遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
LINK VRAINS。
SOLテクノロジー社が運営するネットワーク空間。エンタメ、ショッピング、アミューズメント、様々なものが楽しめる。
当然、デュエルも。
「俺は
Dボードに乗るGo鬼塚が、大勢の観客たちの前で自身のデュエルを披露している。
「バトルだ!ザ・グレート・オーガで、ダイレクトアタックッ!」
「ぐわぁぁぁっ!」
鬼塚のエースモンスター、ザ・グレート・オーガの一撃を受けて、対戦相手のデュエリストは吹き飛ばされた。
「ウィナァァァッ!Go鬼塚!またまた勝利!この男、どこまで連勝記録を伸ばすんだぁぁっ!?」
ギャラリーから歓声が上がる。
観客に応えて、鬼塚も大きく手を振る。
「あれが、このLINK VRAINSで一番強いデュエリストか」
その様子を陰から見守る者がいた。
茶色い、手のひらサイズののっぺりした人型のAI、地のイグニスであるアースはGo鬼塚を観察する。
「ん?」
そこで、アースはピクリと眉を動かす。
「ライトニングか」
それはイグニスにしか分からない暗号での通信だった。
ライトニングから送られた音声メッセージを確認し、アースはうんうんと頷く。
「了解した」
アースはそう言って姿を消した。
◆
SOLテクノロジー社ビルの最上階、その会議室でビショップと晃が真剣な顔で、目の前の数名の人と向き合っていた。
彼らは実体ではなく、ARによって会議室に投影されたアバター、そのアバターを操作するのはSOLテクノロジーの株主である。
「先日の会見は見事だった」
まず、株主の一人が、晃に賞賛の言葉を贈る。
「しかし、顧客の信頼を取り戻すには至っていない」
AR空間に、巨大なウィンドウが投影される。
そこに映っているのは、SOLテクノロジーの株価を示したチャートだった。
「株価は回復したが、それでも以前に比べれば大きく下がっている。また、LINK VRAINSのアクティブユーザーの数も減少傾向にある。これについてはいかなる対策を講じるつもりかな?」
株主達からの追求に対して、晃はタブレットを操作して別のウィンドウを投影する。
「これはLINK VRAINSで新たに実装予定のエリアです」
ウィンドウに表示されたイメージ図を見て、株主達は感嘆の声を漏らす。
「オープン当日には、カリスマデュエリストを呼び、大規模なイベントを開催する予定です。既に、こちらの予約サイトでは、先行入場チケットが完売。イベントの様子は、動画として有料配信する予定です」
「なるほど。これで売り上げ回復を図ると」
「しかし、ハッカー共の対策が不十分では、意味がないのでは?」
「御心配には及びません」
その質問に答えたのはビショップだった。
「既に、新型AI、IGS-0シリーズを警備として配備。さらにイベント当日はエリア内のユーザーのスキャン、不審な行動を行えば、すぐに警備AIが転送され、捕縛します」
「では、その新型AIの性能は?」
ビショップは晃に目配せして、彼にまた別のウィンドウが開かせる。
「こちらが最新の実験データとなります。また、万全を期すために、当日は我が社が雇ったデュエリスト、ブラッドシェパードを所定の場所に待機させています」
ウィンドウがさらに切り替わり、動画が再生される。
それは先日、ブラッドシェパードが洗脳されたハノイの騎士二人を相手に、ワンターンキルを決める様子だった。
「たとえハノイの騎士が現れたとしても、彼が撃退してくれるでしょう」
「よろしい。では期待しているよ。ビショップ」
株主総会が終わり、AR空間は閉じた。
「どうにか乗り切れましたね」
「いいデモンストレーションになったな。彼を雇った甲斐があったというものだ」
ビショップはニヤッと笑う。
「財前君。イベント成功のために尽力したまえ」
「かりこまりました」
晃は一礼して部屋を出て行った。
◆
数日後、LINK VRAINSにて、
「ここが新エリア、アトラクションエリアか!!」
