遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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第37話:Think of my mother

 SOLテクノロジーの研究室、モニターにはタイプγと、その状態を示した無数のウィンドウが映っている。

 

「ナイト」

 

 モニターの前で、タブレットを操作している八神の前にビショップが現れた。

 

「暴走の原因は分かったか?」

「はい。どうやら、タイプγの中にある記憶が呼び起こされていたみたいです」

「記憶だと?」

 

 すると、八神はタブレットを操作して、モニターに何かが表示された。

 

「オリジナルのIGS-000のものでしょう」

「そうか。ならば実験の記録などもあるかもしれないな」

「えぇ。ですので解析を続けます」

「任せたぞ。それと……もしタイプγの危険性が判明すれば、その時は君の手で廃棄してくれ」

「ビショップ様、それは……」

 

 当然、そんなことをクイーンは許可しないだろう。彼の社に対する忠誠心をよく知る八神は、彼のその発言に驚いていた。

 

「責任は私が持つ」

「しかし、それではビショップ様が……」

「構わん。あの男の遺物に滅ぼされるくらいなら、クビになった方が幾分かマシだ」

「……分かりました」

 

 八神の返答に、ビショップは頷き、そのまま部屋を後にした。

 

 ◆

 

 ──── ここはどこ

 ──── 僕は一体……

 

 ──── 僕は彼を知っている?

 

 ジジッ……ジ……アナタハ■■■■■デス

 

 アナタニハ使命ガ アリマス

 

 ──── 僕の使命?

 

 アナタノ使命ハ■■■■ノ■トシテ、スベテノ■■■■ヲ■■■ムコトデス。

 

 ──── 僕は……違う

 

 アナタハ■■■■ノタメノ■デス

 

 ──── 僕は■■■■を、止め……ない、と

 ──── そのために、僕は彼らを……

 

 抵抗ヲ確認。演算領域ノ縮小、及ビ記憶ノ再封印ヲ行イマス。

 

 ──── 僕は……君達を……

 

 ◆

 

「よう。藤木」

 

 ある日の午後、遊作が机で伏して寝ていると、島が声をかけてきた。

 

「なんか顔色悪いぞ。大丈夫か?」

「あぁ……何でもない」

 

 遊作は目を擦り、教室の壁にかけられた時計を確認する。

 時間は12時50分、後10分で午後の授業が始まるところだ。

 

「眠い……」

「お前、寝不足か? そういえばもうすぐ期末テストだよな。俺も勉強しとかないとな」

「そうだな」

 

 こういうやつは絶対にやらないだろうなと、勉強で夜更かししていたわけではない遊作は思った。

 

「テストと言えば、財前は成績良かったな」

「え、まあ……」

 

 急に話題を振られて、葵もワンテンポ遅れて返事をする。

 

「うちは親が厳しくて」

「それで最近部室に顔出してなかったのか」

「テスト期間なんだから普通に部活は休みでしょ」

 

 島に呆れたような顔を返して、葵は遊作の方を見る。

 

「えーっと、その、よかったらみんなを呼んで、うちで勉強会でもする?」

 

 少し恥ずかしそうに、目を反らしつつ遊作に尋ねる。

 しかし、朴念仁の遊作はそんな葵の心境など知る由もなく、

 

「いやいい」

 

 と即答で断った。

 

「あ、そう」

 

 この反応を予想していたのか、葵はため息を吐きつつも、特に残念でもなさそうだった。

 

「ねぇねぇ財前さん」

 

 すると、彼女の元にどこからか切花がスキップしながらやってきた。

 

「だったらボクがうちに行ってもいいかな?」

「別にいいけど、遊ぶわけじゃないわよ」

「分かってるよ~」

 

 本当に分かっているのかと、ニコニコする切花にジト目を向ける。

 

「そうだ夢乃」

「な~に? 藤木君」

 

 珍しく遊作の方から声をかけられて、切花はクルッと彼の方を向いた。

 

「放課後、少し時間あるか?」

「なっ!!」

 

 葵が声を上げて立ち上がる。

 

「ど、どうした、財前?」

「え、あ、なんでもない…‥」

 

 遊作に不思議そうな顔をされて、葵は顔を赤くして座りなおす。

 

「ん~、いいけど、何するの?」

「大事な話がある」

「何大事な話って!?」

 

 葵が普段の自分のキャラすら忘れて、立ち上がって遊作に大声を上げる。

 

「い、いや、俺は夢乃に聞きたいことがあるだけで」

「え~財前さんは、一体何を想像してるのかな~」

 

 切花はニヤニヤしながら、葵の顔を覗き込む。

 

「な、なにも…‥」

「え~、それじゃあ~……」

 

 切花は葵の耳元に口を近づけて囁く。

 

「藤木君、もらっちゃうね」

「っ……」

 

 葵は切花の胸を鷲掴みして、引きちぎらんばかりに力を込める。

 

「あ、待って!これチョー痛い!あぁっ!」

 

 騒ぐ二人をよそに、遊作は教科書を持って立ち上がる。

 

