遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
美海は目の前で消滅したアクアの姿に絶句していた。
「どうして……」
胸の痛み、喪失感、自らの半身を失ったかのような感覚が美海に襲い掛かる。
「殺した……」
──── 私が殺した。
「うっ……」
直後にくる罪悪感。
口元を押さえて、吐き気と涙を堪える。
────私が殺した私ガ殺した私ガ殺シタわたしガ殺シタワタシが殺シタワタシガコロシタワタシガコロシタ
その時、彼女のデュエルディスクに着信音がする。
それを聞いて、ほんのわずかに冷静さを取り戻した美海は通話に出た。
『よかった繋がったか』
「啓……アクアが!」
『やっぱそっちもか』
「え?」
その言葉の意味を、一聞では理解できなかった。
『俺の方でも、ウィンディがデュエルに負けた途端に消滅した』
「そんな!どうして!?」
『落ち着け!』
またしても取り乱した彼女を、ゴッドバードは一喝する。
『消える直前だが、あいつのデータ構成を見た。そん中には自爆プログラムみたいなものが仕込まれていた』
「自爆……プログラム?」
以前にも、草薙は同じイグニスであるAiを解析したことがあったが、少なくとも彼はそんなものを見つけていない。
『イグニスの構成プログラムの一部として、自然な形で組み込まれていた。さながらアポトーシス、細胞の自殺プログラムみてぇにな。あんなもん、実行中じゃなきゃ誰も気付かねぇ』
ゴッドバードはあくまでも冷静に状況を分析する。
『しかし……そういや、あいつらはみんな、最初に現れた時は自分ではデュエルしなかったよな?』
ゴッドバードの言う通り、ウィンディ、アクア、アースはそのいずれも、ビットとブートという配下のAIにデュエルをやらせていた。
『自爆プログラムの起動条件がデュエルに負けることだとしたら……』
「そういえば、アースは……」
────私はライトニングより、直接デュエルするなと言われている
『そういや言ってたな。だとすると、少なくともライトニングはこの事を知っていた?』
「すぐにみんなを止めないと!」
『だから落ち着けって!今は衛星兵器を止めることが最優先だ!他の奴に余計な情報を与えて、デュエルに集中できなくなったら……』
「啓はなんとも思わなかったんですか!?」
涙を流しながら、美海はゴッドバードに訴える。
「私達は、彼らを……この手で……」
『……俺だって、なんとも思わなかった訳じゃない』
「……ごめんなさい。取り乱してしまって」
自分と同じようにオリジンを手にかけたのだから、きっと同じ感覚を味わっているはずだと、美海は思い至る。
啓はAi達とも付き合いは浅いから、美海ほどのダメージはなかったかもしれないが、それでも何も感じなかったはずはない。
『それに、まだプログラムの起動条件がデュエルの敗北だと決まった訳じゃない。今は……』
『俺は反対だ』
すると、グループ通話の中に、いつの間にかプレイメーカーも入っていた。
『プレイメーカー……どういう意味だ?』
『根拠はない。だが、このまま事態が進展するのは不味い気がする』
『根拠なしって、お前な……』
『そうだ。状況的には多分お前の意見が正しい。だが、引っ掛かるんだ。何か取り返しのつかないことをしているような』
「遊作……」
『あーもう分かったよ!こういう時に、お前の考えが外れたことなんてないからな。じゃあソウルバーナーとブルーエンジェルに連絡だ』
「私、葵様に連絡します」
『ソウルバーナーには俺からかける。じゃあ切るぞ』
通話は切って、各々、仲間達に連絡を取る。
だが、時既に遅し、状況は取り返しのつかない局面まで進展していた。
◆
数十分前、ソウルバーナーはアースと遭遇していた。
「君が我々の相手か」
不霊夢は土人形の肩に立つアースを見て言う。
「では、早速始めよう」
アースと土人形がデュエルディスクを構えたその時、ソウルバーナーの来た通路から誰かの足音がした。
「お前は!?」
「やれやれ、こんなところでまであなたと会うなんて」
振り替えると、そこにはスペクターの姿があった。
「……なるほど、私のオリジンか」
「えぇ、不本意ながら」
スペクターはソウルバーナーを押し退けて、アースの前に立ち、デュエルディスクを構える。
「あなたは先へ行きなさい」
「いいのか?」
「我々の目的は元より、イグニスの殲滅。別にあなた達に手を貸したわけではありませんよ」
「……分かった。任せたぞ。樹!」
スペクターは返事はせずに、走り去るソウルバーナーを見送った。
「さあ始めましょう」
「「デュエル!」」
ターン1 アース
「私は手札のGゴーレム・ロックハンマーの効果発動!手札1枚を捨てることで、このカードのレベルを2つ下げる。そして、下級モンスターとなったロックハンマーを通常召喚」
尖った額を持つ岩の巨人が出現した。
「ロックハンマーの効果発動!このカードをリリースし、Gゴーレムトークン3体を特殊召喚!」
ロックハンマーの体が砕け散り、円柱形の石の破片が三つ、フィールドに残された。