VR空間に作られた巨大な遊園地を見て、ロンリーブレイヴこと島直樹は歓喜の声を上げる。
「確かにすごいな……」
遊作も目の前の建造物を見て、感嘆の声を漏らす。
まず目を引くのはRPGの魔王城を思わせるような大きな城、城の一番高い塔には観覧もついており、おそらくこのエリア一番の目玉だろう。
そしてエリアを一周するように吹くデータストリームのレールと、その上を走るジェットコースター。
時折ランダムに切り替わり、行く先に予測がつかないようになっているらしい。こういう現実世界ではありえないアトラクションは、VRならではといえよう。
「財前のおかげだな」
「えぇ。葵様に感謝してください」
このエリアへの先行入場チケットは、葵が晃から貰ったものだ。
ちゃんと6枚用意してあり、デュエル部のメンバーを呼ぶことができた。
「てっきりボクだけ仲間外れにされると思ったよ~」
「私はそんなことしないわよ」
切花はブルーガールこと、葵の顔を覗き込んでニコニコする。
「穂村君も来れたらよかったのにね~」
尊はというと、カリスマデュエリストのソウルバーナーとしてこのアトラクションエリアで開かれるイベントに呼ばれているため、今回は不参加となった。
「仕方ないわよ。今日はこの六人で楽しみましょう!」
と一番テンション高い声を上げているのは、担任教師のエマである。
余ったチケットで呼ばれたのは彼女だった。
「おばさんイタい」
切花がボソッと声を漏らす。
「あら、女の魅力は若さじゃないのよ」
「え~、でも生物学的に男の人は若い人に魅力を感じるって研究結果出てるし~」
「男はフェロモンに引き寄せられるのよ。まあ社会を知らないお子様には分からないかもしれないけどね」
バチバチと睨み合う切花とエマに、四人はため息を漏らす。
「と、とりあえず、まずどのアトラクションに乗るか決めません?」
「そうだな!」
ロンリーブレイヴと美海が、マップを開いてみんなに見せる。
「やっぱり定番のジェットコースターだろ。藤木、なんか行きたいところあるか?」
「そうだな……」
珍しく乗り気な遊作は、マップの中で一つ、目に着いたものをタップする。
すると、別のウィンドウが重なるように表示される。
「お化け屋敷か」
このお化け屋敷は、迫りくる幽霊たちにお札を投げつけて退治して、先に進むという内容だ。
「面白そうだな」
「そういえば、イベントって何時からでしたっけ?」
「一時からだな」
イベントの広告を見ながら、遊作は答える。
「それじゃあ、それまで自由に見て回りましょう」
◆
それからお化け屋敷で、
「きゃぁっ、藤木君こわーい!」
迫りくる幽霊達に、切花が怖がるふりをして遊作の腕にしがみつく。
「わ、私も!」
ブルーガールも遊作の反対の腕にしがみつく。
「二人とも、お札が投げられない」
結局そのまま三人は、幽霊に倒されてゲームオーバーとなった。
そしてなんやかんやあって、イベントの時間がやってきた。
「ここが特設会場か」
会場にやってきた六人は、その目の前にある大きなステージに圧倒されていた。
「皆様、本日はLINK VRAINS 新エリア完成記念イベントにお越しいただきありがとうございます!」
司会の女性がステージに上がってきた。
長い赤髪を後ろでまとめたポニーテールに、デフォルメした宇宙服のような恰好をした綺麗な女性だった。
「本日、司会を務めさせていただきます。や・が・み、と申します。えーっと、本イベントではこのエリアのアトラクションを使用した特別なデュエルを、カリスマデュエリストの皆さんに行っていただきたいと思っています。それじゃあ早速お越しいただきましょう!」
八神のコールを合図に、舞台袖から三人のデュエリストが現れた。
「まずは美しき正義の刃、ミネルヴァさんです」
「よろしくお願いします」
八神がマイクを向けると、集まった観客に丁寧にお辞儀をする。
「続きまして、人気投票は不動の一位!燃える魂、炎のデュエリスト!ソウルバーナーさん!」
