遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
草薙のキッチンカーで、遊作達はハノイの塔の解析を行っていた。
「あの塔にアバターが吸い込まれている……」
ゴーストガールと同じように、消滅するアバターの姿がモニターに映っている。
「人だけじゃない警備AIや建物、あらゆるデータがハノイの塔に吸い込まれている」
「集まったデータは、この上の輪っかみたいなところに集められてるな」
「一体何のために……」
すると、美海のデュエルディスクから通知音が鳴る。
「これは……」
「どうした?」
「見てください」
美海はデュエルディスクを操作して、何かのデータを草薙の端末に送信する。
「っ……ハノイの塔のデータか!」
画面に表示された図面のようなものを見て、草薙は驚く。
「おそらく、ゴーストガールがデュエル中に解析したものでしょう。抜け目ない人です」
「……なるほど、ハノイのやつ、とんでもないことを企んでたんだな」
「草薙さん、どういうことだ?」
「この塔の輪っかは、データが一定以上集まると、収束した高密度なデータコアをネットワーク上に放出する」
「何が起きるんですか?」
「おそらく、電子機器はこの高密度データに耐え切れず、ネットワークに繋がったあらゆるデータが消去される。そして、この高密度データで連鎖的に大規模な機器がダウンし、その時に発生したパルスが増幅し、伝播していく。それにより、ネットに繋がっていない機器まで破壊される」
「それじゃあ……」
現代はあらゆるものが電子機器によって制御されている。
医療、交通、発電施設、その他、生活に必要なあらゆるものがめちゃくちゃになってしまう。
「計算によると、データが限界まで溜まるまで、後6時間、それまでに塔を停止させる必要がある」
「じゃあ、すぐにでも行かないと」
「待て」
今にも飛び出しそうな尊を、草薙が引き止める。
「LINK VRAINS全体のデータの流れがおかしくなっている。そのせいでデータストリームがあの塔の周囲しか吹いていない」
「つまりDボードは使えない」
塔へ行くには、塔の近くまで歩いていくしかない。
「加えて、下手に近付けば塔に吸い込まれる。ただ、塔がデータを吸収する範囲にはかなりムラがある」
「なら、それを解析して突入ルートを見つける」
「そういうことだ。時間もない。手分けしてやるぞ」
◆
同刻、サイバース世界では、ライトニング達、イグニス四人が一つの部屋に集まっていた。
「ハノイの塔、奴が遺したプログラムか」
ライトニングは、モニターに映るLINK VRAINSの様子を見ながら舌打ちをする。
「この規模のものを、数日やそこらで用意できるはずがない。十年前に既に準備していたのか……」
「どうすんの? このままじゃ僕達も消えちゃうよ?」
「近づけば我々とてタダでは済まない。それに、LINK VRAINSは外部から完全に切断された。ギリギリまで隔離することで、邪魔をされないようにするためだろう」
ライトニングはため息を吐く。
「静観するしかあるまい」
◆
SOLテクノロジー、セキュリティ部。
晃を含む社員達が忙しく動き回っていた。
「すぐにLINK VRAINSのユーザーをログアウトさせろ!」
「できません!制御が完全に奪われています!」
「くっ……」
既にLINK VRAINSの管理者権限すら奪われており、LINK VRAINS全体がログアウト不可状態となっている。
「現在、LINK VRAINSはログイン不能。こちらからの干渉を全く受け付けません」
「っ! 財前部長!」
すると、手前の席に座っていた女性社員が声を上げる。
「LINK VRAINSに新規のログインがありました!」
「なにっ!」
モニターにLINK VRAINSの様子が映し出される。
そこにいたのは、プレイメーカー、ソウルバーナー、美海、ブルーエンジェルの四人だった。
◆
「まさか、保健室の端末を踏み台端末に使えばログインできたなんて……」
ログインできないことが分かった後、ゴーストガールが遺したデータの中に、そのパソコンを示す端末名とIPアドレスが記されてのを見つけた。
ダメもとで学校を訪れ、試してみたところ、四人はログインに成功したのだ。
「でも、どうして響子先生の端末から……」
「今はそんなことを考えている暇はない。タイムリミットまで既に五時間を切っている」
プレイメーカーは虚空を指でなぞると、空間に地図が投影される。
「ルートは三つ、俺達はそれぞれのルートから塔を目指す」
全員が頷く。
「じゃあ、またハノイの塔で」
「どうかご無事で」
ソウルバーナー、美海がそれぞれ別の方向を選択し、走り出す。
プレイメーカーとブルーエンジェルもお互いに顔を見合わせて頷き、自分達の担当のルートを走る。
しばらく進んだ先で、
ドォォンッ!