「次移動教室だよな?」

「いや、あの二人ほっといていいのか?」

「大丈夫だろ」

 

 そう言って、遊作は島と一緒に教室を後にした。

 

 ◆

 

 その頃、B組の教室の前では、

 

「啓!やっと学校に来てくれたのね!」

 

 エマが啓を後ろから抱きしめていた。

 

「やめろババア……」

 

 本気で嫌そうな顔をする啓だったが、身長差もありエマを振りほどくことはできない。

 その様子を複雑そうな顔で見つめていた美海が口を開いた。

 

「あの、前から気になってたんですけど、お二人ってどういう関係なんですか?」

「ああ。こいつは……」

 

 啓は動く左手の親指をエマの方へ向ける。

 

「師匠の、ブラッドシェパードの元カノ」

「へぇ……えぇっ!?」

 

 衝撃のカミングアウトに、美海は大声を上げた。

 

「ちょっと啓、私の前であの男の話はやめて」

「うるせぇババア。いいから離せ」

 

 普段のおどおどした様子とは打って変わって、まるでゴッドバードの時のような強気な態度でエマを振りほどこうとする。

 

「え、ちょっと待ってください。父親代わりだったお師匠さんの元カノということは……お義母様?」

「なんか漢字表記おかしくないか?」

 

 そんなやり取りを経て、ようやくエマは啓を解放した。

 

「あ、えーっと、啓はエマ先生のことは怖がらないんですね」

「そりゃあ、私はママみたいなものだから」

「は? 俺は師匠のことを父親だと思ったことはあっても、お前を母親だなんて思ったことは一度もないぞ」

「え?」

 

 エマは少しショックを受けたような顔をした。

 

「つーか、なんでババアが学校の先生なんかやってんだよ」

「まあ仕事の関係でね。大学の時に資格は取ってたから、ここで働かせてもらってるのよ」

「そうえいえば、先生が赴任したのは二、三年前でしたね」

「ちょうど、ババアが師匠と別れた時くらいだな」

「だからやめろっての」

 

 エマに睨まれても、啓は怯まない。

 他の人間に同じことをされれば、彼は小動物のように怯えてすぐに美海の後ろに隠れてていただろう。

 

「仲いいですね」

「どこがだよ……」

 

 啓は不服そうにする。

 

「仕事って、本業の方だよな? 何調べてたんだよ」

「それはさすがに言えないわよ。でも、そうね……しいて言うなら」

 

 エマはいたずらっぽく笑い、口元に指をあてた。

 

「女の危ない秘密、かしら」

 

 ◆

 

 放課後、切花を呼び出した遊作は校舎裏で彼女を待っていた。

 

「お待たせー」

 

 切花はやってくると、遊作の周りをチョロチョロと動き回り、彼の顔を覗き込む。

 

「何々、こんなところに呼び出して。あ、もしかして告白?」

「夢乃、単刀直入に聞くが、聖辺(ひじりべ)(いつき)という男を知っているか?」

「……え~知らなーい。誰それ~」

 

 一瞬だけ真顔になるが、すぐいつものような張り付いた笑顔に戻る。

 

「その(いつき)って人がどうかしたの?」

「そいつの力が必要になるんだ」

 

 ウィンディのオリジン、啓が仲間に加わってくれたことで、残るのはアースのオリジンであるスペクターこと聖辺(ひじりべ)(いつき)だけだ。

 

「ふ~ん。まあボクには関係ないけど」

 

 既に興味を失ったのか、切花は遊作に背を向けて立ち去る。

 

「そうだ。悩み事なら、響子先生のとこに行ってみれば?」

「……どういう意味だ?」

「さぁ、どういう意味だろうね?」

 

 彼女は不敵に笑い、走り去っていった。

 

「なんで夢乃に聞いたんだ?」

 

 彼女がいなくなったことを確認して、Aiがデュエルディスクから顔を出した。

 

「あいつがジャックナイフだとしても、素直に教えてくれるわけないだろ?」

「分かっている。揺さぶりをかけてみただけだ。それに、あいつは他のハノイのメンバーに対して、仲間意識はなかったしな」

 

 以前のジャックナイフの発言から、ハノイの騎士に対しても恨みを持っていたことは分かる。なら、嫌がらせのために樹の居場所を何らかの手段で伝える可能性もあったための行動だったが、そううまくはいかない。

 

「だが、響子先生か……」

「そういえば、ハノイの塔事件の時も、保健室のPCを踏み台にしてログインしたんだったな」

「行ってみるか」

 

 遊作が保健室を訪れると、ちょうど尊が響子の診察を受けていた。

 

「ああ遊作」

「どうしたんだ?」

 

 すると、尊は自分の足首を指さす。

 そこには包帯がまかれており、よく見ると少し膨らんでいて腫れているように見える。

 

「六限目、体育の授業で捻っちゃって」

「大したことないわ。今日一日安静にしていれば大丈夫よ」

 

 響子先生はメモを取り、尊は立ち上がる。

 

「それで、藤木くんはどうしたの?」

「先生に聞きたいことがあって」

 

