遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
10年前、
とある男が一人で運営する小さな孤児院で、身寄りのない六人の子供が、仲良く暮らしていた。
「遊作!そっちボール行ったぞ!」
「うん!」
生活は決して豊かなものではなかった。
しかし、親を失い、孤独に苦しんでいた彼らにとって、ここは楽園だった。
けれど、その日々は突然奪われた。
ある朝、目覚めると彼らは白い部屋の中にいた。
それぞれ別々の部屋に閉じ込められていた彼らは、そこで独り、デュエルを強要された。
デュエルに負ければ、そのたびに電流による激痛が与えられる。
何十日間に渡るデュエル漬けの日々。
日を追うごとに、敗北のペナルティは激しさを増していき、心身ともに消耗しきっていた。
────目を開けて
そんな中、彼らを励ましたのは声だった。
────意識を強く持って、考えるんだ
────生きるための三つの理由、帰るための三つのこと
その声の主が誰なのかは分からないが、その声によってどうにか正気を保っていた。
そして半年後、彼らは突然解放された。
彼らを閉じ込めていた部屋がVR空間だと知ったのは、そこから出られた後だった。
彼らは寝ている間にVRゴーグルを着けられて、施設の地下室に監禁されていたらしい。
そして、その犯人は孤児院の経営者であった鴻上聖。
当時事件が大きく報道されることはなかったものの、警察の激しい追求から心労に耐え切れず、自殺した。
◆
「それから、私達六人はそれぞれ別々の場所に引き取られました。私は財前家に」
「俺と仁は草薙さんの家に。だが、一番幼かった仁は、事件の影響で廃人になってしまった」
遊作と美海は行き場のない怒りを抑えるように、拳を握りしめる。
「まだ子供なのに、その鴻上ってやつはひでぇやつだな」
「先生は犯人じゃない」
Aiの発言を遊作が強く否定する。
「美海、あの事件はまだ何も終わっていない。事件の本当の犯人は誰なのか。俺たちは向き合わなければならない」
「……向き合って、何が変わるんですか」
遊作の言葉に、美海は怒りをあらわにする。
「辛いことから逃げて何が悪いんですか!? 何をしたところで、あの時間も、仁くんも、先生も、もう戻ってこないんですよ!」
美海の叫びを、遊作は黙って聞く。
「……美海、俺は今夜、SOLテクノロジーのサーバーをハッキングする」
「それは、私への挑戦と受け取ってもよろしいですか?」
遊作は答えず、彼女に背を向けて、屋上を後にした。
◆
昼休み、美海は葵と一緒に屋上で弁当を食べていた。
「美海、どうしたの?」
元気のない彼女の顔を、葵は心配そうに覗き込む。
「なんでもありません。少し食欲がなくて」
そう言って、美海はほとんど手をつけていない弁当箱を閉じて、立ち上がる。
「少し、用事を思い出したので、失礼します」
「あ!美海!」
美海はそのまま階段を下りて、人気のない廊下で電話をかける。
「ビショップ様。私です」
『どうした?』
「情報を得ました。プレイメーカーが今夜、SOLのサーバーにハッキングを仕掛けるそうです」
『その情報は確かか?』
「信頼できる情報屋から買ったので間違いないかと」
美海は用意しておいた方便を述べる。
辻褄合わせのために、事前に情報屋にも話してあるので、万一調べられても問題はないだろう。
『ならばよし。必ずイグニスを確保しろ』
「了解しました」
通話は切られると、足音が聞こえたので振り返る。
「美海……」
「葵様、今の話、聞いていたのですか?」
「……プレイメーカーと戦うの?」
「はい」
美海は真っすぐ、彼女の眼を見て答えた。
「葵様が心配することはありません。私があなたを守りますから」
そうやって笑う彼女の顔が、どこか苦しそうだった。
◆
LINK VRAINS某所、誰もいない建物の屋上で、ゴッドバードは一人不貞腐れていた。
「ご機嫌斜めじゃない」
顔を上げると、そこには大学生くらいの黒と紫のピッチリした上着とハーフパンツに身を包んだ女性が立っていた。
「ゴーストガール……」
「聞いたわよ。ハノイに負けたんでしょ」
「っ……」
ゴッドバードはスペクターとのデュエルを思い出して下唇を噛む。
思えばあのデュエルで、スペクターのライフを削れたのは最後のアタックだけで、終わってみれば終始彼の掌の上だった。
「で、お前は俺のことをバカにしにきたのか?」
「違うわよ。知り合いが落ち込んでいるみたいだったから、慰めてあげようと思って」
「けっ、誰がお前みたいなババアと」
「あら、女の魅力は若さじゃないのよ? お子様には分からないかもしれないけど」
