遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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大変お待たせしました


第52話:Dark think of Ai

 SOLテクノロジー本社、巨大モニターの中には1体の人型のAIが映っていた。

 青白い半透明の肌、体には赤いラインで複雑な模様が刻まれており、今は目を閉じて眠ったように動かない。

 

「これが、IGS-000の最終タイプですか」

 

 ナイトこと八神零那がその姿を見て感嘆の声を漏らす。

 

「そうだ。こいつは既にイグニス達に限りなく近い性能を有している」

 

 ビショップがタブレットを操作すると、画面上になにやら数字やグラフがいくつも表示される。

 

「本日、インストール作業を行う。晴れてこいつは、無人兵器のパイロットとして世に送り出されるわけだな」

「……ビショップ様は、これでよろしいのですか?」

 

 皮肉交じりに言うビショップに、八神は問いかける。

 

「既にガンズレッドファクトリーは、試作機を500台をこちらに輸送している」

 

 ため息を吐きながら、タブレットを操作すると、映像が切り替わる。

 それはデンシティの地下にあるSOL所有の巨大倉庫。その中には何百台もの戦闘機が所狭しと並べられている。

 

「今更取引を止めることなどできんよ」

「しかし……私はこんなことをするために」

「君は、面倒なことになる前にここを離れるべきだ」

 

 ビショップもこの事業が決していい結果を生まないことは分かっている。

 公になれば常務であるナイトもバッシングは避けられない。

 

 しかし、ナイトは小さく首を振る。

 

「今更逃げるなんでできませんよ」

「……そうか」

 

 それを聞いて、ビショップは彼女へ背を向けた。

 

「何も起きなければいいがな」

 

 そう呟いて、ビショップは部屋を後にした。

 

 ◆

 

 ある朝、遊作、啓、島の三人は遅刻ギリギリの時間に廊下を走っていた。

 

「お前のせいだからな」

 

 啓は隣で走る島を睨みつける。

 

「デュエリストのくせに、デュエルディスク落としてんじゃねぇよ」

「というか、何故腕につけているものを失くしたりするんだ」

 

 二人は登校中に偶然出くわした島に頼まれて、落としたというデュエルディスクを探していたら、こんなギリギリの時間になってしまったのだ。

 

「しょーがねーだろ!腕につけてると、カメラ機能が使いにくかったんだよ」

「じゃあ使った後腕に付け直せよ。こっちは出席日数足りてなくてこれ以上遅刻できないってのに」

「その割には探すのを手伝ってやるんだな」

「…‥うるさい」

 

 遊作に茶化されて、啓は黙り込む。

 

「ああ俺行くからな」

 

 隣のクラスである啓は、一足早く自分の教室に飛び込んだ。

 遅れて遊作達もその奥にある自分の教室に滑り込んだ。

 

「ギリギリセーフ……あれ、切花ちゃんは?」

 

 島は教室の中に切花の姿が見当たらず、近くにいた葵に尋ねる。

 彼女は少し気まずそうな顔を見せて、何か言いかけたところで、

 

「はーい。みんな。ホームルーム始めるわよ」

 

 担任のエマが教室に入ってきたことで、その話は中断される。

 仕方なく二人は席に着く。

 

「藤木君」

 

 すると、葵が隣に座る遊作に小声で話しかける。

 

「後で、話があるんだけど」

「……分かった」

 

 ◆

 

 そして休み時間、屋上にやってきた遊作を待っていたのは、葵、美海の二人だった。

 

「何かあったのか?」

「えーっと……」

 

 葵が言いよどんだのを見て、遊作は何かを察した。

 

「もしかして、夢乃のことか?」

「……うん。切花は、あの子、ジャックナイフだったの」

「そうか」

 

 元より彼女のことを疑っていた遊作は、特に驚くこともなくそう返した。

 

「どうやって正体を知ることになったんだ?」

「実は……」

 

 葵が事の経緯を話す。

 

「多分、切花は、何かに苦しんでるんだと思う」

 

 葵とデュエルしている際も、どうしてあんなことをしたのか、何に怒っているのか、その真意を読み取ることはできなかった。

 