道が崩れてしまい、プレイメーカーが断層の向かいに落ちてしまった。
「プレイメーカー!」
「俺のことはいい!先へ行け!」
「で、でも……」
「時間がない」
ブルーエンジェルは躊躇いながらも、前を向き直り、先を急ぐ。
一人になったブルーエンジェルは、わき目も振らずに全力で走る。
そして塔までの距離が残り半分ほどまで近づいたところで、目の前に一人の少年が立ちふさがった。
「やぁ、ブルーエンジェル」
「あなたは……」
ジャックナイフは子供のように純粋な、そう見える偽りの笑顔を浮かべる。
「ここから先に進みたかったら、分かるよね?」
「……えぇ」
二人はデュエルディスクを構える。
「「デュエル!」」
◆
同刻、ソウルバーナーの前に立ちふさがったのは、ハノイの制服を着た赤髪の女性、バイラだった。
「初めまして、私はバイラ。ハノイの騎士のセカンドよ」
「我々の相手はお嬢さんか」
「お嬢さんなんて歳じゃないわ」
不霊夢の言葉をバイラは一蹴する。
「早く始めましょう。時間もないわ」
「上等だ。いくぞ不霊夢!」
「おう」
「「デュエル!」」
◆
同刻、美海も同じく、自分の前に現れた男と睨み合う。
「私の相手はあなたですか」
「えぇ。光栄ですよ」
スペクターは下卑た笑みを浮かべる。
一度勝った相手とはいえ、否、だからこそ油断はできない。
彼の恐ろしさは身をもって味わっている。
「前回のリベンジをさせていただきますよ」
「負けません」
「「デュエル!」」
◆
ソウルバーナーとバイラのデュエル、先攻はバイラから。
「デッキから影のデッキ破壊ウイルスを墓地へ送ることで、インフェリアス・カテーテルを特殊召喚」
チューブで全身をぐるぐる巻きにしたナースキャップの少女が現れた。
インフェリアス・カテーテル
効果モンスター
星2/闇属性/天使族/攻 1200/守 0
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分のデッキから「ウイルス」罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分は「インフェリアス」モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
(2)このカードが魔法・罠カードの発動のためにリリースされた場合に発動できる。デッキから「インフェリアス・カテーテル」以外の「インフェリアス」モンスター1体を手札に加える。
「魔法カード、
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1)自分フィールドの「インフェリアス」モンスター1体をリリースして発動できる。自分フィールドに、インフェリアス・トークン(星1・闇属性・天使族・攻/守0)3体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分は「インフェリアス」モンスターしか特殊召喚できず、そのトークンを素材としてリンク召喚されたモンスターは、リンク素材にできない。
「カテーテルをリリースし、インフェリアス・トークン3体を特殊召喚」
カテーテルに巻き付いたチューブがほどけ、その体がドロドロに溶ける。
カテーテルだった液体がぴちゃぴちゃと音を立てて跳ね、真っ白い人形が三つ出来上がった。
「カテーテルがリリースされたことで、デッキからインフェリアス・ゾンデを手札に。現れろ、我らの未来回路!リンク召喚!リンク3、インフェリアス・サージカルクーパー!」
現れたのは両腕に血の滲んだ包帯を巻いた女性、ナース服を着ているが、白衣の天使と呼ぶには禍々しい巨大な鋏を携えている。
インフェリアス・サージカルクーパー
リンク・効果モンスター
闇属性/天使族/攻 2400/LINK 3
【リンクマーカー:右/下/左下】
天使族モンスター3体
このカード名の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)1ターンに1度、自分の墓地の「ウイルス」罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを自分フィールドにセットする。
(2)自分の「ウイルス」罠カードを発動するために、自分フィールドのモンスターをリリースする場合、このカードのリンク先の自分のモンスターをかわりにリリースできる。
