遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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第30話:Go courage play

 ある日、デュエル部の部室で、葵は机の上に広げた自分のデッキとにらめっこしていた。

 

「何してるんだ?」

「ああ藤木くん」

 

 葵は顔を上げる。

 遊作はその向かいに腰を下ろし、鞄を脇に置いた。

 

「デッキを強化しようと思って」

 

 彼女は自分のデッキをまとめて遊作に渡す。

 

「今のままでも十分だと思うが」

 

 遊作は一通りデッキの中身を確認して、彼女のデッキをそう評した。

 

「ううん。このままじゃダメだと思う。現に私は……」

 

 ハノイの塔事件でジャックナイフに敗北した。

 さらに先日のブラッドシェパードに襲われた時も、遊作に逃がされただけでなんの役にも立たなかった。

 それらのことが、彼女に焦燥感を抱かせていた。

 

「分かった。だがどう強化するか……」

「例えば新しい召喚法を組み込むとか。藤木君は、リンク召喚以外も使ってるでしょ?」

「あぁ」

 

 先日ストームアクセスにより入手した融合モンスターのサイバース・クロック・ドラゴンをはじめ、シンクロのサイバース・クアンタム・ドラゴン、エクシーズのファイアウォール・X・ドラゴン。

 一応、一通りの召喚法はマスターしていることになる。

 

「あんまり周りにも、リンクモンスター以外を使う人って少ないのよね」

「確かに、LINK VRAINSのトップ層はリンクモンスターを使うデッキが多いからね」

 

 そこに、尊と美海が部室にやってきた。

 

「尊、なんでリンクモンスターを使うやつが多いんだ?」

「そこは流行り廃りの問題じゃないかな」

 

 彼らも近くに座り、いつもの四人で固まった。

 

「私もリンクモンスターしか使ったことないから。他の召喚法のことはあんまり分かんなくて。ねぇ藤木くん、よかったら────」

「それなら僕に任せてくれ」

 

 その時、彼らの会話に一人の男が割り込んできた。

 セルフレームの眼鏡をかけて、遊作達とは色の違うネクタイをきっちり占めた男子生徒だった。

 

「水亀先輩」

「君達のその向上心を汲んで、今日のミーティングは特殊召喚法にしよう」

 

 水亀部長はノリノリで電子黒板の前に立つ。

 

「あの人、デュエルのことになると人が変わるよね」

「そうだな」

 

 水亀部長によって電子黒板に二枚のカードが映し出される。

 一枚は紫の枠のカードで、飛竜の上に青い鎧の戦士が、二本の槍を携えてまたがったイラストが描かれている。

 もう一枚は魔法カード、渦巻きのような模様の上に、ドラゴンと悪魔の影のようなものが吸い込まれている様子が描かれている。

 

「まずは融合召喚。その名の通り、魔法カードの力で複数のモンスターを融合させることで、より強力なモンスターを呼び出す召喚法だ」

「ゆ、融合……」

 

 葵がその単語に反応して頭を抱える。

 以前、ジャックナイフにボコボコにされた時のトラウマが響いているのだろう。

 

「はいはい部長!」

 

 すると、切花が手を上げて発言権を要求する。

 

「融合魔法を使わない融合もあるよね?」

「そうだ。よく知ってるね」

「えへへ」

 

 それを聞いて、Aiはジャックナイフのことを思い出す。

 

「あいつも融合魔法じゃなくて、あのワンちゃんの能力で融合してたな」

「超融合は使ってたがな」

 

 Aiと遊作は他の生徒に聞こえないように小声で話す。

 

「例えば、今映っている竜騎士ガイアなら、攻撃力2300の暗黒騎士ガイアと、攻撃力2000のカース・オブ・ドラゴンを融合させることで、攻撃力2600のモンスターにする」

「なんでその二体で2600にしかならないんだ?」

「きっと馬の方が攻撃力高いんだろう」

 

 島の素朴な疑問に、遊作が適当に返した。

 

「続いてシンクロ召喚」

 

 画面が切り替わり、今度は白い枠のカードと、テキストにチューナーと記載されたモンスターの二枚が表示される。

 

「チューナーと呼ばれるモンスターを、チューナー以外のモンスターのレベルと足し合わせ、高レベルのモンスターに変える召喚法だ」

「美海が使ってるやつよね?」

「まあ私はチューナー使いませんけど」

「そしてエクシーズ召喚」

 

 また画面が切り替わり、今度は黒い枠のカードが表示された。

 

「同じレベルのモンスターを重ねて、その上に重ねて出す召喚法だ。これまでの融合、シンクロとは違い、素材が墓地へ行かず、そのままカードの下に重ねられるのが特徴だ」

「ゴッドバードが使ってましたよね!」

 

 きっとイベントの時のことでも思い出しているのだろう。

 島が興奮気味に言う。

 

「そうだな。まあもっとも、彼はレベルを持たないリンクモンスターを素材にするうえに、モンスターの数も何もかも無視するが」

(あれ? まともな使い方してるのって藤木くんだけ?)

 

 三者三様に変化球な召喚法を使う知り合い(敵を含む)を思い浮かべて、葵はそんなことを思った。

 

「後はこれらとは少し毛色が異なるが、ペンデュラム召喚というのもある」

 

 魔法カードと効果モンスターが混じったようなフレームのカードが2枚、画面上に表示される。

 

「ペンデュラムゾーンという場所に異なるペンデュラムスケールのカードを2枚置くことで、そのスケールの数字の間のレベルモンスターを何体でも特殊召喚できるというものだ。倒されてもエクストラデッキに送られ、再度ペンデュラム召喚で復活させられるのが特徴だね。まあペンデュラム召喚はそれ専用のデッキを作る必要があるから、今のデッキを強化したい財前君の要望からそれてしまうが」

「有名なデュエリストだと、カゲロウが使ってますね」

「そうだ。ペンデュラム召喚は一度に複数のモンスターを呼び出せるから、他の召喚法に繋げるのに適している。実際カゲロウもそういう使い方をしているしね」

 

