遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
SOLテクノロジー本社サーバー内、既に社員は消え、無人の警備システムだけが煌々と赤を照らして巡回する無機質な空間に、突如、地鳴りが響く。
すぐに警備システムが異常を知らせるが、直後に地面が割れ、地より突き上げた“それ“によって、警備システムはサーバー内の電脳空間ごと蹂躙される。
“それ“は天を貫き、やがてLINK VRAINSにまで現れる。
「な、なんだ!?」
LINK VRAINSに集まっていたアバターが、現れた“それ“に注目した。
それは塔だった。
かつてLINK VRAINSを崩壊の危機へと陥れた「ハノイの塔」。
SOLテクノロジー本社エリアを貫いて出現したそれは、かつての惨劇を住人たちに想起させた。
異常はそれだけでなく、再び地鳴りと共に今度は六基の塔が中心のハノイの塔を囲むように出現した。
うち一基は彼らのすぐ近くにも出現し、せり上がった塔が地面に根を張る。
「どうなってんだ!?」
「やべぇよ」
圧巻の光景に、人々はカメラを向けて写真や動画をSNSに上げる。
そうしていると、ふと、住人の一人が声をあげる。
「おい!ログアウトできないぞ!」
そう言われて、周囲の人々も試すが、結果はその通り。
何度ログアウトボタンをタップしても、なんの反応も返さない。
『人類諸君』
そこへ、一人の男の声が響き渡る。
見上げると、空には巨大モニター、そこに映る鴻上博士の姿があった。
『私は鴻上聖。既に知っている者もいるだろうが、このハノイの塔を作ったのは私だ。これより1時間後、このハノイの塔が本来の力を発揮する。その瞬間、君達の意識は私の脳に接続される。このようにな』
パチンッ
鴻上博士が指を鳴らすと、その場にいた一人の男の体に地面から伸びた根が絡みつく。
「がぁぁぁぁっ!」
絶叫を上げたのも束の間、男は虚ろな目となって、力のない足取りでゆっくりと他の者達へ近付く。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
その光景を目の当たりにして、彼らは一目散に逃げだした。
◆
同刻、LINKVRAINSにログインしたプレイメーカー達は、塔に向かってDボードを走らせていた。
「鴻上の野郎、ふざけた真似しやがって」
ソウルバーナーが拳を握りしめ、上空のモニターに映る鴻上博士を睨み付ける。
「ハノイの塔、リボルバーを利用して作らせたのはこのためだったわけだ」
「っ……見てください!」
美海が気配に気付いて指差すと、彼らを立ち塞がるようにデータストームが出現した。
「ゴッドバード!」
「任せろ!」
ゴッドバードが戦闘に立ち、右腕をデータストームに向けて突き出す。
「おらぁぁぁっ!」
ゴッドバードがデータストームの壁をこじ開けて奥に辿り着く。
データストームの壁の奥では、地面から伸びる根から逃げ惑う人々の姿があった。
「すぐに助けないと!」
ブルーエンジェルがDボードを急降下させて、彼らを助けようと接近する。
だが、そんな彼女の前に、数人のDボードに乗った集団が立ち塞がった。
「この人達、鴻上博士に操られて……」
「ブルーエンジェル!」
美海が加勢しようとする。しかし、
「待って!」
ブルーエンジェルはデュエルディスクを構えて、それを拒否した。
「みんなはハノイの塔へ」
「ですが……」
「時間がないんでしょ? ここは私が何とかする」
ブルーエンジェルはみんなの方を訴えかけるように見る。
「だから絶対、無事で帰ってきて」
「ブルーエンジェル……いくぞ。みんな」
プレイメーカーの号令に従い、他のメンバーはハノイの塔へ向けて飛び去った。
それを静かに見届けて、ブルーエンジェルは眼前の敵に向き直る。
「……さあいくわよ」
そんな彼女の姿に気付いた人達が、足を止めて彼女に不安と懇願の目を向ける。
「ぶ、ブルーエンジェルだ!」
「お願い助けて!」
不安の視線を向ける地上の人々にブルーエンジェルはいつも通りの笑顔を作る。
「みんなー!お待たせ!LINK VRAINSの青い天使、ブルーエンジェルの降臨よ!」
ビシッと指差しポーズを決めて、彼らの不安を取り除く。
「さあ悪い子達、まとめてお仕置きしてあげるわ」
◆
そして、ハノイの塔にたどり着いたプレイメーカー達は、その中部に降り立ったところで足止めを食らっていた。
「ダメだ。これじゃ上に行けない」
天高く伸びる塔の頂上は、分厚い雲のようなデータストームに覆われており、Dボードでは近付くこともできない。
「啓、あなたでも無理ですか?」
「できたらやってる。正攻法でいくしかねぇが、それには……」
塔の内部にはエレベーターがある。
これを使えば最上階に行くことができそうだが、当然だがロックがかけられている。
その時、プレイメーカーのデュエルディスクから着信音が鳴る。
「草薙さんからだ」
プレイメーカーがみんなに見えるように、テレビ通話の画面を空中に投影する。