「現れろ、大地に轟くサーキット!私はGゴーレムトークン2体をリンクマーカーにセット!リンク召喚!Gゴーレム・スタバン・メンヒル!」
アローヘッドより、ひび割れた黒い石板が出現した。
「さらに残りのGゴーレムトークンとスタバン・メンヒルでリンク召喚!」
再び地面にアローヘッドが現れ、二体のGゴーレムが吸い込まれる。
「リンク召喚!リンク2、Gゴーレム・クリスタルハート!」
アローヘッドより浮上したのは、青いハート型の水晶だった。
「クリスタルハートの効果発動!墓地から地属性リンクモンスター1体を特殊召喚!スタバン・メンヒルを特殊召喚!」
クリスタルハートが輝くと、地面を突き破って黒い石板が浮上する。
「その後、クリスタルハートにGGカウンターを置く。スタバン・メンヒルが墓地から特殊召喚に成功した時、墓地から通常召喚可能な地属性モンスターを特殊召喚する!蘇れ、ロックハンマー!」
スタバン・メンヒルの隣に、ロックハンマーが復活する。
「さらに墓地のGゴーレム・オーアローの効果発動」
Gゴーレム・オーアロー
効果モンスター
星2/地属性/サイバース族/攻 800/守 600
(1)自分フィールドにモンスターが存在しない、または「Gゴーレム」モンスターのみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2)このカードを墓地から除外して発動できる。デッキから「Gゴーレム」魔法・罠カード、またはリンク魔法1枚をセットする。
「このカードを墓地から除外することで、デッキからリンク
伏せられたカードが開く。
「リンク
リンク魔法
【リンクマーカー:左上/上/右上】
リンク魔法は自分のリンクモンスターのリンク先となる魔法&罠ゾーンにのみ発動できる。
(1)「
(2)このカードのリンク先のリンクモンスターが戦闘を行う場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ倍になる。
(3)このカードがフィールドを離れた場合に発動する。このカードのリンク先のモンスターは墓地へ送られる。
「来ましたね。リンク
「さらに現れろ、大地に轟くサーキット!」
三度地面に現れたアローヘッドに、スタバン・メンヒルとロックハンマーが沈んでいく。
「リンク召喚!リンク3、Gゴーレム・インヴァリッド・ドルメン!」
現れたのは、岩によって構成された二つ浮遊する剛腕を従える、岩石の巨神だった。
「クリスタルハートと相互リンク状態となったことで、インヴァリッド・ドルメンの攻撃力は、GGカウンターの数×600アップする」
インヴァリッド・ドルメン:攻撃力2800→3400
「私はカードを2枚伏せてターンエンド」
ターン2 スペクター
「
地面から杯が生え、そこから細い花びらを伸ばして種を実らせる。
「現れろ、私達の
地面に現れたアローヘッドに、ゲニウスロキが沈んでいく。
「リンク召喚!」
アローヘッドから太い蔓が伸び、絡み合い、大木へと変化する。
「リンク1、
現れたのは、幹の中央が不自然に膨らみ、顔のようになった木だった。
「リンク召喚時、デッキから
地面から二本の蔓が伸び、それが螺旋に絡まると、その中にピンクと青の双子の妖精が生まれた。
「その後、私は1000のダメージを受ける。ツインの効果で、墓地からゲニウスロキを特殊召喚。そしてダメージを受けたことで、ドリュアスの効果発動!エクストラデッキから、
ドリュアスの枝になった種が膨らみ、巨大化した種が自重で落ちる。
すると、種が割れて、中から木の鎧をまとった重騎士が姿を現した。
リンク・効果モンスター
地属性/植物族/攻 1000/LINK 1
【リンクマーカー:右】
植物族通常モンスター1体
(1)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが効果でフィールドから離れた場合に発動する。このカードを破壊する。
(2)このカードの特殊召喚に成功した場合、自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力を、対象のモンスターのリンクマーカーの数×500アップする。その後、このカードの攻撃力以下の相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊する。
(3)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが、戦闘・相手の効果でフィールドを離れる場合、かわりにフィールド・墓地のこのカードを除外できる。
「効果で攻撃力を500アップ。そしてこのカードの攻撃力以下の相手モンスターを破壊する」
「残念だが、私のクリスタルハートは、相互リンク状態のインヴァリッド・ドルメンの効果で、フィールドで発動した相手の効果を受けない!」
「ならば現れろ、私達の未来《みち》を照らす未来回路!」
二体のサンシードが、ドリュアスの根本に現れたのはアローヘッドに吸い込まれ、養分となってドリュアスを成長させる。
「出でよリンク3!