 カゲロウはおそらく、LINK VRAINSの上位ランカーの中では唯一リンク召喚以外の召喚法を使うデュエリストだろう。

 

「それとエクストラデッキのカードではないが、儀式召喚」

 

 青い枠のカードと、その隣に物々しいイラストの魔法カードが表示される。

 

「儀式魔法カードを使うことで、自分のモンスターを生贄に儀式モンスターを呼び出す。他の召喚法に比べるとカードの消費が激しいから、組み込むならある程度、それに寄せた構築にする必要があるね」

 

 一通りの説明を終えると、水亀部長は部室の棚からカードバインダーを取り出す。

 

「ここにある程度カードは揃っている。試しに使ってみるといい」

「ありがとうございます」

 

 ◆

 

 それから数日後、遊作と尊は草薙のキッチンカーを訪れていた。

 

「草薙さん、レポートの解析結果が出たって」

「ああ」

 

 すると、集まったメンバーを見て、草薙は首を傾げる。

 

「美海ちゃんと葵ちゃんはどうした?」

「二人は今日は用事だ」

「確か、完全自動運転のリニアモーターカーの試乗会だって」

「SOLテクノロジー主催のイベントか。確か、今度提携する海外の企業と共同開発したんだったか」

 

 草薙は仕事中に見かけた大きな広告を思い返して呟く。

 

「今回は誘われなかったのか?」

「さすがに人数分用意できなかったらしい」

「そりゃあ残念だ。なら、俺達は男だけで寂しくいこうか」

 

 草薙さんは冗談めかして言うと、パソコンを操作してテキストファイルを開いた。

 

 ◆

 

 その頃、デンシティ中央駅のホームでは、多くの人が集まっていた。

 

「本日はお集まりいただきありがとうございます」

 

 壇上で司会を務めるのは八神だった。

 

「もう間もなく、我が社、SOLテクノロジー社と、ガンズレッドファクトリー社が共同開発した新型リニアモーターカーが到着します!」

 

 その言葉を合図に、ホームに一台の列車がやってきた。

 蒼と白を基調とした流線形のフォルム、光沢のある金属の車両、待ちに待ったリニアの到着に集まった人たちは湧いた。

 

「本機に搭載されておりますのは、我が社の開発したAI、天候、気圧、レールの状態などを自動で計測計算し、最適な運行を行います。これにより、ヒューマンエラーを廃した安全安心、そして最速確実な旅をお約束します」

 

 説明を終えると、集まった人がスタッフの手で見学と試乗に分けられる。

 その間に、八神は近くに待機していた道順の元へ歩み寄る。

 

「ふんっ、AIに全てを任せるなど、愚かな」

「まあそうおっしゃらずに、万が一に備えてあなたに警備をお願いしたんですから」

「まあいい。俺は受けた仕事はこなす」

 

 そう言って、道順はリニアに乗り込んだ。

 

 そんな彼らのやり取りなどつゆ知らず、別の待機列に並ぶ葵と美海が同じように列車に乗り込んだ。

 

「えーっと、席はあそこね」

 

 葵が自分達の座席を見つけて、そこへ向かおうとすると、

 

「財前さん!」

 

 後ろから抱き着かれて、振り返る。

 

「ゆ、夢乃さん!?」

 

 葵の背中に、憎たらしいその膨らみを自慢するように押し付けていたのは切花だった。

 

「夢乃さん。チケットに当選したんですね」

「まーね。今回は運がよかったよ。あ、席隣だね。早く座ろうよ」

 

 ぐいぐい来る切花に引っ張られ、三人は並んで座席に座った。

 

「まもなく、リニアは発車します」

 

 八神のアナウンスのすぐ後に、車内は一瞬だけ浮遊感に包まれる。

 

「「「おおー」」」

「それでは、皆さん。よい旅を!」

 

 そのアナウンスを合図に、リニアが動き出した。

 

「はやーい。景色全然見えない」

「最高時速は1000キロらしいです。まあ安全のために、その速度まで到達することはないらしいですが」

 

 リニアの車内には、現在の速度が分かるようにモニターが各車両の扉の上に取り付けられている。現在は時速300キロを超えたところだ。

 

「今日はどこまで行くんだっけ?」

「デンシティ中央駅から北上して、そこからグルッと回って駅まで戻ってくるそうです」

「なーんだ。途中で降りないんだ」

「あくまで試乗会ですからね。その代わり、リニアに関する催しがあるとか」

「あ!車内販売だよ!」

 

 子供のように興味を次々に移す切花に、二人は顔を見合わせて肩を落とした。

 

 やがて彼女達の元へ、車内販売のお姉さんがワゴンを押してやってきた。

 

「二人は、何が欲しいですか?」

「ボクはリンゴジュース」

「私はジンジャーエール」

 

 三人が飲み物とお菓子を買って、しばらく談笑していると、ふと、車内の照明が落ちた。

 

「これがさっき言ってた催し?」

「おそらくは……」

 

 しかし、いくら待ってもアナウンスも何も流れない。

 そこでふと、美海が車内の速度計に目をやると、その速度はもうすぐ時速1000キロに到達するところだった。

 

 ◆

 

 同刻、SOLテクノロジー管制室。

 リニアの動きを監視し、万が一異常が起きた際に遠隔で制御するためのこの部屋で、多くの社員が混乱していた。

 

「駄目です!制御受け付けません!」

「時速1000キロ到達!このままでは……」

 

 その時、部屋の巨大モニターにノイズが走る。

 画面に映し出されたのは、黒いフードと顔の上半分を覆う金色の鬼のようなマスク、配色とマスクのデザインこそ異なるがどこか見覚えのある衣装の男は、画面越しに宣言した。

 

「貴様らのリニアは俺達が乗っ取った!」

 

 周囲がざわつく。

 

「我々の要求を飲まなければ、一時間後にリニアはデンシティ中央駅に最高速度で突っ込む」

 