『たった今ハノイの塔について解析した。どうやらそいつのロックは、周りにある六つの塔のスイッチを同時に押さないと開かないらしい』
草薙が画面にLINK VRAINSの地図を出してくれた。
『ここから時計回りに炎の塔、水の塔、風の塔、地の塔、光の塔、闇の塔。ここからLINK VRAINSのデータを吸い上げて、中央のお前達が今いる神の塔にエネルギーを供給しているんだ。さらに塔にはそれぞれ相互に修復機能が備わっている。どれか1つを破壊しても、別の塔が復活させる仕組みだ』
「つまり、塔を破壊するにも、全て同時に壊さないと行けない。だが……」
この場にいるのはプレイメーカー、ソウルバーナー、ゴッドバード、美海の四人。塔のエレベーターを起動させるにしても、破壊するにしても、人数が足りない。
「くそっ!ここまで来て……」
「ならば我々がやろう」
その時、空から二人の人物が降り立った。
「お前は……リボルバー、スペクター!」
かつての宿敵の到着に、プレイメーカー達は目を見開いた。
「プレイメーカー」
そんな彼らに、リボルバーは一歩前に出ると深く頭を下げた。
「すまなかった」
「……ああ」
プレイメーカーは手を差し伸べ、彼に顔を上げるように促した。
「これで六人。だが、まだ一人足りない……」
「最後の一人なら、ここにいるよ」
聞き覚えのある声に、全員が振り返る。
塔の広場に現れたのは、彼らのよく知る少年だった。
「「「「「仁!!」」」」」
みんなの驚いた顔を見て、仁ははにかんだ。
「お前、てっきりライトニングと一緒に鴻上博士に……」
「ライトニングが直前で分離して、僕の意識を返してくれたんだよ。このデッキと一緒に」
────君の意識データを最後まで復元しておいてよかったよ
────私が手を下せないのは不本意だが、まあオリジンである君なら妥協点だろう
────君もあの男が憎いだろう?
────私の代わりに、あの男を倒せ
仁の左手には、その時ライトニングからもらった彼のデッキが握られていた。
「あの野郎、最後の最後にやってくれたな」
「えぇ、おかげで七人揃いました」
喜びのもほどほどに、各塔に向かうメンバーを決める。
「俺が火の塔に行く」
最初に名乗りを挙げたのはソウルバーナーだ。
「では水の塔は私が」
「風の塔は俺だな。で……」
ゴッドバードはスペクターの方を見る。
「分かってますよ。地の塔には私が行きましょう」
「光の塔は僕が行くよ」
五つの塔の担当が決まり、プレイメーカーが最後の塔に手を上げようとしたところ、リボルバーが前に出た。
「闇の塔は私が行こう」
「いいのか?」
「本来なら、私が始末をつけるべきなのだろう。だが……」
リボルバーはプレイメーカーの後ろにいる彼の仲間達に目を向ける。
それはどれも信頼の目線、彼らが何を望んでいるのかは明らかだった。
「神の塔にお前が行け」
リボルバーはプレイメーカーの方を向き直る。
「父のこと、頼んだぞ」
「……ああ」
プレイメーカーが頷いた。
「それじゃあ行くか」
「頼みましたよ。遊作」
「ぶっ飛ばしてこいよ」
「……」
「頑張ってね。遊作兄ちゃん」
プレイメーカーにエールを送り、一斉に六つの塔へ飛び去った。
◆
火の塔、
「スイッチってのはあれか」
殺風景な広場の真ん中にポツンと置かれた長方形の台、まるでクイズ番組のセットのようなそれの上にある半円のスイッチに近付き、恐る恐る手を当てる。
「みんな、用意はいいか? せーの!」
カチッ
「どうだ プレイメーカー?」
『ロックは解除された』
「よかった。それじゃあ後は────」
その時、広場を取り囲むようにフェンスが出現した。
「ま、そう簡単にはいかねぇよな」
そして目の前に現れたのは、鴻上博士だった。
◆
風の塔、ソウルバーナーと同じようにスイッチを押した途端に現れた鴻上博士を前に苦笑いを浮かべていた。
「神の塔にいるんじゃなかったのか……いや、分身体か」
「正解だ」
鴻上博士はデュエルディスクを構える。
「上等だ」
そして六つの塔全てに現れた鴻上博士の分身と、彼らのデュエルが始まる。
「「「「「「デュエル!」」」」」」
◆
そして神の塔、頂上に辿り着くと、そこには本物の鴻上博士と、その後ろに巨大な球状のリアクターがあった。
「よく来たな。遊作」
「鴻上……」
プレイメーカーは鴻上博士を睨み付けると、交わす言葉はないと言わんばかりにデュエルディスクを構える。
「くくくっ、いいだろう。残り数十分、この戯れに付き合ってやろう」
「「デュエル!」」
◆
ソウルバーナーと鴻上分身のデュエル。
最初のターンでソウルバーナーはヒートライオをリンク召喚し、カード2枚伏せた。
そして鴻上分身のターン。
「私は手札の
「何!?」
鴻上が手札から見せたカードにソウルバーナーは驚愕した。
「手札の
炎を纏ったミーアキャットが、フィールドに現れる。
「墓地へ送られたラビットの効果発動!」
効果モンスター
