遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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お待たせしました。
ブルーエンジェルこと葵ちゃんのメイン回です。


第3話:Center is maine

 LINK VRAINS内、データストリームに乗って二人のデュエリストがデュエルを繰り広げていた。

 

「これで止めよ!トリックスター・ホーリーエンジェルでダイレクトアタック!」

 

 ブルーエンジェルのモンスターが、敵のデュエルを吹き飛ばす。

 

「WINNER!ブルーエンジェル!LINKVRAINSのアイドルが今日も華麗に決めたぞっ!」

 

 彼女のデュエルに、多くのギャラリーが歓声を上げる。

 

「はい!今日のライブはおしまい!みんなー、次のライブまでいい子にしてるんだぞ♪」

 

 カメラに向かってウィンクを決めて、ブルーエンジェルは去っていった。

 

 ◆

 

「はぁ~」

 

 ログアウトするやいなや、葵は机に伏して深いため息を吐いた。

 

「どうしたのですか? デュエルは無事勝てたのに」

「そうよ。勝ったわよ。なのに」

 

 葵はタブレットを美海に見せる。

 それはSNSのタイムラインだ。ブルーエンジェルのデュエルの直後であるにも関わらず、皆の話題はプレイメーカー一色だった。

 

「なるほど。彼に人気を取られているのが気に入らないと」

「そうよ。Go鬼塚に勝ったせいで、ますます注目を集めちゃって。ほんと、あのゴリラ余計なことしたわね」

「口がよろしくないですよ」

 

 その時、葵のデュエルディスクから着信音がなる。

 

「お兄様からだわ」

 

 葵はすぐに電話に出る。

 

「お兄様、どうしたの?」

「いや、一つ聞きたいんだが、お前、LINKVRAINSにはよく行くのか?」

「「!!」」

 

 まさかブルーエンジェルの正体がバレたのかと、二人は冷や汗を流す。

 

「え、えーっと、たまに行くくらいだけど」

「そうか。最近ハノイの騎士の動きが活発になってきているから、しばらくログインは控えた方がいい」

「……それだけ?」

「それだけだが、何かあるのか?」

「ううん。何でもないわ。お兄様」

「そうか。じゃあくれぐれも気を付けるんだぞ」

 

 そう言って晃は通話を切った。

 

「焦った~」

「心臓が止まるかと思いましたよ……」

 

 ブルーエンジェルとしての活動を、万一にでも晃に知られれば、妹を溺愛する彼がどのような反応をするかは想像に難くない。

 

「まあ実の妹が『次のライブまでいい子にしてるんだぞ♪』とか言ってたら、卒倒しますよね。胸盛ってるし」

「胸は関係ないでしょ!」

 

 美海に弄られて、葵は頬を膨らませる。

 

「このままじゃ駄目!こうなったら私がプレイメーカーに勝つしかない」

「プレイメーカーに勝つといっても、そもそも彼とどうやってデュエルするつもりですか? Go鬼塚のようにハノイに化けます? いくら何でも、同じ手に二度も引っ掛かるとは思えませんが」

「考えがあるわ」

 

 すると彼女はものすごい早さでSNSに書き込みを始める。

 

「何をしているんですか?」

「フォロワーに呼び掛けてるのよ。私の20万人のファンの力でプレイメーカーを探してもらう」

「えげつない……」

 

 早速大量のリプやDMがブルーエンジェルのアカウントに届く。

 

「全く、学校でもそれくらい愛想よくしていれば、友達くらいすぐにできるものを」

 

 葵の様子に、美海は小さくため息を吐いた。

 

 ◆

 

 同刻、草薙のキッチンカーにて、

 

「見ろよ。ブルーエンジェルがSNSでプレイメーカーを探してるぜ」

 

 Aiがデュエルディスクの中から、モニターに映るタイムラインを覗いてニヤニヤしている。

 

「放っておいても大丈夫だろう。いつも通りログは消してあるし、そう簡単に補足されないよ」

 

 草薙はコンソールを叩いて画面を切り替える。

 

「今はこっちだな」

 

 映ったのはある女子の顔写真だった。

 