 その宣言に、管制室の社員達はパニックになる。

 

「皆さん落ち着いてください」

 

 八神が毅然とした態度で声を上げ、混乱する社員達を静める。

 

「要求とはなんでしょうか?」

「LINK VRAINSの全権限を我々に渡せ」

「……なるほど」

 

 彼のその要求を聞いて、八神は合点がいった。

 

「分かりました。使いを向かわせますので、くれぐれも乗客に危害は加えないようにお願いします」

「いいだろう」

 

 そこでモニターは切れて、元の画面に戻った。

 

「八神常務、どうするのですか!?」

「落ち着いてください。そのために、彼をリニアに乗せているのですから」

 

 八神はすぐにブラッドシェパードこと道順にメッセージを送って指示を出した。

 

 ◆

 

 八神から指示を受けて、ブラッドシェパードはすぐにリニアの電脳空間にログインしていた。

 

「奴らめ……」

 

 怒りに震えた声で、ブラッドシェパードは長い回廊を走る。

 

「ブラッドシェパード!」

 

 その時、後ろから声をかけられ、咄嗟に右手を向ける。

 

「ま、待ってください!」

 

 声の主は慌てて両手を上げる。

 そこに立っていたのは、美海とブルーエンジェルだった。

 

「ブルーエンジェル、それにゴッドバードのガールフレンドか……」

「あなたがここにいるということは、何かあったんですよね?」

「関係のないガキは引っ込んでいろ」

 

 ブラッドシェパードは脅すように右手を向ける。

 その時、別の方向から光弾が飛んでくる。

 

 三人は咄嗟にかわし、攻撃が来た方向を見る。

 

「やっぱりきやがったな。ブラッドシェパード!」

 

 そこには黒い制服を着た数人の男たちが立っていた。

 

「あの服装、ハノイの騎士?」

 

 白と黒が反転したようになっているが、そのフォルムは間違いなくハノイの騎士の制服だ。

 

「その通り、俺達は反AI同盟、人類をAIによる支配から解放するために、同胞たちを集めて結集した新生ハノイの騎士だ!」

「……なんか思想変わってない?」

「勝手に名乗っているだけでしょう。おそらくリボルバー達は関与していません」

「ここを通りたければ、俺達を倒してからにするんだな」

 

 彼らは一斉にブラッドシェパードに襲い掛かる。

 その隙に、美海とブルーエンジェルは通路の先へ向かう。

 

「お、おい!女二人に逃げられちまうぞ!」

「構わねぇよ。あいつらはボスに任せればいい」

「俺達の役目はこいつの足止めだ!」

 

 まず一人がブラッドシェパードの前に立ち、デュエルディスクを構える。

 

「いいだろう。速攻で蹴散らしてやる」

 

「「デュエル!」」

 

 ◆

 

 ブラッドシェパードを囮に、どうにか最深部に辿り着いた美海とブルーエンジェル、そこには一人の男が待ち構えていた。

 管制室のモニターに映っていた黒いハノイの騎士の服装に、鬼の仮面をつけた男だ。

 

「ブルーエンジェルと……ああ、ハノイの塔の時にいたやつか」

「あなたは……」

 

 男は答える代わりに、デッキから一枚のカードを抜いて掲げる。

 

「来い!クラッキング・ドラゴン!」

 

 彼の背後に、黒鉄の機械仕掛けのドラゴンが姿を現した。

 

「クラッキング・ドラゴン!?」

「俺の名はギーヴ!あの日、プレイメーカーに敗れた者だ!」

 

 最初にAiがLINK VRAINSに現れた際に、彼を追って現れたクラッキング・ドラゴンを操るハノイの騎士。

 

「リボルバー様からこのカードを授かり、あと少しでセカンド昇格だったところを……」

「ただの逆恨みじゃない!」

「黙れ!ハノイの騎士を壊滅させた貴様らを俺は絶対に許さない!」

 

 ギーヴはデュエルディスクを構える。

 

「さあデュエルだ。この先の制御端末を使いたければ、俺に勝つことだ」

 

 それを見て、美海が前に出ようとするが、ブルーエンジェルがそれを制止した。

 

「……美海、ここは私に任せて」

「……分かりました」

 

 ブルーエンジェルは自分のデュエルディスクを見つめる。

 

(この新しいデッキで、必ず勝つ)

 

「「デュエル!」」

 

 二人がデュエルを開始したその陰で、こっそり彼らの後をつけていたジャックナイフがデュエルの様子を覗いていた。

 

「やっぱり、ファーストの雑魚共か。プレイメーカーに負けたくせによくやるよ」

 

 ジャックナイフはバカにしたような視線をギーヴに送り、ブルーエンジェルの方へ視線を移す。

 

「さーて、浮かれたネットアイドルちゃんがどこまでやれるかな~?」

 

 ◆

 

 新生ハノイの騎士構成員とブラッドシェパードのデュエル。

 

「くくくっ、どうだ!俺のジャミングウォール・ドラゴンは!」

 

 黒い菱形のパーツがいくつも組み合わさった羽を広げる機械の竜が、ブラッドシェパードの前に立ちふさがっている。

 

ジャミングウォール・ドラゴン

効果モンスター

星7/闇属性/機械族/攻 0/守 4000

(1)このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードのレベル以下の相手のモンスターは攻撃できない。

(2)相手モンスターが戦闘・効果で与えるダメージは、そのカードのレベル×100となる。

(3)自分の闇属性・機械族モンスターが相手の効果の対象となった場合、手札・フィールドの機械族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。その効果を無効にする。

 

「こいつでお前のレベル7以下のモンスターは攻撃できない!そして、攻撃できるリンクモンスターも、レベルを持たないため、与えるダメージは0!永続(トラップ)、パルス・フィールドの効果で、効果破壊もされない!」

 

パルス・フィールド

永続罠

(1)このカードの発動時の効果処理として、手札からレベル7・8の闇属性・機械族モンスター1体を特殊召喚できる。

(2)自分のレベル7以上の闇属性・機械族モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドのレベルを持たないモンスターの効果は無効化される。

(3)自分フィールドの手札・墓地から召喚・特殊召喚されたレベル7・8の闇属性・機械族モンスターは相手の効果で破壊されない。

 

「この完璧な布陣、これでお前もワンターンキルはでき————」

 

 ドォォンッ!