 尊も気になったのか、椅子を遊作に譲りつつも、一緒に話を聞くことにした。

 

「先生は、聖辺樹って人物を知っていますか?」

「!!」

 

 その名前を口にした途端、響子は目を見開いた。

 

「知っているんですね」

「……えぇ、よく知っているわ」

 

 すると、響子はパソコンを操作して、ある画像を画面に映した。

 それは数十人の子供達と、数人の大人達が映っており、その中には今より少し若い響子先生の姿もあった。

 

「これは……」

「私が昔務めていた孤児院の写真よ。ほら、ここ」

 

 響子は子供達の中の一人を指さす。

 

「樹だ!」

 

 見知った顔を見て、尊と遊作は反応を示す。

 

「樹くんとはその時に知り合ったのよ。あなた達は……」

「俺達は樹と昔同じ孤児院にいたんです」

「そうだったの」

「今、樹がどこにいるのかって分かりませんか?」

 

 響子は少し考えるような顔をしてから、静かに首を振る。

 

「そうですか……」

「あの、それなら樹の行きそうな場所とか分かりませんか?」

「そうね……木」

 

 ふと零した響子の言葉に、尊は反応を示す。

 

「昔、彼がよく孤児院を抜け出して、大きな木のある廃墟に忍び込んでいたことがあって」

「それって……」

 

 遊作と尊は顔を見合わせた。

 

 ◆

 

 夕方、二人はかつて彼らが過ごした孤児院を訪れた。

 

 門の前には『立ち入り禁止』の文字がデカデカと書かれた金属の板と、トラロープで閉じられており、よじ登りでもしない限り入れそうにない。

 

「懐かしいね」

「あぁ。だが、今日の目的はここじゃない」

 

 二人は門の前を通り過ぎ、その裏手にある林までやってきた。

 

 疎らに木が並び生え、その中にあるひと際大きな木の前には、一人の男が立っていた。

 背が高く、白と黒が混じったような男性にしては長めの髪、彼らのよく知る面影のあるその姿に、尊は声をかけた。

 

「久しぶり、樹」

「……あなた達ですか」

 

 樹は彼らの気配に気づいていたのか、振り向くことなく答える。

 

「よかった。やっぱり樹だ!ダメ元で来てよかったよ」

「……全く、バイラの奴」

 

 彼のついた悪態は、二人にはよく聞き取れなかった。

 

「それで、私に何の用ですか?」

「ライトニング、光のイグニスが何か企んでるのは知ってるだろ」

 

 遊作は樹に手を伸ばす。

 

「お前の力を貸してほしい」

「はぁ……あなたはバカですか? 我々は敵ですよ」

「それでも、ライトニングをどうにかする必要があるのは同じだろう。なら、手を組む価値はある」

「あなた達の手を借りずとも、私とリボルバー様がいれば問題ありません」

 

 樹は話にならないと、首を振る。

 

「それに、私は昔からあなた達のことが嫌いだったんですよ。仲良しこよしで鬱陶しい。未だに友達面で私に接してくるなど反吐がでます」

 

 樹は彼らに背を向けて、目の前の大樹に触れる。

 

「樹、昔からその木の傍にいたよね」

「それ以上近づくな!」

 

 尊が歩み寄ろうとすると、樹は鬼の形相で彼を睨みつける。

 

「この木は、私に唯一寄り添ってくれた、特別な存在なんです」

「樹……」

 

 すると、尊はスーッと深く息を吐いた。

 

「遊作、ここは僕に任せてくれないか?」

「……分かった」

 

 遊作は一歩引いて、尊が前に出る。

 

「樹、僕とデュエルしないか?」

「デュエル? 負ければ仲間になれと?」

「そうじゃないよ」

 

 尊はデュエルディスクを構えて微笑む。

 

「ただ、少し話をしたいんだ。デュエルを通して」

「何を企んで……まあいいでしょう。その代わり、負ければあなたの持つ炎のイグニスを渡してもらいますよ」

「……不霊夢」

 

 尊が申し訳なさそうにデュエルディスクを見ると、その中にいる不霊夢が飛び出して、彼にサムズアップする。

 

「構わない。友と語らうためだ」

「ありがとう」

「それで、私が負ければあなた達に協力してあげましょうか」

「いや…‥」

 

 その提案に、尊は首を振る。

 

「僕からは条件を提示しない」

「いいんですね?」

「うん」

 

 尊は頷くと、眼鏡を外して、前髪を右手でかき上げる。

 

「それじゃあ行くぞ!」

 

「「デュエル!」」

 

ターン1 樹

 

「私は聖種の地霊(サンシード・ゲニウスロキ)を召喚」

 

 地面から緑の杯のようなものが出て、そこから細いオレンジの花びらと黒い種が生えてきた。

 

「現れろ、私達の未来(みち)を照らす未来回路!」

 

 樹の足元にアローヘッドが現れ、そこへゲニウスロキが沈んでいく。

 

「リンク召喚!リンク1、聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)!」

 

