遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
レポートNo.04
一日目:実験開始
子供達を電脳ウイルスによって、専用の仮想空間に閉じ込めた。
必要な栄養は点滴により供給するが、ここを現実空間だと錯覚させるために、仮想空間内でも食事を行わせることにする。
これより、彼らに一日、50回をノルマにデュエルを行わせる。
拒否した場合や、意味のない長考などの遅延行為を行った場合はペナルティとして電撃による罰を与える。さらに敗北時にもペナルティを課す。
七日目:
彼らのデュエルタクティクスが予想以上だったため、AIデュエリストのレベルを一段階上昇させる。さらに、ノルマを70回まで増やした。
十三日目:
実験の進捗が芳しくない。敗北時のペナルティに加え、デュエルの戦績が一定以下だった場合には、食事の量を減らすことにした。
仮想空間内でも空腹は感じるため、生存本能を刺激することで、実験をさらに進める。
二十五日目:
デュエルの難易度をさらに上げることにした。
彼らのこれまでの戦い方や、デッキの内容から彼らに対してより強くなるように、AI側のデッキ内容を調整。
三十九日目:
ついにイグニスが自我を持った。
まだ完成には程遠いが、実験はひと段落したと言える。
私は子供達の解放を上に要求したが、受け入れられることはなかった。
四十二日目:
脳にさらなる負荷をかけるために、デュエルのノルマを100回まで増やした。
ペナルティの内容を変更。子供達に合わせて、それぞれがより恐れるものに変更。
また、勝利時の報酬として、AIが使用したカードの中から好きなカードを1種類、3枚を与えた。
デッキを考えさせることで、思考能力を強化すると同時に、報酬を与えることで勝つことへの欲求を強めるためだ。
六十七日目:
イグニスがデータマテリアルを生み出す能力を獲得した。
上の目的は叶ったので、私達は子供達の解放を要求したが、やはり受け入れられることはなかった。
◆
草薙のキッチンカー内、
最後まで読み終えたところで、葵は震える手で口を覆っていた。
「ひ、酷い……」
実際に実験を受けていた三人は、暗い顔をしている。
彼らの頭の中で、この記録だけは分からない恐怖や絶望が反芻されているのだろう。
「その、どうする? もう実験の詳細が書かれたレポートは手に入ったわけだけど」
「まあ、SOLを告発する証拠としては十分ですが……」
美海は葵の方を見る。
彼女としては、大切な恩人である葵や晃が謂れのない誹謗中傷に晒されるのは避けたいだろう。
「俺も、財前が酷い目に遭うくらいなら、レポートを公開する気はない」
「で、でも藤木くん……」
「俺はそれよりも、気になることがある」
すると、遊作はレポートを閉じて、かわりに別の画面を開いた。
それはこれまでのレポートの解析結果だ。
遊作はそれを指さす。
「テキストデータにしては、少し重くないか?」
彼の言う通り、通常のテキストデータに比べて、そのファイルサイズは三倍近くある。
「えーっと、僕はよく分からないんだけど、暗号化? とかのせいじゃないの?」
「いや、ロックを加味してもこのファイルサイズはおかしい」
「つまり、このレポートには、今までのレポートの内容以外にも、まだ別のものが隠されていると」
遊作は頷く。
「レポートはまだ続きがある。全て集めて、真相を明らかにする」
◆
LINK VRAINSの進入禁止エリア、そこではあるものが建造されていた。
楕円型の金属がいくつも重なってできた巨大な扉だ。
「ガンズレッドファクトリー社のVR空間へのアクセスポイント、もうすぐできますね」
「ああ」
その様子を、ナイトとビショップはその光景をログインして眺めていた。
「ヘイ!Mr.ビショップ!」
すると、彼らの元に、一人の男が現れた。
背の高いサングラスをかけた黒人の男で、スーツの左胸にはGの文字をかたどったバッジがついている。
「メイソン様、どうも」
ナイトが頭を下げ、ビショップがメンソンと握手をかわす。
彼こそがガンズレッドファクトリー社の代表取締役、メンソンである。
「そちらが、新型AIデスカ?」
メンソンの視線が、彼らの後ろに立つ白い人型の
「はい。IGS-000シリーズ、タイプγです」
「こんにちは」
今までの機械的な声から、かなり人の近い、少年のような声で挨拶する。
「ハロー」
タイプγとも握手を交わし、メイソンは二人の方を向き直る。
「いよいよサービス開始デスガ、ハッカーのタイショは十分デスカ?」
「もちろんです。タイプγの量産体制も整っています」
ビショップが自慢げに説明すると、メイソンも満足そうな顔をする。
「楽しみにシテマスヨ」
そう言って、メイソンはログアウトする。
「ナイト、あれからイグニスに動きはあったか?」
「いえ、しかし、ガンズレッドファクトリー社の情報を探っていたのですから、このタイミングで何かしらの行動は起こすものと思われます」