 

 言い終わる前に爆発音がしたかと思うと、バトルドローン・ジェネラルがジャミングウォール・ドラゴンに突っ込み、その体をジャンクに変えていた。

 

「速攻魔法、リミッター解除。機械族モンスター1体の攻撃力を倍にする」

「くっ…‥」

「その程度で俺を止められると思ったか」

 

 すると、先程まで攻撃を封じられていたドローンが一斉に起動する。

 

「終わりだ!ダイレクトアタック!」

 

 一斉攻撃で、敵のライフは一気に削られる。

 

「さぁ、次はどいつだ?」

「ひっ……」

 

 恐怖に震える彼らに、ブラッドシェパードは右手を返して指をクイッと曲げて挑発する。

 

「来い、全員まとめて地獄へ送ってやる」

 

 ◆

 

 同刻、ギーヴとブルーエンジェルのデュエル。

 先攻はブルーエンジェルから。

 

「私はトリックスター・キャンディナを召喚」

 

 黄を基調とした衣装を着たアイドルがメガホンを携えて現れた。

 

「その効果でデッキからトリックスター・ライトステージを手札に加え、発動!」

 

 辺りが暗くなり、暗闇の中に色とりどりの光が灯る。

 

「ライトステージの効果で、デッキからトリックスター・リリーベルを手札に加える。リリーベルはドロー以外で手札に加わった時、特殊召喚できる!」

 

 大きなベルを揺らしながら、リリーベルが現れる。

 

「輝け!勇気と決意のサーキット!召喚条件はトリックスター2体。リンク召喚!トリックスター・ホーリーエンジェル!」

 

 アローヘッドから鞭を振り回しながら、白髪の女性が現れた。

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

ターン2 ギーヴ

 

「俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札のハック・ワームを特殊召喚できる」

 

 黒い機械の芋虫がうねりながら現れる。

 

「自分フィールドにレベル1の機械族モンスターが存在する場合、クラック・ワームを特殊召喚」

 

クラック・ワーム

効果モンスター

星2/闇属性/機械族/攻 800/守 200

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分フィールドにレベル1・7の機械族モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル7・8の闇属性・機械族モンスター1体を手札に加える。

 

「クラック・ワームが特殊召喚に成功した時、デッキからレベル7、もしくは8の闇属性の機械族モンスター1体を手札に加える。クラッキング・ドラゴンを手札に加える。そして俺はこの二体をリリースして、アドバンス召喚!出でよ!クラッキング・ドラゴン!」

 

 クラック・ワームとハック・ワームの体が消滅し、その残骸が寄り集まって、黒い竜の姿へと再構成された。

 

「さらに自分フィールドに通常召喚されたレベル7・8の機械族モンスターが存在する時、このカードを手札から特殊召喚できる!来い!クラックフォール・ドラゴン」

 

クラックフォール・ドラゴン

効果モンスター

星7/闇属性/機械族/攻 2700/守 0

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1)自分フィールドに通常召喚されたレベル7・8の機械族モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

(2)自分の闇属性・機械族モンスターは、そのモンスターのレベル以下の相手のモンスターの効果を受けない。

(3)このカードがモンスターゾーンに存在し、相手が自分の機械族モンスターの効果でダメージを受けた場合に発動できる。自分はそのダメージの数値分、LPを回復する。

 

「そして速攻魔法!クラッキング・サイクロンを発動!」

 

クラッキング・サイクロン

速攻魔法

このカード及びこのカードの効果の発動に対して、相手はカードの効果を発動できない。

(1)自分フィールドにレベル7以上の機械族モンスターが存在する場合に発動できる。相手の魔法・罠カードを2枚まで選んで破壊する。その後、自分フィールドにアドバンス召喚された「クラッキング・ドラゴン」が存在するなら、デッキからレベル7の闇属性・機械族モンスター1体を手札に加える。

 

「貴様の伏せカード2枚を破壊!このカードに対して、相手は効果を発動できない!」

 

 クラッキング・ドラゴンが口に風が集まり、緑の竜巻がブルーエンジェルのフィールドに放たれる。

 

「くっ!」

 

 竜巻により、セットされていた2枚のカードが砕け散る。

 

「さらに俺の場にアドバンス召喚されたクラッキング・ドラゴンがいるなら、デッキからレベル7の闇属性・機械族モンスターを手札に加える。バトルだ!クラックフォール・ドラゴンで、ホーリーエンジェルを攻撃!」

「私は墓地の(トラップカード)、トリックスター・フローラフィアーを除外して効果発動!」

 

トリックスター・フローラフィアー

通常罠

(1)自分の手札を3枚まで捨てる。その後、捨てた手札の枚数だけ相手の手札をランダムに選んで除外し、お互い捨てた手札の枚数だけドローする。

(2)墓地のこのカードを除外し、墓地のレベル4以下の「トリックスター」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。その後、レベル4以下の「トリックスター」モンスター1体を召喚し、守備表示にする。

 

「墓地からトリックスター・キャンディナを手札に加え、ホーリーエンジェルのリンク先に召喚!」

 

 紅い花弁が舞い、花吹雪の中からキャンディナが登場する。

 

「キャンディナの効果でデッキからトリックスター1枚を手札に。そしてリンク先にモンスターが出たことで、ホーリーエンジェルの効果で相手にダメージ!」

 

 ライトステージと合わせて、400のダメージがギーヴを襲う。

 

 ギーヴ:LP4000→3600

 

「そしてトリックスターモンスターの効果で相手がダメージを受けたことで、攻撃力アップ!」

 