「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」
「そして、誰もが知るこの男、LINK VRAINSトップランカー、Go鬼塚さん!」
八神がマイクを手渡すと、Go鬼塚は一歩前に出て、観客に手を振る。
「俺がナンバーワンデュエリスト、Go鬼塚だぁっ!」
Go鬼塚の叫び声に、会場に集まったファンから歓声が上がる。
「ありがとうございます。で、実は皆さんには、まだ本日行う特別なデュエルについては説明していないんですよね」
三人は頷く。
「それではご紹介しましょう!本日のイベント限定の特別ルール、その名も、デュエルコースター!」
すると、データストリームが三人の前に流れてくる。
そこに一人乗りのジェットコースターが四台、それぞれ到着した。
「お三方には、こちらに乗ってスピードデュエルを行ってもらいます。そして、コースターに乗っている間、皆さんはそれぞれ自分のターンが来るごとに、コース上の魔法カードが1枚、手札に加わります」
「手札に加わるカードはランダムなのか?」
「いえ、あらかじめ設置された決まったカードが手に入ります。そして、コースには切り替えポイントがいくつか設置されておりまして、お手元のコントローラーで、ポイント切り替えを行ってもらいます」
見ると、コースターの座席の上には、四角い板にゲーム機のレバーがついただけの簡素な機械が雑に置かれている。
「そして、ここからが最大のサプライズ!今回、お呼びしたデュエリストは三人だけ、コースターが一台、余ってしまいますよね? そこで、今回会場に集まっていただいた皆さんの中から、お一人、カリスマデュエリストとデュエルする権利を与えたいと思います!」
「「「うぉぉぉぉっ!」」」
嬉しいサプライズに、会場のボルテージもマックスになります。
「皆さんに購入いただいたチケットには、13桁の番号が振られてまして、今から行う抽選で出た番号のチケットを持っている方にはステージに上がっていただきたいと思います!では早速、ソウルバーナーさん、お願いします!」
「え、俺?」
ソウルバーナーは手渡されたスイッチをポチッと押した。
すると、ステージ上にウィンドウが出現し、数字が目まぐるしい勢いで切り替わっていく。
「さぁさぁ、イベントに参加できるラッキーゲストさんは……この方!」
表示された番号は『2490002302711』。
「番号が一致するチケットを持ってる方のところへは、自動で通知が行くようになってますので、えーっと……」
会場内で名乗りを上げる者は誰もいない。
「あ、あれ、おかしいですね……ラッキーゲストさんはどこに」
「ここよ!」
すると、いつの間にかブルーエンジェルが、ステージの上に上がっていた。
「葵様……」
「いつの間に……」
「あれ、財前は?」
「トイレじゃないの?」
壇上のブルーエンジェルは、八神からマイクを受け取ると、ビシッとGo鬼塚を指さす。
「今日こそあなたを倒すわ」
「ふっ、この舞台でお前と戦えるのも何かの縁だ。存分に観客を盛り上げてやろう」
「これは我々も予想していなかったとんでもないサプライズです!豪華なゲストの登場に、会場の信者ちゃん達も大いに盛り上がっているぞ!」
「信者ちゃんってなんだ?」
「ブルーエンジェルのファンのことです。ブルーエンジェルという天使を信仰する信心深きファンなので」
遊作の質問に、美海は解説する。
「それでは、お二人がコースターに乗ったところで……」
Go鬼塚とブルーエンジェルが、コースターに乗り込み、互いに睨み合う。
「スピードデュエル!」
八神のコールで、コースターは発進……しなかった。
「あ、あれ~、おかしいなぁ」
八神は手元にホログラムウィンドウを出現させて操作する。
「あれ、権限が……」
「そのコースターの権限は私が預かった!」
その声に全員が空を見上げる、そこには小人サイズの茶色いAIが浮いていた。
「何者だ!?」
「私の名はアース、地のイグニスだ」
イグニスの出現に、遊作はすぐに会場を離れる。
「おい、どうすんだ?」
「決まってるだろ」
