遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
そこは通常のネットワークの遥か下層に存在する電脳世界の隠しエリア。
薄暗い空間に、ニ人のアバターが立っていた。
「首尾はどうだ?」
マスクで顔を隠した男、リボルバーが正面に控える面長の顔の男、スペクターに訊ねる。
「はい。Go鬼塚とブルーエンジェルのお陰でプレイメーカーのデッキに関するデータは概ね揃いました。不明なのはスキルですが……」
「私にお任せください」
すると、その空間にまた別の男が出現した。
「ファウストか」
「私が必ずや、プレイメーカーから闇のイグニスを奪ってみせましょう」
「頼んだぞ」
「仰せのままに」
ファウストは深々とお辞儀をすると、その空間から消失した。
◆
朝、遊作が登校すると、校門の前で島に声をかけられた。
「藤木、昨日のブルーエンジェルとプレイメーカーのデュエル見たか?」
「ああ。まあ」
「どっちも凄かったよなぁ」
「そうだな」
遊作が適当に返答しても、島は気持ちよく話を続ける。
「プレイメーカーと言えば、実は極秘情報が」
「別にいい」
「聞けよ!」
「……なんだ?」
「いいか。誰にも言うなよ」
島はわざとらしく周囲の様子を窺い、それから遊作に耳打ちする。
「プレイメーカーは、この学校にいるらしいんだ」
その情報を聞いて、遊作は内心ため息をついた。
昨日のSNS上にバラまかれたプレイメーカーの正体を推測する情報、その中に、彼がこの学校に通っている可能性があるというものもあった。
幸い、草薙のおかげで他のダミーの情報に埋もれさせることができたが、人の口に戸は立てられない。
島のように、熱狂的なプレイメーカーのファンであれば、その情報から遊作にたどり着く人間が現れてもおかしくない。
「絶対誰にも言うなよ」
そう念押して、島は去っていった。
「あいつ、絶対他のやつに言ってるぞ」
Aiがデュエルディスク越しに、島の背中を見ながらつぶやく。
「別に構わない」
「なんでだよ?」
「島の言うことなら、みんな本気にしない」
「ひでぇな。あ、あそこにいるの、財前葵じゃないか?」
Aiに言われて、遊作は前を向き直る。
彼の前を歩く葵の背中を見つけて、遊作は少し小走りをして彼女に近づく。
「ああ、藤木くん。おはよう」
足音に気付いて、葵の方から挨拶をしてくれた。
その声はいつもに比べて、わずかに元気がなさそうだった。
「財前、なにかあったのか?」
「何でもない」
遊作は特に追求せず、二人は無言のまま並んで歩く。
「葵様」
すると、彼らの後ろから別の女子がやってきた。
「美海、おはよう」
「おはようございます。この方は?」
美海は遊作と葵の顔を見比べて、やや意外そうに尋ねた。
「同じクラスの藤木くん」
「どうも」
遊作が軽く会釈する。
しかし、美海の方はその名前を聞いて、眼を見開く。
「遊作……もしかして遊作ですか?」
「君は……」
「10年ぶりですね。覚えていますか? 湊美海です」
「美海、やっぱり美海か」
普段無表情な遊作が、少し表情を崩す。
「二人は知り合いなの?」
「ああすみません。勝手に盛り上がってしまって。私と遊作は同じ施設の出身なんですよ」
「そうだったの」
「こんなところで再会できるなんて思いませんでしたよ。あの事件があって、みんなバラバラになってしまいましたから」
そこまで言ったところで、美海はしまったと言った顔をした。
「事件って?」
「すみません。忘れてください……」
その時、ちょうどホームルーム五分前を告げる予鈴がなる。
「二人とも、そろそろ行きましょう」
「ああ」
「うん」
◆
放課後、遊作はデュエル部の部室を訪ねた。
「でさぁ、やっぱりプレイメーカーはこの学校にいると思うんだよ」
先に来ていた島は、案の定、他の部員にも極秘情報とやらを話していた。
遊作は島のことはスルーして、別のテーブルでデュエルをする葵と美海に近付いた。
「美海もデュエル部だったんだな」