「遊作、彼女について、何か思い当たることはありませんか?」

 

 ジャックナイフとは一番接触の機会が多かった遊作は、これまでの出来事を思い返す。

 

「そういえば、奴は結局、何故イグニスを恨んでいたんだ?」

 

 以前彼女は、Aiに対してはっきりとこう言った。

 

 ────お前たちイグニスに、ボクの人生は壊されたんだ

 

「あいつがイグニスに恨みを抱く理由が分からない」

「確かに、彼女は結局、ハノイプロジェクトの被験者ではありませんでした」

「実は他にも被害者がいたとか?」

「それはない。10年前のあの時、実験を受けたのは確かに俺達六人だけだ」

「ですね。ではそれ以降にイグニスに何かされたとか……」

 

 三人は真っ先にライトニングの顔を思い浮かべた。

 

「ライトニングはハノイが行動を起こす前から、先生、鴻上博士に恨みを持っていたんですよね?」

「ああ。シミュレーションの結果、イグニスが人類を滅ぼすことが分かり、作った直後のイグニス達を消そうとした」

 

 あのまま衛星兵器を掌握されていれば、まさにそのシミュレーション通りになっていたわけだ。

 

「……ん?」

 

 そこまで整理したところで、遊作は何か引っ掛かりを覚えた。

 

「どうかした?」

「いや……」

 

 それを口にしようか迷っている間に、葵のデュエルディスクから通知音が鳴る。

 

「お兄様からだわ」

 

 嬉々として電話に出ると、葵の表情が少し寂しそうなものに変わる。

 

「はい……分かりました」

「葵様、晃様はなんと?」

「今日は帰りが遅くなるって」

「そうですか。ご夕飯はどうなさると?」

「作らなくていいって」

「かしこまりました」

 

 美海は頭を下げる。

 そこで遊作は、ふと気になったことを尋ねてみた。

 

「財前の家ではいつも美海が作ってるのか?」

「まあ基本的にはそうですね。ご両親共々、お仕事でなかなか家にいられる時間が少なくて」

「そうか……」

「もちろん、私も常に家にいるわけではないので、料理以外の家事は、お手伝いロボットに任せていますが。ちなみにSOL製です」

「自社製品か」

「もう社員じゃありませんけどね」

 

 そう美海は冗談めかして笑う。

 

「はぁ……」

 

 一方葵は、最愛の兄と今日も会えないと分かり、見るからに気落ちしていた。

 

「晃様、最近お忙しいみたいですね」

「そうなのよ。なんか新規プロジェクトの準備とかで、人手が足りなくなってるみたいで」

「ああ言ってましたね。セキュリティ部署からSEが何人か臨時で引き抜かれたって」

「八神さんが物凄く頭下げてたって」

「八神……ナイトか」

 

 一応、SOL上層部とは、遊作は敵対関係にある。

 その事で顔が強張ったのか、美海は嗜めるようにこう言う。

 

「あの人、ちょっと胡散臭くて誤解されやすいですけどいい人ですよ」

「だが、残りのレポートはSOLが持っている。それに、今もイグニスを追っているなら……」

 

 ライトニングと共にいる仁、そして今も行方が分からないAiのことを思い浮かべて、遊作は拳を握り締める。

 

「……八神さんが関わってるなら、その新規プロジェクトというのはビショップ様、あるいは社長のクイーンが主導のプロジェクトでしょうね」

「その辺り、財前兄は知らないのか?」

 

 葵は首を横に振る。

 

「そうか」

「まあSOLについて調べるのは後回しです。今は仁の救出が最優先、それは分かってますよね?」

「……そうだな」

 

 ◆

 

 SOLテクノロジー社所有倉庫。

 デンシティ地下に作られたその空間内には、つい先日港から運び込まれたおびただしい数の戦闘機が、静かに眠っている。

 

「これだけの数、よくも税関に止められませんでしたね」

 

 倉庫二階の通路の上から八神はそれらを見下ろす。

 

「天下のGRFだ。どうせ政治家とも裏で繋がっているのだろう」

 

 八神の言葉に、ビショップは皮肉混じりに答える。

 