「リアルより若いアバター使ってるくせに」
ゴッドバードに煽られても、彼女は動じることなく、その隣に腰かける。
「それより、耳寄りな情報を持って来たんだけど」
「なんだよ。俺は新しいデッキを組むのに忙しくてそれどころじゃ……」
「プレイメーカーの居場所について」
ゴーストガールに耳元で囁く。
「‥…テメェが何でそんな情報を」
「お姉さんにはいろんな情報網があるの」
ゴッドバードは自分のデュエルディスクを操作して、ホログラムウィンドウを出現させると、それをゴーストガールの方へ飛ばす。
「こいつでいいか?」
「毎度あり。サービスでお姉さんといいことする?」
「結構だ!誰が好き好んで三次元のババアと」
「はいはい。プレイメーカーは今夜、SOLテクノロジーのサーバーに侵入するそうよ」
「へぇ、そいつはご苦労なこった」
それを聞いてゴッドバードはニヤリと笑う。
「どうするの? プレイメーカーの邪魔でもしに行くの?」
「いいや、こいつは使えそうだな」
◆
草薙のキッチンカーで、遊作達はSOLテクノロジーのサーバーに侵入する準備を進めていた。
「遊作、本当に行くのか?」
「ああ」
遊作はデュエルディスクを装着する。
「SOLのサーバーに侵入するなんて、さすがにリスクがデカすぎる」
「どの道、SOLの人間である美海に正体が知られてるんだ。なら懐に飛び込んでやる」
「そうか……」
草薙は止めても無駄なことがわかると、諦めたように苦笑する。
「気を付けて行ってこい」
「ありがとう。草薙さん」
遊作は奥のログイン用のスペースに入る。
「イントゥザヴレインズ!」
◆
SOLテクノロジーの社内ネットワーク、殺風景な電脳空間を抜けて、プレイメーカーは最深部へとやってきた。
「ここがSOLのサーバーか」
「見ろあそこ」
Aiが指をさすかわりに目で訴える。
そこには巨大な地球儀のような物体と、その周囲を浮遊するリングがあった。
「ここが、SOLテクノロジーの機密情報を保管しているコアか」
「待っていましたよ。プレイメーカー」
そこで、コアの後ろに隠れていた美海が姿を現す。
「あなたの狙いは、ここにあるデータですね」
プレイメーカーは無言のまま、彼女を見つめる。
「では、私とデュエルをしましょう」
その沈黙を同意と受け取り、美海は続ける。
「あなたが勝てば、ここを通してあげます。負ければイグニスをこちらに渡す」
「いいだろう」
「それから」
すると、美海は視線を右へ向ける。
「あなたも隠れてないで出てきたらどうですか?」
「けっ、バレてやがったのか」
プレイメーカーが着た方とは別の通路から、ゴッドバードが顔を出した。
「お前は……!?」
「よう。また会ったな」
「プレイメーカーを囮にして、データを横取りしようとしたんでしょうが、その程度のことはお見通しです」
「だったら、そこにいるやつのことにも気付いてたのか?」
ゴッドバードが、美海の後ろを指さす。
全員がそちらを向くと、そこにはブルーエンジェルが立っていた。
「あお……ブルーエンジェル、何故あなたがここに!?」
「えーっと……」
美海との関係を知られるわけにはいかない彼女は、申し訳なさそうに目をそらす。
「……まあいいです。あなた達はそこで見ていてください。ゴッドバード、あなたの相手もこの後してあげます」
「へっ、上等だ。次も捻り潰してやるよ」
美海は彼を一瞥して、またすぐにプレイメーカーの方を向き直る。
「早く始めるぞ」
「えぇ、では」
「「デュエル!」」
ターン1 プレイメーカー
「俺はグリッド・スイーパーを通常召喚!続けてバックアップ・セクレタリーを特殊召喚。現れろ!未来を導くサーキット!リンク召喚!I:Pマスカレーナ」
現れたのは、猫耳型のガジェットを装備した、へそ出しのシャツを着た少女だ。
「手札のマイクロ・コーダーの効果。コード・トーカーモンスターをリンク召喚する時、このカードを手札からリンク素材にできる。現れろ!未来を導くサーキット!」
プレイメーカーが指さす先に、アローヘッドが出現する。
「召喚条件は、効果モンスター2体以上!俺はマイクロ・コーダーと、リンク2のI:Pマスカレーナをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」
リンクマーカーにプレイメーカーのモンスターが吸い込まれる。
「リンク召喚!リンク3、デコード・トーカー!」
「早速デコード・トーカーを呼び出したな。いいぞプレイメーカー!」
