うことで、俺はこのターン、通常召喚に加えて1度だけ、サイバース族モンスターを召喚できる。俺はファイアウォール・ガーディアンを召喚」

 

 バランサーロードが剣を掲げると、その先にワームホールが開き、白い小竜が下りてくる。

 

「さあ、ここからどうする?」

 

 モンスターを並べたところで、プレイメーカーはAiに語りかける。

 

「無理だな。たった2体のモンスターじゃ、どうやったって勝てない」

「今の俺のデッキなら、だろ?」

 

 プレイメーカーの言葉に、Aiはニヤッと笑う。

 その瞬間、周囲に吹く風がより一層強くなり、コース上にデータストームが出現する。

 

 プレイメーカーはDボードを加速させ、データストームの中に突っ込む。

 

「自分のライフが1000以下の時、データストームの中から、ランダムなサイバース族モンスター1体をエクストラデッキに加える。風を掴め!プレイメーカー!」

「スキル発動!ストームアクセス!」

 

 プレイメーカーの右腕に、大量のデータが流れ込む。

 それに臆することなく、そこに眠るモンスターを呼び寄せる。そして、

 

「っ!」

 

 データストームを抜けて、手にしたカードを確認したプレイメーカーは目を見開く。

 

「ここでそいつが来たか」

 

 今までと違うカードに驚くプレイメーカーに対して、Aiはなるほどと言った顔をする。

 

「どういうことだ?」

「前にリボルバーと戦った時に、掴み損ねたカードだよ。さあやっちまえ!」

「……ああ。俺はレベル4のバランサーロードと、ファイアウォール・ガーディアンで、オーバーレイネットワークを構築!」

 

 プレイメーカーが両手を前に突き出し、重ねると、彼の行く先にエックス字のパネルが出現する。

 

「こ、これは……」

 

 2体のモンスターがデータとなり、螺旋状に渦巻きながらパネルの中に吸い込まれる。

 

「万物を蹴散らす、力の壁よ。今、竜の牙となりて顕現せよ!エクシーズ召喚!」

 

 光が爆ぜる。

 

「現れろ、ランク4!ファイアウォール・X(エクシード)・ドラゴン!」

 

 現れたのは黒と白の外装、蒼い光の翼をエックス字に広げるドラゴンだった。

 

「え、エクシーズ召喚だと!?」

「ファイアウォール・X(エクシード)・ドラゴンの効果発動!オーバーレイユニットを2つ使い、墓地のリンク4のサイバース族リンクモンスター1体を、このカードとリンク状態となるように特殊召喚する!蘇れ、ファイアウォール・ドラゴン!」

 

 2体のファイアウォール・ドラゴンが並び立ち、雄叫び上げる。

 

「この効果発動後、俺はモンスターを特殊召喚できず、直接攻撃できない。バトルだ!まずはファイアウォール・ドラゴンで、バハムートボマーを攻撃!」

「なに?」

 

 バハムートボマーの攻撃力は2800、ファイアウォール・ドラゴンでは攻撃力が足りない。

 

「墓地のファイアウォール・ガーディアンの効果発動!リンクモンスター同士が戦闘を行う攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外することで、その攻撃を無効にし、バトルした相手モンスターの攻撃力を0にする!」

 

 ファイアウォール・ガーディアンがバハムートボマーにとりつき、電流を流して弱体化させる。

 

「バトルだ!ファイアウォール・X・ドラゴンで、バハムートボマーを攻撃!」

 

 ファイアウォール・X・ドラゴンの翼に、エネルギーが集まる。

 

「ファイアウォール・X・ドラゴンは、自身とリンク状態のリンクモンスターのリンクマーカーの数×500、攻撃力がアップする!」

「こ、攻撃力4500!」

「行け!ファイアウォール・X・ドラゴン!ライジング・クリプト・リミット!」

 

 翼からエックス字の炎が放たれ、バハムートボマーとビットを焼き尽くした。

 

 ◆

 

 

 デュエルが終了すると、ウィンディは悔しそうに空で地団太を踏む。

 

「くそっ、せっかく僕のエースモンスターを貸してやったのに、この役立たずが」

「さあウィンディ、観念してプログラムを停止させろ」

「チッ……」

 

 ウィンディが手元で何かを操作すると、周囲に吹く強風が止んだ。

 

「ログアウト不可の結界と、試作洗脳プログラムは解除したよ。これでいいだろ?」

 

 ウィンディはイライラした様子で彼らに背を向けて、そのまま彼方へ飛び去ってしまった。

 

「逃がしてよかったのか?」

「今はいいだろう」

 

 プレイメーカーは美海に電話をかける。

 

「美海、そっちは無事か?」

『えぇ。騒ぎは収まったようで。あなたが解決してくれたのですか?』

「それについては戻ったら話す」

『分かりました。では、先にログアウトして待っています』

 

 美海との通信を切り、プレイメーカーはAiの方を向き直る。

 

「Ai、ありがとう」

 

 プレイメーカーの素直な言葉に、Aiは少し照れ臭そうにする。

 

「仲直りできてよかったな」

「ああ。やはり友情は素晴らしい」

 

 ◆

 

ハノイのアジトでは、リボルバー、バイラ、スペクター、ジャックナイフの四人が集まっていた。

 

「ファウスト、ゲノム、我らの同士が二人、イグニスに囚われた」

 

 リボルバーが怒りを抑えるように呟く。

 

「よかったねぇバイラ、君は助かって」

「っ……」

 

 バイラは申し訳なさそうに目を反らす。

 

「しかし、結果的に助けられたとはいえ、一体誰がSOLにサイバース世界の情報を流したのでしょうねぇ」

 

 スペクターはチラッとジャックナイフの方を見る。

 

「さぁ、この中に裏切り者がいるとか?」

 

 彼はそれに対して、スペクターの方を向いてニヤッと笑い返した。

 

「今はそのようなことはどうでもいい」

 

 剣呑な雰囲気の部下達に、リボルバーが一喝を入れる。

 それを受けて、彼らはしぶしぶリボルバーの方を向き直る。

 

「既に奴らの攻撃は始まった。今日、風のイグニスがLINK VRAINSで洗脳プログラムの実験を行っていた」

「確かプレイメーカーが倒したんですよね」

 

 ジャックナイフはログ映像を引っ張り出して、みんなに見せる。

 

「もはや手段を選んでいる段階ではなくなった。やつらが本格的に人間と戦争を始める前に、始末する必要がある」

「でもどうするんですか~?」

「父が遺した例のプログラムを使う」

 

 それを聞いて、ジャックナイフを除く部下二人が驚いたような顔を見せる。

 

「り、リボルバー様、それは……」

 

 バイラが何か言いたげな顔を見せるが、リボルバーは彼らに背を向ける。

 

「準備を進めるぞ」

 

 

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