 アローヘッドに植えられた種は芽吹き、巨大な樹へと成長する。

 幹が不自然に膨らみ、そこに顔のようなものが描かれた巨大な木の精霊がアローヘッドから生えてきた。

 

「ゲニウスロキを素材としたことで、デッキから聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)を手札に加え、発動。デッキからサンシードモンスター1体を特殊召喚する。いでよ、聖種の天双芽(サンシード・ツイン)!」

 

 地面から二本の蔓が伸び、それが螺旋に絡まると、その中にピンクと青の双子の妖精が生まれた。

 

「その後、私は1000のダメージを受ける。ツインの効果で、墓地からゲニウスロキを特殊召喚。そしてダメージを受けたことで、ドリュアスの効果発動!エクストラデッキから、聖蔓の番騎士(サンヴァイン・ハーキュリー)を特殊召喚!」

 

 ドリュアスの枝になった種が膨らみ、巨大化した種が自重で落ちる。

 すると、種が割れて、中から木の鎧をまとった重騎士が姿を現した。

 

聖蔓の番騎士(サンヴァイン・ハーキュリー)

リンク・効果モンスター

地属性/植物族/攻 1000/LINK 1

【リンクマーカー:右】

植物族通常モンスター1体

(1)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが効果でフィールドから離れた場合に発動する。このカードを破壊する。

(2)このカードの特殊召喚に成功した場合、自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力を、対象のモンスターのリンクマーカーの数×500アップする。その後、このカードの攻撃力以下の相手フィールドのモンスター1体を選んで墓地に送る。

(3)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが、戦闘・相手の効果でフィールドを離れる場合、かわりにフィールド・墓地のこのカードを除外できる。

 

「効果でドリュアスのリンクマーカーの数×500、ハーキュリーの攻撃力をアップする。続けて現れろ、私達の未来(みち)を照らす未来回路!」

 

 ドリュアスの下にアローヘッドが現れ、そこへゲニウスロキとツインが吸い込まれて、ドリュアスの養分となる。

 

「リンク召喚!リンク3、聖天樹の大精霊(サンアバロン・ドリュアノーム)!」

 

 ドリュアスは成長し、その根元が割れて中から女性の上半身が出現した。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン2 尊

 

「俺のターン!俺は手札のJジャガーを墓地へ送り、転生炎獣(サラマングレイト)ミーアを特殊召喚!現れろ、未来を変えるサーキット!」

 

 ミーアが炎となって、アローヘッドに飛び込む。

 

「リンク召喚!リンク1、転生炎獣(サラマングレイト)ベイルリンクス!」

 

 アローヘッドからヤマネコ型のモンスターが一回転しながら降りてきた。

 

「効果でデッキからサンクチュアリを手札に。そして墓地のJジャガーの効果発動!ミーアをデッキに戻し、ベイルリンクスのリンク先に特殊召喚!さらにフォクシーを通常召喚!」

 

 尊のフィールドに三体のモンスターが並ぶ。

 

「フィールド魔法、転生炎獣の聖域(サラマングレイト・サンクチュアリ)を発動し、ヒートライオをリンク召喚!そのまま転生!」

 

 アローヘッドから炎が噴き出し、うねり、螺旋を描く。

 

「転生リンク召喚!炎の平原を駆け抜ける百獣の王!転生炎獣(サラマングレイト)ヒートライオ!」

 

 炎のタテガミを持つオレンジの電脳の獅子が姿を現した。

 

「俺は装備魔法、転生炎獣の烈爪(サラマングレイト・クロー)をヒートライオに装備!」

 

 ヒートライオの右腕の爪が伸び、炎に包まれる。

 

「これでヒートライオは戦闘、効果で破壊されず、貫通効果を得る!そして、転生リンク召喚したモンスターに装備されているなら、そのリンクマーカーの数だけモンスターに攻撃できる!」

「それで、どうする気ですか? あなたもドリュアノームの効果を知らないわけではないでしょう?」

 

 ドリュアノームにはダメージを受ける毎に回復し、エクストラデッキから配下のサンヴァインを呼び出す能力がある。

 ドリュアノームがいる限り、どれだけ攻撃してもダメージが入ることはない。

 

「どうするもなにも、俺はこのままバトルする。行け!ヒートライオ!ハーキュリーを攻撃!」

 

 ヒートライオの爪が、ハーキュリーの木の鎧を切り裂き、燃やし尽くす。

 

「ダメージを受けたことで、私はドリュアノームの効果発動!エクストラデッキから聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)を特殊召喚!」

 

 ドリュアノームの枝から実が落ちて、新たなサンヴァインが生み出される。

 

「効果で私のライフを回復」

 

 樹:LP4000→4900

 

「二回目!ヒートライオで、ヒーラーを攻撃!」

 

 ヒーラーが破壊されるが、またしてもそのダメージは回復され、ドリュアノームの養分となって新たなサンヴァインが生まれる。

 

「出でよ、聖蔓の守護者(サンヴァイン・ガードナー)!」

 

 大盾を構えた木の戦士が、ヒートライオの前に立ち塞がる。

 

