遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
そこはLINK VRAINS内の最果てのエリア、白い石畳の床、すぐ奥には無限の暗闇が広がっており、その先には何もない。文字通り
そんな場所に立つのはプレイメーカー、そして彼のかつての相棒であるAiだ。
遊作は向かい合うAiに対して、苦しそうに口を開く。
「Ai、本当に戻ってくる気はないのか」
「言っただろ? これは
◆
それは数時間前に遡る。
AiがSOLテクノロジーを襲撃して一夜明けた後、授業が始まる前の教室で物思いに耽る遊作の元に、いつものように島が騒がしく話しかけてきた。
「藤木!これ見ろよ!」
彼が見せたタブレットの画面には、いつも通りネットニュースが表示されていた。
見出しは『SOLテクノロジー サイバー攻撃』、昨夜のAiが起こした事件について、あることないことが書かれていた。
さすがに無人兵器については報道されていないが、社長のクイーンが意識不明の情報も出ている。今頃、ナイトがマスコミからの追求に追われているのだろうと考える。
「LINK VRAINSはどうなっちまうんだろうな」
「さあな」
そう言いながら、遊作は画面をスクロールしてニュースの内容に目を通すが、特に目ぼしい情報は得られなかった。
その時、突然、タブレットの画面がノイズを走らせ、ブラックアウトする。
「何やってんだよ藤木!」
島は慌ててタブレットを自分の方へ向けて、画面や側面のボタンを押すが、うんともすんとも言わない。
「壊れちまったじゃねぇか!」
「そんなはずは……」
ふと、視線を移すと、普段なら時刻を表示している教室の電子黒板も同じようにブラックアウトしていた。
「これは……」
その時、ブラックアウトしていた二つの画面が一斉に点灯する。
『デンシティのみなさーん!聞こえますかー!』
ふざけた口上と共に画面に映し出されたのは、一人の青年。
紫のはねた前髪に黄色い瞳、どこか見覚えのある形状の目玉のようなピアスをつけた軍服のようなコートを着ている。
「まさか……」
見覚えのない姿だったが、彼が何者なのか、遊作は直感で理解した。
『この俺が、SOLテクノロジーに攻撃を仕掛けた張本人、名前は……えーっと、ミスターダークってところだ』
今考えたであろう名前を名乗るその人物、姿こそ人間のようだが、間違いなくAiだと遊作は確信した。
『俺は今、デンシティ中の電子機器、まあ抜けもあるだろうが、多分大半を乗っ取って、この中継を流している。俺の恐ろしさを理解した奴はよーく聞け!』
「おいおい何なんだよ一体……」
状況を理解していない島や他のクラスメイトを他所に、Aiの中継は続く。
『今から24時間後、俺はデンシティに本格的な攻撃を行う。それを阻止したければ……聞いてるよな。プレイメーカー、俺がいるところまで来い』
「……」
『じゃ、伝えたからな』
そこで中継は切断され、画面はいつもの状態へ戻った。
「おいおいマジでどうなっちまうんだ? ……て、藤木!おい!」
同意を求めようとしたところ、いつの間にか遊作は教室を飛び出していた。
空き教室を目指しながら、遊作は手早く仲間にメッセージを送る。
それからものの数分で、尊、美海、啓、葵の4人が集まり、さらにビデオ通話で草薙も参加する。
「どうします?」
美海は遊作に尋ねる。
「行くしかない」
「でも、場所も分からないんだよね?」
「俺のいるところ、としか言ってないからな」
「それについては問題ない」
すると、草薙が自分のパソコンの画面をみんなに共有する。
「Aiの中継の様子は録画してある。背景の映像から、あいつがどこにいるか、割り出すことはできるはずだ」
「さすが草薙さん!」
「ただ、他のハッカーも狙ってるから急いだ方がいい」
「なら俺もすぐに解析する」
「じゃあ俺も、草薙さん、映像送ってくれ」
「遊作、お前は駄目だ」
遊作と啓が揃って参加しようとする。
「何故だ草薙さん!」
「お前がプレイメーカーとして戦ってきたのは何のためだ?」
食い下がる遊作に、草薙は諭すように言う。
「真実を解き明かし、真に過去を乗り越えて、平穏な生活を取り戻すため。今ある生活を疎かにしちゃいけない」
「だが……」
「啓も駄目です」
「なんでだよ」
美海にビシッと指さされて、啓は不満を訴える。
「出席日数が足りてませんよね?」
「うっ……け、けど、非常時だし……」
「いいんですか? 留年しても」
それを指摘されては、啓も反論できなかった。
「というわけだ。尊と葵ちゃんには、そこの二人を見張っておいてくれ。サボらないようにな」
草薙にウィンクされて、二人は苦笑しながら頷いた。
「言っておくが、君もだぞ」
「……分かってますよ」
美海にも念のため釘をさしておき、草薙は通話を切った。
◆
放課後、授業が終わるやいなや、遊作、啓、美海の三人はすぐに作業に取りかかる。