(3)相手がドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えた場合に発動できる。相手はそのカードを公開する。その後、公開したカードを破壊できる効果を持つ「デッキ破壊ウイルス」通常罠カードを自分のデッキから墓地へ送ることができる。送ったら、そのカードを破壊する。
「さらにインフェリアス・ゾンデを通常召喚」
インフェリアス・ゾンデ
効果モンスター
星1/闇属性/天使族/攻 700/守 0
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「インフェリアス」カード、または「ウイルス」罠カード1枚を手札に加える。
(2)自分の魔法・罠カードの効果を発動するために、このカードがリリースされた場合に発動できる。墓地から「インフェリアス・ゾンデ」以外のレベル4以下の「インフェリアス」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターがフィールドに表側表示で存在する限り、自分は「インフェリアス」モンスターしか特殊召喚できない。
「デッキからインフェリアス・パンデミックコードを手札に加える。さらにサージカルクーパーのリンク先に、インフェリアス・シリンジを特殊召喚」
両足が注射器となった天使が、サージカルクーパーのリンク先に現れる。
インフェリアス・シリンジ
効果モンスター
星1/闇属性/天使族/攻 0/守 2000
このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。
(1)このカードは自分の「インフェリアス」リンクモンスターのリンク先に手札から特殊召喚できる。
(2)このカードが「インフェリアス」リンクモンスターとリンク状態である間、このカードは攻撃対象にならず、自分の永続罠は相手の効果でフィールドを離れない。
「サージカルクーパーの効果発動!先程墓地へ送った影のデッキ破壊ウイルスをセット。さらにカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン2
「相手のターン開始時、私はインフェリアス・ゾンデをリリースすることで、永続
バイラの背後に、巨大なメーターのついたシリンダーが現れる。
ゾンデの体が溶けて、緑色の液体となってシリンダーの中に流し込まれる。
インフェリアス・パンデミックコード
永続罠
このカードはルール上「ウイルス」カードとして扱う。
(1)自分フィールドの闇属性モンスター1体をリリースしてこのカードを発動できる。
(2)自分の「デッキ破壊ウイルス」通常罠カードが発動した場合に発動できる。このカードにウイルスカウンター1つを置く。このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分はそのカードと同名カードの発動によって、「インフェリアス・パンデミックコード」にカウンターを置けない。この効果以外で、自分はこのカードにカウンターを置けない。
(3)ウイルスカウンターが4つ以上置かれているこのカードを墓地へ送って発動できる。相手の手札・デッキのカードを全て破壊する。
「このカードはデッキ破壊ウイルスを発動するごとに、ウイルスカウンターを置く。1度カウンターが置かれたら、同名カードの発動ではカウンターを置けない。そして、カウンターが4つ溜まったら、あなたの手札とデッキのカードを全て破壊する」
「つまり、ウイルスカードを4種類使われればこちらの負けというわけか」
不霊夢は冷静に状況を分析する。
「ゾンデがウイルス罠発動のためにリリースされたことで、私の墓地からインフェリアス・カテーテルを特殊召喚」
地面から無数のチューブが生え、その中に浮かびあがるようにしてカテーテルが蘇り、チューブがその裸体に巻き付く。
「じゃあそろそろ行くぜ!俺のターン!俺は手札の
「その効果にチェーンして、影のデッキ破壊ウイルスを発動!」
カテーテルの体が砕け、そこから大粒の細菌がまき散らされる。
「相手の手札、及びこれから3ターンの間にドローするあなたのカードの中から、守備力1500以下のモンスターを全て破壊する」
本来であれば、影のデッキ破壊ウイルスを発動するために必要なのは守備力2000以上のモンスター。しかし、サージカルクーパーはウイルス
