遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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遊作達、デュエル部のメンバーがただ駄弁るだけ


第16話:Friends Meeting

 その日、遊作は他のデュエル部のメンバーと一緒に財前邸のリビングに集まっていた。

 

「すげー金持ちの家だ」

「わー恵まれた人の匂いがするー」

 

 島と切花が各々感想を述べるのを横目に、美海は頭を抱えていた。

 

(どうしてこうなった……)

 

 美海は葵をレポート探しの仲間に加えるために、この会を開いたのだが、デュエル部のメンバーで懇親会をしようという建前で集めたせいか、島と切花まで参加することになってしまった。

 

「どうするの? もういっそこの二人も誘っちゃう?」

 

 尊は遊作と美海を近くに集めて、小声でそんなことを聞くが、

 

「いや駄目だろ」

「駄目ですね」

 

 二人は同時に否定した。

 

「夢乃はまだ疑いが晴れたわけじゃない。それに、島は戦力にならないだろう」

「酷いね……」

「あの二人は、隠し事とかできそうなタイプではありません」

「まあそうだね。なんとか折を見て、帰ってもらおう」

 

 三人の方針が固まったところで、懇親会に戻る。

 

「そういや、藤木、この間のLINK TVは見たか?」

 

 LINK TV。その名の通りLINK VRAINSに関する内容を報道するネットの情報番組だ。

 

「見てない」

「おいおい。前回のはカリスマデュエリスト人気投票発表の回だぞ? これ見ないでLINK VRAINSは語れないだろ」

 

 そう言うと、島はタブレットで番組のキャプチャを見せてくれた。

 そこにはランキングの一位から二十位まで、カリスマデュエリストの名前がずらりと並んでいた。

 

「今回も一位はソウルバーナーか。やっぱ男女両方に人気があるのはデカいよな」

 

 遊作は尊の方をチラッと見る。

 彼はまんざらでもなさそうに頭をかいている。

 

「で、二位はブルーエンジェル。この前のプレイメーカー偽物騒動で好感度を上げたのが要因だな」

「ああ。SNSで情報発信してプレイメーカーの無実を証明してくれたんだよな……財前、なんで嬉しそうなんだ?」

 

 今ところ、まだ葵がブルーエンジェルだとは知らない遊作は、満足気な表情でいる彼女に対して疑問を投げかけた。

 

「ふぁ、ファンとして嬉しいだけ」

「そうか……」

 

 特に興味もなかったので、遊作はランキング表に視線を戻す。

 

「まあ一位になれなかったのは、やっぱあの噂のせいだな」

「噂?」

「ほら、ブルーエンジェルはプレイメーカーと付き合ってるじゃないかって────」

「つ、付き合ってない!」

 

 突然葵は立ち上がって、テーブルを思いっきり叩いた。

 

「お、落ち着けよ財前。あ、さてはお前……」

 

 島のしたり顔に、葵は正体がバレたのではないかと、顔を強張らせるが、

 

「ブルーエンジェルのガチ恋勢だろ」

 

 直後、彼の的外れな発言にホッと胸をなでおろした。

 

「ガチ恋って、なんだ?」

「藤木はそんなことも知らねぇのか。推しのことが好きすぎて、自分が付き合いたいって思うやつのことだよ。だからこうやって、恋人がいるかもって噂が立てば、ガチ恋勢からの票がなくなるんだよ」

 

 島のおかげでその場を乗り切れたが、遊作達に対して変な印象がついてしまったことに、葵は落ち込んでいた。

 

「で、三位は前回二位のミネルヴァか。まあ元々ブルーエンジェルとは接戦だったしな」

「確か、デュエルランキングでも、ブルーエンジェルとはずっと上位争いをしてるんだよね」

「そうそう。穂村はよく知ってるな」

 

 同じカリスマデュエリストの尊は、その辺りの事情にも詳しかった。

 

「で、Go鬼塚は十一位か。前回八位だったから順位落ちてるな。デュエルの方はずっと一位キープしてんだけどなぁ」

「やっぱりビジュアルですかね」

「ビジュアルね」

「ビジュアルだね」

「いや、Go鬼塚はかっこいいでしょ!」

 