「財前葵か」

「ああ。お前と同じクラスで、SOLテクノロジーのセキュリティ部長、財前晃の妹だ。それからもう一人」

 

 別の女子の顔がホップアップする。

 

「湊美海。財前家の使用人で、SOLテクノロジーの傭兵デュエリストも務めているらしい」

「湊、美海……」

 

 その名前に、遊作が怪訝な顔を見せた。

 

「どうした?」

「いや、何でもない」

「そうか……まあ湊美海に関して情報がほとんどない。何せSOLテクノロジーに雇われてるといっても、彼女のデュエル記録が残っていない。デッキの内容すら不明だ」

「というか、どうしてSOLテクノロジーを調べてるんだ?」

 

 Aiの疑問に答えたのは意外にも遊作だった。

 

「この前のGo鬼塚からのデュエル、あれはSOLテクノロジーが裏で糸を引いていた。加えて前回の大規模スキャン。奴らがお前を欲しがっているのは間違いない」

「やーん。Aiちゃんモテモテ~」

 

 ふざけているAiを無視して、遊作は画面を操作する。

 

「この二人に接触して、SOLの情報を聞き出す」

「いや、でも遊作には難しいんじゃない?」

「どうしてだ。草薙さん」

「だってお前が女子と話すところなんて、想像できないもんな」

「確かに!」

 

 Aiと草薙が大笑いするのを、遊作は不機嫌そうに見ていた。

 

 ◆

 

 翌日の放課後、遊作はすぐには帰らずに学校の校舎を探索していた。

 

「それで、どうやって財前葵に話しかけるんだ?」

「彼女はデュエル部の部員らしい。デュエル部に体験入部させてもらえば、話すきっかけもできるだろう」

「ここだけ聞くと、好きな女の子に近付こうとしてるみたいだな」

 

 Aiの感想は無視して、遊作はデュエル部の門を叩いた。

 

 ガラッ

 

 扉を開けて出てきたのは、見知った少年だった。

 

「おお藤木じゃねぇか」

「……島、なぜお前が」

「なんだよ。俺がデュエル部員で悪いかよ」

 

 まだ名前を憶えて数日の関係だが、既にこの島直樹という男に対して、腐れ縁のようなものを遊作は感じていた。

 

「お前、ひょっとしてデュエル部に入りたいのか?」

「今日は見学だけだ」

「じゃあ俺がデュエル教えてやろうか」

「結構だ」

 

 とりあえず部室に入ると、中の人間を見渡す。

 部員はザッとみたところ男女合わせて6人。しかし、その中に財前葵の姿は見当たらなかった。

 

「財前はいないのか?」

「なんだ。ひょっとして藤木もこの新型デュエルディスクが目当てなのか?」

「何故そこでそれが出てくる」

「うちの部は財前のコネで、新型デュエルディスクをいち早く手に入れられるんだよ」

「私に何か用?」

 

 すると、葵も遅れて部室に入ってきた。

 

「藤木くん、あなたもデュエリストだったのね」

「ああ」

「……」

「……」

「いやお前ら喋れよ!」

 

 島に突っ込まれても、二人はこれといって話すことがないのか、黙ったままだった。

 

「遊作、お前やっぱコミュ障だろ……」

 

 Aiは他の人間には聞こえないように小さく呟いた。

 

 ◆

 

 その後もコミュ障(ゆうさく)コミュ障(あおい)の会話が弾むことはなく、島に間に入ってもらうことで、どうにか会話らしい会話をするだけで、有益な情報はほとんど得られなかった。

 

「やれやれ、遊作だけじゃなく、財前葵までコミュ障だなんて、これじゃ仲良くなるのに何年かかんだよ」

「俺は別に仲良くなりたいわけじゃない」

「仲良くなんなきゃ、情報なんて聞きだせねぇだろ。そういえば、プレイメーカー捜索隊の方だけど」

「なんだそれは?」

「ブルーエンジェルが、自分のファンを使ってお前を探させてただろ。今日ブルーエンジェルがLINK VRAINS内でもプレイメーカー捜索を呼びかけるらしいぞ」

 

 Aiがデュエルディスクを操作して、ホログラムウィンドウを投影する。

 

