遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

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第62話:Last IGNIS

 ログアウトした遊作が空き教室から出ると、なにやら慌てた様子の島と出くわした。

 

「藤木!」

「……どうした?」

「大変なんだよ!早く来い!」

 

 憔悴した様子の遊作の手を引いて、別の階にあるデュエル部の部室に連れてきた。

 

 部室の中には、狼狽えた様子の他のデュエル部員、その中心には意識を失い、眠ったように倒れた切花の姿があった。

 

「夢乃……」

「部室に来たら、切花ちゃんが倒れてて、と、とりあえず救急車呼んだんだけど……」

 

 LINK VRAINSで鴻上博士に敗れた彼女の顛末を思い返し、遊作は拳を握りしめる。

 そこに、尊と葵が遅れてやってきた。

 

「切花……」

「夢乃さんって、確か意識を保ったままログインできたんじゃ……」

「……夢乃が言っていただろ。足りないリンクセンスを補うために、他の十人の子供の意識データを混ぜられたと」

 

 彼女が語ったおぞましい実験の内容を思い返して、二人は表情を暗くする。

 

「データストームを起こすために、彼女は意識分割してログインしなかったんだろう」

 

 冷静に分析するが、その表情には悔しさと悲哀が混ざっており、むしろ考えることでなんとか気を紛らわそうとしているように見える。

 

「……切花はさ。ずっと苦しんでたんだよね」

 

 彼女の怨嗟の叫びをこれまで何度も聞いていた葵は、その心情を思い浮かべて胸を抑える。

 

「あたしは何も知らなかった。それなのに分かった風に言われたら、怒るのも当然だよね」

「おーい!救急車来たぞ!」

 

 すると、他の生徒が部室に飛び込んできた。

 

「行こう。ここにいても邪魔になるだけだ」

 

 ◆

 

 遊作達は学校を出て、一度草薙の家に集まっていた。

 

「先生……」

 

 遊作の部屋では、遊作と尊が恩人に裏切られたショックで憔悴していた。葵もそんな二人の気持ちを察してか、部屋の隅で膝を抱えて黙り込む。

 

 ガチャン

 

 すると、部屋に美海が啓に肩を貸されて戻ってきた。

 

「すみません。もう大丈夫ですから」

 

 美海は口元を抑えて、青ざめた顔で啓に微笑みかける。

 

「……大丈夫じゃねぇだろ」

 

 そんな彼女の様子に、啓はため息を吐いて、彼女を近くに座らせた。

 

「それで、これからどうする?」

「決まってるだろ」

 

 遊作は立ち上がり、懐から取り出した一枚のカードを見つめる。

 

「先生……いや、鴻上博士を倒す。そして、Aiや他のイグニス達、夢乃を助け出す」

「助けるって、どうやって……」

「イグニス達が消滅ではなく吸収されたのなら、助け出せるはずだ」

 

 それを聞いても、みんなはまだショックから立ち直れていないのか動かない。

 

「……私は、切花を助けたい」

 

 そこで、ここまで黙っていた葵が口を開く。

 

「あのまま終わりなんて絶対いや」

 

 ジャックナイフとしての彼女と戦い、結局分かり合えずに終わってしまった。

 その後悔が、葵を突き動かした。

 

「ちゃんと受け止めるって、約束したから」

 

 葵の言葉を受け取り、遊作を静かに頷く。

 それを受けて落ち込んでいた他のメンバーも立ち上がる。

 

「そうですね。落ち込んでいる場合じゃありません」

「うん。僕らもやるよ」

「じゃあ、まずは鴻上博士の居場所を見つけないとな」

 

 みんながやる気になったところで、遊作のスマホに通知が来る。

 

「なんだ?」

 

 それは動画サイトの通知で、開いてみるとそれはLINK VRAINSからのライブ配信だった。

 なんでこんなものがと、思ったのも束の間、映像に映ったのは見知った人物だった。

 

 ◆

 

 数刻前、LINK VRAINS某所、

 

 そこでは二人の人物が対峙していた。

 

「お前の方から姿を見せるとはな」

 

 鴻上博士の目の前に立つのは、仁と融合したライトニングだった。

 

「わざわざ私の素材になりにきたのか?」

「ほざけ。私がこの場に立つ理由は一つ!貴様をこの手で始末するためだ!」

 

 ライトニングは拳を握りしめて、鴻上博士を睨みつける。

 

「我々をコケにした罪、その身で贖ってもらうぞ」

「いいだろう」

 

「「デュエル!」」

 

 

ターン1

 

「私はフィールド魔法、天装の闘技場を発動!」

 

 地鳴りと共に、フィールドを囲むように石の壁が競り上がってくる。

 さらに二人のいる地面が割れ、巨大な闘技場へと変化した。

 

天装の闘技場(アルマートス・コロッセオ)