 女子三人からの心無い言葉に、事務所の後輩でもある尊が反論する。

 

「あのファイトスタイル、鍛え上げられた肉体、丁寧なファン対応にエンタメ精神!男なら誰もが憧れるだろ!」

 

 熱くなりすぎて、尊は立ち上がって熱弁を始める。

 

「落ち着けよ。お前、そんなキャラだったか?」

「ちょっと素が出てますね」

「そういえば、デュエルの方は、前シーズンは誰が二位だったんだ?」

 

 遊作は一位がGo鬼塚、三位がブルーエンジェルだとは記憶してるが、元々そういった情報に疎い彼は、詳しいランキングについては覚えていなかった。

 

「ああ。二位はカゲロウってデュエリストだ」

「カゲロウ、ここには名前はないな」

 

 二位ともなれば相当な実力者だが、人気投票の一位から二十位までの間に、その名前は見当たらなかった。

 

「カゲロウはヒールキャラだからな。卑怯な戦法が有名で、あんま評判がよくないんだよな」

 

 島はタブレットで画像を見せてくれた。

 忍者のような黒づくめの衣装に、顔は白いペストマスクで覆われた確かに悪そうなデュエリストだ。

 

「まあダークなところがカッコいいって、一部熱狂的なファンはいるらしいな。ちなみにヒロイックなGo鬼塚とは犬猿の仲らしい」

「そうなのか?」

 

 隣にいた尊に、遊作は小声で尋ねる。

 すると、尊は彼の耳元に顔を近づける。

 

「カゲロウさん、中の人はめっちゃいい人だよ。この前もご飯連れてってもらったし」

「なるほど」

「卑怯な戦法って言っても、あくまでそう見えるってだけで、ちゃんとルールは守ってデュエルしてるし、鬼塚さんともキャラ付けのために敵対関係みたいな設定でやってるけど、本当はすごく仲いいんだ」

 

 人はアバター(みかけ)にはよらないらしい。

 

「ちなみに四位はミネルヴァな」

 

 今度は女性の画像に切り替わった。

 長い黒髪を後ろで結び、剣道の道着のような薄いピンクと藍色の衣装を身にまとった、かわいいというよりかはカッコいい女性だった。

 

「使うデッキは閃刀姫、この二人のデュエルのログあるけど見るか?」

 

 みんなが頷いたのを見て、島は動画を再生した。

 

 ◆

 

 LINK VRAINSセントラルエリア、その上空をかけるデータストリームの上で、ミネルヴァとカゲロウが、Dボードに乗って駆けていた。

 

「さぁ始まりました!ランキングデュエル!注目の対戦カードは、前シーズン二位のカゲロウ、ヴァァァァァサァスッッ!四位の我らが姫!ミネルヴァ!」

 

 実況の紹介と共に、上空に二人の顔がアップで映し出される。

 

「ヒヒヒッ、今日のお姫様か。どの料理してやろうか」

「悪に与するデュエリストめ。ここであなたは倒します」

 

「「スピードデュエル!」」

 

ターン1 カゲロウ

 

「俺のターン、俺はスケール1の黄昏の忍者-ジョウゲンと、スケール10の黄昏の忍者-カゲンでペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 カゲロウの両脇に、デジタル数字の1と10が表示され、それらを繋ぐように巨大な輪が宙に描かれる。

 

「これでレベル2から9のモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、我が闇の尖兵達よ!」

 

 輪の中で振り子が揺れ、二体のモンスターが飛び出した。

 

「土遁忍者グラン、水遁忍者ウォート!」

 

土遁忍者グラン

スピリット・ペンデュラム・効果モンスター

星4/地属性/戦士族/攻 1400/守 2000

【Pスケール:赤2/青2】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分のスピリット・モンスターが手札に戻った場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