 ホーリーエンジェル:攻撃力2000→2200

 

「だがクラッキング・ドラゴンの効果を知らないわけじゃないだろう。クラックフォール!」

 

 クラッキング・ドラゴンの体の球体が緑に灯る。

 

「相手モンスターが召喚・特殊召喚された時、そのレベル×200、攻撃力をダウンさせ、さらにその数値分、相手にダメージ!」

 

 球体から光線が放たれ、キャンディナの攻撃力を下げ、ブルーエンジェルにダメージを与える。

 

 ブルーエンジェル:LP4000→3200

 

「クラックフォール・ドラゴンの効果!自分の機械族モンスターの効果でダメージを与えた時、その数値分、自分のライフを回復する!」

 

 ギーヴ:LP3600→4400

 

「そしてバトル続行!ホーリーエンジェルを粉砕しろ!」

「私は手札のトリックスター・キャロベインを捨てて効果発動!」

「さっき手札に加えたカードか!」

「その効果で、ホーリーエンジェルの攻撃力を自身の元々の攻撃力分アップする!」

 

 攻撃力4200となったホーリーエンジェルが、クラッキング・ドラゴンを打ち砕いた。

 

「チッ、ならクラックフォール・ドラゴンでキャンディナを攻撃!」

 

 クラックフォール・ドラゴンがキャンディナを倒すが、守備表示なのでダメージは入らない。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

ターン3

 

「相手のターン開始時、俺は永続(トラップ)、パルス・フィールドを発動!」

 

 ブルーエンジェルのフィールドの周囲に、紫の雷が駆ける。

 

「その効果で、俺は手札からクラッキング・ワイバーンを特殊召喚!」

 

 フィールドを囲む雷が空へ向かい、空間に穴を開ける。

 そこから黒鉄の翼を蠢かす、飛龍が舞い降りた。

 

クラッキング・ワイバーン

効果モンスター

星7/闇属性/機械族/攻 2700/守 0

(1)自分フィールドの闇属性・機械族モンスター1体を除外して、このカードを手札から特殊召喚できる。

(2)自分フィールドの闇属性・機械族モンスターはレベルを持たない相手フィールドのモンスターの効果を受けない。

(3)相手がリンクモンスターの特殊召喚に成功した場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力をリンクマーカーの数×600ダウンさせ、その数値分、相手にダメージを与える。

 

パルス・フィールド

永続罠

(1)このカードの発動時の効果処理として、手札からレベル7・8の闇属性・機械族モンスター1体を特殊召喚できる。

(2)自分のレベル7以上の闇属性・機械族モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドのレベルを持たないモンスターの効果は無効化される。

(3)自分フィールドの手札・墓地から召喚・特殊召喚されたレベル7・8の闇属性・機械族モンスターは相手の効果で破壊されない。

 

「クラッキング・ワイバーンが特殊召喚されたことで、パルス・フィールドの効果発動!相手のレベルを持たないモンスターの効果を無効にする!」

 

 ホーリーエンジェルに電撃が浴びせられ、その力を奪われる。

 

「そしてクラッキング・ワイバーンがフィールドにいる限り、貴様はリンクモンスターを特殊召喚すれば、そのリンクマーカーの数×600のダメージを受ける」

「リンクモンスター封じ……」

 

 カリスマデュエリストであるブルーエンジェルがリンクモンスターを中心としたデッキを使うことは周知の事実。その対策をしているのは当然だろう。

 

 大型のドラゴンが立ち並ぶフィールドを見て、ジャックナイフはギーヴを軽蔑したような目線を送る。

 

「勝手に持ち出したカード使っといてドヤ顔とか、カッコ悪いな~」

 

 彼が使うクラッキング・ワイバーンとクラックフォール・ドラゴン、どちらもハノイの騎士の旧アジトにあったものを使っているのだろうと、ハノイの騎士のメンバーであるジャックナイフは推測する。

 

「まあでも、実際追い詰めてはいるよね。一応セカンド昇格候補だっただけはあるじゃん」

 

 そう言ってブルーエンジェルの方へ目を向ける。

 

(さぁ、君はどうする?)

 

「これで貴様の手は封じられた」

 

 ギーヴは下を向くブルーエンジェルに言い放つ。しかし、

 

「そうね……これまでの私なら」

 

 ブルーエンジェルの目は死んでいない。

 強く、前を見据えてデュエルディスクに手をかける。

 

「私のターン!」

 

 ドローしたカードを見て、彼女の顔に笑顔が灯る。

 

「まずはフィールド魔法!トリックスター・ライブステージを発動!」

 

 ライトステージの照明が落ち、辺りが暗闇に包まれる。

 

「なんだ!?」

 

 すると、ブルーエンジェルの元にスポットライトが灯り、その背後にピンクの巨大なハートとポップなデザインのスピーカーで飾られた巨大なステージが出現する。

 

「効果で墓地のキャンディナを手札に加え、そのまま召喚!」

 

 三度現れたキャンディナの効果で、ブルーエンジェルはデッキからカードを加える。

 

「さあ行くわよ!輝け!勇気と決意のサーキット!」

 

 その手を空へ掲げ、天上にアローヘッドを作り出す。

 

「召喚条件はトリックスター2体以上!私はキャンディナとリンク2のホーリーエンジェルをリンクマーカーにセット!リンク召喚!」

 

 二体のモンスターが三つの光となってアローヘッドに矢印を描く。

 

「勝利へのオンステージ!リンク3、トリックスターバンドVo(ヴォーカル)・ホーリーエンジェル!」

 

 アローヘッドより現れたのは、青を基調としたパンクなジャケットに衣装を変え、赤いアクセサリーに彩られたホーリーエンジェルだった。

 

「ダメージ覚悟でリンク召喚か。なら受けてもらうぞ!クラッキング・ワイバーンの効果発動!リンクマーカーの数×600攻撃力をダウンさせ、その数値分ダメージ!」

 