『はーいみんなー!今日は集まってくれてありがとう!』

 

 LINK VRAINSの特設ステージ、そこで彼女は集まった多くのギャラリーに向けて手を振っている。

 

『私、ブルーエンジェルは、プレイメーカーとデュエルして勝つことを宣言しまーす』

 

 彼女の宣言に、会場の人々は沸き立つ。

 

『でもプレイメーカーは神出鬼没、だからみんなに、プレイメーカーを探して欲しいの』

 

 上目遣いで、媚びるような視線を観客、そして画面の向こうの視聴者に送る。

 それにすっかり乗せられたギャラリーは、我こそはと次々にプレイメーカー捜索に名乗りを上げ始めた。

 

「人間ってのは単純だな」

「……一応、警戒はしておいた方がいいか」

 

 ◆

 

 同刻、LINK VRAINS内のあるエリア、特殊なプロテクトによって隔離された場所でブルーエンジェルの中継を眺める一人の少年がいた。

 

 年齢は遊作と同じくらいか───アバターの姿など参考にはならないが───エメラルド色の長めの髪、顔の右半分を覆うほど刺青を入れている。

 

「くくくっ、面白そうなことやってんなぁ」

 

 彼は嬉しそうに笑う。

 

「雑魚ハッカー共じゃ頼りねぇ。俺も一枚噛ませてもらうか」

 

 恍惚とした不気味な笑みを浮かべ、キーボードを操作し始めた。

 

 ◆

 

 翌朝、遊作の目を覚ましたのはアラームではなく、草薙からの電話だった。

 

「どうしたんだ? こんな朝早くに」

『大変だ!お前のアカウントが特定されかかっている!』

「なんだと!?」

 

 遊作はすぐに自室のPCを起動して状況を確認する。

 SNS上で、遊作の通っている学校、LINK VRAINSにログインしている時間帯などの個人情報が晒されていた。

 

「おいおいヤバいんじゃねぇの?」

「落ち着け。見ろ、この情報はあくまでこいつの推測だ。だが……」

 

 ここまでの精度で情報を集められるハッカーが紛れていたとなれば、正体がバレるのも時間の問題だろう。

 

「……仕方ない」

 

 遊作はデュエルディスクを装着する。

 

「イントゥザヴレインズ!」

 

 ◆

 

 プレイメーカーがログインすると、待ち構えるようにブルーエンジェルが建物の屋根の上に立っていた。

 

「来たわね。プレイメーカー」

 

 プレイメーカーに向けてビシッと指さす。

 

「このデュエルであなたを倒して、私はLINK VRAINSの頂点に立つわ」

「その前に、俺が勝ったら、俺の正体を詮索するのを止めさせろ」

「えぇ。約束するわ」

「それで、レギュレーションはどうする?」

「当然スピードデュエル」

「分かった」

 

 二人はDボードを出現させ、流れるデータストリームに飛び乗る。

 

「「スピードデュエル」」

 

 ◆

 

 その頃、葵の部屋では、

 

「全く、こんなに派手にやって。SOLに目をつけられたら晃様にも……」

 

 ぶつぶつと文句を言いながら、美海は葵のために隠蔽工作を行う。

 

「とりあえずIPを変えて、それからログも消去、念のためダミーも……ん?」

 

 そこでふと、パソコンに映る情報から彼女はあることに気付いた。

 その瞬間、彼女はSNSの書き込みを急いで削除した後、自分のデュエルディスクを装着した。

 

「イントゥザヴレインズ!」

 

 ◆

 

ターン1 ブルーエンジェル

 

「私はフィールド魔法、トリックスター・ライトステージを発動!」

 

 周囲が暗闇に染まる。

 

「なんだ?」

「さぁ、これが私達のステージよ!」

 

 暗闇に光が灯る。

 赤、緑、黄、色とりどりのペンライトの光がLINK VRAINSを飾った。

 

「ライトステージの発動時の処理で、デッキからトリックスター・リリーベルを手札に加え、その効果で自身を特殊召喚!」

 

 ステージに巨大なベルを振りながら、赤いツインテールの少女が降り立った。

 