「まさしく死の商人、ですね」

「……セットアップを始めろ」

 

 ビショップの指示で、各機体に一斉にインストール作業が行われる。

 その時だった。

 

「っ!!」

 

 突如、倉庫の照明が落ちた。

 

「よう。お二人さん」

 

 再び照明がつくと、そこは別世界だった。

 五つの墓標が並ぶ、黒い砂に覆われた場所、端末をハッキングして、彼らに強制的にAR空間を見せているのだろう。

 

 そして、そんな場所に佇む男が一人、

 180cm程度の長身、紫のはねた前髪に黄色い瞳、どこか見覚えのある形状の目玉のようなピアスをつけた軍服のようなコートを着ている。

 

「誰だ?」

「この姿じゃわかんねぇか。俺だよ。闇のイグニスっつったら分かるか?」

「まさか、Aiちゃん!?」

「お!あんたは俺の名前覚えてくれてたんだな」

 

 八神に名前で呼ばれ、Aiは嬉しそうに笑う。

 

「今さら何をしに来た?」

「何って言われても、そうだな……とりあえず、そこにある物騒なもんをもらいに来た」

 

 AR空間が歪み、彼の後ろにある戦闘機の姿が見えるようになる。

 

「貴様……」

「言っとくけど、もうハッキングは済んだから。返してほしけりゃ、分かるよな?」

 

 Aiは左腕を掲げて、そこに装着された旧式デュエルディスクを見せる。

 

「ビショップ様、お下がり下さい。ここは私が」

 

 八神はデュエルディスクを構えて前に出る。

 

「やっぱお姉さんが相手してくれる感じ?んじゃ早速……」

 

「「デュエル!!」」

 

ターン1 八神

 

「私は征令アライアンスを召喚!」

 

 銀色の鎧を身につけた衛士が、剣を縦に構えて到着する。

 

征令《セントラルオーダー》アライアンス

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻 1800/守 1000

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードの召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から「征令(セントラルオーダー)アライアンス」を可能な限り特殊召喚する。この効果を発動するターン、自分はEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(2)このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「セントラルオーダーロード」モンスター1体を手札に加える。自分フィールドのモンスターが「セントラルオーダー」モンスターのみの場合、このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、戦士族の「セントラルオーダーロード」モンスターをアドバンス召喚できる。

 

「アライアンスが召喚に成功した時、デッキから同名モンスター2体を特殊召喚!」

 

 アライアンスの左右に、同じ姿の衛士達が現れる。

 

「特殊召喚成功時、デッキからセントラルオーダーロードを手札に加える。そしてこのターン、私は通常召喚に加えて1度だけアドバンス召喚できる。私は永続魔法、征令の執務室(セントラルオーダー・ジェイル)を発動し、アドバンス召喚!」

 

 三体のモンスターが天に吸い込まれ、代わりに玉座が降りてくる。

 

征令王(セントラルオーダーロード)グッドウィール」

 

 そこに腰かけるようにして現れたのは、巨大な剣を携えた王だった。

 

征令王(セントラルオーダーロード)グッドウィール

効果モンスター

星10/闇属性/戦士族/攻 3000/守 3000

このカードをアドバンス召喚する場合、モンスター3体をリリースしなければならない。

(1)このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。自分の墓地からレベル6以下の「セントラルオーダー」モンスターを可能な限り、守備表示で特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は「セントラルオーダーロード」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

(2)アドバンス召喚されたこのカードがフィールドに表側表示で存在する場合に発動できる。自分フィールドの「セントラルオーダー」モンスター1体と、相手フィールドのモンスター1体をリリースできる。

(3)アドバンス召喚されたこのカードが戦闘・相手の効果で破壊されて墓地へ送られた場合に発動できる。デッキ・墓地から「征令締結」1枚を手札に加え、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

征令の執務室(セントラルオーダー・ジェイル)

永続魔法

(1)自分のモンスターがリリースされる毎に、リリースされたモンスター1体に付き、このカードにオーバータイムカウンターを置く。

(2)自分の「セントラルオーダー」モンスターの攻撃力は、このカードのオーバータイムカウンターの数×200アップする。

(3)自分の「セントラルオーダー」カードが相手の効果でフィールドを離れる場合、代わりにこのカードのオーバータイムカウンター2つを取り除くことができる。

 