「そうか」
すると、不意にナイトのデュエルディスクに通知音が鳴る。
「お、ようやくですか」
「どうした?」
ビショップが怪訝な顔をすると、ナイトがデュエルディスクの画面を見せる。
「どうやら、網にかかったみたいですよ」
◆
LINK VRAINSのビジネスエリア、その使われていないビルの中を、プレイメーカーは探索していた。
「こんなとこに鴻上レポートがあんのか?」
プレイメーカーは例の都市伝説掲示板で情報を見つけて、再びビジネスエリアに一人で訪れていた。
今回は葵と尊がランキングデュエルがあるとのことで、葵のサポートである美海を含め三人とも欠席だ。
「この近くに、確かに気配がある」
すると、通路の陰から一人の女性が現れた。
「ッ……誰だ!?」
現れたのは濃い赤とオレンジが混じった髪色のポニーテールに、胸元の大きく開いたワインレッドのスーツを着こなす女性だった。
「来ましたね。プレイメーカー」
「あんたは……」
「初めまして、ではありませんね。別の姿で一度お会いしていますから」
ピンと来ていない様子のプレイメーカーに、彼女は名乗る。
「ほら~、や・が・み、ですよ?」
その名乗りを聞いて、Aiは彼女を指差した。
「あ!イベント司会のお姉さん!」
「正解です。賢いですね、闇のイグニスさん。改めて自己紹介しますね。私はSOLテクノロジー常務取締役兼、専務秘書を勤めております。八神零那、コードネームはナイトです」
「……なるほど、これは罠か」
目の前の女性、ナイトに対してプレイメーカーは警戒を強める。
「そんな怖い顔しないでくださいよ。レポートならちゃんとここにありますよ。まあ私達が以前回収したNo.7ですけど」
そう言って、彼女は手元にカード状のデータを出現させる。
「私はあなたとビジネスの話をしに来たんですから」
「ビジネスだと?」
「はい。私達SOLテクノロジー社は、このLINK VRAINS運営のために、多くのデータマテリアルを必要としています。そこで闇のイグニスさん。あなたにお力添えをしていただきたいのです」
「お、俺?」
Aiは自分を指差して首を傾げる。
「データマテリアルを生み出すイグニスの能力、それを貸して頂ければ、私達はあなた達に危害は加えません」
「どういうつもりだ? これまで散々無理やり奪おうとしていたくせに」
「私達の目的の一つに、IGS-000シリーズ、もうご存じだと思いますが、過去に製作されたイグニスのプロトタイプの復元というのがあります。そのデータ収集のためにもイグニスは必要だったのですが、そもそもイグニスが協力してくれれば、IGS-000の完成は絶対必要ではありません」
彼女はニコッと笑いかける。
「どうせなら、誰も傷付かないハッピーな方法の方がいいに決まってますから」
「……断る」
だが、プレイメーカーはその提案を一蹴した。
「どうしてでしょうか? 報酬の話なら……」
「あんたは信用できない」
プレイメーカーに睨まれ、ナイトは深くため息を吐く。
「……私、子供は好きなんですけど、あんまり子供からは好かれないんですよね」
すると、ナイトは左手を掲げてデュエルディスクを構える。
「商談の続きです。
「いいだろう」
「「デュエル!」」
ターン1 ナイト
「私は永続魔法、
永続魔法
(1)自分のモンスターがリリースされる毎に、リリースされたモンスター1体に付き、このカードにオーバータイムカウンターを置く。
(2)自分の「セントラルオーダー」モンスターの攻撃力は、このカードのオーバータイムカウンターの数×200アップする。
(3)自分の「セントラルオーダー」カードが相手の効果でフィールドを離れる場合、代わりにこのカードのオーバータイムカウンター2つを取り除くことができる。
「
現れたのはスーツのような黒い鎧を着た騎士だ。
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻 1800/守 1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードの召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から「
(2)このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「セントラルオーダーロード」モンスター1体を手札に加える。自分フィールドのモンスターが「セントラルオーダー」モンスターのみの場合、このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、戦士族の「セントラルオーダーロード」モンスターをアドバンス召喚できる。
「召喚に成功した時、デッキから同名モンスターを可能な限り特殊召喚します」
