遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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今回はちょっと短いです


幕間:Line spacing

 ハノイの塔事件から数日が明けたある日、

 

「それじゃあ、LINK VRAINSの危機を救った僕らに、」

「「「乾杯!」」」

 

 葵、美海、尊の三人がグラスを鳴らす。

 

「で、なんで俺の部屋なんだ」

 

 自室にお菓子とジュースを広げて寛ぐ三人に、遊作はジト目を向ける。

 

「だって、遊作は今回の一番の功労者じゃないか」

「リボルバーを倒したんですからね」

「それと俺の部屋でやることに何の関係が……」

「いいじゃないか」

 

 すると、草薙が人数分のホットドッグを持って部屋に入ってきた。

 

「これは俺からの奢りだ」

「ありがとう!草薙さん!」

 

 みんながホットドッグを手に取り始めたのを見て、遊作は諦めて自分も飲み物を手に取った。

 

「そういえば財前、尊。あの後、お前たちは大変だったんじゃないのか?」

「あぁ。取材のこと?」

 

 尊と葵は、それぞれLINK VRAINSのカリスマデュエリストだ。

 そんな二人がLINK VRAINSを救った英雄になったとあれば、ネットメディアからの取材は絶えないはずだ。

 

「うん。実際、メディア関係の仕事はちょっと増えたかな」

「私は事務所所属ってわけじゃないから。でも、前よりマスコミ(ストーカー)は増えたかも」

 

 それぞれ大変そうだなと、遊作はそんな感想も抱く。

 

「けどお前も他人事じゃないだろ?」

 

 すると、Aiがデュエルディスクから出てきて、そんな指摘をする。

 

「何がだ?」

「さっき調べただけで、お前のことを特集したネットの記事が100件以上出てきてたぞ。ここ最近作られたやつだけでな」

「まあプレイメーカーが、ハノイの塔の停止させたわけだし、遊作に一番注目が集まるのは当然じゃないかな」

 

 尊の言う通り、Aiが適当に出した記事の見出しには、デカデカとプレイメーカーの写真、その横には『LINK VRAINSを救った英雄』と書かれている。

 

「そういえば、ゴッドバードの記事もありましたね」

 

 すると、美海が別の記事を表示する。

 そこにはバッチリ、ゴッドバードがデュエルする姿が映っている。

 

「謎のサイバース使い、緑の荒くれ者、中々面白いニックネームもつけられていますね」

「確か、スペクター、樹を倒してくれたんだよね」

 

 既にスペクターが彼らの幼馴染、聖辺樹であるということは共有してある。

 

「えぇ。樹とも、どうにか連絡が取れればいいのですか」

「樹が敵になるなんて、思ってもみなかったよ。啓は今頃どうしてるだろ」

 

 もう一人、未だに近況の分からない幼馴染の名前を尊が呟くと、美海は何故か少し笑った。

 

「元気でやってると思いますよ」

「どういうこと?」

「勘です。功労者といえばゴッドバードもですよね。遊作と尊を塔の上に上げたのは彼なんですから。私のことも助けてくれましたし」

 

 そこでふと、美海は俯いた。

 

「いや、そういえば私、今回何の役にも立ってないですよね……」

 

 それを聞いて、葵もため息を吐いた。

 

「私も、ジャックナイフに負けたし……」

「い、いや、ほら、僕だってリボルバーに負けたんだし」

「財前はジャックナイフの切り札を暴いたし、ハノイの騎士の下っ端を引き受けてくれた」

 

 遊作と尊もフォローするが、二人の表情はさらに暗くなる。

 

「でも尊はバイラを倒したんですよね」

「大したことしてないのに、なんかマスコミからは持ち上げられて胸が痛い。胸ないけど」

 

 二人は仲良く深いため息を吐いた。

 

「あ、みんな飲み物切れてるよね。ぼ、僕買ってくるよ」

「俺も行く」

 

 その空気に耐え切れなくなり、遊作と尊は席を立った。

 

 ◆

 

 遊作と尊が近くのスーパーに立ち寄ったところ、その駐車場に人だかりができていた。

 

「あれは、Go鬼塚か」

 

 数人の子供達が、Go鬼塚からサインをもらったりしていた。

 

「おぉ。尊か」

 

 すると、彼らの姿に気付いて、Go鬼塚は子供たちに別れを告げてから、こちらにやってきた。

 

「こんにちは。鬼塚さん」

 

 鬼塚が遊作の方を向いたので、尊は彼を紹介することにした。

 

「あ、僕の友達の藤木遊作です」

「どうも」

 

 とりあえず遊作が会釈する。

 

「おお。尊の友達だったか。俺は……」

「一応、僕のこと知ってるんで、大丈夫ですよ」

「そうか。俺は鬼塚豪、知ってると思うが、尊と同じ事務所のプロデュエリスト、Go鬼塚だ」

 

 そう言って両腕で力こぶを作るようなポーズを取る。

 遊作はよく知らないが、これがGo鬼塚おなじみの挨拶なのだろう。

 

「聞いたぞ。お前がLINK VRAINSを救ったってな」

「いや、最後にリボルバーを倒したのはプレイメーカーで……」

 

 そう謙遜するが、憧れの先輩からの賞賛に、彼もまんざらでもなさそうだった。

 

「俺もログインしていれば、お前たちを助けにいけたんだがな。くそっ」

 

 Go鬼塚は拳を自分の掌に打ち付ける。

 

「そうだ。お前にこいつをやる」

 