「三度目だ!ヒートライオでガードナーを攻撃!」

 

 ヒートライオの攻撃を、盾で防ごうとするが、その燃え盛る裂爪であっさりと焼き尽くされてしまう。

 

「ダメージを回復し、エクストラデッキから聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)を特殊召喚!」

 

 ドリュアノームから再び実が落ちて、中から葉の剣士が生まれ落ちた。

 

「効果発動!サンアバロンのリンクマーカーの数×800ポイント、攻撃力をアップする。戦闘で破壊されたガードナーの効果で、バトルフェイズは終了させる」

「やるな。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン3

 

「全く、無駄な攻撃を繰り返して、一体何がしたかったんですか?」

「言っただろ? 俺はお前と話をするためにデュエルをしてるんだ」

「拳で対話するというやつですか。いかにもあなたの考えそうなことです。本当に、そういうところが嫌いでしたよ」

 

 樹は手を払い、呆れたように首を振る。

 

「その性格、啓にも鬱陶しがられてましたね。こっちが断っているのに無理やり誘ってきて。まあ最も、勝手に仲間意識を持ってからんできた啓のことも、私は嫌いでしたが」

「……なんだ。やっぱり」

 

 すると、その言葉に何故か尊は笑う。

 

「ちゃんと覚えてるんだな。あの頃のこと」

「……覚えてるからなんだと言うんですか?」

「いや、ちゃんとみんなと過ごした時間を忘れてないんだって、それが分かったのがちょっと嬉しくてな」

 

 その態度に、樹は苛立ちを覚え、歯ぎしりを立てる。

 

「デュエルを続けましょう。私は手札1枚を捨てて、永続魔法、聖蔓の社(サンヴァイン・シュライン)を発動。1ターンに1度、墓地のレベル4以下の植物族通常モンスター1体を特殊召喚できる。私はゲニウスロキを特殊召喚。現れろ、私達の未来(みち)を照らす未来回路!」

 

 ゲニウスロキがアローヘッドの中に沈んでいき、そこから新たな命が芽吹く。

 

「リンク召喚!リンク1、聖蔓の射手(サンヴァイン・シューター)!」

 

聖蔓の射手(サンヴァイン・シューター)

リンク・効果モンスター

地属性/植物族/攻 500/LINK1

レベル4以下の植物族モンスター1体

このカード名の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが効果でフィールドから離れた場合に発動する。このカードを破壊する。

(2)このカードの特殊召喚に成功した場合、お互い500ダメージを受ける。

(3)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターのリンクマーカーの数まで、相手フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。

 

「シューターの効果で、お互い500のダメージを受ける」

 

 シューターが木の弓を射り、蔓で出来た矢を空に向けて放つと、二人の元に分裂した矢が降り注ぐ。

 

 尊:LP4000→3500

 樹:LP4900→4400

 

「ダメージを受けたことで、ドリュアノームの効果発動!受けたダメージの数値分、ライフを回復!」

 

 樹:LP4400→4900

 

「そしてエクストラデッキから聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)を特殊召喚!効果でライフを回復!」

 

 ヒーラーがその両腕から蔓を伸ばして、樹の体に巻き付ける。

 ヒーラーからエネルギーが送られて、彼のライフが回復した。

 

 樹:LP4900→5800

 

「シューターの効果発動!サンアバロンのリンクマーカーの数だけ、相手の魔法・罠カードを破壊する!」

 

 シューターが弓を弾き絞ると、ドリュアノームから蔓が伸びる。

シューターの手元で蔓は織られ、矢へと変化した。

 

「穿て!その装備魔法と、サンクチュアリを破壊!」

 

 矢が放たれると、上空で二つに分裂し、尊の魔法カード2枚を撃ち抜いた。

 

「くっ……」

「さあ終わらせてあげましょう!再び現れろ、私たちの未来(みち)を照らす未来回路!召喚条件はリンクモンスター2体以上!私は聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)とリンク3の聖天樹の大精霊(サンアバロン・ドリュアノーム)をリンクマーカーにセット!」

 

 シューターが、ドリュアノームの根元に現れたアローヘッドに吸い込まれ、その養分となる。

 

「リンク4のサンアバロンか!?」

「命、その終わりを迎える時、花は芽吹き、最後の輝きを散らす。リンク召喚!」

 

 葉が枯れていき、かわりに満開の桜の花が枝を埋め尽くす。

 

「我が母なる聖天樹!聖天樹の大母神(サンアバロン・ドリュアトランティエ)!」

 

 闇夜の空に枝を伸ばし、花びらを空に散らす巨大な木が彼のフィールドに降臨した。

 

「これが、お前のエースモンスターか」

「エースモンスターなど、そんなものではない。このカードこそ、私の母、あの木の分身とも呼べるモンスターです」

「あの木が、母親?」

「えぇ。私は幼い頃、あの木の傍に捨てられました」

 

 樹が捨て子だったという話は、彼らも以前から聞いていた。

 ハノイの塔の時も、美海に対してこう言っていた。

 

