遊戯王VRAINS Re:Construction   作:師走F

8 / 84
第6話:Lost Children

 10年前、

 

 とある男が一人で運営する小さな孤児院で、身寄りのない六人の子供が、仲良く暮らしていた。

 

「遊作!そっちボール行ったぞ!」

「うん!」

 

 生活は決して豊かなものではなかった。

 しかし、親を失い、孤独に苦しんでいた彼らにとって、ここは楽園だった。

 

 けれど、その日々は突然奪われた。

 

 ある朝、目覚めると彼らは白い部屋の中にいた。

 それぞれ別々の部屋に閉じ込められていた彼らは、そこで独り、デュエルを強要された。

 

 デュエルに負ければ、そのたびに電流による激痛が与えられる。

 

 何十日間に渡るデュエル漬けの日々。

 日を追うごとに、敗北のペナルティは激しさを増していき、心身ともに消耗しきっていた。

 

 ────目を開けて

 

 そんな中、彼らを励ましたのは声だった。

 

 ────意識を強く持って、考えるんだ

 ────生きるための三つの理由、帰るための三つのこと

 

 その声の主が誰なのかは分からないが、その声によってどうにか正気を保っていた。

 

 そして半年後、彼らは突然解放された。

 

 彼らを閉じ込めていた部屋がVR空間だと知ったのは、そこから出られた後だった。

彼らは寝ている間にVRゴーグルを着けられて、施設の地下室に監禁されていたらしい。

 

 そして、その犯人は孤児院の経営者であった鴻上聖。

 当時事件が大きく報道されることはなかったものの、警察の激しい追求から心労に耐え切れず、自殺した。

 

 ◆

 

「それから、私達六人はそれぞれ別々の場所に引き取られました。私は財前家に」

「俺と仁は草薙さんの家に。だが、一番幼かった仁は、事件の影響で廃人になってしまった」

 

 遊作と美海は行き場のない怒りを抑えるように、拳を握りしめる。

 

「まだ子供なのに、その鴻上ってやつはひでぇやつだな」

「先生は犯人じゃない」

 

 Aiの発言を遊作が強く否定する。

 

「美海、あの事件はまだ何も終わっていない。事件の本当の犯人は誰なのか。俺たちは向き合わなければならない」

「……向き合って、何が変わるんですか」

 

 遊作の言葉に、美海は怒りをあらわにする。

 

「辛いことから逃げて何が悪いんですか!? 何をしたところで、あの時間も、仁くんも、先生も、もう戻ってこないんですよ!」

 

 美海の叫びを、遊作は黙って聞く。

 

「……美海、俺は今夜、SOLテクノロジーのサーバーをハッキングする」

「それは、私への挑戦と受け取ってもよろしいですか?」

 

 遊作は答えず、彼女に背を向けて、屋上を後にした。

 

 ◆

 

 昼休み、美海は葵と一緒に屋上で弁当を食べていた。

 

「美海、どうしたの?」

 

 元気のない彼女の顔を、葵は心配そうに覗き込む。

 

「なんでもありません。少し食欲がなくて」

 

 そう言って、美海はほとんど手をつけていない弁当箱を閉じて、立ち上がる。

 

「少し、用事を思い出したので、失礼します」

「あ!美海!」

 

 美海はそのまま階段を下りて、人気のない廊下で電話をかける。

 

「ビショップ様。私です」

『どうした?』

「情報を得ました。プレイメーカーが今夜、SOLのサーバーにハッキングを仕掛けるそうです」

『その情報は確かか?』

「信頼できる情報屋から買ったので間違いないかと」

 

 美海は用意しておいた方便を述べる。

 辻褄合わせのために、事前に情報屋にも話してあるので、万一調べられても問題はないだろう。

 

『ならばよし。必ずイグニスを確保しろ』

「了解しました」

 

 通話は切られると、足音が聞こえたので振り返る。

 

「美海……」

「葵様、今の話、聞いていたのですか?」

「……プレイメーカーと戦うの?」

「はい」

 

 美海は真っすぐ、彼女の眼を見て答えた。

 