「くっ……」
ソウルバーナーの手札が公開される。
彼の手札にある守備力1500以下のモンスターは、
「そのモンスターを全て破壊よ」
「くそっ!」
一気に三枚もの手札が、データとなって砕け散る。
「デッキ破壊ウイルスが発動したことで、インフェリアス・パンデミックコードにウイルスカウンターを置く」
バイラの背後のシリンダーに液体が注がれ、巨大なメーターが針を進める。
「だったら、墓地のフォクシーの効果発動!手札のファルコを墓地へ送り、このカードを墓地から特殊召喚!」
青い狐型のモンスターが地面から出てきて、その尾から火を噴く。
「効果で相手の表側表示の魔法・
「シリンジの効果!」
だが、その炎の前にシリンジが立ちふさがる。
「このカードがインフェリアスのリンク状態の時、自分の永続
シリンジが右足の注射器で、炎を受け止めた。
「だったら、現れろ、未来を変えるサーキット!」
ソウルバーナーが右手を掲げると、その手から炎が渦を巻いて空へと放たれる。
「召喚条件はレベル4以下のサイバース族モンスター1体!リンク召喚!」
炎の中からアローヘッドが現れ、フォクシーがそこへ飛び込む。
「リンク1、転生炎獣ベイルリンクス!」
ヤマネコ型のモンスターが空中で一回転して降りてきた。
「その効果で、デッキから
「私はサージカルクーパーの効果を発動!相手がドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えた時、そのカードを破壊できるデッキ破壊ウイルスをデッキから墓地へ送ることで、そのカードを破壊する!」
バイラが闇のデッキ破壊ウイルスを墓地へ送る。
すると、サージカルクーパーが鋏を広げながらソウルバーナーへ近づき、手札に加えたカードを切断した。
「くっ、俺はなら墓地の
二体のモンスターがアローヘッドで炎となる。
「リンク召喚!
現れたのは、燃え滾る爪を持つ人狼だ。
「墓地のスピニーの効果発動!このカードを墓地から特殊召喚!リンク先にモンスターが特殊召喚されたことで、墓地からミーアを手札に加える。現れろ、未来を変えるサーキット!召喚条件は炎属性・効果モンスター2体以上!リンク召喚!
三度現れたアローヘッドより、ヒートライオが降臨した。
「あの状況から、エースモンスターの召喚までこぎつけるなんて……」
ソウルバーナーのデッキの展開力に、バイラは舌を巻いた。
だが、対するソウルバーナーと不霊夢もここからどうすべきか考えていた。
「ヒートライオを出したはいいが」
「ああ。サンクチュアリがない」
ヒートライオの素の攻撃力は2300。バイラのサージカルクーパーの攻撃力2400には微妙に届かない。だがヒートライオの持つ、相手モンスターの攻撃力を変化させる効果も、転生リンク召喚していなければ使えない。
転生リンク召喚には、サラマングレイトを同名モンスター1体でのリンク召喚を可能とする
「今はこのまま攻めるしかない。バトルだ!ヒートライオで、インフェリアス・シリンジを攻撃!」
ヒートライオがシリンジを倒すが、守備表示なのでダメージは入らない。
「俺はこれでターンエンド」
ターン3
「インフェリアス・ゾンデを召喚。効果でデッキから魔のデッキ破壊ウイルスを手札に。バトルよ!サージカルクーパーで、ヒートライオを攻撃!」
サージカルクーパーの鋏がヒートライオの体を切断せんと挟み込む
「墓地のベイルリンクスの効果!このカードを墓地から除外することで、破壊を無効にする!」
ヒートライオの両腕に炎が灯り、腕を強引に広げて鋏を砕く。
「けどダメージは受けてもらう!」
砕けた鉄片がソウルバーナーへ降り注ぐ。
ソウルバーナー:ライフ4000→3900
「私はサージカルクーパーの効果発動!墓地から闇のデッキ破壊ウイルスをセット。さらにカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン4
「俺のターン!」
ソウルバーナーがドローしたカードは、
対象のカードではないため、影のデッキ破壊ウイルスで破壊されない。
「ゾンデをリリースして、
ドローした
「これであなたの手札、そしてこの後3ターンの間にドローする魔法カードも破壊される。そしてリリースされたゾンデの効果発動。墓地からシリンジを特殊召喚」
シリンジが蘇り、再び永続
さらにインフェリアス・パンデミックコードにカウンターが溜まり、また1つメーターの針が進む。