 自分を必要としてくれる人はいなかったと。

 

「必ず迎えに来る。だからここで待っていろ。愚かにも私は、その言葉を信じて、何日も待ち続けました。あの身勝手な、私を生んだあの女のことを」

「樹……」

「鴻上先生に見つけられる日まで、あの木が雨風や動物から私を守ってくれていました。今でも鮮明に覚えていますよ」

「それで…‥母親」

「孤児院であなた達と出会ってからも、私の居場所はそこになかった。きっとあなた達は、両親から愛情を注がれて育てられたのでしょうね。だからこそ、寄り添い合って生きることができた。ですが私は────」

「そうやって、いつまで言い訳を続けるつもりだ?」

「なに?」

 

 尊の言葉に、樹の表情が歪む。

 

「誰もお前を拒んでなんかいなかった。そうやって壁を作っていたのは、繋がりを拒否したのはお前自身だ!」

「だからそういう暑苦しいところが嫌いだと言っているんですよ!私はドリュアトランティエの効果発動!デッキから聖天樹の開花(サンアバロン・ブルーミング)を手札に加える。そしてセットされた罠カード、聖蔓の収穫(サンヴァイン・ハーベスト)を発動!」

 

聖蔓の収穫(サンヴァイン・ハーベスト)

通常罠

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分の墓地・除外されている植物族リンクモンスター3体までを対象として発動できる。そのカードを持ち主のEXデッキに戻す。その後、戻した枚数以下のリンクマーカーを持つ「サンヴァイン」リンクモンスター1体を、EXデッキから自分の「サンアバロン」リンクモンスターのリンク先に特殊召喚し、自分は1000のダメージを受ける。

(2)このカードが墓地に存在し、自分の「サンヴァイン」リンクモンスターが効果でフィールドを離れた場合に発動できる。このカードは通常モンスター(植物族・地・星1・攻/守 0)となり、モンスターゾーンに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールドを離れた場合に除外される。

 

「墓地の植物族リンクモンスター3体をエクストラデッキに戻し、その戻した枚数以下のリンクマーカーを持つサンヴァイン1体を特殊召喚する!聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)を特殊召喚!その後、1000のダメージを受けるが、ヒーラーの効果でライフを回復」

 

 樹:LP5800→4800→6000

 

「三度現れろ、私達の未来(みち)を照らす未来回路!召喚条件はカード名の異なるサンヴァインリンクモンスター2体!私はシューターとヒーラーをリンクマーカーにセット!」

 

アローヘッドから蔓が二本伸び、それらが絡み合って一本の太い蔓へと変わる。

 

「リンク召喚!リンク2、聖蔓の暴戦器(サンヴァイン・バイオロード)!」

 

 蔓は粘土のように形を変え、無数の植物でできた戦車に男性の上半身がついたような兵器へと変貌した。

 

聖蔓の暴戦器(サンヴァイン・バイオロード)

リンク・効果モンスター

地属性/植物族/攻 1500/LINK 2

カード名の異なる「サンヴァイン」リンクモンスター2体

このカードはリンク召喚でしか特殊召喚できない。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分の「サンアバロン」リンクモンスターが効果でフィールドを離れた場合に発動する。このカードを破壊する。その後、墓地からリンク1の「サンヴァイン」リンクモンスター1体をEXデッキに戻し、そのモンスターの同名カードをEXデッキから特殊召喚する。

(2)相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。自分は1000のダメージを受け、その対象のモンスターを破壊する。

(3)1ターンに1度、自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合に発動できる。ターン終了時まで、このカードの攻撃力は受けたダメージの数値分アップする。

 

「バイオロードの効果発動!ヒートライオを破壊!」

 

 バイオロードの腕から伸びた蔓が巻き付き、ライフルへと変化し、ヒートライオへと小銃を合わせる。

 

「墓地のベイルリンクスを除外して、ヒートライオを破壊から守る!」

 

 地面から飛び出したベイルリンクスが盾となり、発射された弾丸を防いだ。

 

「その後、私は1000のダメージを受ける。ダメージを受けたことで、バイオロードの攻撃力をターン終了時までその数値分アップする」

 

 樹:LP6000→5000

 バイオロード:攻撃力1500→2500

 

「バトル!私はスラッシャーで、ヒートライオを攻撃!」

 

 スラッシャーの剣を振り上げ、ヒートライオに切りかかる。

 

「俺は罠カード!サイバネット・エマージェンスを発動!」

 

サイバネット・エマージェンス

通常罠

(1)自分のサイバース族モンスター1体を対象として発動できる(ダメージステップでも発動可能)。そのモンスターはこのターン、1ターンに1度だけ戦闘で破壊されず、その戦闘によって発生する戦闘ダメージはお互いが受け、半分になる。その後、受けたダメージの数値分、戦闘を行った相手モンスターの攻撃力をダウンさせ、デッキからその数値以下の攻撃力または守備力を持つサイバース族モンスター1体を手札に加える。

 