「えぇ一応。本業の方があるので、あまり顔は出せませんが」
「本業、確か財前の家で働いているんだったな」
「はい。それと、こちらはバイトですが、SOLテクノロジーのセキュリティ部隊にも所属しています。あ、ダイレクトアタックです」
デュエルはどうやら美海の方が上手らしく、葵はあっさりと負けた。
「本気のデッキなら……」
「私も本来のデッキじゃないんですけどね」
二人が何か言っているが、遊作は特に気にしなかった。
「遊作もやりますか?」
「ああ」
遊作はデュエルディスクからデッキを取り出す。
「……そのデュエルディスク、プレイメーカーと同じですよね」
「!!」
美海の発言に、遊作は顔を強張らせる。
普段から仏頂面なのが幸いして、彼の反応を怪しんではいないが、このまま何も返答がなければ、感づかれるかもしれない。
「そうなんだよ。こいつプレイメーカーの真似してんだよ」
そこで意図せず助け舟を出したのは島だった。
「なるほど。遊作はプレイメーカーのファンだったんですね」
「あ、ああ」
「ん? というか、お前、いつの間に湊と仲良くなったんだ?」
「幼馴染らしいわ」
島のおかげで話題が別のところに逸れてくれた。
「島、助かった」
「ん? 何の話だ?」
後で何か礼をしてやろうと、遊作は思った。
◆
美海と島のおかげで、財前葵とも少し打ち解けられ、帰り道が同じだった二人は一緒に帰ることになった。
「美海は住み込みで働いていたんじゃなかったか?」
「今日はSOLで仕事があるって」
「そうか」
打ち解けられたといっても、元が二人ともコミュニケーション能力に難ありなため、中々会話が弾まない。
「ねぇ」
そこで沈黙を破ったのは葵の方だった。
「藤木くんは、デュエルは好き?」
「俺は……」
「私、昨日ある人に会ったの」
遊作が返答に迷っていると、葵が話を進める。
「その人はデュエルを楽しめないって。その人はデュエル中、ただの一度も笑っていなかった」
「そうか……」
「けど、その人は強かった。多分今まで戦った誰よりも」
葵は視線の先にいる『その人』を見つめるように遠くを見る。
「それで私、分からなくなったの。なんのためにデュエルをすればいいのか」
「……別に、理由なんてなくていい」
「え?」
「理由もなく、ただデュエルを楽しめるなら、それが理想だろう。デュエルとは本来そういうものだ」
「……そうね。ありがとう。藤木くん」
その言葉を聞いて、彼女は少しだけ晴れやかな顔をした。
◆
LINK VRAINSのランキングデュエル、
「とどめよ!トリックスター・ホーリーエンジェル!」
ブルーエンジェルが、上位ランカーとデュエルをしていた。
「決まったぁぁ!勝者、ブルゥゥゥゥエンジェルゥッ!本日これで三連勝!今日の彼女は、いつもと何かが違う!」
実況の男の言う通り、ブルーエンジェルの顔はいつもより凛々しく見えた。
「さあ次の挑戦者は────」
「私が相手をしてもらおう」
現れたのは、30代後半くらいの男だった。白いローブに身を包み、フードで素顔を隠している。
「あなたは……」
「ただの名もないデュエリストだ。手合わせ願おうか。ブルーエンジェル」
男の異様な雰囲気に警戒心を強める。
「いいわよ。私と楽しみましょう」
しかし、申し込まれたデュエルを断るわけにもいかない。
アイドルのスマイルを作り、快く彼とのデュエルに応じた。
「「スピードデュエル!」」
◆
「遅くなりました」
仕事を終えて、美海が部屋に戻ると、葵はVRゴーグルをつけてベッドに横になっていた。
「全く、しょうがない人ですね」
きっとまだデュエルをしているのだろうと、自分も彼女のデュエルを見ようと、タブレットを取り出す。その時、
ピコンッ
ちょうどメールが着た。
送信者は学校の連絡事項などを一斉配信する用のアドレスだった。
「!!」
しかし、それを開いた瞬間、美海の顔が青ざめた。
『これを見ているプレイメーカーへ。ブルーエンジェルは預かった。返してほしければ今夜七時にLINK VRAINSのセントラルエリアにログインせよ』