「葵様が心配することはありません。私があなたを守りますから」

 

 そうやって笑う彼女の顔が、どこか苦しそうだった。

 

 ◆

 

 LINK VRAINS某所、誰もいない建物の屋上で、ゴッドバードは一人不貞腐れていた。

 

「ご機嫌斜めじゃない」

 

 顔を上げると、そこには大学生くらいの黒と紫のピッチリした上着とハーフパンツに身を包んだ女性が立っていた。

 

「ゴーストガール……」

「聞いたわよ。ハノイに負けたんでしょ」

「っ……」

 

 ゴッドバードはスペクターとのデュエルを思い出して下唇を噛む。

 

 思えばあのデュエルで、スペクターのライフを削れたのは最後のアタックだけで、終わってみれば終始彼の掌の上だった。

 

「で、お前は俺のことをバカにしにきたのか?」

「違うわよ。知り合いが落ち込んでいるみたいだったから、慰めてあげようと思って」

「けっ、誰がお前みたいなババアと」

「あら、女の魅力は若さじゃないのよ? お子様には分からないかもしれないけど」

「リアルより若いアバター使ってるくせに」

 

 ゴッドバードに煽られても、彼女は動じることなく、その隣に腰かける。

 

「それより、耳寄りな情報を持って来たんだけど」

「なんだよ。俺は新しいデッキを組むのに忙しくてそれどころじゃ……」

「プレイメーカーの居場所について」

 

 ゴーストガールに耳元で囁く。

 

「‥…テメェが何でそんな情報を」

「お姉さんにはいろんな情報網があるの」

 

 ゴッドバードは自分のデュエルディスクを操作して、ホログラムウィンドウを出現させると、それをゴーストガールの方へ飛ばす。

 

「こいつでいいか?」

「毎度あり。サービスでお姉さんといいことする?」

「結構だ!誰が好き好んで三次元のババアと」

「はいはい。プレイメーカーは今夜、SOLテクノロジーのサーバーに侵入するそうよ」

「へぇ、そいつはご苦労なこった」

 

 それを聞いてゴッドバードはニヤリと笑う。

 

「どうするの? プレイメーカーの邪魔でもしに行くの?」

「いいや、こいつは使えそうだな」

 

 ◆

 

 草薙のキッチンカーで、遊作達はSOLテクノロジーのサーバーに侵入する準備を進めていた。

 

「遊作、本当に行くのか?」

「ああ」

 

 遊作はデュエルディスクを装着する。

 

「SOLのサーバーに侵入するなんて、さすがにリスクがデカすぎる」

「どの道、SOLの人間である美海に正体が知られてるんだ。なら懐に飛び込んでやる」

「そうか……」

 

 草薙は止めても無駄なことがわかると、諦めたように苦笑する。

 

「気を付けて行ってこい」

「ありがとう。草薙さん」

 

 遊作は奥のログイン用のスペースに入る。

 

「イントゥザヴレインズ!」

 

 ◆

 

 SOLテクノロジーの社内ネットワーク、殺風景な電脳空間を抜けて、プレイメーカーは最深部へとやってきた。

 

「ここがSOLのサーバーか」

「見ろあそこ」

 

 Aiが指をさすかわりに目で訴える。

 

 そこには巨大な地球儀のような物体と、その周囲を浮遊するリングがあった。

 

「ここが、SOLテクノロジーの機密情報を保管しているコアか」

「待っていましたよ。プレイメーカー」

 

 そこで、コアの後ろに隠れていた美海が姿を現す。

 

「あなたの狙いは、ここにあるデータですね」

 

 プレイメーカーは無言のまま、彼女を見つめる。

 

「では、私とデュエルをしましょう」

 

 その沈黙を同意と受け取り、美海は続ける。

 

「あなたが勝てば、ここを通してあげます。負ければイグニスをこちらに渡す」

「いいだろう」

「それから」

 

 すると、美海は視線を右へ向ける。

 

「あなたも隠れてないで出てきたらどうですか?」

「けっ、バレてやがったのか」

 