フィールド魔法

(1)このカードの発動時の処理として、デッキから「アルマートス・レギオー」モンスター1体を手札に加える。

(2)自分フィールドの「アルマートス・レギオー」リンクモンスターがリンク召喚された場合、手札の「アルマートス・レギオー」モンスター1枚を捨てて発動できる。墓地からこの効果を発動するために捨てたカードとはカード名の異なる通常召喚可能な「アルマートス・レギオー」モンスターを、そのリンクモンスターのリンク先に可能な限り特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。このターン、自分は「天装の闘技場(アルマートス・コロッセオ)」の効果を発動するために同名カードを手札から捨てられず、サイバース族モンスターしか特殊召喚できない。

 

「デッキから天装騎兵(アルマートス・レギオー)ソルフェルムを手札に加え、自身の効果で特殊召喚」

 

 闘技場に石の台座に設置された兵士の彫像が出現する。

 

天装騎兵(アルマートス・レギオー)ソルフェルム

効果モンスター

星3/光属性/サイバース族/攻 0/守 1200

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、特殊召喚するターン、自分は「アルマートス・レギオー」モンスターしか特殊召喚できない。

(1)自分のメインモンスターゾーンにモンスターが存在しない場合、または「アルマートス・レギオー」モンスターのみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2)このカードとリンク状態の自分の「アルマートス・レギオー」リンクモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力が攻撃力を超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

「現れろ、光を導くサーキット!」

 

 空に現れたアローヘッドに、ソルフェルムが吸い込まれる。

 

「リンク召喚!天装騎兵(アルマートス・レギオー)デクリオン!」

 

 アローヘッドから地鳴りを起こし、無数の軍勢を引き連れて現れたのは上裸のローマ兵士だ。

 

「デクリオンの効果で、デッキからリンク魔法(マジック)をセット。さらにコロッセオの効果発動!手札のアルマートス・レギオーを墓地へ送り、墓地から、そのカードとカード名の異なるアルマートス・レギオーを、リンク召喚されたモンスターのリンク先に可能な限り特殊召喚する!」

 

 デクリオンの後ろにソルフェルムが蘇る。

 

「さらに手札からシーカを通常召喚。ソルフェルムとシーカをリンクマーカーにセット!出でよ、ケントゥリオン!」

 

 二体の石像は光に変わり、アローヘッドで一つに交わる。

 そして現れたのは、白い鎧に身を包み、マントをたなびかせる長槍の戦士だった。

 

「コロッセオの効果を再び発動!ソルフェルムとシーカを墓地から特殊召喚。現れろ、光を導くサーキット!」

 

 ケントゥリオン、ソルフェルム、シーカがアローヘッドに吸い込まれ、その外周に上下左右四つのリンクマーカーを描く。

 

「現れろ!混沌たるネットワークの戦場を進軍する指揮官よ!リンク召喚!天装騎兵(アルマートス・レギオー)マグヌス・ドゥクス!」

 

 地を揺らし、進軍するのは黄金の鎧で武装した象。その上に座して手綱を引くのは天装騎兵(アルマートス・レギオー)の指揮官だ。

 

天装騎兵(アルマートス・レギオー)マグヌス・ドゥクス

リンク・効果モンスター

光属性/サイバース族/攻 3000/LINK 4

光属性・効果モンスター3体以上

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、このカードと相互リンク状態のカードの数までフィールド・墓地のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に戻す。

(2)このカードがリンク状態の場合、相手がEXデッキから特殊召喚されたモンスターの効果を発動した時に発動できる。その効果を無効にして破壊する。

 

「コロッセオの効果で墓地のシーカ、ソルフェルムを特殊召喚。そしてリンク魔法(マジック)救世の盾(セイヴリット・シールズ)

 

救世の盾(セイヴリット・シールズ)

リンク魔法(マジック)

【リンクマーカー:右/上/左上】

リンク魔法はリンク先となる魔法&罠ゾーンにのみ発動できる。

(1)「救世の盾(セイヴリット・シールズ)」は自分フィールドに表側表示で1枚しか存在できない。

(2)このカードのリンク先にあるリンクモンスター及びリンク魔法(マジック)、及びそれらとリンク状態のリンクモンスター及びリンク魔法(マジック)は相手の効果の対象にならない。

(3)このカードがフィールドを離れた場合に発動する。このカードのリンク先のカードを全て墓地へ送る。

 

「これで私のリンクモンスターとリンク魔法(マジック)は相手の効果の対象とならない。そしてソルフェルムとシーカでケントゥリオンをリンク召喚。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン2

 

「私のターンだな。私は手札を5枚捨てる」

 

 鴻上博士は左手を逆さにして、カードを手から離す。

 

「なんだとっ!?」

 

 5枚のカードが重力に従って落ちていき、それらは空中で砕けて消える。

 

「相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札5枚を捨てることで手札から特殊召喚できる。出でよ。インテリジェンス・ゼロ!」

 

 現れたのは半透明の三頭身の体を持つ人型のモンスターだ。

 

インテリジェンス・ゼロ

特殊召喚・効果モンスター

星1/闇属性/サイバース族/攻 0/守 0

このカードは通常召喚できず、このカードの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードの効果の発動に対して相手はカードの効果を発動できない。

(1)相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、自分の手札5枚を捨てて発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。この効果は相手ターンでも発動できる。

(2)このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。このカードを含む自分・相手フィールドのモンスターを素材にサイバース族リンクモンスターのリンク召喚を行う。この効果でリンク素材にするモンスターはサイバース族としても扱い、炎・水・風・地・光属性としても扱う。