手持ち無沙汰となった尊は、一人、校舎の中を歩いていた。
「穂村くん」
すると、階段の上から聞き覚えのある声に呼ばれた。
振り向くと、そこに立っていたのは夢乃切花だった。
「夢乃さん、今日も学校に来てなかったんじゃ……」
「ボク、もうすぐこの街を離れるから。だから、最後に君に伝えときたくて」
切花は彼の横を通り過ぎ、背を向けた状態で続ける。
「リボルバーが闇のイグニスを狙ってる。多分そろそろ場所を突き止めると思う」
「どうして、それを僕に?」
「たまたま君に会ったから。別に伝えるのは誰でもよかったよ」
切花はどうでもよさそうにそう言って、歩き出す。
「待って!」
「……何?」
「遊作や、財前さんとは会っていかないの?」
今の情報を伝えるだけなら、教室に残っている彼らを訪ねればいい。それをしなかったのは、遊作や葵に会いたくなかったからだ。
だから偶然教室を出た尊に声をかけたのだろう。
「君に何があったのか知らないけど、僕は今でも、君のことを友達だと思ってる」
「……」
「僕や財前さんだけじゃない。きっと遊作だって────」
「あのさぁ」
切花が振り返って、尊を睨みつける。
「なんか勘違いしてるみたいだけ、ボクは君らのこと、最初から大っ嫌いだったんだけど」
切花はもはや取り繕うことなく、怨嗟を吐き出す。
「さも自分達が不幸みたいな面しやがって。同じ空気も吸いたくない。そもそもボクが君にこの情報を与えたのは、リボルバーがムカつくから、あいつの邪魔をしてほしいってだけだし。勝手に友達面してんじゃねぇよカス!」
「夢乃さん……」
「何だよその顔、ボクをそんな目で見るなよ!」
切花は苛立って地団太を踏む。
「夢乃」
そこへ、遊作が階段から降りてきた。
「なんだよ、君もボクを哀れむのか!?」
遊作は小さく首を振り、ただ一言。
「ありがとう」
「っ……」
それを聞いて、切花は泣きそうな顔になり、背を向けて走り去った。
「待って夢乃さん!」
追おうとする尊の肩を掴み、遊作は無言で首を横に振った。
「でも、遊作……」
「行かせてやれ」
遊作は彼女の背中を見送った。
◆
午後七時、LINK VRAINS上空をリボルバーはDボードで駆けていた。
「ん?」
突如、彼の道を塞ぐように半透明のバリアが展開される。
リボルバーはそれをかわすために、Dボードを急停止させて地上に降りる。
「来たな。リボルバー」
彼を待ち構えていたのは、ソウルバーナーだった。
「貴様か」
行く手を阻むバリアを見上げ、彼の行動の理由を察してため息を吐く。
「お前をAiのところへは行かせない」
そんなソウルバーナーに対して、リボルバーは声を荒げる。
「自分が何をしているか分かっているのか? 闇のイグニスは既に人類の敵だ」
「そうかもな」
「やはり、父のシミュレートは正しかった。イグニスは人類を滅ぼす。奴らは残さずこの世から抹殺しなければなならない。そこを退け!ソウルバーナー!」
「ごちゃごちゃうるせぇ」
しかし、そんなリボルバーの訴えを、ソウルバーナーは一蹴した。
「俺のダチが相棒を止めに行くって言ってんだ黙って見てろ!」
「くっ……」
「それでも邪魔するって言うなら、俺を倒してからにしろ」
ソウルバーナーはデュエルディスクを構える。
「……なら望み通り、貴様から葬ってやる!」
「「デュエル!」」
◆
一方現実世界、
SOLテクノロジー本社付近の住宅街、夜ということもあり閑散とした路地で、ブラッドシェパードこと道順健吾の前に一人の少年が立ち塞がっていた。
「久しぶり。師匠」
啓の顔を見て、道順はサングラス越しに訝しむようは目を向ける。
「啓、これは何の真似だ?」
「ここは通さない」
啓はデュエルディスクを構えて、向かい合う師を静かに見据える。
「なるほど、足止めにきたわけか」
「あんたならここに来ると思ってた。LINK VRAINSを横断するより、SOLのサーバーからショートカットした方が早いからな。まあどのみち、LINK VRAINSの道も塞いであるけどな」
それを聞いて、道順は自分のデュエルディスクを操作してLINK VRAINSの状況を確認する。
目的地となるLINK VRAINS最深部へのルートが、全てバリアで塞がれており、力を誇示するためにやってきたハッカーは立ち往生していた。
「これはお前がやったのか?」
「俺と美海、それから
「エマのやつ……」
元カノの顔を思い浮かべて、道順は苦い顔をする。
「これはあいつらの問題だ。だから誰にも邪魔はさせない。もちろんあんたにも」
「……ふんっ、いいだろう。出来の悪い弟子を、もう一度指導してやる」
最後の決戦を控える中、それぞれの信念をかけたデュエルが始まる。
◆
Hello world
シミュレーション ト 一部 齟齬アリ
……
…………
軽微ナ エラー ト 診断
微修正ヲ 行イ 続行イタシマス