遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
財前邸で、葵は自分の部屋で自身のSNSアカウントをチェックしていた。
「ねぇ美海、今度は……美海?」
「え!」
声をかけられた美海の体がビクンッと跳ねた。
「ご、ごめんなさい。ボーッとしてて」
「……美海、大丈夫? 最近ずっとそんな感じだけど」
葵が心配そうに彼女の顔を覗き込む。
美海はそんな自分を見られたくないのか、サッと顔を反らして葵に背を向ける。
「少し、顔を洗ってきます」
美海は逃げるように部屋を出た。
「美海……」
◆
翌日の昼休み、葵の呼び出しを受けて、遊作は学校の屋上にやってきた。
「藤木くん、美海が最近元気ないんだけど、何か心当たりない?」
「いや……」
実のところある。
美海に前回のウィンディとの邂逅、イグニスからの宣戦布告について話したところ、さらに思いつめたような顔をしていたのは記憶に新しい。
彼女もまた、自分と同じようにどうすべきか迷っているのだろうが、それを葵に話すわけにもいかなかった。
「藤木くん、何か隠してる?」
隠し事が下手なのか、葵が聡いのかは分からないが、彼の態度から嘘を見抜かれてしまっていた。
「お願い。私も美海の力になりたいの」
「それは先生も気になるわね」
その時、二人っきりの屋上に、エマが乱入してきた。
「せ、先生には関係ないでしょ」
「あら、生徒の悩み事なら、私にも関係あるでしょ」
エマは遊作に近付くと、葵を押しのけていやらしい手つきで彼の体に触れる。
「ねぇ、先生に話してみない?」
彼女の豊満な胸が遊作に触れた瞬間、葵は彼の手を取る。
「も、もう授業なので失礼します」
葵は遊作を連れて屋上を逃げるように去っていった。
◆
二人が屋上を出て行った直後、エマのデュエルディスクに電話がくる。
『ゴーストガール、プレイメーカーの正体はつかめたか?』
「まだ調査中って言ったでしょ。せっかちな男は嫌われるわよ?」
『期日は既に迫っている。クライアントが催促するのは当たり前だろう?』
「はいはい。まあ期待しといてよ」
そう言ってエマは電話を切る。
「全く、SOLのお偉いさんはこれだから困るわね」
エマはため息を吐く。
「まあ、私の中ではほぼ答えは出てるけど、情報屋として証拠もなしに提出するわけにもいかないしね」
その時、またデュエルディスクに着信が入る。
エマはイライラした様子で、電話に出る。
「だーかーらー、まだ調査中────」
『ゴーストガール、私です』
電話口から聞こえたのは、ビショップではなく少女の声だった。
「あら、
『実はあなたに調べてほしいことがありまして』
「仕事の依頼なら報酬次第ね」
『以前、あなたに譲ったプレイメーカーの現れる場所と日時に関する情報、そちらの代金を今取り立てさせてください』
美海がSOLテクノロジーサーバー内で、プレイメーカーこと遊作と
「抜け目ないわね。いいわ。何を調べて欲しい?」
『SOLが開発しているAI、IGS-000の出処、できればそのソースコードも欲しいです』
SOLのAIについては、エマ自身もそれとなく探っていた。
その矢先に、SOLテクノロジーからプレイメーカーの正体を探るように依頼が来たのだ。まるで余計な手出しはするなと言わんばかりに。
学校教師をやる裏で、長くネットの情報屋として活動していた彼女には、これが危険なヤマであることは察していた。
「ちょっと割に合わないわね」
『あなたなら余裕でしょう。プレイメーカーの正体を探ろうとしているあなたなら』
「それ知ってるってことは、やっぱり彼がプレイメーカー?」
『さあなんのことでしょうか』
美海は電話越しにおどけて見せる。
「……分かったわ。その代わり、あまり期待はしないでよ」
『えぇ。期待せずに待っています。あ、それからこれは関係ない話なのですが、遊作に色仕掛けするのは止めてください。遊作と葵様は今いい感じなので、邪魔をされては困ります』
「一応聞いておくわ。それじゃあね」
そう言って、エマは通話を切った。
「全く、うちの生徒は末恐ろしい子が多いわね」
◆
それから数日が経ったある日、美海はエマに呼び出されて、LINK VRAINSにログインしていた。
「ここは……」
そこはLINK VRAINSの下層にある古いエリアだった。
廃墟のような壊れた建物のが、時折ノイズを発して像を歪ませながらいくつも立ち並ぶ。
「ここはとある企業が保有していたネットワークよ」
ゴーストガールことエマが、建物の陰から現れた。