 クラッキング・ワイバーンが翼を広げると、緑の雷光が伝い、ホーリーエンジェルとブルーエンジェルへ降り注ぐ。

 

 ホーリーエンジェル:攻撃力2300→500

 ブルーエンジェル:LP3200→1400

 

「そしてクラックフォール・ドラゴンの効果で、ダメージの数値分、俺のライフは回復する!」

 

 ギーヴ:LP4200→6000

 

「まだまだこっからよ。私は装備魔法、トリックスターバンド・マイクを、ホーリーエンジェルに装備!」

 

 ホーリーエンジェルの前に金と青に縁取られたマイクスタンドが現れる。

 

トリックスターバンド・マイク

装備魔法

「トリックスター」リンクモンスターにのみ装備可能

(1)「トリックスターバンド・マイク」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。

(2)自分フィールドにトークンが存在せず、装備モンスターのリンク先にEXデッキから「トリックスター」モンスターが特殊召喚された場合に発動できる。トリックスタートークン(星1・光・天使族・攻/守0)1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたトークンはリンク素材にできない。その後、装備モンスターのリンク先のモンスターの数×200ダメージを相手に与える。

(3)装備モンスターのリンク先の「トリックスター」モンスターの攻撃力は、装備モンスターのリンク先のモンスターの数×200アップする。

 

「トリックスター・ライブステージの効果!トリックスターリンクモンスターがいる時、トリックスタートークンを特殊召喚!」

 

 ステージから羽の生えたハート型の風船が飛んでくる。

 

「そして、私は魔法カード、トリックスター・フュージョンを発動!」

「何!?」

「自分の手札・フィールドのモンスターで、トリックスターを融合召喚する!私はトリックスタートークンと、トリックスターバンドVo・ホーリーエンジェルを融合!この時、ホーリーエンジェルは、手札からトリックスターを捨てることで、フィールドに置いたまま融合できる!」

 

 ホーリーエンジェルの体から淡い光が飛び出て、揺らめきながらトークンと一つになる。

 

「聴かせて上げるわ!トリックスターの奏でる音楽を!融合召喚!トリックスターバンド・ベースメリッサ!」

 

 そして現れたのは、ダークグリーンの髪を靡かせ、ベースをかき鳴らす少女だった。

 

トリックスターバンド・ベースメリッサ

融合・効果モンスター

星6/光属性/天使族/攻 2000/守 2000

「トリックスター」リンクモンスター+光属性モンスター

(1)このカードが「トリックスター」リンクモンスターとリンク状態の場合、その「トリックスター」リンクモンスター及びそのカードのリンク先のモンスターは相手の効果の対象にならない。

(2)自分の「トリックスター」カードの効果で相手が効果ダメージを受ける度に発動する。その数値分、自分のLPを回復する。

(3)1000LP払って発動できる。除外されている「トリックスター・フュージョン」1枚を手札に加える。

 

「トリックスターバンド・マイクの効果!自分フィールドにトークンが存在せず、装備モンスターのリンク先にエクストラデッキからトリックスターが特殊召喚された時、トリックスタートークンを特殊召喚!」

 

 再びハート型の風船が飛んでくる。

 

「この効果で特殊召喚されたトークンはリンク素材にできない。そしてリンク先のモンスターの数×200のダメージを相手に与える!」

 

 ベースメリッサが重低音を鳴らし、それに合わせてホーリーエンジェルが歌を奏でる。

 

 二つの音が合わさってギーヴへと襲い掛かる。

 

 ギーヴ:LP6000→5600

 

「ベースメリッサの効果で、トリックスターが与えたダメージの数値分、私のライフを回復」

 

 ブルーエンジェル:LP1400→1800

 

「墓地のトリックスター・フュージョンを除外して効果発動!墓地からキャンディナを手札に加える!そしてベースメリッサの効果!ライフ1000支払うことで、除外されているトリックスター・フュージョンを手札に加える!」

 

 ブルーエンジェル:LP1800→800

 

「これは……」

 

 そこで彼女のデュエルを見ていた美海とジャックナイフはふと気付いた。

 

「最初の盤面に戻った」

 

 ホーリーエンジェルのコストに使ったカードも、融合魔法も手札に返り、盤面は融合モンスターが1体増えた状態だ。

 

 その事にギーヴも気付き、歯を食い縛ってブルーエンジェルを睨み付ける。

 

「つまり、ライフが続く限り……」

「そう。私は何度でも融合召喚できる。私は魔法カード、トリックスター・フュージョンを発動!」

 

 再びホーリーエンジェルの体から光が飛び出て、トークンに乗り移る。

 

「次のメンバーはこの娘!融合召喚!トリックスターバンド・ドラムリッカ!」

 

トリックスターバンド・ドラムリッカ

融合・効果モンスター

星8/光属性/天使族/攻 2500/守 2100

「トリックスター」リンクモンスター+光属性モンスター

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードが「トリックスター」リンクモンスターとリンク状態の間、相手のモンスターは召喚・特殊召喚成功時に効果を発動できない。

(2)自分の「トリックスター」カードの効果で相手がダメージを受ける度に発動する。ターン終了時まで、相手モンスター全ての攻撃力・守備力はそのダメージの数値分ダウンする。

(3)このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの「トリックスターバンド」モンスターの数まで相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

「トリックスターバンド・マイクの効果でトークンを特殊召喚し、相手に600ダメージ!」

 

 バンドメンバーが加わり、厚みの出た音がギーヴを襲う。

 

 ギーヴ:LP5600→5000

 

「ダメージの数値分、私のライフを回復」

 

 ブルーエンジェル:LP800→1400

 

「ドラムリッカの効果!トリックスターがダメージを与えた時、その数値分、相手モンスター全ての攻撃力をダウンさせる!」

「だが、クラックフォール・ドラゴンの効果で、俺のモンスター全ては自身のレベル以下のモンスター効果を……」

「ドラムリッカはレベル8、あなたのモンスターのレベルを超えているわ!いっけぇ!プレッシャーリズム!」

 