「I:Pマスカレーナをリンク素材にしたモンスターは、効果では破壊されない。そして、リンク素材となったマイクロ・コーダーの効果。デッキから「サイバネット」魔法・罠カード1枚を手札に加える。俺はサイバネット・バックドアを手札に。そして手札からリンク・フライヤーを特殊召喚」
青い三角形の凧のような飛行物体が、デコード・トーカーの右下のリンク先に飛んでくる。
「このカードは、自分のリンクモンスターのリンク先に特殊召喚できる。俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
ターン2 美海
「私のターン。私は
効果モンスター
星4/水属性/サイバース族/攻 1000/守 1600
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)このカードの召喚·特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「原初海祈シーライブラ」以外の「オリジンブルー」カード1枚を手札に加える。
(2)このカードが他のモンスターゾーンに移動した場合に発動できる。手札から「原初海祈シーライブラ」以外の「オリジンブルー」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
「自分の水属性モンスターを隣に移動させることで、手札の
効果モンスター
星3/水属性/サイバース族/攻 1300/守 500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、発動するターン、自分はサイバース族モンスターしか特殊召喚できない。
(1)自分フィールドの水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、手札からこのカードを特殊召喚する。
(2)このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの「オリジンブルー」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードはフィールドを離れた場合、除外される。
「自分の水属性モンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させることで自身を特殊召喚。さらにシーライブラの効果、このカードが移動した時、手札から「オリジンブルー」モンスターを特殊召喚できる。私はアノマロトレスを特殊召喚。さらに自分フィールドのモンスターが水属性のみの場合、手札の
効果モンスター
星3/水属性/サイバース族/攻 800/守 800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分フィールドのこのカード以外の「オリジンブルー」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させ、元々の位置にそのカードと同じレベル·種族·属性の「オリジンブルー·トークン」(攻/守0)1体を特殊召喚する。この効果発動後、ターン終了時まで、自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。
(2)墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの水属性モンスター1体を対象として発動できる。対象のカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。この効果は相手ターンでも発動できる。
効果モンスター
星4/水属性/サイバース族/攻 1700/守 0
このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、このカード名のカードを特殊召喚するターン、自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。
(1)自分フィールドにモンスターが存在しない、または水属性モンスターのみの場合、このカードを手札から特殊召喚できる。
(2)このカードが他のモンスターゾーンに移動した場合に発動できる。デッキから「オリジンブルー」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
「
「一気に5体のモンスターを並べるって、スゲ―展開力だな……」