「さらに
インフェクション・ゾーン
永続罠
このカードはルール上「ウイルス」カードとして扱う。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分の「ウイルス」通常罠カードの及び効果テキストに「ウイルス」
(2)自分の「インフェリアス」リンクモンスター1体を対象として発動できる。自分の墓地から「インフェリアス」モンスター1体を、そのモンスターのリンク先に守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの表示形式は変更できず、効果は無効化される。
「なら俺は墓地のJジャガーの効果発動!墓地のサンライトウルフをエクストラデッキに戻し、ヒートライオのリンク先に特殊召喚!」
地面から炎が噴き上げ、中からJジャガーが飛び出した。
「バトルだ!ヒートライオで、シリンジを攻撃!」
ヒートライオがシリンジを打ち取る。
「私はインフェクション・ゾーンの効果を発動!墓地からインフェリアス・ゾンデを、効果を無効にして特殊召喚」
「これじゃあキリがねぇ……」
何度倒してもモンスターは蘇り、ウイルスカードによって彼の手札は奪われ、徐々に攻め手を失っていく。
「諦めるな。勝機は必ずある」
「そうは言ってもなぁ」
相棒の言葉を受けても、ソウルバーナーの表情から不安は消えない。
既にバイラの切り札、インフェリアス・パンデミックコードのカウンターは2つ。後2つで効果が起動する。見えているからこそ、そのカウントダウンは精神的な重圧となって彼を襲う。
「俺はこれでターンエンド」
ターン5
「ドロー……次のターンで終わらせる」
バイラの顔つきが険しくなる。
「私はデッキから死のデッキ破壊ウイルスを墓地へ送り、インフェリアス・カテーテルを特殊召喚」
裸のナースキャップの少女が現れ、その体に地面から伸びたチューブが巻き付く。
「サージカルクーパーで、ヒートライオを攻撃!」
身代わりになるモンスターはいない。
ヒートライオは両側から圧迫する刃に耐え切れず、今度こそ切断された。
ソウルバーナー:3900→3800
「メイン2、サージカルクーパーの効果発動!墓地から死のデッキ破壊ウイルスをセット。さらにカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン6
「相手ターン開始時、私は
ゾンデの体が弾けて、その体からウイルスをまき散らす。
「相手の手札から攻撃力1500以上のモンスターを破壊!さらに相手のデッキから3枚、攻撃力1500以上のモンスターを破壊!」
「残念だったな。俺の手札に攻撃力1500以上はいない!」
公開された手札を見ても、バイラは表情を変えない。
既に彼女のプランは成っているからだ。
「インフェリアス・パンデミックコードにウイルスカウンターを置く。リリースされたゾンデの効果で、墓地からシリンジを特殊召喚。さらに
「4枚目!?」
最後のウイルスカードが発動する。
「カテーテルをリリースし、あなたの手札から、攻撃力1500以下のモンスターを全て破壊!」
ソウルバーナーの残りの手札が消し飛ぶ。
そしてインフェリアス・パンデミックコードのシリンダーが液体で満たされ、メーターは遂に限界値を示した。
「永続
ソウルバーナーのデュエルディスクからカードが飛散し、その全てがウイルスに犯されて、ノイズのエフェクトを吐きながら次々に消えていく。
「これであなたの負けよ」
バイラは勝ちを確信して、ソウルバーナーから眼を反らす。
そして最後の1枚が消えるその瞬間、ソウルバーナーと不霊夢は笑った。
「俺は墓地に送られた転生炎獣ファルコの効果発動!墓地から
「なっ!」
デッキから発動した墓地効果で、ソウルバーナーのキーカードであるフィールド魔法がセットされてしまった。
「勝ちを焦ったな。君の切り札が、我々の切り札を引き寄せてしまったとうわけだ」
不霊夢は自信満々に言うに、ソウルバーナーはジト目を向ける。
「でもお前、ファルコの効果に気付いてなかっただろ?」
「むっ……バレていたか」
不霊夢は頭を掻く。
「け、けど、あなたの場にモンスターは1体だけ、手札もないのにそれでどうやって……」
「
アルマジロ型のモンスターが、炎に包まれながらフィールドに転がってくる。
「現れろ!未来を変えるサーキット!リンク召喚!