アライアンスが剣を構えると、その左右に同じ姿のモンスターが出現する。
「ライアンスは特殊召喚に成功した時、デッキからセントラルオーダーロード1体を手札に加える。そして、自分フィールドのモンスターがセントラルオーダーのみの場合、戦士族のセントラルオーダーロード1体をアドバンス召喚できる。私はアライアンス3体をリリース!」
3体のモンスターが天へと吸い込まれる。
「アドバンス召喚。
天より玉座が降ってくる。
そこに腰かけるようにして現れたのは、巨大な剣を携えた王だった。
効果モンスター
星10/闇属性/戦士族/攻 3000/守 3000
このカードをアドバンス召喚する場合、モンスター3体をリリースしなければならない。
(1)このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。自分の墓地からレベル6以下の「セントラルオーダー」モンスターを可能な限り、守備表示で特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は「セントラルオーダーロード」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。
(2)アドバンス召喚されたこのカードがフィールドに表側表示で存在する場合に発動できる。自分フィールドの「セントラルオーダー」モンスター1体と、相手フィールドのモンスター1体をリリースできる。
(3)アドバンス召喚されたこのカードが戦闘・相手の効果で破壊されて墓地へ送られた場合に発動できる。デッキ・墓地から「征令締結」1枚を手札に加え、このカードを墓地から特殊召喚する。
「その効果で、生贄となった部下達を復活させます」
グッドウィールの横に、三体のアライアンスが蘇る。
「そして永続魔法、
彼女のフィールドのモンスターの攻撃力は600アップする。
「私はこれでターンエンド」
ターン2 プレイメーカー
「俺はリンクスレイヤーを特殊召喚。」
ヤマネコを象った鎧をつけた戦士が現れる。
「さらにレディ・デバッカーを通常召喚。効果でデッキからサイバース・コンバーターを手札に加え、それを特殊召喚!」
プレイメーカーのフィールドに三体のモンスターが並ぶ。
「現れろ、未来を導くサーキット!」
リンクスレイヤーとレディ・デバッカーがアローヘッドに吸い込まれる。
「リンク召喚!スプラッシュ・メイジ!」
白いローブの魔術師が現れ、先端に泡を象った飾りのついた杖をクルッと一回転させる。
「効果で墓地からレディ・デバッカーを特殊召喚。現れろ、未来を導くサーキット!召喚条件は効果モンスター2体以上!リンク召喚!来い、デコード・トーカー!」
アローヘッドより、青い甲冑を身にまとった電脳の騎士が降臨した。
「さらにアドラ・ブロッカーを特殊召喚!」
デコード・トーカーのリンク先に、首が二又に分かれた水蛇が現れる。
アドラ・ブロッカー
効果モンスター
星2/水属性/サイバース族/攻 300/守 1500
(1)自分のリンクモンスターのリンク先に、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2)自分または相手のモンスターの攻撃宣言時に墓地のこのカードを除外し、フィールドのサイバース族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはこのターンに1度だけ戦闘では破壊されず、このターンそのモンスターのコントローラーが受ける戦闘ダメージは1度だけ0になる。
「現れろ、未来を導くサーキット!リンク召喚!フレイム・アドミニスター!」
アドラ・ブロッカーとサイバース・コンバーターがリンク素材となり、赤とオレンジを基調とした巨大ロボットが現れた。
「フレイム・アドミニスターの効果で、俺のリンクモンスター全ての攻撃力を800アップ!さらに、デコード・トーカーは、自身のリンク先のモンスターの数×500、攻撃力をアップする!」
デコード・トーカーのリンク先にはフレイム・アドミニスター、そしてナイトのフィールドにいるアライアンスがある。
これにより、デコード・トーカーの攻撃力4100。グッドウィールの攻撃力3600を上回った。
「バトルだ!デコード・トーカーで、グッドウィールを攻撃!」
デコード・トーカーが大剣を振り下ろし、グッドウィールを粉砕する。
ナイト:LP4000→3500
「ふふふっ、やりますね」
エースモンスターが倒されたというのに、ナイトは余裕の表情だ。
「ではお見せしましょう。セントラルオーダーの本当の力を。私はグッドウィールの効果発動!」
地面に黒い穴が開き、そこからグッドウィールが這いあがってくる。
「アドバンス召喚されたこのカードが破壊された時、墓地から自身を特殊召喚し、デッキから