征令の執務室(セントラルオーダー・ジェイル)の効果で、リリースされたモンスターの数だけオーバータイムカウンターを追加。グッドウィールの効果発動!墓地からアライアンス3体を特殊召喚」

 

 グッドウィールが地面に剣を三回突くと、どこからともなくアライアンスが現れて、その脇に控える。

 

「フィールド魔法、征令企業(セントラルオーダーカンパニー)-グッドスタッフを発動!」

 

征令企業(セントラルオーダーカンパニー)-グッドスタッフ-

フィールド魔法

このカード名の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分はカードの効果以外でモンスターを特殊召喚できない。

(2)自分のメインフェイズに発動できる。手札から「セントラルオーダー」モンスター1体を召喚する。

(3)自分の「セントラルオーダー」モンスター1体をリリースして発動できる。デッキからそのモンスターとカード名の異なる「セントラルオーダー」カード1枚を手札に加える。

 

「これで私はさらに通常召喚を行える。2体をリリースしてアドバンス召喚!征令従騎(セントラルオーダーセクレタリー)ホワイトナイト!」

 

 彼女の背後から、白い騎馬に乗った騎士が駆けつけた。

 

征令従騎(セントラルオーダーセクレタリー)ホワイトナイト

効果モンスター

星7/闇属性/戦士族/攻 2400/守 2400

(1)アドバンス召喚されたこのカードは、特殊召喚された相手モンスターの効果を受けない。

(2)このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードの攻撃力は、このカードの元々の攻撃力分アップする。

(3)このカードがリンクモンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードの攻撃力は、そのリンクマーカーの数×1000アップする。

(4)アドバンス召喚されたこのカードが効果でフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。その後、デッキから「セントラルオーダー」装備魔法カード1枚を手札に加える。

 

「モンスターがリリースされたことでオーバータイムカウンターを追加。続けて手札の征令賢従(セントラルオーダーセクレタリー)グロスリースの効果発動!」

 

征令賢従(セントラルオーダーセクレタリー)グロスリース

効果モンスター

星5/闇属性/魔法使い族/攻 2000/守 2400

このカード名の(1)の

(1)このカードは手札から公開して発動できる。自分のデッキから3枚をめくり、その中に「セントラルオーダー」カードが2枚以上あれば、それら全てを墓地へ送り、このカードを召喚する。なければめくったカードをデッキに戻す。

(2)このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「セントラルオーダー」カード1枚か、通常罠カード1枚を手札に加える。

(3)アドバンス召喚されたこのカードは1ターンに1度だけ、戦闘・効果で破壊されない。

 

「デッキの上から3枚をめくり、その中にセントラルオーダーが2枚以上あればそれらを全てを墓地へ送り、このカードを召喚する」

 

 八神はデッキから3枚のカードを引き、それをAiに見せる。

 

「えーっと、3枚ともセントラルオーダーか」

「えぇ。なので残りのアライアンスもリリースしてグロスリースをアドバンス召喚!」

 

 両肩が大きく膨らんだ赤いコートをまとった賢者が、グッドウィールの脇に控える。

 

「効果でデッキからセントラルオーダーカード、または通常罠カード1枚を手札に加える。私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

ターン2 Ai

 

「さすがにやるな。一度はプレイメーカーを追い詰めただけはある」

「お褒めにあずかり光栄です」

 

 八神の盤面は完璧に近い。

 カウンターを2つを取り除くことで、自身を含むセントラルオーダーをあらゆる除去から守る征令の執務室(セントラルオーダー・ジェイル)、さらにホワイトナイトとグッドウィールは1度倒されても蘇り、グロスリースも1ターンに1度の破壊耐性がある。

 

 この布陣を突破するのは容易ではないだろう。

 

「んじゃ俺のターン。俺はフィールド魔法、イグニスターAiランドを発動。こいつはメインモンスターゾーンにモンスターがいない時、手札からレベル4以下の@イグニスターを特殊召喚できる。まずはピカリ@イグニスターを特殊召喚」