美海のフィールドに並んだ海洋生物達に、Aiはげんなりしていた。
「私はさらにフィールド魔法、
フィールド魔法
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)自分の「オリジンブルー」リンクモンスターのリンク召喚に成功した場合に発動できる。そのモンスターに、このターン中にモンスターが移動した回数だけ、バックログカウンターを置く。その後、この効果で置かれたカウンターの数まで、墓地からレベル4以下の「オリジンブルー」モンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
(2)1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。
「来なさい、未来を繋ぐサーキット!召喚条件は水属性・効果モンスター2体以上!私はアンモジュール、シーライブラ、メガロガーの3体をリンクマーカーにセット!」
「リンク召喚!リンク3、
リンク·チューナー·効果モンスター
水属性/サイバース族/攻 0/LINK3
【リンクマーカー:右下/下/左下】
水属性·効果モンスター2体以上
(1)リンク状態のこのカードは相手の効果を受けず、攻撃対象にならない。
(2)このカードのリンク先のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをチューナーとして扱う。その後、このカードのリンク先のモンスターのみを素材としてサイバース族Sモンスター1体をS召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
(3)自分のモンスターの位置が移動する度に、このカードにバックログカウンターを1つ置く。
(4)自分フィールドのモンスターの攻撃力は、このカードのバックログカウンターの数×200アップする。
「
タイタニーニャが触手を地面に伸ばすと、シーライブラとメガロガーが、地上に引っ張り上げられる。
「タイタニーニャの効果。メガロガーをチューナーとして扱い、リンク先のモンスターのみを素材としてシンクロ召喚を行う!私はレベル4のオリジンブルートークンに、レベル3のメガロガーをチューニング!」
オリジンブルートークンとメガロガーの体が分解され、二つの光のリングになり、重なる。
「太古の泉より、その美しき歌声を響かせよ。シンクロ召喚!レベル7、
シンクロ·効果モンスター
星7/水属性/サイバース族/攻 2300/守 2000
水属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1)このカードが効果で隣のメインモンスターゾーンに移動する場合、かわりにリンクモンスターのリンク先となるメインモンスターゾーンに移動できる。
(2)1ターンに1度、自分フィールドのバックログカウンター1つを取り除いて発動できる。このカードと同じ縦列の相手のカードを全て手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。
(3)1ターンに1度発動できる。このカードを隣のメインモンスターゾーンに移動させる。
「あの子のエースは、シンクロモンスターかよ」
「いや、それよりも……」
プレシオルタは今、デコード・トーカーの正面で睨みあっている。
(なぜ美海は、デコード・トーカーのリンク先に)
「プレシオルタの効果発動。バックログカウンター1つを取り除くことで、このカードと同じ縦列の相手のカードを全て手札に戻す」
プレシオルタが口を開けて、美しい音色を奏でる。
「俺は速攻魔法!サイバネット・バックドアを発動!デコード・トーカーを次の自分のスタンバイフェイズまで除外し、デッキから、除外したモンスターより低い攻撃力のモンスターを手札に加える。サイバース・ガジェットを手札に加える」
デコード・トーカーをフィールドから離して、どうにかバウンスを回避する。
「まだです!墓地のメガロガーの効果を発動!オリジンブルーモンスター1体を隣に移動させることで、墓地から自身を特殊召喚!」
アノマロトレスが移動して、メガロガーが浮上する。
「モンスターが移動したことで、タイタニーニャにはバックログカウンターが置かれます。そしてタイタニーニャの効果発動!メガロガーをチューナーに変え、リンク先のモンスターでシンクロ召喚を行う!私はレベル3のアノマロトレスに、レベル3のメガロガーをチューニング!」
「シンクロ召喚!レベル6、