 プレイメーカーが着た方とは別の通路から、ゴッドバードが顔を出した。

 

「お前は……!?」

「よう。また会ったな」

「プレイメーカーを囮にして、データを横取りしようとしたんでしょうが、その程度のことはお見通しです」

「だったら、そこにいるやつのことにも気付いてたのか?」

 

 ゴッドバードが、美海の後ろを指さす。

 全員がそちらを向くと、そこにはブルーエンジェルが立っていた。

 

「あお……ブルーエンジェル、何故あなたがここに!?」

「えーっと……」

 

 美海との関係を知られるわけにはいかない彼女は、申し訳なさそうに目をそらす。

 

「……まあいいです。あなた達はそこで見ていてください。ゴッドバード、あなたの相手もこの後してあげます」

「へっ、上等だ。次も捻り潰してやるよ」

 

 美海は彼を一瞥して、またすぐにプレイメーカーの方を向き直る。

 

「早く始めるぞ」

「えぇ、では」

 

「「デュエル!」」

 

ターン1 プレイメーカー

 

「俺はグリッド・スイーパーを通常召喚!続けてバックアップ・セクレタリーを特殊召喚。現れろ!未来を導くサーキット!リンク召喚!I:Pマスカレーナ」

 

 現れたのは、猫耳型のガジェットを装備した、へそ出しのシャツを着た少女だ。

 

「手札のマイクロ・コーダーの効果。コード・トーカーモンスターをリンク召喚する時、このカードを手札からリンク素材にできる。現れろ!未来を導くサーキット!」

 

 プレイメーカーが指さす先に、アローヘッドが出現する。

 

「召喚条件は、効果モンスター2体以上!俺はマイクロ・コーダーと、リンク2のI:Pマスカレーナをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」

 

 リンクマーカーにプレイメーカーのモンスターが吸い込まれる。

 

「リンク召喚!リンク3、デコード・トーカー!」

「早速デコード・トーカーを呼び出したな。いいぞプレイメーカー!」

「I:Pマスカレーナをリンク素材にしたモンスターは、効果では破壊されない。そして、リンク素材となったマイクロ・コーダーの効果。デッキから「サイバネット」魔法・罠カード1枚を手札に加える。俺はサイバネット・バックドアを手札に。そして手札からリンク・フライヤーを特殊召喚」

 

 青い三角形の凧のような飛行物体が、デコード・トーカーの右下のリンク先に飛んでくる。

 

「このカードは、自分のリンクモンスターのリンク先に特殊召喚できる。俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

ターン2 美海

 

「私のターン。私は原初海祈(オリジンブルー)シーライブラを召喚」

 

原初海祈(オリジンブルー)シーライブラ

効果モンスター

星4/水属性/サイバース族/攻 1000/守 1600

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードの召喚·特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「原初海祈シーライブラ」以外の「オリジンブルー」カード1枚を手札に加える。

(2)このカードが他のモンスターゾーンに移動した場合に発動できる。手札から「原初海祈シーライブラ」以外の「オリジンブルー」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

「自分の水属性モンスターを隣に移動させることで、手札の原初海祈(オリジンブルー)メガロガーを特殊召喚」

 

原初海祈(オリジンブルー)メガロガー

効果モンスター

星3/水属性/サイバース族/攻 1300/守 500

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、発動するターン、自分はサイバース族モンスターしか特殊召喚できない。

(1)自分フィールドの水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、手札からこのカードを特殊召喚する。

(2)このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの「オリジンブルー」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードはフィールドを離れた場合、除外される。

 

「自分の水属性モンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させることで自身を特殊召喚。さらにシーライブラの効果、このカードが移動した時、手札から「オリジンブルー」モンスターを特殊召喚できる。私はアノマロトレスを特殊召喚。さらに自分フィールドのモンスターが水属性のみの場合、手札の原初海祈(オリジンブルー)アンモジュールを特殊召喚できる」

 