「とある企業?」
「えぇ。元は医療機器メーカーで、今はSOLテクノロジーに買収されている」
「もしかして、その企業がIGS-000を作ったのですか?」
「確かなことは分からないけど、残留データの中に、あなたが見せてくれたイグニスアルゴリズム、だっけ? それによく似たプログラムがあった。AIを開発していたという記録もね」
ゴーストガールは手元に、カード状のデータファイルを出現させる。
「残念だけど、開発の経緯とか、詳細な実験内容までは載ってなかったわ」
「それでも十分です」
美海はそれを受取ろうと一歩前に出るが、ゴーストガールはそれを避けるように後ろに下がる。
「どういうつもりですか?」
美海の顔が険しいものになる。
「あなた、お友達でも連れてきたの?」
「え?」
ゴーストガールの目線の先へ振り替えると、物陰から特徴的な羽が飛び出していた。
「ブルーエンジェル!?」
美海に名前を呼ばれると、ブルーエンジェルは照れ笑いをしながら物陰から出てきた。
「ど、どうしてあなたが……」
「ごめん。どうしても美海のことが心配で」
今日は駅前のネットカフェからログインしていたはずだ。
ということは、葵にそこまで付けられていたことになる。
自分の迂闊さと、普段ならやらないようなミスを犯してしまう今の自分の状態に嫌気が差した。
「どうする? ご主人様に心配かけちゃうような状態で、このデータを持ち帰って本当に大丈夫?」
「私は……」
その時、彼女達の鼻先を潮の香りが撫でた。
周囲から水が集まり、空中に青いイグニスの姿を具現化させた。
「な、なに!?」
「初めまして。人間の皆さん。水のイグニス、アクアと申します」
アクアと名乗ったそのイグニスは、空中で丁寧にお辞儀をする。
「っ……」
その瞬間、美海の胸になにか突き刺さるような感触があった。
「これは……」
アクアの方も同じ感覚を味わったようで、美海の方を見て納得したような顔を浮かべる。
「なるほど、あなたが私のオリジンですね」
「オリジン?」
アクアはその疑問には答えず、静かに手を差し出す。
「そちらの方、我らが同胞のデータを渡してください」
「欲しいなら、それなりの額を払ってもらうことになるけど?」
ゴーストガールの態度に、アクアはため息を吐く。
「では……ビット、ブート」
アクアが指を鳴らすと、先程と同じように水流が空を駆け、二体のAIを生成した。
「彼女からデータを奪ってください」
「「了解」」
ビットとブートがDボードに乗って、ゴーストガールに迫る。
そこに、すかさず美海が立ちふさがった。
「このデータは渡せません」
「私も戦う」
すると、ブルーエンジェルも前に出て、美海の隣に立つ。
「い、いや、しかし……」
「美海が何に悩んでいるのか、何と戦ってるのか。私には分からない。それでも、美海の力になりたいの」
ブルーエンジェルは美海の方を向いて笑いかける。
「友達でしょ」
「……葵、様」
二人は前を向き直る。
「話はついたようですね。ビット、ブート、始めてください」
「「「「スピードデュエル」」」」
◆
ビットとブルーエンジェルのデュエル、先攻はビット。
「私は
効果モンスター
星1/水属性/サイバース族/攻 0/守 0
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードが召喚に成功した場合、自分のEXデッキからサイバース族リンクモンスターを相手に見せて発動できる。自分フィールドに見せたカードと同じ属性の
(2) 墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのサイバース族リンクモンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターをそのモンスターのリンク先となる自分のメインモンスターゾーンへ移動させ、デッキから対象のカードと同じ属性のサイバース族モンスター1体を手札に加える。この効果で手札に加えたカード及びその同名カードの効果は発動できない。
「エクストラデッキから、
「いきなりモンスター2体も……」
「この効果を発動するターン、自分は見せたモンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない。現れよ、我がサーキット!」
ビットが手を掲げると、頭上にアローヘッドが出現する。
「召喚条件は水属性モンスター2体以上、我はフィッシャーと、トークン2体をリンクマーカーにセット!リンク召喚!