 

 Aiのフィールドに、白いトンガリ帽を被った黄色い一頭身の謎の生命体が現れる。

 

「デッキから「Ai」魔法・罠カードを手札に加える。現れろ、闇を導くサーキット!」

 

 ピカリがアローヘッドに飛び込む。

 

「リンク召喚!リンク1、リングリボー!」

 

 現れたのは黒っぽい色のリンクリボーそっくりのモンスターだった。

 

「イグニスターAiランドの効果を再び発動。メインモンスターゾーンにモンスターが存在しない時、手札からブルル@イグニスターを特殊召喚」

 

 今度は尖った耳が生えた緑色の生命体が出現する。

 

「デッキから@イグニスターを墓地へ送る。さらにアチチ@イグニスターを通常召喚。効果でデッキから@イグニスターを手札に加える。現れろ、闇を導くサーキット!」

 

 三体のモンスターがアローヘッドに吸い込まれ、下方向の三つの矢印を描く。

 

「闇影開闢、世界に散らばりし闇夜の叡知。我が手に集い、覇気覚醒の力となれ!リンク召喚!」

 

 アローヘッドを突き破り、それは飛来する。

 

「リンク召喚!リンク3!ダークナイト@イグニスター!」

 

 大剣を振り下ろし、デコード・トーカーとよく似た姿をした翼の生えた紫の戦士がフィールドに降り立った。

 

「三度イグニスターAiランドの効果発動!手札からドヨン@イグニスターを特殊召喚!効果で墓地からアチチを回収。そしてダークナイト@イグニスターの効果発動!」

 

 ダークナイトが雄叫びを上げる。

 

「リンク先にモンスターが特殊召喚された時、墓地のレベル4以下の@イグニスターを可能な限り特殊召喚!」

 

 ブルル、ピカリがダークナイトの後ろに蘇る。

 

「なんという展開力」

「まだ終わりじゃねぇぞ。俺はレベル4のピカリに、レベル3のブルルをチューニング!」

 

 二体のモンスターが粒子に分解され、それらが光の輪を形作る。

 

「闇路をさまよいし混沌!蒼穹を駆ける疾風が道ひらく!シンクロ召喚!現れろレベル7!ウィンドペガサス@イグニスター!」

 

 風をまとい、光の輪を貫いて現れたのは、白い天馬だった。

 

「ブルル@イグニスターの効果発動!このカード以外のシンクロ素材となったモンスター1体を特殊召喚!甦れ、ピカリ」

 

 ドヨンの隣に、ピカリが再び蘇る。

 

「この流れ、まさか……」

「そのまさか……の前に、俺は墓地のリングリボーの効果発動!ダークナイトをリリースして、墓地から特殊召喚!」

 

 ダークナイトが地面に沈み、代わりにリングリボーがEXモンスターゾーンに浮上した。

 

「俺はレベル4のドヨンとピカリで、オーバーレイネットワークを構築!」

 

 空にエックス字のパネルが現れ、二体の@イグニスターが赤と青の螺旋の光を描いて吸い込まれる。

 

「怪力乱神、驚天動地。その力、今こそ久遠の慟哭から目覚めよ!」

 

 パネルに光が集まり、その輝きを増していく。

 

「エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!ライトドラゴン@イグニスター!」

 

 光が爆ぜ、現れたのは金色の鱗に、二対の翼を広げるドラゴンだ。

 

「そこまでです!私は罠カード!解雇通告を発動!」

 

解雇通告

通常罠

(1)相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功した時に発動できる。フィールドのEXデッキから特殊召喚されたモンスター全てを破壊する。この効果で破壊したモンスターの数だけ、相手のEXデッキからランダムに裏側表示で除外する。

 

「EXデッキから特殊召喚されたお互いのモンスターを全て破壊する!」

 

 カードから放たれた光が二人のフィールドを飲み込む。

 八神のフィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターはいない。Aiのモンスターを一方的に破壊できる。しかし、

 

「え?」

 

 しかし、Aiのフィールドのモンスター、ライトドラゴン@イグニスターも、ウィンドペガサス@イグニスターも生きている。

 