美海はすぐさまベッドで眠る葵に駆け寄る。
彼女のデュエルディスクを操作して、ログアウトさせようと試みるが、エラーメッセージを吐くだけで応答しない。
ログイン中に無理にVRゴーグルを外せば、脳に障害を負う可能性もある。
「くそっ!」
やりきれない思いを拳でぶつける。
「葵様……っ!」
美海はすぐに切り替えてパソコンに向き合う。
(プレイメーカーが来る保証はない。ならば私が葵様を助けるために、できることをしなければ……)
◆
その頃、草薙のキッチンカー内で、遊作もそのメールを受け取っていた。
「どうやら、うちの学校の生徒全員に送られたらしいな」
「前に、お前の通っている学校の情報が流出したからだな」
「おいおい、不味いんじゃないのか?」
「わざわざ一斉配信をしたということは、ハノイはまだ俺の正体に辿り着いていない。今はそれよりも……」
ブルーエンジェルが人質にされた。
ネットでは既にこの話が広まっており、プレイメーカーに助けを求める書き込みが大量に投稿されている。
「どうすんだ? プレイメーカー様」
「決まっているだろう」
遊作はログイン用のスペースに入る。
「イントゥザヴレインズ!」
◆
夜、LINK VRAINS内では浚われたブルーエンジェルを心配する人達が集まっていた。
「あ!来たぞ!」
そこに、プレイメーカーがDボードに乗って現れた。
「プレイメーカー!」
「ハノイからブルーエンジェルを取り返してくれ!」
人々がプレイメーカーに声援を送る。
「ハノイの騎士!俺はここにいるぞ!」
プレイメーカーが叫ぶと、ブルーエンジェルを浚ったハノイの騎士がDボードに乗って姿を現した。
彼の傍らには、意識を失ったまま拘束されたブルーエンジェルもいる。
「ブルーエンジェルを解放しろ!」
「返して欲しくば、何をすればいいか分かっているな」
彼はデュエルディスクを構える。
プレイメーカーも同じようにディスクを構える。
「一応名乗っておこう。私の名はファウスト。ハノイの騎士のセカンドだ。私が勝てば、君の持つイグニスを渡してもらおう」
「俺が勝てばブルーエンジェルを解放してもらう」
「交渉成立だな。では────」
「「スピードデュエル!」」
ターン1 プレイメーカー
「俺は自分フィールドにモンスターがいない時、手札のリンクスレイヤーを特殊召喚できる」
リンクスレイヤーが、大剣を構えて現れる。
「自分フィールドにサイバース族モンスターがいる時、手札のバックアップ・セクレタリーを特殊召喚できる。さらにスタック・リバイバーを通常召喚」
プレイメーカーのフィールドに、早速モンスター3体が並ぶ。
「現れろ!未来を導くサーキット!召喚条件はサイバース族モンスター2体!リンク召喚!現れろ、リンク2!スプラッシュ・メイジ!」
さらにスタック・リバイバーの効果で、墓地から一緒にリンク素材にしたバックアップ・セクレタリーを特殊召喚する。
「スプラッシュ・メイジの効果で、墓地からスタック・リバイバーを特殊召喚!」
スプラッシュ・メイジが杖をクルッと一回転させてから突き立てると、空間が乱れて、虚空よりスタック・リバイバーが出現する。
「現れろ!未来を導くサーキット!召喚条件は効果モンスター2体以上!リンク召喚!来い、デコード・トーカー!」
スプラッシュ・メイジ、スタック・リバイバーの2体で、デコード・トーカーをリンク召喚させた。
「さらにリンク召喚!リンクスレイヤーとバックアップ・セクレタリーをリンクマーカーにセット!リンク召喚!フレイム・アドミニスター!」
デコード・トーカーのリンク先に、赤いロボットのようなモンスターが召喚される。
「フレイム・アドミニスターの効果で、俺の場のリンクモンスターは攻撃力が800アップ!さらにデコード・トーカーはリンク先のモンスターの数×500攻撃力がアップする!パワーインテグレーション!」
これでデコード・トーカーは攻撃力3600、並みのモンスターでは突破できないサイズとなった。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン2 ファウスト