 軽快なパーカッションサウンドが響き渡り、二体の機械のドラゴン達の力を削ぐ。

 

 クラックフォール・ドラゴン:攻撃力2700→2100

 クラッキング・ワイバーン:攻撃力2700→2100

 

「墓地のトリックスター・フュージョンを除外して、キャンディナを回収。そのフュージョンは、ライフを1000払って回収!」

 

 ブルーエンジェル:LP1400→400

 

「トリックスター・フュージョンを発動!」

 

 三度、ホーリーエンジェルとトークンが融合させられる。

 

「この音色に酔いしれなさい!融合召喚!レベル7、トリックスターバンド・ギタースイート!」

 

 逆立った水色の髪と青い衣装、そしてボディが斧のようになったギターをかき鳴らして、ギタースイートが現れた。

 

「トリックスターバンド、全員集合!」

 

 バンドメンバーのモンスター四人がポーズを決めた。

 

「トリックスターバンド・マイクの効果でトークンを召喚し、相手に600ダメージ!さらにベースメリッサの効果でその数値分ライフを回復し、ドラムリッカの効果で相手モンスター全ての攻撃力を下げる」

 

 ギーヴ:LP5000→4400

 ブルーエンジェル:LP400→1000

 クラックフォール・ドラゴン:攻撃力2100→1500

 クラッキング・ワイバーン:攻撃力2100→1500

 

「ギタースイートの効果!ダメージの数値分、自身の攻撃力をアップする!」

 

 ギタースイート:攻撃力2200→2800

 

「ダメージを与えたことで、手札からトリックスター・ナルキッスを特殊召喚!さぁ、これでバトルよ!」

「くっ、俺は(トラップ)カード、和睦の使者を発動!」

 

 そこで、ギーヴのフィールドに伏せられたもう一枚のカードが開いた。

 

「これでこのターン、俺はモンスターを戦闘で破壊されず、ダメージを受けない」

「戦闘ダメージは、でしょ?」

 

 ブルーエンジェルはビシッと相手を指さす。

 

「バトルよ!まずはギタースイートで、クラッキング・ワイバーンを攻撃!」

 

 ギタースイートがギターをかき鳴らし、音波をクラッキング・ワイバーンに向けて飛ばす。

 

「和睦の使者の効果で、バトルによる破壊もダメージも無効!」

「トリックスターバンドVo(ヴォーカル)・ホーリーエンジェルの効果!トリックスターが攻撃する度に、相手に200ダメージ!ギタースイートの効果で、自身とリンク状態のトリックスターの与える効果ダメージは2倍!」

 

 ギタースイートの演奏に、ホーリーエンジェルの歌声が合わさる。

 激しくも美しい音色が、空気を揺さぶり、ギーヴのライフを減らす。

 

 ギーヴ:LP4400→4000

 

「ダメージを与えたことで、私のライフは回復。さらにあなたのモンスターの攻撃力はダウン」

 

 ブルーエンジェル:LP1000→1400

 クラックフォール・ドラゴン:攻撃力1500→1100

 クラッキング・ワイバーン:攻撃力1500→1100

 

「続けてベースメリッサで攻撃!ホーリーエンジェルの効果で400ダメージ!」

 

 ホーリーエンジェルの歌声に、ベースメリッサが伴奏する。

 

 ギーヴ:LP4000→3600

 ブルーエンジェル:LP1400→1800

 クラックフォール・ドラゴン:攻撃力1100→700

 クラッキング・ワイバーン:攻撃力1100→700

 

「ドラムリッカ、ナルキッスで攻撃!」

 

 ギーヴ:LP3600→3200→2800

 ブルーエンジェル:LP1800→2200→2600

 クラックフォール・ドラゴン:攻撃力700→300→0

 クラッキング・ワイバーン:攻撃力700→300→0

 

「トリックスタートークン、ホーリーエンジェルで攻撃!」

 

 ついに攻撃力が0となったことで、低攻撃のトリックスターでも戦闘破壊されずに攻撃が通せた。

 

 ギーヴ:LP2800→2400→2000

 ブルーエンジェル:LP2600→3000→3400

 

「だ、だが、これでお前の攻撃は終わり……」

「それはどうかしら」

 

 すると、どこからか拍手の音が聞こえる。

 

「今度はなんだ!?」

「アンコールよ」

 

 フィールドの照明が一旦消え、再度、彼女のフィールドの四体のトリックスターバンドにスポットライトが当てられる。

 

「トリックスターバンドVo(ヴォーカル)・ホーリーエンジェルの効果発動!このカードのリンク先に、トリックスターバンドが3種類存在するなら、もう1度バトルフェイズを行う!」

 

トリックスターバンドVo(ヴォーカル)・ホーリーエンジェル

リンク・効果モンスター

光属性/天使族/攻 2300/LINK3

【リンクマーカー:左下/下/右下】

「トリックスター」モンスター2体以上

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分の「トリックスター」モンスターの攻撃宣言時に発動する。相手に200ダメージを与える。

(2)フィールドのこのカードを融合モンスターの融合素材とする場合、このカードの代わりに手札の「トリックスター」カードを墓地へ送ることができる。

(3)このカードのリンク先に「トリックスターバンド」モンスターが3種類存在する場合、自分のメインフェイズ2に発動できる。もう1度バトルフェイズを行う。

 

「さあバトルよ!」

 

 既にギーヴに防ぐ術はない。

 四体のトリックスターバンドが奏でる音色が、彼のライフを奪い去った。

 

 ◆

 

 デュエルが終了し、ギーヴは地面に拳を打ちつけた。

 

「くそっ!」

「さぁ、観念なさい」

 

 ギーヴは立ち上がり、ブルーエンジェルを睨みつける。

 

「お、覚えておけ。ハノイの騎士は永遠に不滅だ!」

 

 その捨て台詞を残して、ギーヴのアバターは消えた。

 

「ふぅ、これで」

「まだです。早くリニアを止めないと!」

「あ、そうだった!」

 