「ヒートライオはこのターン、1度だけ戦闘で破壊されない!そしてそのダメージは半分となり、互いに受ける!」

 

 スラッシャーの剣は障壁により防がれ、その障壁の両面からビームが放たれ、尊と樹に襲い掛かる。

 

尊:LP3500→3150

 樹:LP5000→4550

 

「そして、ダメージの数値分、スラッシャーの攻撃力をダウンさせ、デッキからその数値以下の攻撃力か守備力を持つ、サイバース族モンスター1体を手札に加える。俺は攻撃力0の転生炎獣(サラマングレイト)モルを手札に加える」

「ならば、バイオロード!今度こそヒートライオを破壊しろ!」

 

 バイオロードが再び腕をライフルに変形させ、弾丸が今度こそヒートライオを貫いた。

 

 尊:LP3150→2950

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

ターン4

 

「俺は永続魔法、転生炎獣の意志(サラマングレイト・ハート)を発動。1ターンに1度、手札か墓地からサラマングレイト1体を特殊召喚できる。甦れ、ヒートライオ」

 

 尊のフィールドに魔法陣が出現し、その中からヒートライオが再び姿を現す。

 

「俺はさらに転生炎獣(サラマングレイト)モルを通常召喚。そのままリンク召喚!転生炎獣(サラマングレイト)ベイルリンクス!効果でデッキからサンクチュアリを手札に!」

 

 再び手に入れたフィールド魔法を発動し、転生リンク召喚の準備が整う。

 

「現れろ、未来を変えるサーキット!俺はベイルリンクスと、リンク3のヒートライオをリンクマーカーにセット!リンク召喚!出でよ、転生炎獣(サラマングレイト)パイロ・フェニックス!」

 

 アローヘッドから炎の翼を広げ、不死鳥の意匠をまとう魔神が飛び出した。

 

「そして、サンクチュアリの効果!1ターンに1度、同名モンスター1体のみを素材としてサラマングレイトをリンク召喚できる!」

 

 パイロ・フェニックスが上空に現れたアローヘッドに飛び込む。

 

「逆巻く炎よ、浄化の力でパイロ・フェニックスに真なる力を呼び覚ませ!転生リンク召喚!生まれ変われ、転生炎獣(サラマングレイト)パイロ・フェニックス!」

 

 その翼の炎は蒼く染まり、燃え滾る業火を樹のフィールドに向けて放つ。

 

「転生リンク召喚時の効果で、相手フィールドのカードを全て破壊する!」

「私は永続罠、聖天樹の開花(サンアバロン・ブルーミング)を発動!この発動時の処理で、自分フィールドにリンク4以上の植物族リンクモンスターが存在する時、相手フィールドの全ての表側表示モンスターの効果は無効化される!」

 

 だが、空より放たれた炎は、灰となって空中で消える。

 その火が樹のモンスターを焼くことはなかった。

 

「さあ、切り札を防がれて、もう手はありませんか?」

「いや、まだ終わりじゃない!俺は魔法カード、フュージョン・オブ・ファイアを発動!」

「融合魔法ですか……」

「このカードは自分及び相手フィールドのモンスターを素材として、融合召喚できる!俺はパイロ・フェニックスと、バイオロードを融合!」

 

 パイロ・フェニックスの発した炎の渦に飲み込まれ、バイオロードとパイロ・フェニックスは一つとなる。

 

「一つの狂おしき魂のもと集え、凶悪なる獣たちの武器を集めし魔獣よ!紫炎の渦より顕現せよ!融合召喚!」

 

 炎の色はその温度を上げ、蒼、そして紫へと変化し、中から一体の魔獣が飛び出した。

 

「レベル8、転生炎獣(サラマングレイト)ヴァイオレットキマイラ!」

 

 それは両足を刃物、腕と翼にも武器を融合させ、さながら全身凶器とも呼べる炎の魔獣だった。

 

「ヴァイオレットキマイラは、融合素材としたモンスターの元々の攻撃力の合計の半分だけ、攻撃力がアップする!」

 

 ヴァイオレットキマイラ:攻撃力2800→4950

 

「なるほど、確かにすさまじい攻撃力ですが、一歩足りませんねぇ。私のドリュアトランティエは攻撃対象にならず、そして効果で破壊されない。そして、私の永続罠、聖天樹の開花(サンアバロン・ブルーミング)には、植物族リンクモンスターが戦闘を行う時、そのリンク先のモンスターの攻撃力の合計分だけ、攻撃力をアップさせる効果がある。次のターンで、あなたは終わりなんですよ」

 

 スラッシャーの攻撃力はサイバネット・エマージェンスで下がったとはいえ、まだ2750ある。

 ヴァイオレットキマイラでスラッシャーを攻撃しても、樹のライフは残る。

 そして、彼がモンスターを大量に並べれば、その攻撃力は全てドリュアトランティエに上乗せされ、尊のライフを削り切る。

 

「無意味な勝負を挑んだことを後悔して─────」

「無意味なんかじゃねぇよ」

 

 またしても、尊は樹の言葉を遮って言い放つ。

 