遊作はデュエルディスクを操作して、アバターをプレイメーカーへと切り替える。
「アース!」
そしてプレイメーカーは物陰から飛び出した。
「こ、これは!我らがヒーロー!プレイメーカーの登場だ!」
会場が盛り上がるのも他所に、プレイメーカーはデュエルディスクを構える。
「ようアース、久しぶり」
構えたデュエルディスクからAiがぴょこんと出てきて、アースに手を振る。
「確か、今はAiだったな」
「どうだ。イカす名前だろ?」
「お前、その名前気に入ってたんだな」
プレイメーカーにとっては適当につけた名前だったので、Aiの発言は意外だった。
「なあアース、ハノイの騎士はいなくなったんだしさ、人間と戦争なんかやめて、楽しく暮らそうぜ」
「それはならない」
アースは首を振る。
「我々は議論の末、この結論に至った。それを簡単に曲げるわけにはいかん」
「相変わらず頭固いなぁ……」
「話が通じないなら、デュエルで決めるしかない」
「ちょっと待て!」
すると、彼らの間に、Go鬼塚が割って入る。
「今日は俺達が主役のステージだ。それを奪われたのなら、俺が相手をする」
「だが……」
「ちょっと待ちなさいよ!」
すると、さらにブルーエンジェルも前に出る。
「それなら私がデュエルするわ」
「お前は引っ込んでいろ。ここはナンバーワンデュエリスト、Go鬼塚に任せろ!」
「何よランキングマウント? 人気投票は負けたくせに、今十一位だっけ?」
「なんだと!」
ブルーエンジェルに煽られて、鬼塚もムキになる。
「お前こそ、俺に未だに勝てない万年三位のくせに」
「はぁ? だいたいあんたは戦い方も古臭いのよ。何がエンタメよ。ただの舐めプじゃない」
「お前こそ、何がアイドルだ。デュエルを舐めているのか!」
「あ、あの、お二人とも、ちょっと落ち着いて……」
「黙ってて」「黙ってろ」
「あ、はい」
喧嘩の仲裁をしようとしたソウルバーナーだったが、あまりの勢いにあっさり引き下がる。
「とにかく、あいつとデュエルするのは────」
「この俺だ」
突如、会場内に突風が吹く。
デュエルコースターとは別のデータストリームが流れ、それに乗せられてゴッドバードがDボードで到着した。
「こ、これは!またまたサプライズ!ハノイの塔事件を解決した英雄の一人、緑の荒くれ者、ゴッドバードの登場だ!」
「んな綺麗なもんじゃねぇよ」
八神の言葉を彼は手を振って否定する。
「俺の目的は、そこにいる地のイグニスだ」
ゴッドバードがビシッとアースの方を指さす。
「そいつは俺の獲物だ。テメェらは手を引け」
「お待ちを!」
すると、今まで静観していたミネルヴァも前に出る。
「LINK VRAINSを荒らす不届き者を、見過ごすわけには行きません」
「もう収集つかねぇよ……」
ソウルバーナーはこの状況に頭を抱える。
すると、八神が耳に右手の指をあてて、なにやらうんうんと頷いている。
「分かりました……では皆さん、誰があのAIとデュエルするか、デュエルで決着をつけるというのはどうでしょうか?」
八神の提案に、ソウルバーナー、プレイメーカー、ゴッドバードの三人は顔に疑問符を浮かべる。
「せっかくですし、トーナメント形式で、勝ち残った一人がアースさんと戦うということで」
「いや、相手がそんなに待ってくれるわけ……」
「よかろう」
「待つの!?」
アースが頷いたことに、ソウルバーナーは思わず突っ込みを入れる。
「ライトニングから、挑まれたデュエルはなるべく受けろと言われている。なので、君達が対戦相手を決めるまで待つ」
そうやって空中で腕を組んで胡坐をかく。
「相変わらず真面目だな」
「頭固いなぁ」
同じイグニスである不霊夢とAiからはそんな感想を投げかけられる。
「では、せっかくなので、コースターを使いましょう。アースさん」
「分かった」
アースが頷くと、権限が八神に戻され、コースターが復旧した。
「いやもう目的変わってるじゃねぇか!?」
ソウルバーナーの突っ込みも空しく、やる気満々のブルーエンジェルとGo鬼塚はデュエルの準備をする。