「私は予想GUYを発動!デッキからレベル4以下の通常モンスター、ゴキボールを特殊召喚!」
球体の黒光りする虫が出現する。
「自分フィールドに昆虫族モンスターが存在する場合、魔法カード、ワーム・ベイトを発動できる。ワームトークン2体を特殊召喚」
「現れろ。我らの未来回路!召喚条件は昆虫族モンスター2体以上。リンク召喚!リンク3、
リンク・効果モンスター
光属性/昆虫族/攻 1000/LINK3
【リンクマーカー:左/左下/下】
昆虫族モンスター2体以上
(1)このカードの攻撃力は、フィールドの昆虫族モンスターの数×700アップする。
(2)1ターンに1度、発動できる。このカードのリンク先に「ワームトークン」(昆虫族・地・星1・攻/守 0)1体を特殊召喚する。この効果は相手のターンでも発動できる。
(3)自分フィールドの「ワームトークン」は攻撃対象にならない。
(4)このカードが戦闘・効果で破壊される場合、かわりにこのカードのリンク先の昆虫族モンスターを破壊できる。
「スプレッド女王の攻撃力はフィールドの昆虫族モンスターの数×700アップする。そしてスプレッド女王の効果で、リンク先にワームトークンを特殊召喚!」
スプレッド女王が体から芋虫のようなモンスターを産み落とす。
「カードを1枚伏せて、バトルだ。スプレッド女王でフレイム・アドミニスターを攻撃!」
攻撃力2400となった虫の女王が、フレイム・アドミスターに迫る。
「俺は罠カード!リコーデッド・アライブを発動!俺のフィールドか墓地のリンク3のサイバース族リンクモンスターを除外することで、EXデッキから「コード・トーカー」モンスター1体を特殊召喚する!来い、エンコード・トーカー!」
デコード・トーカーがデータに分解され、エンコード・トーカーへと再構築される。
「エンコード・トーカーの効果!1ターンに1度、リンク先のモンスターのバトルによる破壊とダメージを無効にする」
エンコード・トーカーが投げた盾をフレイム・アドミスターが受けとり、スプレッド女王の攻撃を防いだ。
「私はこれでターンエンド」
ターン3
「エンコード・トーカーがいるから、このままワンターンキルで勝てるぞ」
「そう簡単に行けばいいがな」
プレイメーカーはファウストの伏せカードに目をやる。
「俺はカードを1枚伏せる」
「ここで私は永続罠!産卵床を発動する」
「やはりか」
産卵床
永続罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分フィールドに昆虫族モンスターが特殊召喚された場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの効果を無効にし、種族を昆虫族として扱う。
(2)自分のエンドフェイズに発動できる。自分フィールドに「ワームトークン「(昆虫族・地・星1・攻/守 0)1体を特殊召喚する。
「スプレッド女王の効果発動!リンク先にワームトークンを特殊召喚。ここで産卵床の効果が発動する。エンコード・トーカーの効果を無効にして、種族を昆虫族として扱う」
ジェル状のタマゴがエンコード・トーカーにとりつき、その力を奪う。
さらに昆虫族モンスターが増えたことで、スプレッド女王の攻撃力は3800まで上がる。
「くっ……俺はこれでターンエンド」
ターン4
「そろそろ決着をつけよう。私はスキル、ダブルバイトを発動!自分フィールドの昆虫族モンスター1体をリリースすることで、自分の昆虫族モンスター1体はこのターン、2回攻撃できる!」
スキルの効果を受けて、スプレッド女王は緑色のオーラをまとう。
「そしてスプレッド女王の効果で、再びワームトークンを特殊召喚!産卵床の効果でフレイム・アドミスターの効果を無効だ!」
これでプレイメーカーのフィールドのモンスターは全て効果が無効化された。