星/1炎属性/サイバース族/攻 600/守 800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、発動するターン、自分は炎属性モンスター、またはサイバース族モンスターしか特殊召喚できない。
(1)自分フィールドに「サラマングレイト」モンスターが存在し、このカードが自分のカード効果で手札・デッキから墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。
(2)このカードがフィールドに表側表示で存在し、自分の「サラマングレイト」モンスターが特殊召喚された場合に発動できる。手札からレベル4以下の「サラマングレイト」モンスター1体を特殊召喚する。
「このカードを墓地から特殊召喚」
ミーアが尻尾の火をかかげると、炎の中から白いウサギ型のモンスターが飛び出した。
「さらにサラマングレイトが墓地に送られたことで、手札からガゼルを特殊召喚」
並んだ三体の見知ったモンスターを前に、ソウルバーナーは歯軋りをする。
「それ、不霊夢のデッキか」
「当然だろう? 私は六体のイグニス全てを吸収してるのだよ」
怒りを燃やすソウルバーナーを嘲笑い、鴻上はデッキからカードを手に取る。
「ガゼルの効果でデッキからサラマングレイトカードを墓地へ送る。さらにラビットの効果発動!手札から
ラビットが鳴くと、それに呼ばれるようにゲートが開き、
「現れろ、我が世界を知らしめす未来回路!」
三体のモンスターが、天に現れたアローヘッドに飛び込む。
「リンク召喚!
アローヘッドより黒炎が噴き、中からオレンジの体躯を持つ炎の獅子が飛び出した。
「ヒートライオの効果発動!その伏せカードにはデッキに戻ってもらおうか」
ヒートライオの咆哮が、ソウルバーナーのカードを吹き飛ばす。
「さらに
ヒートライオが炎となって魔法陣に流れ込み、再び地上に降り立った。
「ヒートライオの効果で、その伏せカードにも消えてもらおう」
二度目の咆哮。
巻き起こる風が残りの伏せカードも吹き飛ばす。
「俺は速攻魔法!
だが、吹き飛ばされたカードが輝く。
「このターン、ヒートライオは自身以外の効果を受けない!」
カードから放たれた光が、ヒートライオを守るように薄い膜となって包み込む。
「墓地の
ヒートライオの両腕に、黒い巨大な爪が装備された。
「バトルだ。ヒートライオでヒートライオを攻撃」
二体のヒートライオが互いの両腕を掴み、押し合う。
「攻撃力は互角。相討ち狙いか」
「ふっ、
装備魔法
(1)「転生炎獣の黒爪」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。
(2)装備モンスターは戦闘・効果では破壊されず、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
(3)装備モンスターが自身と同名のモンスターを素材としてリンク召喚した自分の「サラマングレイト」リンクモンスターの場合、装備モンスターの攻撃力はバトルフェイズ中、そのリンクマーカーの数×500アップする。
(4)自分の「サラマングレイト」リンクモンスターが同名モンスターを素材としてリンク召喚に成功した場合に発動できる。このカードを墓地から手札に戻す。
「ヒートライオの攻撃力を自身のリンクマーカーの数×500アップする」
ヒートライオ:ATK2300→3800
鴻上のヒートライオが、その黒爪でソウルバーナーのヒートライオを切り裂いた。
ソウルバーナー:LP4000→2500
「ベイルリンクスでダイレクトアタック!」
ベイルリンクスが回転しながら突進する。
ソウルバーナー:LP2500→2000
「私はこれでターンエンド」
◆
美海と鴻上分身のデュエル、美海のフィールドには
一方鴻上博士のフィールドには、リンクモンスターを3枚装備した
「プレシオルタの効果発動!このカードと同じ縦列のモンスターを手札に戻す!」
白い首長竜が鳴き声で歌を奏でる。
「手札から
ワンダーハートが両手を合わせて、掌から波動を出してプレシオルタの歌声を打ち消した。
「やはり持っていましたか」
アクアと戦ったことのある美海は、同じ手にやられたことで苦い顔をする。
「ワンダーハートでプレシオルタを攻撃。この瞬間、ワンダーハートの効果発動。装備されているマーブルド・ロックを特殊召喚」
ワンダーハートの隣に、カサゴを象った衣装をした女性が召喚される。
「装備カードが減ったことで攻撃力は下がるが、まだワンダーハートの方が上だ」
ワンダーハート:ATK4400→3800
プレシオルタ:ATK3100(タイタニーニャの効果で攻撃力800アップ中)
「消えろ。プレシオルタ」
ワンダーハートが長い曲剣を振り上げて、プレシオルタを叩き切る。
「ぐっ!」
美海:LP4000→2900
「マーブルド・ロックでタイタニーニャを攻撃」
タイタニーニャの体が砕かれ、その破片が美海に襲いかかる。
美海:LP2900→1200
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」