原初海祈(オリジンブルー)アノマロトレス

効果モンスター

星3/水属性/サイバース族/攻 800/守 800

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分フィールドのこのカード以外の「オリジンブルー」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、元々の位置にそのカードと同じレベル·種族·属性の「オリジンブルー·トークン」(攻/守0)1体を特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。

(2)墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

原初海祈(オリジンブルー)アンモジュール

効果モンスター

星4/水属性/サイバース族/攻 1700/守 0

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、このカード名のカードを特殊召喚するターン、自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。

(1)自分フィールドにモンスターが存在しない、または水属性モンスターのみの場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

(2)このカードが他のモンスターゾーンに移動した場合に発動できる。デッキから「オリジンブルー」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

原初海祈(オリジンブルー)アノマロトレスの効果。このカード以外のオリジンブルーモンスターを隣に移動させることで、そのモンスターが元々いた位置に、種族・属性・レベルが同じオリジンブルートークンを特殊召喚。そしてアンモジュールが移動したことで、デッキから原初海域を手札に」

「一気に5体のモンスターを並べるって、スゲ―展開力だな……」

 

 美海のフィールドに並んだ海洋生物達に、Aiはげんなりしていた。

 

「私はさらにフィールド魔法、原初海域(オリジンブルー・ウェブ)を発動」

 

原初海域(オリジンブルー・ウェブ)

フィールド魔法

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分の「オリジンブルー」リンクモンスターのリンク召喚に成功した場合に発動できる。そのモンスターに、このターン中にモンスターが移動した回数だけ、バックログカウンターを置く。その後、この効果で置かれたカウンターの数まで、墓地からレベル4以下の「オリジンブルー」モンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

(2)1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。

 

「来なさい、未来を繋ぐサーキット!召喚条件は水属性・効果モンスター2体以上!私はアンモジュール、シーライブラ、メガロガーの3体をリンクマーカーにセット!」

 

「リンク召喚!リンク3、原初海祈(オリジンブルー)タイタニーニャ!」

 

原初海祈(オリジンブルー)タイタニーニャ

リンク·チューナー·効果モンスター

水属性/サイバース族/攻 0/LINK3

【リンクマーカー:右下/下/左下】

水属性·効果モンスター2体以上

(1)リンク状態のこのカードは相手の効果を受けず、攻撃対象にならない。

(2)このカードのリンク先のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをチューナーとして扱う。その後、このカードのリンク先のモンスターのみを素材としてサイバース族Sモンスター1体をS召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3)自分のモンスターの位置が移動する度に、このカードにバックログカウンターを1つ置く。

(4)自分フィールドのモンスターの攻撃力は、このカードのバックログカウンターの数×200アップする。

 

原初海域(オリジンブルー・ウェブ)の効果。オリジンブルーのリンク召喚に成功した時、このターンにモンスターが移動した回数分、召喚されたモンスターにバックログカウンターを置く。その後、その数だけ、墓地からレベル4以下のオリジンブルーを、効果を無効にして特殊召喚」

 

 タイタニーニャが触手を地面に伸ばすと、シーライブラとメガロガーが、地上に引っ張り上げられる。

 

「タイタニーニャの効果。メガロガーをチューナーとして扱い、リンク先のモンスターのみを素材としてシンクロ召喚を行う!私はレベル4のオリジンブルートークンに、レベル3のメガロガーをチューニング!」

 

 オリジンブルートークンとメガロガーの体が分解され、二つの光のリングになり、重なる。

 

「太古の泉より、その美しき歌声を響かせよ。シンクロ召喚!レベル7、原初海祈(オリジンブルー)プレシオルタ!」

 

原初海祈(オリジンブルー)プレシオルタ

シンクロ·効果モンスター

星7/水属性/サイバース族/攻 2300/守 2000

水属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1)このカードが効果で隣のメインモンスターゾーンに移動する場合、かわりにリンクモンスターのリンク先となるメインモンスターゾーンに移動できる。

(2)1ターンに1度、自分フィールドのバックログカウンター1つを取り除いて発動できる。このカードと同じ縦列の相手のカードを全て手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3)1ターンに1度発動できる。このカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。

 

「あの子のエースは、シンクロモンスターかよ」

「いや、それよりも……」

 