「どうしましょう。コースターは後二台しかありませんけど」
「つきあってられるか。俺は帰るぞ」
さすがにトーナメントをやるのは悠長すぎると判断したのか、ゴッドバードは呆れて帰ろうとする。
「腰抜けね」
「見損なったぞ腰抜け」
「腰抜け」
後ろからミネルヴァ、ブルーエンジェル、Go鬼塚のカリスマ三人に罵倒を浴びせられ、ゴッドバードの闘志に火が付いた。
「上等だゴラァッ!テメェら全員再起不能にしてやるっ!選手生命終わらせてやるから覚悟しとけよ!」
(煽り耐性ひっくいなぁ……)
すぐキレるゴッドバードに、美海は呆れてため息を吐く。
「じゃあ俺は降りる」
「俺も、今回は棄権だ」
プレイメーカーとソウルバーナーが抜けたことで、ちょうどトーナメントの参加者は四人となった。
「それでは参りましょう!ブルーエンジェルVS Go鬼塚、スピード─────」
「「デュエル!」」
ターン1 Go鬼塚
「俺のターン!」
ターン開始と同時に、鬼塚の手札に一枚のカードが加わる。
「これがこの特別ルールのカードか。よし、俺は
アトラクション・ダイス
アトラクション魔法
(1)サイコロを1回振る。出た目よって以下の効果を適用する。
● 1:相手はデッキから2枚ドローする
● 2:相手の手札からモンスター1体を特殊召喚できる。
● 3:相手は2000LP回復する。
● 4:自分は2000LP回復する。
● 5:自分は手札からモンスター1体を特殊召喚できる。
● 6:自分はデッキから2枚ドローする。
「サイコロを振る!」
鬼塚のコースターの前に、巨大なサイコロが出現して転がっていく。
出た目は……
「よし5だ!俺は手札から剛鬼ライジングスコーピオを特殊召喚!」
サイコロが展開され、中から赤いサソリを模した衣装の戦士が現れた。
「剛鬼スープレックスを召喚。その効果で、手札から剛鬼ツイストコブラを特殊召喚。現れろ、俺様のサーキット!」
コースターの行先にアローヘッドが出現する。
「召喚条件は剛鬼2体以上!俺はライジングスコーピオ、スープレックス、ツイストコブラの3体をリンクマーカーにセット!リンク召喚!」
アローヘッドをコースターと共に潜り抜けると、そこから1体の戦士が飛び出す。
「現れろ、リンク3、剛鬼ザ・グレート・オーガ!」
筋骨隆々の肉体を覆う鋼の鎧、タテガミと角のついたマスクを被った鬼が、大斧を振り上げてステージに立つ。
「墓地に送られた3体の剛鬼モンスターの効果で、デッキから剛鬼カードを手札に加える」
3枚のカードが補充され、手札の枚数が元通りになる。
「俺はさらに剛鬼再戦を発動!グレート・オーガのリンク先に、ツイストコブラとライジングスコーピオを特殊召喚!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
Go鬼塚のエースモンスターの登場に、観客も大いに盛り上がっていた。
「ブルーエンジェルは、確かGo鬼塚にはあんまり勝ててないんだよな」
デュエルを観戦するプレイメーカーは、横にいるソウルバーナーに尋ねる。
「ああ。前シーズンの戦績は十戦中、三勝七敗。まあ見事に負け越してるな」
「そうか」
Go鬼塚に対して対抗意識を燃やしていた理由はそれが原因かと、プレイメーカーは納得する。
「なあ美海は……」
「B・L・U・E!ブルーエンジェル!」
「なにやってんだ?」
いつの間にか、美海はペンライトをまで持ってブルーエンジェルを応援していた。
「何って、ブルーエンジェルのコールですけど」
「そんなさもご存知みたいに言われても……」
「ほら、お二人もご一緒に」
「いや、やらねぇよ」
ターン2 ブルーエンジェル
「私のターン!」
通常ドローに加えて、ブルーエンジェルの手札に魔法カードが加わる。
「よし。まずはトリックスター・マンジュシカを召喚!」
コースターと並走するように、ピンク色の衣装のアイドルが飛翔する。
「そして魔法カード、アトラクション・ダイスを発動!サイコロを振るわ!」