【モンスター効果】

このカードはP召喚でしか特殊召喚できない。

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードが召喚・P召喚・リバースに成功した場合に発動できる。自分のデッキの上から3枚を見る。その中から「忍者」モンスター、または「忍法」カード1枚を手札に加える。その後、その中の「忍者」Pモンスター全てをEXデッキに表側表示で加え、残りを墓地へ送る。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は「忍者」モンスターしか特殊召喚できない。

(2)このカードが召喚・特殊召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。その後、自分フィールドに変わり身トークン(星1・闇属性・戦士族・攻/守0)1体を特殊召喚できる

 

水遁忍者ウォート

スピリット・効果モンスター

スピリット・ペンデュラム・効果モンスター

星3/水属性/戦士族/攻 1600/守 900

【Pスケール:赤8/青8】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分のスピリット・モンスターが直接攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで除外する。

【モンスター効果】

このカードはP召喚でしか特殊召喚できない。

(1)このカードが召喚・P召喚・リバースに成功した場合、数字を1つ宣言して発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで公開する。そのカードが宣言した数字と同じレベルのモンスターカードだった場合、それを除外する。

(2)このカードが召喚・特殊召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。その後、自分フィールドに変わり身トークン(星1・闇属性・戦士族・攻/守0)1体を特殊召喚できる。

 

「グランの効果で、俺はデッキの上3枚を見て、水遁忍者ウォートを手札に加える。そしてウォートの効果で、数字を1つ宣言し、相手の手札をランダムに1枚選ぶ。それが選んだ数字と同じレベルのモンスターカードなら除外する。選ぶのは4だ!」

 

 ミネルヴァの手札1枚が公開される。

 公開されたのは閃刀姫-レイ、レベル4のモンスターだ。

 

「来たぜ!そいつは除外だ!」

「くっ!」

 

 ミネルヴァのカードが砕けて、手札から消えていく。

 

「早速炸裂!卑怯卑劣なハンデス戦法!本来なら成功率は低いが、ミネルヴァのデッキをよく知るこの男なら、数字をピッタリ当てることも容易だぁっ!」

 

 ミネルヴァのファンからはブーイングが飛ぶが、カゲロウは構わず続ける。

 

「現れろ、影より出でたるサーキット!」

 

 カゲロウが印を結ぶと、黒い靄のようなエフェクトが起きて、彼の行く先にアローヘッドを出現させる。

 

「召喚条件は、カード名の異なる戦士族モンスター2体!俺はウォートとグランをリンクマーカーにセット!リンク召喚!リンク2、電影忍者ウラギリ!」

 

電影忍者ウラギリ

リンク・効果モンスター

闇属性/戦士族/攻撃 1800/LINK2

【リンクマーカー:左/右】

カード名の異なる戦士族モンスター2体

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2)自分・相手ターンに発動できる。このカードを次のエンドフェイズまで除外し、EXデッキの表側表示の「忍者」Pモンスター1体を手札に加える。この効果を適用した相手ターン中、自分が受ける戦闘ダメージは1度だけ0になる。

 

「俺はさらにモンスターをセット。これでターンエンドだ」

 

ターン2

 

「早速キーとなるモンスターは落としてやったが、まだやれるかい? お姫様」

「その程度で折れるようでは、正義は貫けません」

 

 カゲロウの挑発に対し、ミネルヴァは毅然とした態度で応じる。

 

「私は魔法カード、閃刀起動-エンゲージを発動!デッキから閃刀カード、閃刀姫-レイを手札に加えます。そしてレイを召喚」

 

 白髪の少女が、刀を携えて現れた。

 

「くくくっ、サーチを引いていたか」

「現れよ、悪を切り裂くサーキット!」

 

 ミネルヴァが居合い斬りのようなモーションを取ると、空間が切れてアローヘッドが出現する。

 

「召喚条件は炎属性以外の閃刀姫モンスター1体!リンク召喚!リンク1、閃刀姫-カガリ!」

 

 レイがアローヘッドを潜り抜けると、その体に赤い鎧が装着された。

 