「……俺はフレイム・アドミニスターで、アライアンスを攻撃!」
フレイム・アドミニスターがその大きな腕で、アライアンスを殴り飛ばす。
「アライアンスは守備表示なので、ダメージはありません」
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン3
「くそ、せっかく倒したグッドウィールが復活しちまった」
Aiは椅子に座したまま動かないグッドウィールを見つめて悔しそうに言う。
「ご安心ください。グッドウィールはアドバンス召喚された状態でなければ効果を発動できません。今はただのバニラ、通常モンスターとなんらかわりません」
「そっか、よかったぁ」
Aiは安堵のため息を漏らす。
「お前、そんな甘い相手だと思うか?」
「いや全く」
遊作の言う通り、彼女は余裕の表情を崩さない。
「まずは征令アサインを召喚」
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻 1400/守 500
(1)このカードの召喚に成功したターン、自分はEXデッキからモンスターを特殊召喚できず、通常召喚に加えて1度だけ、「セントラルオーダー」モンスター1体を召喚できる。
(2)このカードがリリースされた場合、自分フィールドのモンスターが「セントラルオーダー」モンスターのみのなら発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。
「私はこのターン、通常召喚に加えて1度だけ、セントラルオーダーを召喚できます。私はアライアンスとアサインをリリースして、アドバンス召喚!出でよ、
ナイトの後ろから、白い騎馬に乗った騎士が駆けてきた。
効果モンスター
星7/闇属性/戦士族/攻 2400/守 2400
(1)アドバンス召喚されたこのカードは、特殊召喚された相手モンスターの効果を受けない。
(2)このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードの攻撃力は、このカードの元々の攻撃力分アップする。
(3)このカードがリンクモンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードの攻撃力は、そのリンクマーカーの数×1000アップする。
(4)アドバンス召喚されたこのカードが効果でフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。その後、デッキから「セントラルオーダー」装備魔法カード1枚を手札に加える。
「リリースされたアサインの効果で1枚ドロー。さらに
「儀式魔法だと!?」
グッドウィールの足元に魔法陣が描かれ、その周囲に蒼い炎が灯る。
「自分の手札、フィールドのモンスターを墓地へ送り、手札からセントラルオーダー1体を儀式召喚。この時、私のフィールドにレベル10のセントラルオーダーロードがいるなら、デッキから儀式召喚できる」
「で、デッキから!」
「さあ行きますよ!私はグッドウィールをリリース!」
魔法陣の中に、グッドウィールは飲み込まれる。
「数多の犠牲の元、その利を我が手に!儀式召喚!」
魔法陣を囲む十の炎が集まり、一つとなる。
「出でよレベル10、
炎の中から現れたのは、くすんだ青の鎧をまとい、四本の大剣をその周囲に突き立てる巨人だった。
儀式・効果モンスター
星10/闇属性/戦士族/攻 4000/守 4000
「征令締結」により降臨
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない
(1)フィールドのレベル10の「セントラルオーダーロード」モンスター1体のみをリリースして儀式召喚されたこのカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果で破壊さない。
(2)自分・相手のメインフェイズに発動できる。墓地からレベル9以下の「セントラルオーダー」モンスター1体を特殊召喚する。
(3)自分フィールドのレベル9以下の「セントラルオーダー」モンスターが攻撃を行う攻撃宣言時に発動できる。そのモンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで倍にする。そのモンスターはバトルフェイズ終了時にリリースされる。
「儀式モンスターが切り札だったのか……」
「リリースされたことで、ジェイルにさらにカウンターを置く。グレートウィールの効果発動。墓地からアライアンスを特殊召喚。さあバトル!ホワイトナイトで、デコード・トーカーを攻撃!」
騎馬を駆り、デコード・トーカーへ向けて突っ込む。
「
「けど、それじゃあデコード・トーカーには届かないぜ」
「ここでグレートウィールの効果発動!」
グレートウィールが右手をホワイトナイトに向けると、その首に首輪が出現する。