 プレシオルタは今、デコード・トーカーの正面で睨みあっている。

 

(なぜ美海は、デコード・トーカーのリンク先に)

 

「プレシオルタの効果発動。バックログカウンター1つを取り除くことで、このカードと同じ縦列の相手のカードを全て手札に戻す」

 

 プレシオルタが口を開けて、美しい音色を奏でる。

 

「俺は速攻魔法!サイバネット・バックドアを発動!デコード・トーカーを次の自分のスタンバイフェイズまで除外し、デッキから、除外したモンスターより低い攻撃力のモンスターを手札に加える。サイバース・ガジェットを手札に加える」

 

 デコード・トーカーをフィールドから離して、どうにかバウンスを回避する。

 

「まだです!墓地のメガロガーの効果を発動!オリジンブルーモンスター1体を隣に移動させることで、墓地から自身を特殊召喚!」

 

 アノマロトレスが移動して、メガロガーが浮上する。

 

「モンスターが移動したことで、タイタニーニャにはバックログカウンターが置かれます。そしてタイタニーニャの効果発動!メガロガーをチューナーに変え、リンク先のモンスターでシンクロ召喚を行う!私はレベル3のアノマロトレスに、レベル3のメガロガーをチューニング!」

 

「シンクロ召喚!レベル6、原初海祈(オリジンブルー)エラスモータル」

 

原初海祈(オリジンブルー)エラスモータル

シンクロ・効果モンスター

星6/水属性/サイバース族/攻 2000/守 2000

水属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1) このカードが効果で隣のメインモンスターゾーンに移動する場合、かわりにリンクモンスターのリンク先となるメインモンスターゾーンに移動できる。

(2)このカードが移動した場合、自分フィールドのバックログカウンター1つを取り除き、このカードが元々いた位置と、移動先の間にあるメインモンスターゾーンの数だけ、相手フィールドのカードを対象として発動できる。そのカードをデッキに戻す。

(3)S召喚されたこのカードがフィールドから墓地に送られた場合に発動できる。墓地から水属性モンスター1体を手札に加える。

 

「フィールド魔法、原初海域の効果発動!エラスモータルを隣に移動させる。この時、エラスモータルの効果で、かわりにリンクモンスターのリンク先に移動できます。私はエラスモータルを右端に移動」

 

「移動したことでバックログカウンターを追加。さらにエラスモータルの効果!自身が移動した時、バックログカウンターを1つ使うことで、移動先と元々の位置の間にあるメインモンスターゾーンの数だけ、相手のカードをデッキに戻す!」

 

 エラスモータルが鳴き声を奏でると、リンク・フライヤーが吹き飛ばされる。

 

「タイタニーニャの効果で、私のモンスターの攻撃力は、バックログカウンターの数×200アップします。カウンターは二つなので、400アップ!バトル!プレシオルタでダイレクトアタック!」

 

「俺は罠カード!スリーフェイト・バリアを発動!」

 

スリーフェイト・バリア

通常罠

(1) 以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このターン、自分のモンスターは戦闘・効果で破壊されない。

●このターン、自分はダメージを受けない。

●このターン、自分のモンスター1体は1度だけ戦闘で破壊されず、その戦闘によって戦闘ダメージを受けるかわりに、その数値分、自分のライフを回復する。

(2)自分がダメージを受けた場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分が受ける効果ダメージは0になる。

 

「このターン、俺はダメージを受けない」

 

 プレイメーカーの前に、黄色い障壁が展開され、プレシオルタの放った音波を防ぐ。

 

「しぶといですね。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン3

 

「俺のターン、サイバネット・バックドアの効果で、デコード・トーカーはフィールドに戻る」

 

 空間に四角い割れ目が広がり、デコード・トーカーが帰還する。

 

「そしてサイバネット・バックドアの効果により、デコード・トーカーはこのターン、ダイレクトアタックができる」

「ですがデコード・トーカーだけでは私のライフは削れませんよ。それに分かっていますか。あなたは今、リンク召喚を封じられている」

「え、どゆこと?」

 