「カガリの効果で墓地のエンゲージを回収。魔法カード、閃刀術式-ベクタードブラストを発動。お互いのデッキの上から2枚を墓地へ。閃刀術式シザーズクロスを発動!墓地から閃刀姫-レイを回収。さらに閃刀術式アフターバーナーを発動!ウラギリを破壊!」

 

 カガリが刀を構えると、そこから炎が噴き出し、ウラギリに向けて放たれる。

 

「俺はウラギリの効果を発動!このカードをエンドフェイズまで除外し、EXデッキの表側表示の「忍者」Pモンスター1体を手札に加える!」

 

 だが、ウラギリは影に紛れて消え、魔法カードの効果をかわす。

 

「さすがは忍者!まともに戦う気はないぞ!」

「ならば!回収した閃刀起動-エンゲージを発動!デッキからウィドウアンカーを手札に加え、さらに墓地に魔法カード3枚以上なので1枚ドロー」

 

 次々と魔法カードを使い、デッキを回していく。

 

「1000ライフを払い、魔法カード!コズミックサイクロン!ペンデュラムゾーンのカゲンを除外!」

 

 光の竜巻が起こり、ペンデュラムスケールの片方を飲み込み、砕く。

 

「現れよ、悪を切り裂くサーキット!召喚条件は水属性以外の閃刀姫1体!モードチェンジ!カガリをシズクへ!」

 

 閃刀姫-カガリがアローヘッドを潜り抜けると、装着していた鎧が外され、かわりに四枚の盾を装備した青の鎧が装着された。

 

「ターンエンド。閃刀姫-シズクの効果、墓地に存在するカード以外の閃刀カード1枚を手札に加える」

「エンドフェイズに、ウラギリは俺のフィールドに戻る」

 

 黒い竜巻が起き、その中からウラギリが舞い戻った。

 

ターン3

 

「セットされた水遁忍者ウォートを反転召喚。そしてスケール8の水遁忍者ウォートをペンデュラムスケールにセッティング。ペンデュラム召喚!火遁忍者バーナス!土遁忍者グラン!」

 

火遁忍者バーナス

スピリット・効果モンスター

星5/炎属性/戦士族/攻 2300/守 800

【Pスケール:赤2/青2】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードを発動したターンの自分のメインフェイズに発動できる。デッキから「忍者」Pモンスター1体を手札に加える。

【モンスター効果】

このカードはP召喚以外で特殊召喚できない。

(1)このカードが召喚・P召喚・リバースに成功した場合に発動できる。このターン、自分フィールドのスピリット・モンスター全ては攻撃力500アップし、相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

(2) このカードが召喚・特殊召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。その後、自分フィールドに変わり身トークン(星1・闇属性・戦士族・攻/守0)1体を特殊召喚できる。

 

「バーナスの効果で、このターン、俺のスピリット・モンスターの攻撃力は500アップし、魔法・罠カードの効果を受けない!」

「ならばその効果にチェーンして、セットされた閃刀機-ウィンドアンカーを発動!バーナスの効果を無効!さらに墓地の魔法カードが3枚以上なら、そのままコントロールも奪う!」

 

 シズクの鎧から、ワイヤーに繋がれた三本爪のアームが伸びて、バーナスの体を掴み、ミネルヴァのフィールドへ移動させる。

 

「シズクの効果で、そちらのモンスターの攻撃力は墓地の魔法カードの数×100ダウンする。攻撃力は届かない」

「チッ、俺はこれでターンエンド。エンドフェイズに、スピリット・モンスターは手札に戻る。そして、こいつらは変わり身トークンをフィールドに特殊召喚できる」

 

 三体の忍者が手札に戻り、かわりに彼らの顔が書かれた藁人形が2つ、フィールドに守備表示で現れる。

 

ターン4

 

「リンク召喚!閃刀姫-カガリ!」

 

 シズクが再びアローヘッドをくぐり、カガリへとモードチェンジする。

 

「墓地からエンゲージを回収し、そのまま発動!デッキから閃術兵器-H.A.M.Pを手札に。そしてH.A.M.Pはモンスター1体をリリースすることで、そのモンスターの持ち主のフィールドに特殊召喚できる。ウラギリをリリース!」