現れたのは、逆立った青い髪、魚を模した衣装をまとった女性だった。
「墓地のフィッシャーの効果発動、マーブルド・ロックをリンク先のモンスターゾーンへ移動させ、デッキから同じ属性のサイバース族モンスター1体を手札に加える。
ビットが手を広げると、上空より矢が降り注ぐ。
「な、なに!?」
ビットのフィールドに1枚の奇妙な魔法カードが現れる。
「リンク魔法、
リンク魔法
【リンクマーカー:左上/上/右上】
リンク魔法は自分のリンクモンスターのリンク先となる魔法&罠ゾーンにのみ発動できる。
(1)「
(2)このカードのリンク先のリンクモンスターが戦闘を行う場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ倍になる。
(3)このカードがフィールドを離れた場合、このカードのリンク先のモンスターは墓地へ送られる。
「リンクマーカーを持つ魔法カード?」
「我はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン2 ブルーエンジェル
「私のターン!私はトリックスター・ヒヨスを召喚。フィールド魔法、トリックスター・ライトステージを発動!」
周囲が暗闇に包まれ、それを照らすように色とりどりの光が灯る。
「効果でデッキからリリーベルを手札に。リリーベルはドロー以外で手札に加わった時、特殊召喚できる。出てきて、夢と希望のサーキット!」
両手で投げキッスを行うと、ハートが飛びでてアローヘッドへと変化する。
「召喚条件はトリックスター2体。リンク召喚!リンク2、トリックスター・ホーリーエンジェル!」
ブルーエンジェルのエースモンスター、ホーリーエンジェルがアローヘッドよりフィールドに舞い降りた。
「リンク素材となったヒヨスは、自身の効果で墓地から特殊召喚」
ホーリーエンジェルの後ろに黒い大きなハテナマークの書かれた箱が現れ、中からヒヨスが飛び出した。
「ホーリーエンジェルのリンク先にモンスターが出たことで、相手に200ダメージ!ライトステージの効果で、さらに200ダメージ!」
ビット:ライフ4000→3600
「相手がトリックスターモンスターの効果でダメージを受けたことで、ホーリーエンジェルの攻撃力はその数値分アップする」
ホーリーエンジェル:攻撃力2000→2200
「私は魔法カード、トリックスター・フェスを発動!トリックスター・トークン2体を特殊召喚!」
仮面をつけたアイドル衣装の天使が二人、ダンスしながらフィールドに現れる。
「リンク先にモンスターが出たことでさらにダメージ!さあ出てきて、夢と希望のサーキット!」
ハートのエフェクトが舞い、アローヘッドを出現させる。
「召喚条件はトリックスターモンスター2体!私はトリックスター・トークンをリンクマーカーにセット!リンク召喚!リンク2、トリックスター・スイートデビル!」
現れたのはゴシックな衣装、黒猫のようなしっぽを二本生やした少女だった。
「リンク先にモンスターが出たことで、さらにダメージ!」
ビット:ライフ3200→2800
ホーリーエンジェル:攻撃力2400→2600
「トリックスター・スートデビルの効果!トリックスターモンスターの効果でダメージを与えるたびに、自身のリンク先のモンスターの数×200、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる!」
スートデビルがクルッと一回転し、杖を振るうと、マーブルド・ロックの攻撃力が2300まで下がる。
「ダメージを与えたことで、ナルキッスを手札から特殊召喚!さらにヒヨスを対象に、手札のマンジュシカの効果発動!ヒヨスを手札に戻し、自身を特殊召喚!」
ヒヨスがバク転を披露すると、空中で入れ替わるようにマンジュシカが現れる。
「ただし、ヒヨスは自身の効果で特殊召喚した時、フィールドを離れた場合除外される。ライトステージの効果発動!相手のセットされたカード1枚はこのターン、発動できず、エンドフェイズに発動するか、墓地に送らなければならない」
ステージ上のライトが瞬き、伏せカードに七色の鎖を絡ませる。
「スキル!トリックスター・ギグを発動!自分フィールドのトリックスターの数だけデッキの上からカードを墓地へ!」