 首を傾げるAiにプレイメーカーが解説する。

 

「今空いているEXモンスターゾーンは一か所。そしてその正面にはプレシオルタがいる」

「そうか!プレシオルタには正面のモンスターを手札に戻す効果があるから」

「その通り、あなたがリンク召喚を行えば、その瞬間、プレシオルタで手札に戻す。つまりあなたは、まずプレシオルタをどうにかしなければ、エクストラデッキからモンスターを出すことはできないんです」

 

 彼女の言う通り、この盤面はプレイメーカーにとって圧倒的に不利な状況だ。

 

(つっても、その効果はバックログカウンターがなけりゃ使えない。ならプレイメーカーは……)

 

「俺はサイバース・ガジェットを召喚。効果で墓地からマイクロ・コーダーを特殊召喚」

 

 サイバース・ガジェットが、右腕のコードでマイクロ・コーダーを引っ張り上げる。

 

「現れろ、未来を導くサーキット!召喚条件は効果モンスター2体!俺はマイクロ・コーダー、サイバース・ガジェットをリンクマーカーにセット!リンク召喚!来い、コード・トーカー!」

 

 アローヘッドより、白いデコード・トーカーとも呼べる電脳の騎士が出現する。

 

「サイバース・ガジェットの効果で、ガジェット・トークンを特殊召喚。さらにマイクロ・コーダーの効果で、デッキからサイバネット・クロスワイプを手札に加える」

「では私はプレシオルタの効果で、コード・トーカーにはEXデッキに戻ってもらいましょう」

 

 コード・トーカーは、プレシオルタの歌声で眠らされ、そのままフィールドから消える。

 

「まだだ。俺はガジェット・トークンを使いリンク召喚!リンク1、リンク・スパイダー!続けて、墓地のグリッド・スイーパーの効果発動!このカードと自分のリンクモンスター1体を除外して、相手フィールドのカード1枚を破壊する!」

「くっ、そういうことですか。私は墓地のアノマロトレスの効果!」

 

 彼の意図を察した彼女は、即座に対応する。

 

「このカードを除外することで、自分フィールドの水属性モンスター1体を隣のメインモンスターゾーンに移動させる。私はプレシオルタをタイタニーニャのリンク先へ移動」

「え!?」

 

 彼女の行動にブルーエンジェルは困惑する。

 

「なら俺はプレシオルタを破壊!」

 

 フィールド上に三角形の次元の穴が開き、リンク・スパイダーとプレシオルタが吸い込まれ、破壊された。

 

「ねぇ」

「ん?」

 

 ブルーエンジェルがゴッドバードに近付く。

 

「彼女はどうしてプレシオルタを移動させたの?」

「ああ。タイタニーニャにはリンク状態の間、耐性を得る効果がある。仮にあの場で、プレシオルタを移動させてなかったら、プレイメーカーはグリッド・スイーパーの効果に、さらにサイバネット・クロスワイプをチェーンして、エラスモータルを破壊。そしてグリッド・スイーパーの効果で耐性を失ったタイタニーニャを破壊していた」

「なるほど……」

「つーか、なんで俺に聞くんだよ……」

 

 ブルーエンジェルの馴れ馴れしい態度に、ゴッドバードは呆れていた。

 

「バトルだ!デコード・トーカーで、ダイレクトアタック!」

 

 サイバネット・バックドアの力で、空間に穴が開き、デコード・トーカーがそこを通り、美海の背後に回って攻撃する。

 

 美海:ライフ4000→1700

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

ターン4

 

(彼の伏せカードは、さっき手札に加えたサイバネット・クロスワイプ。エラスモータルの効果を発動させても、チェーンしてかわされるだけ。ならここは)

「私は原初海域(オリジンブルー・ウェブ)の効果!シーライブラを隣に移動させる。移動したことで、タイタニーニャにバックログカウンターを置き、シーライブラの効果発動!手札から原初海祈マイアーカイブを特殊召喚!そのままリリースして、アドバンス召喚!コンデンサー・デスストーカー!」