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/サイバース族/攻 2000/守 2000
水属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1) このカードが効果で隣のメインモンスターゾーンに移動する場合、かわりにリンクモンスターのリンク先となるメインモンスターゾーンに移動できる。
(2)このカードが移動した場合、自分フィールドのバックログカウンター1つを取り除き、このカードが元々いた位置と、移動先の間にあるメインモンスターゾーンの数だけ、相手フィールドのカードを対象として発動できる。そのカードをデッキに戻す。
(3)S召喚されたこのカードがフィールドから墓地に送られた場合に発動できる。墓地から水属性モンスター1体を手札に加える。
「フィールド魔法、原初海域の効果発動!エラスモータルを隣に移動させる。この時、エラスモータルの効果で、かわりにリンクモンスターのリンク先に移動できます。私はエラスモータルを右端に移動」
「移動したことでバックログカウンターを追加。さらにエラスモータルの効果!自身が移動した時、バックログカウンターを1つ使うことで、移動先と元々の位置の間にあるメインモンスターゾーンの数だけ、相手のカードをデッキに戻す!」
エラスモータルが鳴き声を奏でると、リンク・フライヤーが吹き飛ばされる。
「タイタニーニャの効果で、私のモンスターの攻撃力は、バックログカウンターの数×200アップします。カウンターは二つなので、400アップ!バトル!プレシオルタでダイレクトアタック!」
「俺は罠カード!スリーフェイト・バリアを発動!」
スリーフェイト・バリア
通常罠
(1) 以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このターン、自分のモンスターは戦闘・効果で破壊されない。
●このターン、自分はダメージを受けない。
●このターン、自分のモンスター1体は1度だけ戦闘で破壊されず、その戦闘によって戦闘ダメージを受けるかわりに、その数値分、自分のライフを回復する。
(2)自分がダメージを受けた場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分が受ける効果ダメージは0になる。
「このターン、俺はダメージを受けない」
プレイメーカーの前に、黄色い障壁が展開され、プレシオルタの放った音波を防ぐ。
「しぶといですね。私はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン3
「俺のターン、サイバネット・バックドアの効果で、デコード・トーカーはフィールドに戻る」
空間に四角い割れ目が広がり、デコード・トーカーが帰還する。
「そしてサイバネット・バックドアの効果により、デコード・トーカーはこのターン、ダイレクトアタックができる」
「ですがデコード・トーカーだけでは私のライフは削れませんよ。それに分かっていますか。あなたは今、リンク召喚を封じられている」
「え、どゆこと?」
首を傾げるAiにプレイメーカーが解説する。
「今空いているEXモンスターゾーンは一か所。そしてその正面にはプレシオルタがいる」
「そうか!プレシオルタには正面のモンスターを手札に戻す効果があるから」
「その通り、あなたがリンク召喚を行えば、その瞬間、プレシオルタで手札に戻す。つまりあなたは、まずプレシオルタをどうにかしなければ、エクストラデッキからモンスターを出すことはできないんです」
彼女の言う通り、この盤面はプレイメーカーにとって圧倒的に不利な状況だ。
(つっても、その効果はバックログカウンターがなけりゃ使えない。ならプレイメーカーは……)
「俺はサイバース・ガジェットを召喚。効果で墓地からマイクロ・コーダーを特殊召喚」
サイバース・ガジェットが、右腕のコードでマイクロ・コーダーを引っ張り上げる。
「現れろ、未来を導くサーキット!召喚条件は効果モンスター2体!俺はマイクロ・コーダー、サイバース・ガジェットをリンクマーカーにセット!リンク召喚!来い、コード・トーカー!」
アローヘッドより、白いデコード・トーカーとも呼べる電脳の騎士が出現する。
「サイバース・ガジェットの効果で、ガジェット・トークンを特殊召喚。さらにマイクロ・コーダーの効果で、デッキからサイバネット・クロスワイプを手札に加える」
「では私はプレシオルタの効果で、コード・トーカーにはEXデッキに戻ってもらいましょう」