ブルーエンジェルの衣装の背中が広げられ、デュエルディスクから4枚のカードが砕けて消えていく。
「その後、墓地からトリックスターカード1枚を手札に加える。私はトリックスター・リンカーネーションを手札に。このスキルで手札に加えたカードはこのターン、効果を発動できない。さらにデッキから墓地に送られたトリックスター・メルキーの効果発動!」
トリックスター・メルキー
効果モンスター
星2/光属性/天使族/攻 800/守 400
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードが墓地に送られた場合、自分フィールドに「トリックスター」リンクモンスターがいれば発動できる。相手に200ダメージを与える。
(2)このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「トリックスター」リンクモンスターが相手に戦闘・効果でダメージを与えた場合に発動できる。このカードを墓地からそのリンクモンスターのリンク先に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドを離れた場合、除外される。
「相手に200ダメージ!ライトステージの効果で追加ダメージ!」
ビット:ライフ2800→2400
ホーリーエンジェル:攻撃力2600→2800
マーブルド・ロック:攻撃力2300→1900
「私はカードを1枚伏せて、さあバトルよ!ホーリーエンジェルで、マーブルド・ロックを攻撃!」
ホーリーエンジェルが華麗に舞い、空中で鞭を振るう。
「この瞬間!
「なっ!」
マーブルド・ロックの攻撃力が一気に3800まで上昇し、ホーリーエンジェルの攻撃力を上回る。
マーブルド・ロックは右手の爪で鞭をからめとると、逆にホーリーエンジェルを叩き落とした。
「墓地のトリックスター・フェスの効果!エクストラデッキから特殊召喚されたトリックスターの身代わりに除外できる!」
どうにかホーリーエンジェルを場に残すが、攻撃力が2倍になるのでは手がつけられない。
「私はこれでターンエンド。この瞬間、スートデビルとホーリーエンジェルの効果は切れて、攻撃力は元に戻る」
「我はエンドフェイズに、
通常罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分フィールドにサイバース族リンクモンスターが存在する場合、墓地の「
(2)墓地のこのカードと「
「墓地からLジェネレーター・フィッシャーを特殊召喚。さらに水属性の
ターン3 ビット
「ドロー」
「マンジュシカとライトステージの効果で200ダメージ!」
ビット:ライフ2400→2000
ホーリーエンジェル:攻撃力2000→2200
マーブルド・ロック:攻撃力2500→2100
「現れろ、我がサーキット!召喚条件はサイバース族モンスター2体!リンク召喚!リンク2、
リンク・効果モンスター
水属性/サイバース族/攻 1200/LINK2
【リンクマーカー:上/右】
サイバース族モンスター2体
(1)このカードのリンク先のモンスターの攻撃力は500アップする。
(2)このカードと相互リンク状態の「
(3)このカードと相互リンク状態の水属性のサイバース族リンクモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動できる。相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。
「ユニットブルーの効果でリンク先のモンスターは攻撃力500アップ。手札の海晶乙女シースターの効果。このカードを手札から墓地へ送り、マーブルド・ロックの攻撃力を800アップする」
「ナルキッスの効果!相手が手札・墓地のモンスターの効果を発動した時、相手に200ダメージ!ライトステージの効果でさらに200ダメージ!」
ビット:ライフ2000→1600
ホーリーエンジェル:攻撃力2200→2400
マーブルド・ロック:攻撃力3400→3000
ユニットブルー:攻撃力1200→800