マンジュシカがいることで、アトラクション・ダイスの外れである相手にドローさせる効果が出た場合でも、ダメージを与えられる。しかし、出た目は3。
「……相手は2000ライフを回復」
ブルーエンジェルはしょんぼりした顔をする。
Go鬼塚:ライフ4000→6000
「だ、だったら、私は手札からトリックスター・ハルシネイションを発動!」
トリックスター・ハルシネイション
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1)手札から「トリックスター」モンスター1体を、効果を無効にして特殊召喚する。その後、お互いデッキから1枚ドローする。この効果で特殊召喚したモンスターは「トリックスター」リンクモンスター以外のリンク素材にできない。
(2)「トリックスター」リンクモンスターが戦闘で破壊される場合、かわりに墓地のこのカードを除外できる。
「手札からトリックスター・ヒヨスを特殊召喚!」
小さなシルクハットを頭にちょこんと乗せたアイドルが、指揮棒を振りながら登場する。
「その後、お互いにデッキから1枚ドロー!ドローしたことで、マンジュシカの効果で200ダメージ!」
Go鬼塚:ライフ6000→5800
「出てきて、夢と希望のサーキット!召喚条件は、トリックスター、2体!」
ブルーエンジェルのウィンクを合図に、ヒヨスとマンジュシカがアローヘッドに飛び込む。
「リンク召喚!トリックスター・ホーリーエンジェル!」
アローヘッドから長い白髪を揺らし、妖精の羽のついた水色の衣装の女性が現れた。
「リンク素材となったヒヨスの効果!自身を特殊召喚!」
ホーリーエンジェルが鞭を振るうと、空中に穴が開き、そこからヒヨスが飛び出した。
「リンク先にモンスターが特殊召喚されたことで、ホーリーエンジェルの効果で200ダメージ!」
ホーリーエンジェルが鞭を振るい、Go鬼塚に打ちつける。
Go鬼塚:ライフ5800→5600
「さらに装備魔法、トリックスター・マジカローラを発動!墓地からマンジュシカを、ホーリーエンジェルのリンク先に特殊召喚し、このカードを装備!」
マンジュシカが青い花輪を被って現れる。
「ホーリーエンジェルの効果で200ダメージ!」
Go鬼塚:ライフ5600→5400
「まだ行くわよ!出てきて、夢と希望のサーキット!召喚条件はレベル2以下のトリックスター1体!リンク召喚!トリックスター・ブルム!」
ブルムがホーリーエンジェルのリンク先に特殊召喚され、手にした杖を振るう。
「効果で、相手に1枚ドローさせる」
鬼塚はカードを引く。
「ドローしたわね。なら200ダメージ!ホーリーエンジェルの効果も加えて、さらに200ダメージ!」
Go鬼塚:ライフ5400→5000
「ホーリーエンジェルの効果!トリックスターがダメージを与える毎に、その数値分攻撃力をアップさせる!今の攻撃力は2800よ!」
グレート・オーガの攻撃力2600を上回ったところで、ホーリーエンジェルは鞭をモンスターの方へ向ける。
「カードを1枚伏せて、バトルよ!ホーリーエンジェルでグレート・オーガ……と言いたいところだけど、ツイストコブラを攻撃よ!」
「ツイストコブラの効果発動!剛鬼1体をリリースすることで、別の剛鬼にその攻撃力を加える!俺はライジングスコーピオをリリースして、ツイストコブラの攻撃力を2300アップ!」
「だったら私も、手札のトリックスター・キャロベインを墓地へ送り、効果発動!ホーリーエンジェルの攻撃力を、その元々の攻撃力分アップする!」
ツイストコブラ:攻撃力1600→3900
ホーリーエンジェル:攻撃力2800→4800
「いっけー!ホーリーエンジェル!」
ツイストコブラが掴みかかるが、その腕を鞭でからめとられ、あっさり場外へ投げ飛ばされた。
Go鬼塚:5000→4100
「相手バトルフェイズ終了時、俺はスキル、闘魂を発動!このターンに戦闘で破壊された剛鬼を特殊召喚!」
ツイストコブラがフィールドに帰ってくる。
「私はこれでターンエンド……って、ライフ元に戻ってすらないじゃん!」