「延命する気?」
「んなもん必要ねぇ!俺はサンライトウルフの効果!リンク先にモンスターが特殊召喚された時、墓地からウルヴィーを手札に加える。さらにウルヴィーの効果!墓地から手札に加えられた時、さらに墓地から炎属性モンスターを手札に加える!俺は
赤い子竜が現れる。
効果モンスター
星2/炎属性/サイバース族/攻 500/守 300
(1)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「サラマングレイト」カード1枚を手札に加える。この効果発動後、ターン終了時まで、自分はサイバース族モンスターしか特殊召喚できない。
「その効果で、デッキからさっき戻したスピニーを手札に。さらに手札のウルヴィーを墓地へ送り、墓地からフォクシーを特殊召喚。現れろ!未来を変えるサーキット!」
アローヘッドへ、サンライトウルフとドラーシュが飛び込む。
「リンク召喚!サンライトウルフ!」
アローヘッドから出てきたのは、先程リンク素材になったモンスターと同じサンライトウルフ。
「サンライトウルフを出しなおした……まさか!?」
「同名モンスターを素材としたサンライトウルフの効果発動!墓地からサラマングレイト魔法カード、
サンライトウルフとフォクシーがアローヘッドへ飛び込むと、アローヘッドから炎が噴き上げる。
「リンク召喚!
上空に魔法陣が展開され、ヒートライオは一筋の炎となって魔法陣に吸い込まれる。
「逆巻く炎よ、浄化の力で、ヒートライオに真なる力を呼び覚ませ!転生リンク召喚!」
魔法陣から先程より勢いの増した炎が噴き上がる。
「生まれ変われ!炎の平原を駆ける百獣の王!
真の力が呼び覚まされ、その背と両腕、そして王の証たるタテガミから炎が噴き出す。
「俺は装備魔法、
「私は手札のインフェリアス・リリーの効果発動!」
インフェリアス・リリー
効果モンスター
星3/闇属性/天使族/攻 400/守 1500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードが手札に存在し、自分フィールドの「インフェリアス」リンクモンスターが相手の効果の対象になった場合に発動できる。このカードをそのモンスターのリンク先に特殊召喚し、その効果を無効にする。
(2)このカードとリンク状態の「インフェリアス」リンクモンスターの攻撃宣言時、自分の手札・フィールドから「ウイルス」罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。そのモンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ元々の攻撃力の倍になる。
「ヒートライオの効果を無効にする!」
「なら俺は手札のスピニーの効果発動!このカードを手札から墓地へ送り、ヒートライオの攻撃力を500アップする。」
「手札もデッキも全て破壊したのに……」
リソースを全て削り切ったはずなのに、いつの間にか追い詰められている。
その状況にバイラは悔しそうに拳を握りしめる。
「バトルだ!ヒートライオで、インフェリアス・リリーを攻撃!」
ヒートライオが右腕を掲げると、その爪が大きく伸びる。
「
爪はリリーを貫き、さらにバイラへと届く。
バイラ:ライフ4000→2700
「さらに
バイラ:2700→1900
「サージカルクーパーを攻撃!」
突貫するヒートライオ。
サージカルクーパーは鋏で迎え撃つ。
爪と鋏がぶつかりあい、火花を散らす。
「行け!ヒートライオ!ブレイジングクロ―!」
鋏を弾き飛ばし、サージカルクーパーの胴体を貫いた。
バイラ:ライフ1900→1500
「とどめだ!行け!Jジャガー!ダイレクトアタック!」
◆
デュエルが終了し、項垂れるバイラを横目に、ソウルバーナーは走り去った。
「負けた……でも、これでよかったのよね」
心のどこかで、こうなることを期待していた。
だからバイラ、もとい滝響子は、自分のパソコンを踏み台に使うことで、閉じられたLINK VRAINSにログインできるようにしていた。
誰かが気付いて、もしかすれば、自分を、リボルバーを止めてくれるかもしれない。
「……とんだ背信行為ね」
リボルバーを裏切るような真似をしていたことに、バイラは自嘲した。
「ん?」
自らのアバターにノイズが走る。
見ると、右手からアバターが徐々に砕けて、赤い破片となって風に流されていく。
「……リボルバー様」
自分のリーダーの顔を思い浮かべて、彼女の体は静かに消滅した。