「残念だったな。リングリボーの効果で、その罠は無効にさせてもらった」

「くっ……」

「速攻魔法、Aiドリングボーンを発動。墓地からダークナイト@イグニスターを特殊召喚。いくぜ。まずはウィンドペガサスの効果発動!俺の@イグニスターの数だけ、相手フィールドの魔法(マジック)・罠カードを破壊する!」

 

 ウィンドペガサスが翼をはためかせると、突風が八神のフィールドを襲う。

 

征令の執務室(セントラルオーダー・ジェイル)の効果で、オーバータイムカウンター2つを取り除くことで破壊を無効!」

「だが伏せカードとフィールド魔法はもらう」

 

 風が彼女の魔法カード2枚を吹き飛ばす。

 

「ライトドラゴン@イグニスターの効果発動!@イグニスターの数だけ、相手の表側表示モンスターを破壊する!」

 

 ライトドラゴンが嘶き、天から落雷を呼ぶ。

 

「ホワイトナイトは特殊召喚されたモンスターの効果を受けない!さらにグロスリースは1ターンに1度だけ破壊から守る。さらにアドバンス召喚されたグッドウィールは破壊されたことで墓地から特殊召喚!」

 

 ライトドラゴンの効果を凌ぎきり、八神はフィールドの損害を最小限に抑えた。

 

「あちゃー防がれちまったか……ま、関係ないんだけどな」

 

 Aiはニヤッと笑う。

 

「バトルだ!ダークナイト@イグニスターで、ホワイトナイトを攻撃!」

「え!?」

 

 ダークナイトが大剣を振り上げて、ホワイトナイトへ突っ込んでいく。

 

「ホワイトナイト相手に、よりにもよってリンクモンスターで……」

 

 ホワイトナイトには特殊召喚されたモンスターとバトルする時、自身の攻撃力を元々の攻撃力分アップする能力がある。加えて、リンクモンスターとのバトルなら、そのリンクマーカーの数×1000アップする。

 

 その効果をAiが知らないはずないし、そもそもダークナイトの攻撃力は2300であり、例え効果がなくても負けているのだ。

 

「……ダメージ計算時に、ホワイトナイトは自身の効果で攻撃力をアップする!」

 

 ホワイトナイト:攻撃力2800→8200

 

「そこだ。俺は速攻魔法、Ai打ちを発動!ダークナイトの攻撃力を、バトルするホワイトナイトと同じにする!」

 

 ダークナイトとホワイトナイトの剣がぶつかり合う。

 拮抗した二体はつばぜり合いの末に、互いの体に一太刀を入れた。

 

「名前の通りの相討ち狙いですか」

「ああ。ただし────」

 

 その斬撃で倒れたのはホワイトナイトだった。

 

「墓地のAi打ちを除外することで、戦闘破壊を無効」

「くっ……」

「俺が一方的にぶん殴る。それが俺のAi打ちだ。さらにAi打ちの効果はそれだけじゃない。モンスターを破壊されたプレイヤーは、その元々の攻撃力分のダメージを受ける」

 

 ダークナイトの眼光が、八神を捉える。

 ジリジリと歩みより、その剣を振り上げる。

 

「ここで俺は墓地のドンヨリボー@イグニスターを除外して効果発動!Ai魔法カードの効果で与えるダメージを倍にする」

 

 ダークナイトが剣を振り下ろし、彼女のライフをゼロにした。

 

 ◆

 

 財前宅、二人寂しく夕食にしようと、美海は皿に盛られた料理をお手伝いロボット共にテーブルへ運ぶ。

 

「葵様、お食事の用意ができましたよ」

「うん」

 

 葵が自分の椅子に座ろうとしたその時、

 

 ピーンポーン

 

「なんでしょう。こんな時間に」

 

 美海は少し警戒しながらインターホンの親機を覗き込むと、扉の前にいたのは見知った人物だった。

 

 ガチャッ

 

「八神さん。どうしたんですか?」

 

 彼女は酷く疲れきった顔で、息を切らしながら、彼女の肩に手を当てた。

 

「お願いします……ビショップ様が、Aiちゃんに……」

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