「フィールドの昆虫族モンスターは、合計5体これよにより、スプレッド女王は攻撃力4500。これで終わりだ!まずはスプレッド女王でエンコード・トーカーを攻撃!」
「俺は速攻魔法!サイバネット・クロスワイプを発動!自分フィールドのサイバース族モンスターをリリースし、相手フィールドのカード1枚を破壊する」
フレイム・アドミスターがデータに分解され、サイバネット・クロスワイプのカードに吸収される。
「俺が破壊するのは、スプレッド女王!」
カードから光線が放たれる。
「私はスプレッド女王の効果発動!リンク先の昆虫族モンスターを破壊することで、破壊を無効にする!」
「だが、昆虫族モンスターが減ったことで、スプレッド女王の攻撃力は下がる!」
「バトル続行だ。エンコード・トーカーを粉砕しろ!」
プレイメーカー:ライフ4000→3200
「2回攻撃!プレイメーカーにダイレクトアタック」
プレイメーカー:ライフ3200→800
「命拾いしたな。私はこれでターンエンド。エンドフェイズに産卵床の効果で、ワームトークンを特殊召喚」
トラップカードから芋虫が這い出た。
ターン5
「ドロー」
引いたカードを確認し、プレイメーカーは次の一手を考える。
「考えても無駄だ。今のお前じゃあいつには勝てない」
「お前は黙ってろ」
「黙らないね。今のお前のデッキには、この状況を覆すカードはない。今のデッキには、な」
「……どういう意味だ?」
「もうすぐだ。いい風が吹いてきた」
Ai がそう言って視線を前にやると、データストリームが渦を巻いて、まるで竜巻のようになってこちらに迫っていた。
「データストームだ。プレイメーカー、あれに飛び込め」
「お前!何を言っている!?」
「俺を信じろ。あいつに勝ちたいんだろ?」
Ai の表情からはいつものおふざけは感じなかった。
その態度を信じて、プレイメーカーはDボードを加速させ、そのままデータストームに突っ込む。
「何をする気だ!?」
プレイメーカーの行動に、ファウストも困惑している。
「これで条件は整った。今こそお前のスキルを使う時だ」
「俺のスキルだと?」
「この前デッキを弄った時に、スキルの方にも手を加えておいたんだ。データストームの中に眠る未知のモンスターを呼び寄せる、サイバースのとっておきのスキルをな」
「!!」
その瞬間、プレイメーカーの耳に、龍の雄叫びが聞こえた気がした。
その声に呼ばれるように、プレイメーカーは吹き荒れるデータの風に手を伸ばす。
「ぐっ……!」
膨大な情報が、彼のアバターに流れ込む。
意識が飛びそうなほどの衝撃に耐えながら、プレイメーカーは必死に『それ』を掴む。
「自分のライフが1000以下の時、データストームの中から、サイバース族モンスターをランダムにEXデッキに加える。風を掴め!プレイメーカー!」
「スキル発動!ストームアクセス!」
データが収束して、一枚のカードを作り出す。
「なっ!? ストームアクセスだと!?」
データストームからカードを手に飛び出したプレイメーカーを見て、ファウストは目を見開く。
「あのスキルはリンクセンスを持つものにしか扱えないはず……まさか、10年前の事件の!?」
「いくぞ。俺はサイバース・ガジェットを召喚!その効果で、墓地からレベル2以下のモンスター、スタック・リバイバーを特殊召喚!」
サイバース・ガジェットが左腕から伸ばしたコードで、虚空からスタック・リバイバーを吊り上げる。
「墓地のリコーデッド・アライブの効果!自分のEXモンスターゾーンにモンスターがいない場合、墓地のこのカードを除外して、除外されている「コード・トーカー」モンスターを特殊召喚する!甦れ、デコード・トーカー!」
空間に裂け目ができ、亜空間よりデコード・トーカーが舞い戻る。
「現れろ!未来を導くサーキット!召喚条件は効果モンスター2体!リンク召喚!リンク2、ペンテスタッグ!」
黒い機械のクワガタのモンスターが出現する。
「サイバース・ガジェットの効果!このカードがフィールドから墓地に送られた時、ガジェットトークンを特殊召喚。現れろ!未来を導くサーキット!」