「続けて、トリックスター・キャンディナを召喚。効果でデッキからトリックスター・マンジュシカを手札に。そしてマンジュシカの効果で自身を特殊召喚し、キャンディナを手札に戻す」

 

 キャンディナがクルッと宙返りすると、入れ替わるようにマンジュシカが現れる。

 

魔法(マジック)カード!トリックスター・ハルシネイションを発動!手札からトリックスター・キャンディナを、効果を無効にして特殊召喚」

 

 キャンディナが再び現れて、彼女のモンスターゾーンが可憐な少女たちで埋められる。

 

トリックスター・ハルシネイション

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1)手札から「トリックスター」モンスター1体を、効果を無効にして特殊召喚する。その後、お互いデッキから1枚ドローする。この効果で特殊召喚したモンスターは「トリックスター」リンクモンスター以外のリンク素材にできない。

(2)「トリックスター」リンクモンスターが戦闘で破壊される場合、かわりに墓地のこのカードを除外できる。

 

「ここからがトリックスター真骨頂!さらにトリックスター・ハルシネイションの効果でお互い1枚ドロー!」

「お、手札貰えたじゃん。ラッキー」

「ここでトリックスター・マンジュシカの効果!相手がカードを手札に加えた時、相手に200ダメージを与える!」

 

 マンジュシカがレイピアを振ると、プレイメーカーに衝撃波が飛ぶ。

 

「ライトステージの効果!トリックスターが相手にダメージを与えた時、さらに200のダメージ!」

 

 プレイメーカー:ライフ4000→3600

 

「うぇ、アンラッキー」

 

 Aiは立て続けのダメージに顔をしかめる。

 

「バーンデッキか」

「まだまだこれからよ!出てきて。夢と希望のサーキット!」

 

 ブルーエンジェルがウィンクすると、彼女の視線の先にアローヘッドが出現する。

 

「召喚条件はトリックスター2体!」

 

 ステージ上を彩るペンライトが青一色に染まる。

 キャンディナとリリーベルの2体がお辞儀をして飛び、アローヘッドに吸い込まれた。

 

「リンク召喚!出てきてリンク2!トリックスター・ホーリーエンジェル!」

 

 現れたのは白く長い髪と翼をはためせる美しい女性型のモンスターだ。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン2 プレイメーカー

 

「俺のターン、ドロー!」

「この瞬間、マンジュシカの効果で相手に200ダメージ!」

 

ライフ3600→3400

 

「ライトステージの効果でさらに200ダメージ!」

「ぐっ!」

 

ライフ3400→3200

 

「さらに(トラップ)カード!トリックスター・リンカーネイションを発動!相手の手札を全て除外して、その枚数分、相手はカードをドローする!」

 

 プレイメーカーの手札がデータの破片となって消える。

 

「さあカードを6枚ドローしなさい」

「……」

 

 プレイメーカーがカードを引く。

 

「マンジュシカの効果で、手札に加えた枚数×200のダメージ!ライトステージの効果と合わせて1400ダメージ!」

 

 ライフ3200→1800

 

「トリックスター・ホーリーエンジェルの効果!「トリックスター」モンスターの効果でダメージを与えた時、ターン終了時ま、その数値分、自身の攻撃力をアップする!」

「ホーリーエンジェルの攻撃力が3200になっちまったぞ。どうすんだ?」

「突破するしかない。俺は自分フィールドにモンスターが存在しない時、このカードは手札から特殊召喚できる。こいリンクスレイヤー!」

 

 リンクスレイヤーが剣を構える。

 

「続けてバックアップ・セクレタリーを特殊召喚。さらにサイバース・コンバーターを特殊召喚!このカードは自分フィールドのモンスターがサイバース族のみの場合、手札から特殊召喚できる」

「モンスター3体、来るわね」

「現れろ。未来を導くサーキット!」

 

 データストリームが渦を巻き、プレイメーカーの進む先にアローヘッドが出現する。

 

「召喚条件は効果モンスター2体以上、リンク召喚!来いデコード・トーカー」

 

 青い鎧をまとった電子の騎士が、プレイメーカーの傍らに降り立った。

 

「プレイメーカーのエースモンスター」

「俺はディフェクト・コンパイラーを通常召喚」

 