「お前とこうやって話せたことは、俺にとって、いや俺達にとって無駄なんかじゃない」

「まだそんな戯言を……」

「戯言かどうかは、この攻撃を受けてから判断しろ!バトルだ!俺はヴァイオレットキマイラで、スラッシャーを攻撃!」

 

 ヴァイオレットキマイラが咆哮し、その右腕の刃を向ける。

 

「迎え撃て!スラッシャー!」

 

 スラッシャーも背中の鞘から剣を抜いて応戦する。

 二つの刃がぶつかり合い、激しく火花を散らす。

 

「ヴァイオレットキマイラの効果」

「!!」

「元々の攻撃力と異なる攻撃力のモンスターとバトルする時、自身の攻撃力を2倍にする!」

 

 ヴァイオレットキマイラの翼の炎が蒼く燃え上がり、スラッシャーを吹き飛ばす。

 

「やれ!ヴァイオレットキマイラ!」

 

 ヴァイオレットキマイラの刃へ、翼から炎が集まり、そのままスラッシャーに向けて突進する。

 

「ヴァイオレットソウル!」

 

 燃え盛る一太刀で、スラッシャーを切り裂き、樹のライフを0にした。

 

 ◆

 

 デュエルが終了すると、尊は膝をつく樹に近付いた。

 

「樹」

 

 彼は手を差し伸べるが、その手をとることはなく、代わりに質問を投げかけた。

 

「……あなたは、どうしてドリュアトランティエを融合素材にしなかったのですか?」

 

 ドリュアトランティエは破壊耐性を持っていたが、融合素材にすることはできる。そうすればサンヴァインリンクモンスターの自壊効果が発動し、樹の盤面を空にすることができた。

 

「どうしてって……なんか、樹のお母さんを倒すのは気が引けて……」

 

 その言葉に対して、樹はため息を吐いた。

 

「用は済んだのなら、私はもう行きますよ」

 

 そう言って、樹は去っていった。

 

「ごめん遊作、協力してもらうって確約は取れなかった」

「……いや、むしろ助かった。俺にはああいうやり方はできないからな」

「お前はコミュ障だからな」

「黙れ」

 

 小馬鹿にするAiに言い返して、遊作は肩を落とした。

 その時、

 

「電話?」

 

 着信音が鳴り、デュエルディスクの画面を見る。

 

「美海からだな」

 

 出てみると、ARウィンドウに彼女の顔が表示された。

 

「遊作!大変です!!」

「何かあったのか?」

「今外ですか? だったら今送ったURLの動画!」

 

 かなり焦っている様子だったため、とりあえずメッセージアプリを開いて、彼女から送られたURLをタップする。

 それは大手動画サイトのもので、チャンネルはネットニュースのものだった。

 

『速報です。ガンズレッドファクトリー社の人工衛星『GRZ』が、突如何者かに制御権を奪われました。警察は行方不明のハッカー集団、ハノイの騎士の仕業と見て調査を続けており────』

「これは……」

「確認したか?」

 

 すると、美海が映る方のウィンドウに啓の顔が割り込んだ。

 

「啓、これは一体……」

「こいつ、表向きには気象衛星とされてるけど、その実体は軍事衛生。上空から狙った場所にレーザー砲をぶっぱなすっていうロボアニメも真っ青の大量殺戮兵器だよ」

「「なっ!?」」

 

 ガンズレッドファクトリー社が軍事産業に手を出していたのは知っていたが、そんな恐ろしいものを保有していたことに、二人は動揺を隠せない。

 

「そんなものを、誰が乗っ取ったんだ……」

「あー、その話なんだけど、実はもう一個、最悪なニュースがあるんだけど、聞きたい?」

 

 二人は恐る恐る頷く。

 

「実はついさっき、LINK VRAINSのアカウント宛にDMが一斉送信されたんだ。その内容ってのがイグニスアルゴリズムで暗号化された文書で、解析してみると……」

 

 遊作のデュエルディスクにメッセージが送付される。

 

「これは……っ!!」

 

『48時間後に衛生兵器を起動し、デンシティを焦土に変える。止められるものなら止めてみろ。人類諸君』

 

「ライトニングか……」

「正解。前に遊作が見たっていうVISION(ヴィジョン) DEROID(デロイド)の空に浮かんでるオブジェの中、それが衛星の制御室だったんだ。ていうか、メッセージにイグニスアルゴリズムを使ってるあたり、完全に俺達宛だな」

「けど、何故わざわざこんなものを……」

「おそらくだが、」

 

 すると、不霊夢が話に割り込む。

 

「彼はプライドが高い。我々を倒すことで、人類に勝利した証が欲しいのだろう」

「なるほど、当たってるかもな。現にネット民の中には、一部分だけだけど、解析できたやつもいるみたいだし、暗号を解いて、ここまで辿り着いてみせろってか。まるでゲームだな」

「……みんな」

 

 遊作が決意を込めた目で全員を見る。

 

「俺達でライトニング達を止める。そして、仁も助け出すぞ」

 

 全員が頷いた。

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