 

 上空から巨大な機械の塊が落ちてきて、ウラギリが押しつぶされる。

 

「これはチェーンブロックを挟まない。つまりウラギリの効果でかわすことはできない」

「くっ……」

「さらに閃刀姫-ロゼを召喚。現れよ、悪を切り裂くサーキット!召喚条件は閃刀姫を含むモンスター2体!リンク召喚!」

 

 アローヘッドにカガリとロゼが吸い込まれ、その奥で赤い光が灯る。

 

「リンク2、閃刀姫-ジーク!」

 

 現れたのは女性のドレスを模したような黒い兵装だ。

 

「ジークの効果発動!H.A.M.Pを次のエンドフェイズまで除外する!」

 

 ジークが刀を振るうと、空間に亀裂が走り、H.A.M.Pが次元の彼方へ吸い込まれる。

 

「装備魔法、閃刀機構-ハーキュリーベースをジークに装備。そしてフィールド魔法、閃刀空域-エリアゼロを発動し、そのままジークの効果で破壊!破壊したことで、ジークは攻撃力1000アップ、さらにエリアゼロの効果で、デッキからレイを特殊召喚!」

 

「これはすごい!鮮やかなカード捌きで、巻き返していくぞ!」

 

「現れよ、悪を切り裂くサーキット!リンク召喚!リンク1、閃刀姫-カガリ!」

 

 レイが再びカガリへとモードチェンジ。一気に攻撃態勢に入る。

 

「スキル発動!一刀両断!このターン、自分フィールドのモンスター全てに貫通効果を与える!バトル!閃刀姫-カガリで、変わり身トークンを攻撃!」

 

 カガリの一閃で、藁人形を焼き尽くし、さらにカゲロウにダメージを与える。

 

「ジークよ!変わり身トークンを攻撃!」

「スキル発動!闇違え!攻撃を無効にして、1枚ドロー!」

 

 藁人形は黒い靄に包まれて、目標を見失ったジークの攻撃は外れてしまう。

 

「装備魔法、ハーキュリーベースの効果で、ジークは2回攻撃できる。行け!ジーク!」

 

 スキルは使用済み、今度は攻撃をかわすことはできない。

 ジークの刀の一振りが、藁人形とカゲロウを襲う。

 

「ぐわぁぁっ!」

 

 派手にDボードから落下するカゲロウ。

 だが、次の瞬間、そのアバターは消失し、地上に姿を現していた。

 

「流石はカゲロウ、抜け目ないな」

 

 ミネルヴァも地上に降りて、カゲロウに右手を差し出す。

 

「良きデュエルだった」

 

 カゲロウもそれに答えるように、無言で手を差し出した。

 

 ◆

 

「いやー流石プロデュエリスト!凄かったな!」

 

 映像が終わると、みんなから感嘆の声が漏れた。

 

「あ、そろそろ飲み物取ってきますね」

 

 みんなのグラスが空になったのを見て、美海は台所へ向かう。

 

「ねぇねぇ島君、プレイメーカーのログはないの?」

 

 切花が島にべったりくっついてタブレットを覗き込む。

 

「え、えっと、プレイメーカーは、ログが少ないんだよ。なんか誰かが削除してるみたいで」

 

 島は鼻息を荒くしてタブレットを操作しながら解説する。

 彼の言う通り、プレイメーカーに関するログや遊作や草薙が削除している。もちろん全てを消せるわけではないし、個人の端末に保存されてしまったものはどうにもならないが。

 

「あ、これはハノイの騎士とのデュエルだな」

 

 それは以前のファウストとのデュエルだった。

 

『スキル発動!ストームアクセス!』

「プレイメーカーが初めてスキルを使った時の映像だな」

「このストームアクセスってスキルってさ、他の人は使ってないよね。そもそもスピードデュエルのスキルって、どうやって決まるの?」

「スキルカードってのが、LINK VRAINSで買えるんだよ。そいつをデッキに登録しておくことで、スピードデュエル中にスキルが使えるんだ」

 