 ディフェクト・コンパイラーがデコード・トーカーのリンス先に出てきたことで、デコード・トーカーの攻撃力は2800となる。

 

「俺は手札のユニット・コンバーターの効果発動!」

 

ユニット・コンバーター

効果モンスター

星6/水属性/サイバース族/攻 1800/守 2500

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか使用できない。

(1)相手のリンクモンスター以外のメインモンスターゾーンのモンスター1体をリリースして、このカードを相手フィールドに守備表示で特殊召喚できる。

(2)このカードのコントローラーは1ターンに1度しかリンク召喚できない。

 

「トリックスター・マンジュシカをリリースして、このカードを相手フィールドに特殊召喚!」

 

 マンジュシカの生け贄に、デコード・トーカーの正面、つまりそのリンク先に特殊召喚される。

 

「デコード・トーカーはリンク先のモンスターの数×500攻撃力がアップする!パワーインテグレーション!」

「これで攻撃力は3300。ホーリーエンジェルを上回ったぜ」

「バトルだ!デコード・トーカーでホーリーエンジェルを攻撃!」

「墓地のトリックスター・リンカーネイションの効果発動!このカードを墓地から除外して、墓地のトリックスターを特殊召喚!」

 

 ペンライトが赤に染まり、フィールドに花びらが舞う。赤い花吹雪の中からマンジュシカが姿を現した。

 

「トリックスター・ホーリーエンジェルの効果!リンク先にモンスターが特殊召喚された時、相手に200ダメージを与える!」

 

 これを食らえば、ホーリーエンジェルの攻撃力は再び上がり、デコード・トーカーを上回ってしまう。

 

「俺はディフェクト・コンパイラーの効果!効果ダメージを受ける時、かわりにこのカードにディフェクト・カウンターを置く!」

 

 ホーリーエンジェルから放たれた魔法の弾丸は、ディフェクト・コンパイラーの発生させたバリアに吸い込まれる。

 

「さらにディフェクト・コンパイラーの効果発動!ディフェクト・カウンターを使うことで、デコード・トーカーの攻撃力を800アップする!」

 

 デコード・トーカーの攻撃力は4100まで上昇する。

 

 その一撃を防ぐことはできず、ホーリーエンジェルはやられてしまった。

 

 ブルーエンジェル:ライフ4000→3100

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン3

 

「やるわね。私のターン」

「先に言っておくが、ユニット・コンバーターの効果で、お前は1ターンに1度しかリンク召喚ができない」

「私のリンク召喚を封じるのが狙い? でも無駄よ。私は装備魔法、トリックスター・マジカローラを発動!墓地からトリックスター・ホーリーエンジェルを特殊召喚してこのカードを装備」

 

 ホーリーエンジェルが花飾りをかぶって再び現れる。

 

「さらにトリックスター・ライトステージの効果発動!相手のセットされたカード1枚はこのターンのエンドフェイズまで発動できず、相手はエンドフェイズにそれを発動するか、墓地に送る」

「くっ……」

 

 伏せカードを封じられて苦い顔をする。

 

「さあバトルよ!まずはユニット・コンバーターでディフェクト・コンパイラーを攻撃!」

 

 プレイメーカーが送りつけたサイバースモンスターが、プレイメーカーの守りの要を破壊する。

 リンク先のモンスターを失ったことで、デコード・トーカーの攻撃力は2800までダウンした。

 

 プレイメーカー:ライフ1800→1200

 

「そして私のスキル!トリックスター・フロードを発動!手札のトリックスターを墓地に送り、相手は手札が3枚になるようにドローする!」

 

 手札0のプレイメーカーに3枚もの手札をプレゼントした格好だが、当然それだけでは終わらない。

 

「マンジュシカとライトステージの効果で800ダメージ」

 

 効果ダメージを食らい、プレイメーカーは残りライフ400まで追い詰められる。

 

「ホーリーエンジェルは攻撃力が600アップ!さらに墓地に送られたトリックスター・メルキーの効果発動!」

 