 

 尾に注射針を装備した機械仕掛けのサソリが現れる。

 

「コンデンサー・デスストーカーの効果で、タイタニーニャの攻撃力を800アップ。そして私のバックログカウンターの数は3つ。私のフィールドのモンスターの攻撃力は600アップします」

 

 コンデンサー・デスストーカー:攻撃力2600

 原初海祈(オリジンブルー)シーライブラ:攻撃力1600

 原初海祈(オリジンブルー)タイタニーニャ:1400

 原初海祈(オリジンブルー)エラスモータル:2600

 

「バトル!まずはエラスモータルで、デコード・トーカーを攻撃!」

 

 エラスモータルの吐いた水流が、デコード・トーカーを砕く。

 

 プレイメーカー:4000→3700

 

「コンデンサー・デスストーカーでダイレクトアタック!」

 

 プレイメーカー:3700→1100

 

「これで終わりです!タイタニーニャで……!」

(ちょっと待って、何故彼はサイバネット・クロスワイプを使わなかったの!?)

 

 美海の脳裏に過ぎった疑問は、次の瞬間に解決された。

 

「俺は罠カード!リコーデッド・アライブを発動!」

「サイバネット・クロスワイプじゃない!?」

「墓地のデコード・トーカーを除外して、エクストラデッキから、エンコード・トーカーを特殊召喚!」

 

 タイタニーニャの前に、エンコード・トーカーが立ちふさがる。

 

「くっ……私はこれで、ターンエンド」

 

ターン5

 

「俺はサイバース・ウィザードを召喚」

 

 エンコード・トーカーのリンク先に、白いローブの魔導士が召喚される。

 

「終わりだな」

 

 その盤面を見て、ゴッドバードは呟く。

 

「エンコード・トーカーには、リンク先のモンスターが自身より攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う時、バトルによる破壊とダメージを無効にして、自身の攻撃力を上げる効果がある」

「じゃあみ……彼女はこのターンで……」

 

 打つ手のない美海は、プレイメーカーを強く睨みつける。

 

「どうして、あなたは……」

「俺にはやらなければならないことがある。そのために、俺はお前を倒して前に進む」

「ふざけないで。そのために……あなたが余計なことをしたせいで、葵様はハノイに!」

 

 言いかけて口を噤む。

 

「こんなのはただの八つ当たりです。分かってるんです。でも、私にとって彼女は、闇の中にいた私を救ってくれた恩人なんです」

「なあ」

 

 すると、静観していたゴッドバードが口を挟む。

 

「お前が何に怒ってんのかは知らねぇけどよ。お前が守りたいのはその葵様ってやつなんだろ?だったら、そいつと、そいつとの時間を守るために必要なもんはなんなのか、もういっぺん考えてみろよ」

「あなたに何が……」

「さぁ、わかんねぇかもな」

 

 ゴッドバードは小さく笑う。

 その表情が記憶の中の誰かと重なり、美海の心からスッと怒りが消えた。

 

「……バトルだ。俺はサイバース・ウィザードで、エラスモータルを攻撃」

 

 攻撃力はエラスモータルが上。

 しかし、エンコード・トーカーの効果で、サイバース・ウィザードは守られる。

 

「エンコード・トーカーの効果で、エンコード・トーカーの攻撃力をエラスモータルの攻撃力分アップする。エンコード・トーカーで、エラスモータルにアタック!」

 

 エンコード・トーカーが盾を構えて突進する。

 

「ファイナルエンコード!」

 

 ◆

 

 ログアウトした遊作は、回収したデータの解析を草薙に任せて、夜の浜辺でたそがれていた。

 

「なあ遊作、美海に正体がバレちまったけど……」

「大丈夫だろう」

 

 Aiの心配を、遊作は一蹴する。

 

「あいつはあのデュエルの最中、ただの一度も、俺を遊作とは呼ばなかった。SOLに俺の正体を知られないように」

「ふーん、人間ってのはよくわかんねぇな」

「お前にも、分かる時が来るかもしれないな」

 

 遊作はそう言って空を見上げた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。