 二人は制御装置の前に立つ。

 しかし、元々プログラムが得意でないブルーエンジェルはもとより、美海も触ったことのない高度なプログラムを前に何をしていいのか分からなかった。

 

「お前達、何をやっている?」

 

 ブラッドシェパードが追い付いてきた。

 

「どけ」

 

 彼女達を押しのけ、手早くコンソールを操作する。

 

「直ったぞ」

 

 赤く光っていたコンソールの色が緑に戻る。

 

「あ、ありがとうございます」

「お前たちは早く戻れ」

 

 ブラッドシェパードに促され、ブルーエンジェルと美海はログアウトした。

 

 ◆

 

 そして、リニアは無事駅に到着し、多くの人は裏で起きていたことを知らずに、試乗会は無事に終わった。

 

「二人とも、どこ行ってたの?」

「え、あ、ちょっとね?」

 

 切花の質問を誤魔化す。

 切花はさほど興味もなかったのか、彼女達から離れて、停車しているリニアを撮影し始めた。

 

「ところで、どうして融合モンスターだったのですか?」

 

 ジャックナイフに手ひどくやられた彼女は、融合だけは選択しないだろうと思っていた。

 けれど、実際に彼女がデッキを強化するために選んだ召喚法は、融合召喚だったので、美海はそれが気になっていた。

 

「私は、傷つけちゃったから」

 

 ────何も知らないくせに、恵まれて人間のくせに、偉そうに講釈垂れてんじゃねぇよクソが!

 

 何も知らずにかけた言葉が、彼の怒りを買った。

 彼の怒りも、憎しみも、葵には分からない。

 

「いつか、もう一度戦うことがあれば、その時は……そう思って」

「そうですか」

 

 美海は成長した主の姿に、思わず笑みがこぼれた。

 

「ふーん……」

 

 その会話に、写真を撮るふりをしながら聞き耳を立てていた切花は、左腕につけていたデュエルディスクに手を伸ばした。

 

 ◆

 

 同刻、LINK VRAINS内では、逃げてきたギーヴを含む自称新生ハノイの騎士のメンバーがいた。

 

「あんなネットアイドル如きに……」

 

 彼らは狼狽えながらも、周囲に気を配る。

 

「だがまだだ。俺達にはこのカードがある」

 

 それは廃棄されたハノイの騎士のアジトから持ち帰ったクラッキング・ドラゴンを始めとした機械族モンスターのカードだ。

 

「この力で今度こそ……」

「お前らなにしてんの?」

 

 その時、彼らの元に一人の少年が現れた。

 中性的な顔立ち、ポンチョ型のハノイの騎士の制服に身を包み、中学生くらいの身長で紫と赤が混じった短髪の少年だ。

 

「そ、そのマーク……」

 

 彼の服の左胸についた赤いマークを見て、ギーヴは目を見開いた。

 

「ハノイの騎士のサード……ジャックナイフか!?」

「せいかーい」

 

 彼はニコニコと笑いながら、首を90度近く横に曲げる。

 

「お前ら、何勝手なことしてんの?」

 

 笑顔が消える。

 彼らが恐怖で後退る中、ジャックナイフは左手の指を二本立て、こめかみに当てた。

 

「並列思考プログラム、限定解除」

 

 ジャックナイフの像が歪み、そのアバターを三つに分裂させる。

 

「タダで済むとか、思ってないよね?」

 

 ジャックナイフ達は一歩ずつ、彼らに近付き、デュエルディスクを構えた。

 

 ◆

 

 同刻、SOLテクノロジー社のメインサーバー内、その内部に侵入したライトニングは一人の女性と向き合っていた。

 

「やはり、あなたが裏で手を引いていたんですね」

 

 胸元が大きく開いたワインレッドのスーツを着こなし、濃い赤とオレンジが交じり合ったような髪色のポニーテールを揺らしながら、ゆっくりと彼に近付く。

 

 その後ろには、倒れた計四体のビットとブートが屍のように転がっている。

 

「あなたの計画は、リニアでテロを起こすことで、我々の注意を引き付け、もっとも厄介な相手であるブラッドシェパードを不在にすること。そしてあなたの誤算は……」

 

 彼女は左腕に着けたデュエルディスクを顔の横に近づける。

 

「私がとっても強かったこと」

 

 彼女、ナイトはそう言ってニコッと笑う。

 

「ふん、さすがだな」

「そりゃあ分かりますよ。リボルバーとかならともかく、あんな人達にうちのセキュリティを敗れるわけがありませんから。あなたは彼らのテロ計画に気付き、それを気付かれないように手を貸すことで、計画を実行させた」

「その通り、そして、私の目論見通り、必要なものは手に入った」

 

 ライトニングが右掌を出すと、その上にカード状のデータが出現した。

 

「悪いが、これ以上長居する気はない」

 

 ライトニングが指を鳴らすと、彼の姿は光となって消えた。

 ナイトは急いでメインサーバーのコンソールに触れ、すぐに履歴を確認する。

 

「持ち出されたデータは……ガンズレッドファクトリー社の仮想空間サービスの内部データ?」

 

 それは今度、LINK VRAINSと連携を開始するガンズレッドファクトリー社が運営する仮想空間の仕様書などの情報だった。

 

「何故こんなものを……」

「ナイト」

 

 すると、ビショップがサーバー内にログインしてきた。

 

「申し訳ございません。光のイグニスの確保には失敗しました」

「それはいい。だが、盗まれたデータの方だ」

「はい。使用目的がさっぱりなのですが……」

 

 ナイトはウィンドウをビショップの方に見せる。

 

「……引き続き、イグニスの動向を監視しろ」

「かしこまりました」

 

 ナイトとビショップはログアウトした。

 




トリックスターバンド、全員集合!
OCGではギターしかでないまま、解散してしまったトリックスターバンドを全員揃えて、ついでにカテゴリー化しました。
融合召喚軸で強化された葵ちゃんの今後の活躍にご期待ください
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