再びアローヘッドが出現する。
「召喚条件はモンスター2体以上!俺はガジェットトークンと、リンク3のデコード・トーカーをリンクマーカーにセット!」
デコード・トーカーとガジェットトークンが光になってアローヘッドに吸い込まれ、上下左右四つのリンクマーカーを描く。
「唸れ嵐!虚構に渦巻く旋風は、万物を震わす竜の雄叫びとなる!リンク召喚!」
アローヘッドより、風が起こる。
「リンク4、ファイアウォール・ドラゴン!」
風の中より現れたのは、機械の翼を広げる白い竜だった。
「こいつが、データストームより呼び寄せたモンスターか……だがどんな強力なモンスターも効果が使えなければ意味がない!私はスプレッド
スプレッド
「これにより産卵床の効果!そのドラゴンの力を封じる!」
「その効果に対して、ファイアウォール・ドラゴンの効果発動!このカードと相互リンク状態のカード1枚につき、フィールド、墓地のカード1枚を手札に戻す!」
ファイアウォール・ドラゴンとペンテスタッグを繋ぐように粒子が流れる。
「スプレッド女王を手札に!エマージェンシーエスケープ!」
ファイアウォール・ドラゴンが翼をはためかせると、電撃が飛来し、スプレッド女王を撃破する。
「だがっ!私の場には守備表示のワームトークンが3体!このターンでライフは────」
「ペンテスタッグの効果、リンク状態のモンスターが守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える」
「なっ!?」
「終わりだ!まずはペンテスタッグ!1体目のワームトークンを攻撃!」
ペンテスタッグがその大顎でワームトークンの体を挟んで潰す。
ファウスト:ライフ4000→2400
「ファイアウォール・ドラゴン!ワームトークンを攻撃!」
ファイアウォール・ドラゴンが翼を広げ、口を開けて構える。
背中に集まったエネルギーが円を描き、ファイアウォール・ドラゴンの体が赤く染まる。
「テンペストアタック!」
閃光。
放たれた光線が、ファウストを吹き飛ばした。
◆
「ん……」
ブルーエンジェルが目を覚ますと、目の前には彼女を抱き抱えるプレイメーカーの姿があった。
「え!? 何!?」
「気が付いたか」
プレイメーカーは無事を確認すると、あっさり手を放して彼女を立たせる。
「プレイメーカー、あなたが助けてくれたの?」
「ハノイを倒しただけだ」
もう用は済んだと言わんばかりに、彼女に背を向けてDボードに乗る。
「プレイメーカー!」
「……なんだ?」
「助けてくれてありがとう。それと……」
ブルーエンジェルはビシッと指差す。
「次は負けないから」
「……」
プレイメーカーはそれには答えず、彼女を一瞥して飛び去った。
◆
「葵様!」
ログアウトした葵を、美海が抱き締める。
「美海……苦しい」
「あ、申し訳ございません!」
美海は慌てて手を放して、顔を赤らめる。
「美海、お兄様や、お父様やお母様は?」
「まだ帰られておりません」
「そう。じゃあこの事はバレてないのね」
「はい。いつも通りブルーエンジェルのログイン履歴は全て消去しておきました。しかし、SOLはおそらくこの件を調査するでしょう。葵様に使われたのは、どうやら人の意識に作用する特殊なプログラムのようでして……」
美海はPCの画面を見せて、プログラムの解析結果を報告するが、その手の知識のない彼女にはさっぱり分からなかった。
「葵様の正体がバレないように、私もできる限りのことはします」
「いつもありがとう。美海」
「いえ、葵様のためですから」
「ただいま」
その時、ちょうど晃が帰ってきた。
「お帰りなさい。お兄様」
葵は部屋を出て、兄を迎えにいく。
一人残された美海は、おもむろに録画したデュエルの映像をつける。
『……まさか、10年前の事件の!?』
「10年前……」
美海の脳裏に、懐かしくも忌まわしい記憶が甦る。
「プレイメーカーは、あの施設の出身……」
美海は一枚の写真を取り出す。
そこには幼い六人の子供達が写っていた。