トリックスター・メルキー

効果モンスター

星2/光属性/天使族/攻 800/守 400

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードが墓地に送られた場合、自分フィールドに「トリックスター」リンクモンスターがいれば発動できる。相手に200ダメージを与える。

(2)このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「トリックスター」リンクモンスターが相手に戦闘・効果でダメージを与えた場合に発動できる。このカードを墓地からそのリンクモンスターのリンク先に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドを離れた場合、除外される。

 

「相手に200ダメージを与える。ホーリーエンジェルはさらに攻撃力アップ!」

 

 これで攻撃力2800となり、デコード・トーカーに並んだ。

 

「トリックスター・ホーリーエンジェルでデコード・トーカーを攻撃!」

「相討ち狙いか」

「いいえ、倒されるのはあなただけよ。墓地のトリックスター・ハルシネイションの効果!「トリックスター」リンクモンスターが戦闘で破壊される時、墓地のこのカードを除外して身代わりにできる」

 

 ホーリーエンジェルが鞭を振るい、デコード・トーカーを締め上げると、そのまま場外へ投げ飛ばしてしまった。

 

「これで終わりよ!マンジュシカでダイレクトアタック!」

「そこまでだ!手札のダイレクト・ジャマーの効果発動!」

 

ダイレクト・ジャマー

効果モンスター

星1/闇属性/サイバース族/攻 0/守 0

(1)相手の直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、バトルフェイズを終了させる。

 

「このカードを手札から特殊召喚!その後、バトルフェイズを終了させる」

「ふふっ、やっぱり簡単じゃないわね。私はこれでターンエンド!さぁこのデュエル、もっと盛り上げて、一緒に楽しみましょう」

 

ターン4

 

「楽しむか……」

 

 ブルーエンジェルの言葉に、プレイメーカーは少し寂しそうな顔を見せる。

 

「悪いが、俺にデュエルを楽しむなんて感情はない」

「えっ……!」

「いくぞ。俺はサイバース・ウィザードを召喚。自分のサイバース族モンスターが召喚された時、ブート・スタッガードを手札から特殊召喚!」

 

 プレイメーカーのフィールドに再び三体のモンスターが並ぶ。

 

「サイバース・ウィザードの効果でマンジュシカを守備表示に変更する。現れろ。未来を導くサーキット!召喚条件はサイバース族モンスター2体!リンク召喚!スプラッシュ・メイジ!」

 

 アローヘッドより、スプラッシュ・メイジが飛び出し、その能力で墓地からサイバース・ウィザードを蘇生させる。

 

「現れろ!未来を導くサーキット!リンク召喚!リンク3、エンコード・トーカー」

 

 現れたのは光輝く大盾を携えた電子の騎士だ。

 

「バトルだ!サイバース・ウィザードでホーリーエンジェルを攻撃!」

「え!?」

 

 サイバース・ウィザードの攻撃力は1800。ホーリーエンジェルの攻撃力2000に届いていない。どころかライフ200しかないプレイメーカーはそのまま戦闘ダメージを食らって負けてしまう。

 

「エンコード・トーカーの効果発動!リンク先のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも0になる。そして戦闘を行った相手モンスターの攻撃力分、エンコード・トーカーの攻撃力をアップする」

「攻撃力4300!?」

「バトルだ!エンコード・トーカーでホーリーエンジェルを攻撃!」

 

 エンコード・トーカーが大盾を構えて突進する。

 

「ファイナルエンコード!」

 

 ホーリーエンジェルを突飛ばし、そのまま盾を槍のように振り回して、ホーリーエンジェルを切り裂いた。

 

 ◆

 

 デュエルが終了した後、やや放心状態の葵はファンサービスもそこそこにログアウトした。

 

「デュエルを楽しめない……」

 

 彼の悲壮と怒りが混じった表情を思い出す。

 

 思い返してみれば、彼は自分とのデュエルでも、Go鬼塚とのデュエルでも、一度も笑顔を見せたことがなかった。

 

「どういう意味なんだろう……」

 

 そこで彼女はふと、自分の机に座る美海の方に目をやる。

 彼女は椅子にもたれ掛かったまま動かない。見ると、その左腕に装着されたデュエルディスクは起動していた。

 

「ログインしてるの?」

 

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