 すると、彼は抱えていた段ボール箱の1つを尊に渡した。

 側面に書かれた文字を読むと、どうやらプロテインらしい。

 

「祝いだ。事務所にいたら渡そうと思ってたんだ。そいつでもっと筋肉をつけろ」

「あ、ありがとうございます」

「それじゃあな」

 

 そう言って、Go鬼塚は去っていった。

 

「本当にアバターと同じなんだな」

 

 彼の姿を見て、遊作はそんな感想を抱いた。

 

「鬼塚さんはレスラー時代からのファンもついてるからね。そのイメージを壊さないようにしてるんだよ」

「元レスラーなのか」

「うん。今はもう完全にデュエリストに転向しちゃったけど、レスラーだった頃もすごかったんだよ。あ、動画あるけど見る?」

「いや、いい」

 

 尊が残念そうにするのを横目に、遊作はスーパーの店内へ足を踏み入れた。

 

 ◆

 

 同刻、SOLテクノロジーの幹部室。

 チェス盤のAR空間内で、ビショップと晃が向き合っていた。

 

「LINK VRAINSの修復は進んでいるか?」

「はい。現在書き換えられたプログラムをバックアップに戻している最中です」

 

 ハノイの塔起動のために、LINK VRAINS内のプログラムはハノイの手によって改竄されている。

 その箇所は膨大で、大量の社員を有するSOLテクノロジーでも、修復にはまだまだ時間がかかるようだ。

 

「優先度の低い箇所は後回しにして、ある程度復旧が進めばサービスを再開しろ」

「かしこまりました。それで……」

 

 晃は恐る恐る尋ねる。

 

「ハノイの塔は、本当にあのまま保管するつもりですか?」

 

 停止したハノイの塔は、現在はビショップの指示で別サーバーに隔離されている。

 

「削除してしまうべきでは?」

「鴻上博士の作ったものだ。解析すれば、我々のさらなる利益につながる」

「しかし、ハノイの騎士に奪われてしまえば……」

「そうならないために君がいる。それにハノイの騎士は組織としては既にない」

 

 事件の後、下っぱの構成員の大半は検挙された。

 セカンド以上のメンバーは行方不明だが、ハノイの騎士は壊滅したも同然だ。

 

「無論、リボルバーが何か仕掛けてくる可能性は大いにある。故に、セキュリティ部長である君が厳重に管理するのだ」

「……かしこまりました」

 

 晃は納得のいかない様子だったが、それ以上は反論しなかった。

 

「それと、イグニスの確保に関してだが、今後はこちらで直接指揮を取る」

「ビショップ様が自ら、ですか?」

「そうだ。そのために新たなデュエリストも雇ってある」

 

 すると、AR空間内に、一人の男が現れた。

 紫髪の長身の男で、顔をマフラーとサングラスで隠している。

 

「彼を中心に、IGS-0シリーズを使いイグニス確保に動く。以上だ」

 

 その一言で締めくくり、AR空間は閉じられた。

 

 ◆

 

 それから飲み物を買って戻ると、草薙も交えて五人でささやかな会を楽しんだ。

 

 そして、そろそろお開きというところで、美海は口を開いた。

 

「あの、草薙さん。こんな時に聞くのもなんなんですが……」

 

 彼女は言いづらそうに視線をあちこちに動かす。

 言い出すべきか、数秒程度の逡巡の果てに、美海は草薙に尋ねた。

 

「仁君の容態は……」

 

 この家に来た時から、あえて口には出さなかったが、彼女も尊も気になっていたことだった。

 仁もまた、彼らと共に孤児院で過ごした一人であり、大切な家族だ。

 

「……」

 

 すると、草薙は答えるかわりに立ち上がり、四人を手招きする。

 彼に案内されたのは、二階の一番奥にある部屋だった。

 

「仁、入るぞ」

 

 草薙はノックしてから扉を開ける。

 部屋の中は机と本棚と、一通りの家具は置かれているものの、まるで生活感のなく、人の生を感じなかった。

 

 そしてベッドの上には虚ろな目で天井を見つめる仁の姿があった。

 

「酷い……」

 

 想像していたよりも、仁の状態は悲惨なものだった。

 生きているというより、ただ息をしている、それだけの状態だ。

 

「こんな状態で、十年も……」

 

 尊が拳を握りしめると、彼のデュエルディスクから不霊夢が出てくる。

 

「……これは」

「どうしたんだ?」

 

 不霊夢はジッと仁の顔を見つめ、それから口を開いた。

 

「彼の意識データが抜けているぞ」

「「「「「!!」」」」」

 

 全員が一斉に仁の方を見る。

 

「不霊夢、どういうことだ?」

「私には魂の火、のようなものが見える。だが、彼の中にはそれがない。幸い生命活動に必要な機能は生きているが、こんな状態、作為的でなければならないぞ」

「一体誰が……」

 

 ◆

 

 同刻、サイバース世界、

 

「集まっていただき感謝する」

 

 玉座に座すのは白と金の口元まで隠れるコートを着た少年のアバター、その肩の上に乗るライトニングが、集まった三人のイグニスに向かって話す。

 

「諸君、ハノイの騎士が強硬手段に出たのは知っての通りだ」

 

 ハノイの塔、ライトニングもあの一件はさすがに肝が冷えた。

 

「幸い、起動は防がれ、我々はこうして生きている。だが、もはや一刻の猶予もない」

 

 ライトニングは拳を握りしめ、高らかに宣言する。

 

「人間を打倒し、我々が新たなる種として君臨するのだ」

 

 そう言って、彼は瞳に静かな炎を滾らせた。

 

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