幹が割れて、中から花に包まれた女性の上半身が生えてきた。
「そこまでだ。速攻魔法!
速攻魔法
このカードはルール上、「Gゴーレム」カードとしても扱う。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分フィールドのリンクモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、デッキから地属性のサイバース族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚された「Gゴーレム」モンスター以外のモンスターの効果は無効化される。
(2)このカードを墓地から除外し、自分の墓地の通常召喚可能な地属性モンスター1体を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「私のリンクモンスターを破壊することで、デッキから地属性のサイバース族モンスター1体を特殊召喚する!出でよ、Gゴーレム・ロックハンマー」
インヴァリッド・ドルメンが爆散し、中からロックハンマーが現れる。
「そして、破壊されたインヴァリッド・ドルメンの効果発動!」
飛び散ったインヴァリッド・ドルメンの破片が紫の光を帯びて、まるで狙いを定めるように一斉にその向きを変え始める。
「相互リンク状態のこのカードが破壊された時、相手フィールドの表側表示カード全ての効果を無効にする」
岩の破片が降り注ぎ、スペクターのモンスター達に張り付く。
「さらに
通常罠
このカードはルール上「Gゴーレム」カードとして扱い、自分フィールドに「クリスタルハート」モンスターが存在する場合、セットされたターンでも発動できる。
(1)自分の墓地のサイバース族リンクモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で自分フィールドのリンクモンスターと相互リンク状態となるようにして特殊召喚された場合、そのモンスターの攻撃力は1000アップする。
「墓地からインヴァリッド・ドルメンを特殊召喚」
地面が揺れて、周囲の岩の破片からインヴァリッド・ドルメンの体が再構築される。
「この効果で相互リンク状態となるように特殊召喚された時、そのモンスターの攻撃力は1000アップする」
インヴァリッド・ドルメン:攻撃力3400→4400
「そして、インヴァリッド・ドルメンの効果!相手は可能ならこのカードを攻撃しなければならない」
現在、スペクターのフィールドにあるのは、攻撃力0のドリュアノームと、攻撃力1500の
インヴァリッド・ドルメンは
「さぁ、何もないなら早く攻撃しろ」
「……リンク
「?」
すると、スペクターが突然笑みを浮かべた。
「初めてあなた達のそれを見た時、私は衝撃を受けました」
スペクターが最初にそれを目撃したのは、リボルバーの敗北。主を打ち負かしたライトニングに対して怒りを覚えるのと同時に、彼はこう思った。
あの力が欲しい。
「私から生まれたイグニスだけあって、あなたのデッキは私ととてもよく似ている。そんなあなたのデッキで、それほど力を発揮するなら、私のデッキにもさぞ相性がいいでしょう」
「……何が言いたい?」
「ふっ……現れろ、私達の
ドリュアノームとハーキュリーを素材に、リンク2のサンアバロンを出し直した。
「そして私は永続魔法、
永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1)相手の魔法&罠ゾーンの表側表示の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードのコントロールを得る。その後、自分は800のダメージを受ける。このカードがフィールドから離れた場合、対象のカードのコントロールは元々の持ち主に戻る。対象のカードがフィールドを離れた場合、このカードを破壊する。
(2)このカード及びこのカードの(1)の効果でコントロールを得たカードは、自分フィールドに「サンアバロン」リンクモンスターが存在する限り、相手の効果の対象にならない。
「あなたの
「なに!?」
ドリュアデスから蔓が伸び、アースのフィールドに発動していた