「自分のセントラルオーダーの攻撃時、バトルフェイズ終了時にリリースされるかわりに、その攻撃力を倍にする!」
これでホワイトナイトの攻撃力は一気に7200まで上昇し、デコード・トーカーへ向けて剣を振るう。
「まだ終わりじゃありませんよ。ホワイトナイトは特殊召喚された相手モンスターと戦闘を行う時、自身の元々の攻撃力分、攻撃力をアップ。さらにリンクモンスターと戦闘を行うなら、そのリンクマーカーの数×1000攻撃力をアップする」
「こ、攻撃力12600!?」
そのあまりの火力に、Aiが目玉を飛び出させる。
「くっ!俺は墓地のアドラ・ブロッカーの効果!」
デコード・トーカーに攻撃が向かう前に、アドラ・ブロッカーが立ちふさがる。
「このカードを除外することで、戦闘破壊を1度だけ無効に!」
デコード・トーカーの破壊はどうにか免れ、その攻撃の余波もアドラ・ブロッカーが受け止める。
「さらにこのターン、コントローラーが受けるダメージも1度だけ0になる」
「あら残念。けどまだ終わりませんよ。グレートウィールで、フレイム・アドミニスターを攻撃!」
グレートウィールが大剣を投げつけて、フレイム・アドミニスターを粉砕する。
プレイメーカー:LP4000→2000
「フレイム・アドミニスターが破壊されたことで、デコード・トーカーの攻撃力は2300までダウン。アライアンスでデコード・トーカーを攻撃!この瞬間、グレートウィールの効果で、攻撃力を倍にする!」
攻撃力6000となったアライアンスがデコード・トーカーに襲い掛かる、
これを喰らえばプレイメーカーの負けだ。
「俺は
リンク・リアライブ
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1)自分の墓地のリンクモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。このターン、相手モンスター全ての攻撃力を、この効果で特殊召喚されたモンスターのリンクマーカーの数×1000ダウンさせる。この効果発動後、ターン終了時まで、相手が受ける戦闘ダメージは0になる。
「墓地からフレイム・アドミニスターを特殊召喚!」
デコード・トーカーのリンク先に、フレイム・アドミニスターが蘇る。
「そして、相手モンスター全ての攻撃力を、特殊召喚されたフレイム・アドミニスターのリンクマーカーの数×1000ダウンさせる!」
デコード・トーカーの攻撃力は3600まで上昇し、対してバトルしているアライアンスの攻撃力は4000までダウン。
デコード・トーカーは破壊されるが、その戦闘ダメージは400まで抑えられた。
プレイメーカー:LP2000→1600
「では、アライアンスでフレイム・アドミニスターを攻撃。グレートウィールの効果で攻撃力を倍にする」
だが、さっきのトラップで、攻撃力1000まで下がったアライアンスは倍にしても攻撃力2000、フレイム・アドミニスターとは相打ちとなる。
「バトルフェイズ終了時、グレートウィールの効果を受けたホワイトナイトとアライアンスはリリースされる」
二体のモンスターに付けられた首輪が光り、その体を消滅させる。
「そしてリリースされたことで、ジェイルにカウンターを2つ置く。そしてアドバンス召喚されたホワイトナイトは、効果でフィールドから墓地に送られた時、墓地から特殊召喚できる」
地面に黒い穴が開き、そこからホワイトナイトが飛び出してくる。
「そしてデッキから装備魔法、
装備魔法
「セントラルオーダー」にのみ装備可能
(1)装備モンスターは相手の効果の対象にならない。
(2)装備モンスター以外の自分の「セントラルオーダー」モンスターは相手の攻撃対象にならない。
「これで装備モンスターは効果の対象にならず、あなたは装備モンスター以外のモンスターを攻撃対象にできなくなりました」
「くっ……」
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン4
「サイバース・ガジェットを召喚」
三頭身のロボットが現れ、左手のガジェットから地面に向けてアームのついたコードを伸ばす。
「その効果で、墓地からサイバース・コンバーターを特殊召喚」
伸ばしたアームで、地面からサイバース・コンバーターを引っ張り上げる。
「現れろ、未来を導くサーキット!リンク召喚!アップデートジャマー!」
背中にパラボラアンテナのついた箱を背負った少年がアローヘッドより現れた。
「サイバース・ガジェットが墓地に送られた時、フィールドにガジェット・トークンを特殊召喚。現れろ、未来を導くサーキット!」
アップデートジャマーとガジェット・トークンがアローヘッドに吸い込まれる。
「リンク召喚!リンク3、エンコード・トーカー!」
現れたのは薄い水色の装甲をまとい、大盾を構えた電脳の騎士だ。