 島がタブレットを操作して、スキルカードの一覧を見せてくれた。

 

「お、ストームアクセスもちゃんとあるね。でも、入手方法が分からないねぇ」

 

 画面上には『Storm Access(proto):現在は取り扱いされておりません』と表示されている。

 

「初期の頃に作られた没データか?」

 

 島がそう考察するのをよそに、遊作は立ち上がって一度席を離れる。

 

「Ai、あのスキルはお前が作ったのか?」

「半分正解だな。未完成だったものがLINK VRAINS内にデータとして残ってたんだ。そいつを俺達イグニスが完成させたのさ」

「じゃあ、ゴッドバードのスキル、ストームエクシーズチェンジや、美海のスキル、ストームコネクションは……」

「多分、未完成のストームアクセスを改造して無理やり作ったんじゃねぇの?」

 

 美海の方はSOLから貰ったのでSOL製だとして、ゴッドバードはわざわざ没データを掘り起こして、自力で作ったということだろうか。

 

「俺の見たところ、どっちのスキルもストームアクセスに比べればかなり不安定なプログラムだな」

「後で美海にも詳しく聞いてみるか……」

 

 そんなことを考えていると、美海が大皿に盛りつけられた大量のクッキーを飲み物と一緒に運んできた。

 

「皆さん、クッキーを焼いたのですが、いかがですか?」

「わーい食べる食べる」

 

 切花が真っ先にクッキーを手に取る。

 それに釣られて、他のみんなもクッキーに手を付け始めた。

 

「ただいま」

 

 ちょうどその時、晃が帰ってきた。

 最愛の兄の声を聴いて、葵はすぐさま立ち上がって彼を迎えに行く。

 

「おかえりなさい。お兄様。今日は早かったのね」

「ああ。まあ夜にまた出ることになるが……君は」

 

 晃はリビングにいた遊作の姿を見つけて、露骨に嫌そうな顔を見せる。

 

「どうも」

「妹はやらんぞ」

 

 普通に挨拶をしただけなのに、そんな返しが飛んできた。

 これ以上会話しようとするのは止めようと、遊作は黙々とクッキーを頬張る。

 

「ん?」

 

 そこで、晃の視線が切花の方へと向いた。

 

「君は、どこかで会ったような……」

「え、えー、ボク知らなーい」

「いや、だが……」

「あ、お兄さん、もしかしてナンパ~? もう妹の前で止めなよ~」

「ち、違う!違うんだ!葵!」

 

 葵はそっぽを向いて、見せつけるように遊作の隣に座る。

 弁明しようとしつこく妹に絡もうとする彼に、美海はその背後を取る。

 

「晃様、お召し物をこちらへ」

「あ、ああ」

 

彼からスーツの上着を預かり、手際よく畳む。

 

「シャワーの用意もできております」

「待ってくれ美海。私はまだ……」

「晃様、ご帰宅なされたのでしたら、まずは体を清められるのがよいかと。さあこちらへ」

 

 使用人として、彼をシャワー室へ自然な流れで連れて行った。

 

 ◆

 

 学校の保健室で、響子は明かりも点けずに一人、パソコンに向き合って何かを操作していた。

 

「あと少し……」

 

 その時、不意に部屋に明かりが点る。

 

「響子先生、まだ帰らないんですか?」

「っ!」

 

 慌てて振り返ると、入り口に立っていたのはエマだった。

 

「え、えぇ、まだ仕事が残ってて……」

 

 響子は慌ててパソコンの画面を切り替える。

 その動きを怪しんでか、エマは彼女の後ろに回ってパソコンの画面をのぞき込む。

 

 だが、映っているのは生徒のカルテだけで怪しいものは見つからない。

 さすがにマウスを奪い取って操作するわけにもいかないので、エマはパソコンから離れる。

 

「あんまり根を詰めすぎるのもよくありませんよ」

「えぇ。気を付けます」

 

 エマはそれだけ言って、保健室を去った。

 

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