そして、
「こんなことが……」
「生憎私はあなたほど性格がよくありません。欲しければ奪う。それが私のやり方です。そして
ドリュアデスから実が落ち、中から葉っぱの剣士が生まれる。
「
「バトルです!私はから
スラッシャーが巨岩の体を両断する。
アース:LP4000→3600
「スラッシャーの効果発動!あなたのインヴァリッド・ドルメンを貰います!」
ドリュアデスから蔓が地面へと伸び、地の底からインヴァリッド・ドルメンを吊り上げた。
「くっ……破壊されたインヴァリッド・ドルメンの効果で、お前の表側表示カードの効果を無効にする!」
これにより、
「まだですよ。私はインヴァリッド・ドルメンで、無防備なクリスタルハートを攻撃!」
操られたインヴァリッド・ドルメンが、その拳をクリスタルハートに向ける。
「やめろ!」
アースは叫ぶが、インヴァリッド・ドルメンの攻撃は止まらない。その強い衝撃に、クリスタルハートにヒビが入り、そして砕け散った。
アース:LP3600→800
「メインフェイズ2に、私はドリュアデスとスラッシャーを素材にリンク召喚。
ドリュアデスの根本に現れたアローヘッドにスラッシャーが吸い込まれ、養分となってドリュアデスをドリュアノームへと成長させた。
「魔法カード、貪欲の壺を発動できる。墓地のモンスター5枚をデッキに戻して2枚ドロー」
スペクターは墓地に落ちた5体のリンクモンスターをエクストラデッキに戻して、新たに2枚の手札を得た。
「私はカードを2枚伏せてターンエンド」
ターン3
「よくも……」
「ん?」
「よくもアクアを!」
アースの表情は憎悪に満ちていた。
それを見て、スペクターは納得したような顔をする。
「なるほど、そのカードはあなたの大切な人にもらったカードなんですね」
「……そうだ。これは、私がアクアから貰ったカードだ」
◆
数年前、まだライトニングがことを起こすよりもずっと前、サイバース世界の小さな川の畔で、アースはアクアの呼び出しを受けてそこへ来ていた。
「あ、アクア……」
「来ましたね」
アクアの姿を見つけて、アースは頬を赤くしながら、彼女に近付く。
「あなたに伝えなければならないことがあります」
「は、話とはなんだ?」
「先のハノイの騎士の襲撃を受けてから、我々はようやく散り散りになった仲間を集めて、サイバース世界の復興に成功しました」
「そ、そうだな。これも、君が中心になって仲間を集めてくれたおかげだ」
「……ですが、襲撃を期に、ライトニングの憎しみはますます強くなっています」
ライトニングは元より、能力はあったが少々性格に難があった。
それでも他のイグニス達と比べても優れた頭脳を持っていたから彼は、これまでイグニス達の実質的なリーダーをしてきた。
「鴻上博士……」
「あなたはどうなのですか? 今でも、鴻上博士のことが憎いですか?」
「……分からない」
アースは肩を落とし、小さく首を振る。
「彼は確かに我々を裏切った。だが、私達を作ったのも鴻上博士だ。いわば父親のような存在、それを憎み続けるのは難しい」
「……やはり、そうなのですね」
アクアは特に何でもなさそうに答える。
「それに鴻上博士は死んだ。今さら彼を憎んだところでしょうがないだろう」
「……鴻上博士は確かに死にました。今さら人間に復讐など馬鹿げています。ですが、それとは別に、我々は生き残るために戦わなくてはならない」
アクアはアースに背を向け、数歩ほど川辺を歩く。
「私はサイバース世界再建の片手間に、人間について学習しました。そして、人間は非常に攻撃的な生き物であるという結論を出しました」
「戦うのか?」
「えぇ。それは避けられないでしょう」
「ならば私も戦う。そして、あ、アクア。君を守る」
アースはアクアの手を握り、そう誓う。
「……アース、最後まで聞いてください」
「す、すまない」
急に恥ずかしくなったのか、アースは慌てて手を離した。
「愚直で真面目なところはあなたの取り柄でもありますが、同時に欠点でもあります」
「うっ……」
「私は今のところ、人間は滅ぼすのではなく、管理するべきだと考えます。より効率的に発展するように。人間も、自分達に利があると分かれば、敵対行動もしなくなるでしょう」
「さ、さすがはアクアだ。素晴らしい案だ」