「俺は魔法カード、死者蘇生を発動!墓地からフレイム・アドミニスターを、エンコード・トーカーのリンク先に特殊召喚!」
フレイム・アドミニスターが再度蘇る。
「これでバトル────」
「バトルフェイズ開始時、は
デグレーション・ドロー
通常罠
(1)自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を半分にし、下がった数値1000に付き、自分はデッキから1枚ドローする。
「ホワイトナイトの攻撃力を半分にし、下がった数値1000に付き、1枚ドローする」
ナイトはカードを2枚ドローする。
「自分のモンスターの攻撃力を下げた?」
「これは……」
「ふふっ、プレイメーカーさんは気付いたようですね。そう。ホワイトナイトはエンコード・トーカーの効果対象から外れた」
エンコード・トーカーの効果は、リンク先のモンスターが自身より攻撃力の高いモンスターとバトルする時、その戦闘による破壊とダメージを無効にし、バトルした相手モンスターの攻撃力分、自分のモンスターの攻撃力を上げる効果を持つ。
そして、ホワイトナイトの効果は、ダメージ計算時に攻撃力をアップする効果。
「あなたのデュエルを知っていれば、この状況をエンコード・トーカーによって突破しようと考えることは容易に想像がつきます。しかし、エンコード・トーカーの効果はダメージ計算”前”に発動する効果。そして私のホワイトナイトの効果はダメージ計算”時”に攻撃力を上げる効果。
攻撃力2000のフレイム・アドミニスターで攻撃しても、まだホワイトナイトの攻撃力は2000のまま。エンコード・トーカーの効果は発動しません」
そして、ホワイトナイトと戦闘が始まれば、ホワイトナイトはその力で自分の攻撃力を上げて返り討ちにできる。
「装備魔法の効果でホワイトナイト以外を攻撃することはできない。さあ、潔くここはターンエンドして、次のターンに賭けてみますか?もっとも、次のターンなんてくれば、ですけどね」
プレイメーカーの手札は残り1枚。
彼女が把握する限りでは、墓地に有用な効果を持ったカードはない。
ナイトは既に勝利を確信していた。
「いっそ諦めるのもいいかもしれませんね。だって私は、このデュエルで負けたら、イグニスを渡せなんて一言も言ってませんから」
商談の続きと言っただけで、このデュエルに何かを賭けるような話はしていない。
「諦めるということを覚える良い機会ですよ?」
「……いや、バトルだ!フレイム・アドミニスターで、ホワイトナイトを攻撃!」
だが、プレイメーカーは折れない。
フレイム・アドミニスターはホワイトナイトへと果敢に向かう。
「ッ! 何をする気だ?」
ナイトの視線が彼の残された一枚の手札へと向く。
そして彼が切ったその手札は、
「ダメージステップ開始時、俺は速攻魔法!禁じられた聖杯を発動!」
モンスター1体の攻撃力を400上げるかわりに、その効果を無効にする速攻魔法だ。
「言っておきますが、ホワイトナイトは装備魔法の効果で相手の効果の対象になりませんよ?」
「俺が選ぶのはフレイム・アドミニスターだ!」
フレイム・アドミニスターの頭上に黄金の杯が現れ、そこから液体が降り注ぐ。
「フレイム・アドミニスターの攻撃力は2000、だがそれは、自身の効果によって上昇しているだけだ。本来の攻撃力は1200。効果が無効になったことで、禁じられた聖杯の上昇分を合わせても1600だ!そしてエンコード・トーカーの効果!」
エンコード・トーカーが、フレイム・アドミニスターに向けて盾を投げる。
「バトルによる破壊とダメージを無効にする!」
「くっ……永続効果なので、ホワイトナイトの攻撃力は6400に上昇します」
ホワイトナイトが剣を向けるが、それはエンコード・トーカーの盾によって防がれ、その力を吸収する。
「バトル終了時、エンコード・トーカーの攻撃力をホワイトナイトの攻撃力分、すなわち6400アップする!」
これでエンコード・トーカーの攻撃力は8700まで上昇し、ホワイトナイトへと向かう。
「行け!エンコード・トーカー!ファイナルエンコード!」
エンコード・トーカーが盾を投げて、ホワイトナイトに突き刺した。
ナイト:LP3500→2200
「しかし、これであなたの攻撃は終わりです」
「いやまだだ!アップデートジャマーの効果!このカードをリンク素材としたモンスターは、そのターン、2回攻撃できる!」
エンコード・トーカーは再び動き出し、グレートウィールへと狙いを定める。
「エンコード・トーカーで攻撃!ファイナルエンコード!」
◆
デュエルが終了すると、ナイトはプレイメーカーに称賛の拍手を送る。
「素晴らしいです」
「あんた、何が目的だったんだ?」
「さっきも言いましたが、商談ですよ。今回は不成立でしたが」
ナイトはそう言って肩を落とす。
「では、私はこれで失礼します」
ナイトはログアウトした。