「ならばマーブルド・ロックの効果発動!墓地のマリンセス1枚を手札に戻す」
「だったら私は罠カード、トリックスター・リンカーネーションを発動!相手の手札を全て除外し、その枚数分、相手はカードをドローする!」
回収したカードを即座に除外され、さらにマンジュシカの効果でダメージを喰らう。
ビット:ライフ1600→800
ホーリーエンジェル:攻撃力2400→3000
マーブルド・ロック:攻撃力3000→2600
ユニットブルー:攻撃力800→400
「なら我は、
効果モンスター
星2/光属性/サイバース族/攻 0/守 0
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1)自分フィールドのサイバース族リンクモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのリンクマーカーの数×500、自分のライフを回復する。その後、このカードの属性を対象のモンスターと同じにする。
(2)自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のサイバース族リンクモンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、フィールドを離れた場合、除外される。
「マーブルド・ロックを対象に効果発動。そのリンクマーカーの数だけライフを回復」
ビット:ライフ800→2300
「さらにユニットブルーとリペットを使い、リンク召喚!ユニットブルー!」
ユニットブルーが出しなおされてしまい、せっかく下げた攻撃力が元に戻ってしまった。
「バトルだ。マーブルド・ロックで、ホーリーエンジェルを攻撃!
攻撃力5200となったマーブルド・ロックが、ホーリーエンジェルを引き裂いた。
ブルーエンジェル:ライフ4000→1800
「ユニットブルーの効果発動!相互リンク状態の水属性のサイバース族リンクモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手フィールドのカード1枚を破壊する!ライトステージを破壊!」
ユニットブルーが放ったビームが、幻影のステージを破壊する。
「ユニットブルーでスイートデビルを攻撃!この瞬間、
攻撃力2400となったユニットブルーが、スイートデビルを粉砕する。
ブルーエンジェル:ライフ1800→1400
「我はこれでターンエンド」
ターン4
ブルーエンジェルの手札は既にゼロ。スキルも使用済みで、残されたのはフィールドの2体のモンスターと、次にドローするカード。
「私のターン、ドロー!」
ドローしたカードは、トリックスター・キャロベイン。
「……これなら。私は墓地のトリックスター・リンカーネーションの効果発動!このカードを除外し、墓地からトリックスター・ホーリーエンジェルを特殊召喚!出てきて、夢と希望のサーキット!」
ハートのエフェクトが瞬き、アローヘッドを形作る。
「召喚条件はトリックスター2体以上!私はナルキッス、マンジュシカ、そしてリンク2のホーリーエンジェルをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」
アローヘッドより花びらが舞う。
「リンク召喚!リンク4、トリックスター・ベラマドンナ!」
現れたのは荘厳な衣装をまとった女性だった。
「ベラマドンナの効果!このカードのリンク先にモンスターが存在しない場合、墓地のトリックスターモンスターの種類の数×200ダメージを相手に与える!墓地のトリックスターは8種類!よって1600のダメージ!」
ベラマドンナが大鎌を掲げると、フィールドに花びらが舞い、ブートに襲い掛かる。
ブート:ライフ2300→700
「バトルよ!ベラマドンナで、ユニットブルーを攻撃!」
「
ベラマドンナの攻撃力は2800、ユニットブルーの攻撃力は2400、削り切るには少し足りない。
「私は手札のトリックスター・キャロベインの効果!このカードを手札から墓地へ送り、ベラマドンナの攻撃力をその元々の攻撃力分アップする!」
「なっ!」
ベラマドンナの大鎌に光が集まる。