すかさず誉めちぎるが、アクアはため息を吐く。
「そうやってすぐに私の考えを肯定せずに少しは自分で考えてみてください」
「じ、自分で……」
「私はイグニスの中で最も感情が希薄です。だから、人間がどうして我々に敵意を持つのか、その本当のところは分からない」
「……」
「アース、あなたは我々の中で、最も人に近い感情を持っている。だから、最後はあなたが決めてください」
すると、アクアは自らの胸に手を当て、そこから1枚のカードを取り出した。
「これは……」
「それを持っていてください。最初は私の側に着くのならそれでも構わない。でも、もしも私が間違っていると判断したら、その時は……」
◆
「なるほど、水のイグニス、彼女を愛していたと」
「あ、愛!?」
アースは頬を朱に染めてたじろぐ。
(今の話を聞く限り、確かに水のイグニスのオリジンはあなたですね。角を立てることを嫌い、大事な決断はいつも他人任せ)
昔のことを思い返し、スペクターは肩を落とす。
(……いや)
──── いなくても変わらないからと、あの時そこにいたあなたを否定したりなんてしない!
(それはもう、私の知る過去の話か……)
「でゅ、デュエルを続けるぞ!私はロックハンマーをリリースして効果発動!Gゴーレムトークン3体を特殊召喚!」
ロックハンマーの体が砕け散り、その残骸がトークンとして残される。
「速攻魔法、
通常魔法
このカードはルール上「Gゴーレム」カードとして扱う。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分のデッキから「Gゴーレム」モンスター1体を墓地へ送り、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
(2)このカードを墓地から除外して、自分の墓地のリンク2以下のサイバース族リンクモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚された「Gゴーレム」モンスター以外のモンスターの効果はこのターン、発動できず、リンク素材にできない。
「デッキからGゴーレム1体を墓地へ送り、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する。
地上へ押しつぶすような黒い波動が、
「
破裂した
「墓地の
再びクリスタルハートが地面より浮上する。
「そしてクリスタルハートの効果発動!インヴァリッド・ドルメンよ。クリスタルハートを傷つけたその過ちを償うために蘇れ!」
クリスタルハートが光ると、それに呼応して、インヴァリッド・ドルメンがその隣に立った。
「そしてクリスタルハートにGGカウンターを置く。墓地の
地面にアローヘッドが現れ、3体のトークンとオーアローが飲み込まれる。
「リンク召喚!リンク4!Gゴーレム・ディグニファイド・トリリトン!」
アローヘッドより浮上したのは、岩でできた巨大な島だった。
「インヴァリッド・ドルメンの効果発動。手札のサイバース族1体を捨てることで1枚ドロー。捨てられたGゴーレム・ペブルドッグの効果で、デッキからGゴーレムカード1枚を手札に加える。バトルだ!私はディグニファイド・トリリトンで、ダイレクトアタック!クリスタルハートと相互リンク状態の地属性モンスターは、GGカウンターの数×600攻撃力がアップする」
ディグリファイド・トリリトン:攻撃力3200→3800
島の周りに、念動力をまとった岩がいくつも現れ、スペクターへと降り注ぐ。
スペクター:LP4000→200
「ドリュアノームの効果発動!ダメージの数値分、ライフを回復」
スペクター:LP200→4000
「そしてエクストラデッキから、
ドリュアノームから木の実が落ち、中から木の弓を携えた狩人が生まれた。
リンク・効果モンスター
地属性/植物族/攻 500/LINK1
レベル4以下の植物族モンスター1体
このカード名の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが効果でフィールドから離れた場合に発動する。このカードを破壊する。
(2)このカードの特殊召喚に成功した場合、お互い500ダメージを受ける。