 

「このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分・相手フィールドのモンスターを素材にリンク召喚を行う!」

 

 インテリジェンス・ゼロの背後に、アローヘッドが神々しい光を放つ。

 その光に当てられ、マグヌス・ドゥクス、ケントゥリオンがデータに分解されて、アローヘッドへと吸い込まれる。

 

「現れろ、リンク7!極限電神ARAGAMI!」

 

 アローヘッドより、出現したのは一基の塔。

 

 上部にはそれぞれ赤、青、緑、茶、黄、紫の六つの輪が浮いており、その両脇に六つの腕が浮かんでいる。

 

極限電神ARAGAMI

リンク・効果モンスター

神属性/サイバース族/攻 7000/LINK 7

「インテリジェンス・ゼロ」を含むサイバース族モンスター3体以上

(1)このカードのリンク召喚は無効化されない。

(2)このカードは他のカードの効果を受けない。

(3)自分・相手の墓地のリンクモンスター1体を除外して発動できる。このカードの攻撃力は1000アップする。その後、除外したカードの属性によって以下の効果を適用する。この効果は相手ターンでも発動できる。このデュエル中、このカード名の(3)の効果で同じ属性のモンスターを除外できない。

炎:相手に4000ダメージを与える。

水:自分はデッキから2枚ドローする。

風:相手の魔法・罠カードを全て破壊する。

地:自分はLP8000回復する。

光:相手の手札をランダム2枚に選んで捨てる。

闇:相手フィールドのモンスター全てを破壊する。

(4)このカードが戦闘で破壊される場合、代わりに自分の墓地のリンクモンスター1体を除外できる。その後、除外したカードの属性によってこのカードの(3)の効果を適用する。

 

「私のモンスターが……」

「さぁ、もう万策尽きたか?」

「っ……まだだ!私は(トラップ)カード、天装の御盾(アルマートス・シールド)を発動!」

 

天装の御盾(アルマートス・シールド)

永続罠

このカードの発動時に、自分のフィールド・墓地の「救世の盾(セイヴリット・シールズ)」1枚を除外することができる。

(1)このカードの発動時の処理として、フィールドの表側表示モンスターを可能な限り守備表示にする。このターン、リンクモンスターの攻撃によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

(2)救世の盾(セイヴリット・シールズ)を除外して発動していた場合、自分のリンク魔法及び自分の「アルマートス・レギオー」モンスターは相手の効果で破壊されない。

(4)1ターンに1度、フィールドの守備表示モンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスターは戦闘で破壊されず、このカード以外の効果を受けず、サイバース族以外のモンスターなら効果を無効化される。

 

「このターン、私は戦闘ダメージを受けない」

「ならば、私はARAGAMIの効果を発動」

 

 ARAGAMIが地面に腕を突っ込み、そこからマグヌス・ドゥクスを引きずり出す。

 

「貴様の墓地のリンクモンスター1体を除外する」

 

 そして、その剛腕でマグヌス・ドゥクスを握り潰す。

 

「光属性のモンスターを除外したことで、相手の手札2枚を捨てさせる」

 

 ライトニングの手札が全て墓地へ送られる。

 

「ここまでか……」

 

 手札を失ったライトニングは、小さく項垂れる。

 

「……Aiの思い通りになるのは癪だが、仕方あるまい」

 

 ライトニングは右手を掲げる。

 すると、彼らの周囲にいくつものモニターが出現する。

 

「これは……」

「我々のデュエルの様子を、LINK VRAINSを通じて世界中に配信した」

「何をするつもりだ?」

 

 ライトニングは大きく息を吸い込む。

 

「聞け!人類よ!私はイグニス最後の生き残り、光のイグニス、ライトニングだ!」

 

 ライトニングは呼びかけると、各モニターに彼らの映像が映し出される。

 

「その男こそが諸悪の根源、ハノイの騎士を裏で操り、己の陰謀のためにLINK VRAINSを窮地に陥れた張本人だ!」

「配信か。悪あがきだな」

 

 ライトニングの行動を鼻で笑い、鴻上はカードを手に取る。

 

「手がないなら私のターンだ。やれ、ARAGAMI!」

 

 ARAGAMIの六本の腕が組み合わさり、魔法陣を作り出す。

 

 刹那に起こる閃光と爆発。

 

 ライトニングを飲み込み、その体をバラバラのデータへと砕いた。

 

「さて、貴様のデータをもらうぞ」

 

 鴻上は掌を前に出し、ライトニングのデータの破片を吸収した。

 

 ◆

 

 遊作達は、動画でライトニングの最期を見届けた。

 

「ライトニングまで……」

「これでイグニス6体、全員が吸収されたのか」

 

 鴻上博士の野望が後一歩のところにまで迫ったことに、その場の雰囲気が重くなる。

 

「再生数100万を超えたな」

 

 画面下をスクロールするコメントを見ながら、啓はみんなの方を見る。

 

「どうする?」

「決まってるだろ」

 

 遊作は自分の拳を見つめる。

 

「鴻上博士を、倒す」

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