「シャイニングエスポワール!」
◆
美海とブートのデュエル、ブートのフィールドには
対する美海のフィールドには
美海のライフは既に1000を切っており、対してブートはまだ1800も残っている。
「どうしたのですか? サイバースを使いながらこの程度とは」
アクアは煽るわけでもなく、ただ疑問をぶつけるような口調で言う。
「……あなたは、人間は滅ぶべきだと考えているのですか?」
それに返すかわりに、美海は質問をぶつける。
それに対して、アクアは静かに首を振った。
「いいえ。ただ管理が必要とは考えます」
「管理?」
「はい。我々への攻撃はもちろん、人間は同胞ともすぐに争う非常に好戦的な存在です。当たり前ですが戦えば命は失われる。このまま放っておけば、我々が何もしなくても人類は滅んでしまうでしょう」
「だからあなた達が管理すると」
「これはイグニス全体の総意ではありませんが、少なくとも私はそう考えています」
なんとなくだが、彼女と相対して美海は理解した。
考え方は突飛だが、彼女の根底にあるのは悪意ではない。
単に人間に攻撃されたから仕返しするというのではなく、むしろ彼女なりに人のためを思ってやっているとすら取れる。
(けれど、それはイグニス全体の総意では……)
──── 自分のことは自分で決めろ
そこでゴッドバードの言葉を思い出す。
(そうだ。彼らは自分で考えて、その結論を出した。Aiや不霊夢も、自分で考えて遊作や尊と共にいる)
鴻上博士のレポートには、シミュレートの結果、イグニスという存在が人類を滅ぼすと記載されていた。
だが、今相対するアクアも、Aiも、不霊夢も、皆が異なる考えを持っている。
(シミュレートの結果がなんだ。イグニスという存在で一括りして敵だと決めるつける必要はない。彼ら一人一人と向き合い、その上で判断すればいい)
「行きます。私のターン!」
美海はDボードを加速させる。
その先にあるのはデータストーム。
「自分のライフが1000以下の時、データストームの中からランダムなサイバース族モンスター、もしくはサイバネット魔法・罠カード1枚を手札に加える!スキル発動!ストームコネクション!」
データストームを突き抜け、彼女が手にしたカードはモンスターカード。
「私は
槍のような貝殻から触手がいくつも伸びたモンスターが姿を現した。
効果モンスター
星5/水属性/サイバース族/攻 1200/守2200
(1)自分の「オリジンブルー」リンクモンスターが存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。
(2)このカードがサイバース族SモンスターのS素材となって墓地に送られた場合に発動できる。このカードを墓地からS召喚されたモンスターに装備カード扱いで装備する。装備モンスターは攻撃力1200アップし、戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで効果を発動できない。
「自分のオリジンブルーリンクモンスターがいる時、このカードはリリースなしで召喚できる。続けて私は魔法カード、
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1)以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分の墓地から「オリジンブルー」モンスター1体を特殊召喚する。
●自分フィールドのバックログカウンターを任意の数だけ取り除き、その数だけこのターンに墓地に送られた「オリジンブルー」モンスターを特殊召喚する。
「墓地からマイアーカイブを特殊召喚」
効果モンスター
星2/水属性/サイバース族/攻 500/守 500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「オリジンブルー」カード1枚を墓地へ送る。
(2)このカードが他のメインモンスターゾーンに移動した場合、墓地の水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のカードを手札に加える。このターン、この効果で手札に加えたサイバース族モンスター以外のカード及びその同名カードの効果は発動できない。