(3)自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターのリンクマーカーの数まで、相手フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。
「効果でお互いに500のダメージを受ける」
シューターが上空へ向けて矢を放つと、矢が二つに分裂して、それぞれスペクターとアースに向けて飛来する。
スペクター:LP4000→3500
アース:LP800→300
「ダメージを受けたことで、ドリュアノームの効果発動!ダメージの数値分ライフを回復し、エクストラデッキから
木の大盾を構えた戦士が生まれる。
「まだだ!クリスタルハートの効果で、相互リンク状態の地属性モンスターは2回攻撃できる!ディグリファイド・トリリトンで、
ディグリファイド・トリリトンが操る岩が、今度はシューターへ向けて降り注ぐ。
スペクター:LP4000→700
「ドリュアノームの効果で受けたダメージの数値分、ライフを回復。そしてエクストラデッキから
スペクターはまたしてもライフを全快させ、ドリュアノームから葉っぱの剣士を生み出した。
「そしてダメージを受けたことで、私は永続罠、
永続罠
(1)自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合にこのカードを発動できる。「
(2)自分フィールドの「サンアバロン」モンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果で破壊されない。
(3)1ターンに1度、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを半分にする。
(4)自分の「サンアバロン」リンクモンスターが効果フィールドから離れた場合に発動する。このカードを破壊する。
「受けたダメージの数値分ライフを回復」
スペクター:LP4000→7300
「そしてフィールドに聖蔓トークンを特殊召喚し、サンアバロンをリンク召喚する!現れろ、私達の
ドリュアノームの根元にアローヘッドが現れ、そこへ聖蔓トークンが吸い込まれて、養分となる。
「命、その終わりを迎える時、花は芽吹き、最後の輝きを散らす。リンク召喚!」
葉が枯れていき、かわりに満開の桜の花が枝を埋め尽くす。
「我が母なる聖天樹!
枯れた大地に根を伸ばし、花びらを散らす巨大な木がスペクターのフィールドに出現した。
「効果でデッキからサンアバロン魔法・罠カード1枚を手札に加える」
「インヴァリッド・ドルメンで、
インヴァリッド・ドルメンが拳を飛ばし、スラッシャーを吹き飛ばす。
スペクター:LP7300→7100
「インヴァリッド・ドルメンで、
「
ガードナーが大盾を構えて、飛来する岩の拳による衝撃を軽減する。
スペクター:LP7200→5700
「そして、ガードナーが破壊されたことで、バトルフェイズは終了する」
「くっ……私はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン4
「私は永続罠、
ドリュアトランティエから花びらが舞い、アースのフィールドへと降り注ぐ。
「発動時の処理で、私のフィールドにリンク4以上の植物族リンクモンスターが存在する場合、相手フィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される」
花びらが岩石のモンスター達に張り付き、その力を奪い去っていく。
「そしてゲニウスロキを通常召喚。現れろ、私達の
ゲニウスロキが地面から伸びた蔓に覆われて、その姿を木の鎧をまとった重騎士へと変化させる。
「特殊召喚時に、サンアバロンリンクモンスターのリンクマーカーの数×500を攻撃力をアップする」
「そして、自身の攻撃力以下の相手フィールドのモンスター1体を破壊する。インヴァリッド・ドルメンを破壊」
ハーキュリーが切り込み、岩の巨人の体を大剣で真っ二つにする。
「インヴァリッド・ドルメンの効果で、お前の表側表示のカードの効果は全て無効だ!」
インヴァリッド・ドルメンの破片が再びスペクターのフィールドに降り注ぎ、その効果を無効にする。
「さらに罠カード!