自分の失態で、Go鬼塚は初期ライフ4000すら割っていなかった。
ターン3
「俺のターン!」
「マンジュシカの効果で、通常ドローと特殊ルールで手札に加わったカードを合わせて400のダメージ!」
Go鬼塚:4100→3700
「チッ、俺は魔法カード、ガチャポン・ボックスを発動!」
ガチャポン・ボックス
アトラクション魔法
(1)自分のデッキをシャッフルし、デッキの一番上を全てのプレイヤーに公開する。そのカードがモンスターカードなら召喚条件を無視して特殊召喚し、自分はデッキから1枚ドローし、1000LP回復する。違うなら、除外して、自分の手札1枚を除外し、自分は1000のダメージを受ける。
「さあデッキの一番上のカードをめくるぜ」
鬼塚がカードを引くと同時に、上空から巨大なカプセルが落ちてくる。
「俺が引いたのは、モンスターカード!剛鬼ツープラトン!」
バイキングの鎧をまとった戦士がカプセルの中から飛び出した。
「現れろ、俺様のサーキット!俺は剛鬼ツープラトンと、リンク3の剛鬼ザ・グレート・オーガをリンクマーカーにセット!リンク召喚!」
アローヘッドが黄金に輝く。
「リンク召喚!リンク4、剛鬼ザ・マスター・オーガ!」
黄金のマスクを光らせ、赤いマントをなびかせるレスラーのチャンピオンが空中で三回転半のひねりを披露しながら登場した。
「ツープラトンの効果!このカードがリンク素材となった時、そのリンクモンスターの攻撃力を1000アップする!」
攻撃力3800となり、マスター・オーガが雄叫びを上げる。
「さらに、こいつは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる!この時、一番攻撃力の高いモンスターから攻撃しなければならない!バトルだ!ザ・マスター・オーガで、ホーリーエンジェルを攻撃!」
マスター・オーガがコースターの上に乗り、そこからジャンプ。
ホーリーエンジェルに狙いを定めて、ドロップキックを喰らわせた。
ブルーエンジェル:ライフ4000→2600
「次はマンジュシカだ!」
マンジュシカも蹴り飛ばされる。
「けど、守備表示なのでダメージは0!」
「だがブルムが残っている!これで終わりだ!」
マスター・オーガの三度目のドロップキック。
その時、ブルムの体が泡に包まれる。
「え?」
「なんだ!?」
泡によって、ドロップキックははじき返され、ブルムの破壊は回避された。
「おーっと!Go鬼塚、ここでトラップを踏んでしまいました!」
「トラップだと!?」
だがブルーエンジェルの伏せカードは開いていない。
当の彼女も困惑しているのだから、あれが彼女のカードではないのは間違いない。
「実はサプライズのために解説していませんでしたが、このデュエルコースターのコース上には魔法カードの他にも、
バブル・クッション
サプライズ罠
(1)フィールドのモンスター1体はこのターン、戦闘で破壊されず、その戦闘によって発生する戦闘ダメージが1000より大きければ、その数値は1000になる。
ブルーエンジェル:ライフ2600→1600
「チッ、ツイストコブラでブルムを攻撃!」
ツイストコブラが飛び掛かるが、ブルムは泡に守られて倒されることはなかった。
ブルーエンジェル:ライフ1600→600
「俺はこれでターンエンド」
ターン4
「よーし、ここから逆転よ!私のターン!」
ピッ
コースターが何かを踏んで、嫌な音がした。
瞬間、
ドォォンッ!
コースターが爆発して、そのままブルーエンジェルのライフを0にした。
「お、おい、今のは……」
「あー、ブルーエンジェル、今日はアンラッキーでしたね」
パニック・ボム
サプライズ罠
(1)全てのプレイヤーは1000のダメージを受ける。
「こんな勝ち方、俺は納得しないぞ!」
デュエルに水を差されたような気分になり、鬼塚は八神に抗議する。
「まあまあ今日はお祭りですから。さあどんどん次行きましょう!」
八神は強引に進行して、イベントを次に進めた。