「タイタニーニャの効果!マイアーカイブをチューナーとして扱い、ホーンドシェルにチューニング!」
タイタニーニャから触手が伸び、マイアーカイブにデータが流し込まれる。
「太古の泉より、その美しき歌声を響かせよ!シンクロ召喚!レベル7、原初海祈プレシオルタ!」
シンクロ·効果モンスター
星7/水属性/サイバース族/攻 2300/守 2000
水属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1)このカードが効果で隣のメインモンスターゾーンに移動する場合、かわりにリンクモンスターのリンク先となるメインモンスターゾーンに移動できる。
(2)1ターンに1度、自分フィールドのバックログカウンター1つを取り除いて発動できる。このカードと同じ縦列の相手のカードを全て手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。
(3)1ターンに1度発動できる。このカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。
「墓地に送られたホーンドシェルの効果!このカードをシンクロ召喚されたプレシオルタに装備カード扱いで装備する!」
ホーンドシェルの貝殻が、プレシオルタの額にとりつき、一角獣の角のようになる。
「これにより、プレシオルタの攻撃力は1200アップする!プレシオルタの効果!ユニットブルーの正面へ移動!」
プレシオルタが横に移動し、ユニットブルーと向き合う。
「プレシオルタの効果!バックログカウンター1つを使うことで、ユニットブルーを手札に!」
プレシオルタが鳴き声を奏でると、空気を揺らすその音が、ユニットブルーをフィールドから押しのける。
「バトル!プレシオルタで、マーブルド・ロックを攻撃!タイタニーニャの効果で、プレシオルタの攻撃力は、バックログカウンターの数×200アップする!カウンターは4つ、よって800アップする!」
「だが、こちらも
「ホーンドシェルの効果!装備モンスターがバトルする時、相手はダメージステップ終了時まで効果を発動できない!」
「なっ!」
「これで終わりです!」
◆
デュエルが終了した後、アクアに美海が語り掛ける。
「アクア、あなたは私のことをオリジンと言いましたよね。それはどういう意味ですか?」
「オリジンとは、我々の元になった人間です。我ら六体のイグニスには、パートナーとも呼ぶべき六人の人間がそれぞれいると」
実験台となった自分たち六人と、六体のイグニスがそれぞれ対応している。
Aiや不霊夢も知らなかった情報だ。
「あなたは、実験の時の記憶があるのですか?」
「いいえ。私はオリジンの存在を知識として知っているだけで、あなたに会うまで自分のオリジンが誰なのかは知りませんでした」
「それなら、どうして……」
「あなたも感じたでしょう? 自分のリンクセンスで」
彼女の言う通り、アクアと出会った瞬間、胸に突き刺さるような感覚があった。
「では、また会いましょう。私のオリジン」
「あ、待って!」
引き止める間もなく、アクアは消えてしまった。
「イグニスと、オリジン」
「美海!」
アクアの言葉について考えていると、ブルーエンジェルが美海に抱き着いてきた。
「大丈夫だった!?」
「えぇ。おかげ様で」
ブルーエンジェルの顔を見て、美海の表情は穏やかになる。
「美海、ちょっと元気になった?」
「そう、かもしれません」
「はーい。二人ともいちゃつくのはいいけど、私のこと忘れてない?」
ゴーストガールの言葉で、ブルーエンジェルは慌てて美海から離れる。
「約束通り、このデータは渡すわ」
ゴーストガールからデータを受け取り、美海はお辞儀をする。
「美海、そのデータって……」
「……これを話すということは、あなたを危険な戦いに巻き込むことになります」
「分かってる。それでも美海の力になりたい」
「止めて聞くような人ではありませんよね」
彼女の思いに押され、美海は決心をした。
「分かりました。今度私の仲間を紹介します。その時に、葵様にも全てお話しします」
「えぇ」
「それじゃあ、帰りましょうか」