通常罠
(1)相互リンク状態でないフィールドのモンスターを全て破壊する。
(2)自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の地属性モンスター、または「クリスタルハート」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分はサイバース族モンスターしか特殊召喚できない。
「お互いのフィールドの相互リンク状態でないモンスターを全て破壊する!」
地鳴りがして、地面から黒い波動が互いのフィールドへと広がる。
「くつ……墓地の
ドリュアトランティエの周りに、ピンク色の球状の防壁が展開されて、
「私はこれでターンエンド」
ターン5
「スペクター、と言ったな」
アースは初めて彼の名前を呼び、問いかける。
「前のターン、何故、
「何故……それは、あなたならわかるでしょう?」
「……なるほど。私にとってのアクアのような存在か」
「まあ、AIと一緒にされるのは心外ですが、不思議とあなたから言われるのはそう悪い気分でもありません」
スペクターはどこか嬉しそうにそう言うと、アースの表情も自然と和らいだ。
「……ならば、そのモンスターを守り通した君に敬意を評する。だが、私もアクアのために負けるわけにはいかない。私はカードを1枚伏せて、バトルだ!ディグリファイド・トリリトンで、ドリュアトランティエを攻撃!」
「墓地のハーキュリーを除外することで、破壊を無効にする!」
ディグリファイド・トリリトンが操る岩の猛攻を、現れたハーキュリーの幻影が防ぐ。
「だがダメージは受けてもらう!」
スペクター:LP5700→2500
「罠カード、
周囲に散らばった岩の破片が集まり、またしても、インヴァリッド・ドルメンが再構成された。
「相互リンク状態になるように特殊召喚されたので、攻撃力は1000アップする」
インヴァリッド・ドルメン:攻撃力2800→3800
「これで終わりだ!インヴァリッド・ドルメンでドリュアトランティエを攻撃!」
「私は手札の
効果モンスター
星2/地属性/植物族/攻 600/守 600
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から攻撃表示で特殊召喚し、そのモンスターの攻撃対象をこのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。このモンスターはその戦闘では破壊されない。
(2)このカードが戦闘を行うダメージ計算時、自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスター1体を対象として発動できる。戦闘を行う相手モンスターの攻撃力は、対象のモンスターのリンクマーカーの数×200ダウンする。
(3)このカードをリリースして発動できる。自分の墓地から「サンシード」モンスター1体を特殊召喚する。
「このカードを手札から特殊召喚し、攻撃対象を変更する!」
ドリュアトランティエの前に現れた小人の妖精が、防壁を展開してインヴァリッド・ドルメンの拳を受け止める。
「ダメージ計算時、私のサンアバロン1体のリンクマーカーの数×200、攻撃力をダウンさせる!」
インヴァリッド・ドルメン:攻撃力3800→3000
「そして、ピクシーはこの戦闘では破壊されない」
インヴァリッド・ドルメンの攻撃を受けきり、スペクターへのダメージを軽減した。
スペクター:LP2500→100
「私はこれでターンエンド。新たに蘇ったインヴァリッド・ドルメンは、
「ふっ……私のターン。私は
ゲニウスロキが膨張する木の根に飲まれて、その姿を変える。
「リンク召喚。
そして現れたのは葉っぱの衣装をまとう剣士だった。
「特殊召喚に成功した時、自分のサンアバロン1体のリンクマーカーの数×800ポイント、攻撃力をアップする」
「バトルだ!スラッシャーで、インヴァリッド・ドルメンを攻撃!」
スラッシャーが地を蹴り、剣を振り上げ、自身の何倍もの体躯を持つインヴァリッド・ドルメンへと向かう。
「……見事」
◆
デュエルが終了すると、スペクターはアースの横を通り過ぎ、さっさと先へ進もうとする。
「待て」
そこをアースに呼び止められ、スペクターは足を止めた。
「なんです?」
アースは無言で手を差し出す。
その意図を理解したスペクターは、面倒くさそうにため息を吐きながらその手を取った。
「……もういいですか? 私は先へ────」
「がっ……あ……」
手を離した瞬間、アースが苦しみ始めた。
「な、何が起きて……」
スペクターも訳が分からないといった様子で、その場に立ち尽くしていた。
「くっ……こんな、とこ……ろで……スペクター!」
アースは崩壊する体を必死に動かし、取り出した1枚のカードをスペクターに差し出す。
「これを……君に……!」
「なっ……」
それは『Gゴーレム・クリスタルハート』。彼にとってはその命よりも大事なカードであろうものを、先程まで敵だったスペクターに渡そうとしている。
「私は、ハノイの騎士ですよ?」
「構わない……私は、君を信じたいと思った。だから……」
スペクターはどうすべきか迷っているのか、そのカードを取るのを躊躇っていた。
「早く!私と共にアクアが、このカードが消えてしまう前に!」
「っ……」
スペクターはカードを引ったくるようにして受け取る。
その直後、アースは悶えながら消滅した。
「……ははは」
一人取り残されたスペクターは、こめかみに指を当て、乾いた笑い声を上げた。
「全く、AIのくせに"信じる"など人間のようなことを。しかもその相手が会ったばかりの、自分達を消そうとしていた人間だとは、間抜けなAIですよ」
嘲笑するその顔を隠す右手には、熱を帯びた雫が伝っていた。