コード・トーカーは、プレシオルタの歌声で眠らされ、そのままフィールドから消える。
「まだだ。俺はガジェット・トークンを使いリンク召喚!リンク1、リンク・スパイダー!続けて、墓地のグリッド・スイーパーの効果発動!このカードと自分のリンクモンスター1体を除外して、相手フィールドのカード1枚を破壊する!」
「くっ、そういうことですか。私は墓地のアノマロトレスの効果!」
彼の意図を察した彼女は、即座に対応する。
「このカードを除外することで、自分フィールドの水属性モンスター1体を隣のメインモンスターゾーンに移動させる。私はプレシオルタをタイタニーニャのリンク先へ移動」
「え!?」
彼女の行動にブルーエンジェルは困惑する。
「なら俺はプレシオルタを破壊!」
フィールド上に三角形の次元の穴が開き、リンク・スパイダーとプレシオルタが吸い込まれ、破壊された。
「ねぇ」
「ん?」
ブルーエンジェルがゴッドバードに近付く。
「彼女はどうしてプレシオルタを移動させたの?」
「ああ。タイタニーニャにはリンク状態の間、耐性を得る効果がある。仮にあの場で、プレシオルタを移動させてなかったら、プレイメーカーはグリッド・スイーパーの効果に、さらにサイバネット・クロスワイプをチェーンして、エラスモータルを破壊。そしてグリッド・スイーパーの効果で耐性を失ったタイタニーニャを破壊していた」
「なるほど……」
「つーか、なんで俺に聞くんだよ……」
ブルーエンジェルの馴れ馴れしい態度に、ゴッドバードは呆れていた。
「バトルだ!デコード・トーカーで、ダイレクトアタック!」
サイバネット・バックドアの力で、空間に穴が開き、デコード・トーカーがそこを通り、美海の背後に回って攻撃する。
美海:ライフ4000→1700
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
ターン4
(彼の伏せカードは、さっき手札に加えたサイバネット・クロスワイプ。エラスモータルの効果を発動させても、チェーンしてかわされるだけ。ならここは)
「私は
尾に注射針を装備した機械仕掛けのサソリが現れる。
「コンデンサー・デスストーカーの効果で、タイタニーニャの攻撃力を800アップ。そして私のバックログカウンターの数は3つ。私のフィールドのモンスターの攻撃力は600アップします」
コンデンサー・デスストーカー:攻撃力2600
「バトル!まずはエラスモータルで、デコード・トーカーを攻撃!」
エラスモータルの吐いた水流が、デコード・トーカーを砕く。
プレイメーカー:4000→3700
「コンデンサー・デスストーカーでダイレクトアタック!」
プレイメーカー:3700→1100
「これで終わりです!タイタニーニャで……!」
(ちょっと待って、何故彼はサイバネット・クロスワイプを使わなかったの!?)
美海の脳裏に過ぎった疑問は、次の瞬間に解決された。
「俺は罠カード!リコーデッド・アライブを発動!」
「サイバネット・クロスワイプじゃない!?」
「墓地のデコード・トーカーを除外して、エクストラデッキから、エンコード・トーカーを特殊召喚!」
タイタニーニャの前に、エンコード・トーカーが立ちふさがる。
「くっ……私はこれで、ターンエンド」
ターン5
「俺はサイバース・ウィザードを召喚」
エンコード・トーカーのリンク先に、白いローブの魔導士が召喚される。
「終わりだな」
その盤面を見て、ゴッドバードは呟く。
「エンコード・トーカーには、リンク先のモンスターが自身より攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う時、バトルによる破壊とダメージを無効にして、自身の攻撃力を上げる効果がある」
「じゃあみ……彼女はこのターンで……」
打つ手のない美海は、プレイメーカーを強く睨みつける。
「どうして、あなたは……」
「俺にはやらなければならないことがある。そのために、俺はお前を倒して前に進む」
「ふざけないで。そのために……あなたが余計なことをしたせいで、葵様はハノイに!」
言いかけて口を噤む。
「こんなのはただの八つ当たりです。分かってるんです。でも、私にとって彼女は、闇の中にいた私を救ってくれた恩人なんです」
「なあ」
すると、静観していたゴッドバードが口を挟む。
「お前が何に怒ってんのかは知らねぇけどよ。お前が守りたいのはその葵様ってやつなんだろ?だったら、そいつと、そいつとの時間を守るために必要なもんはなんなのか、もういっぺん考えてみろよ」
「あなたに何が……」
「さぁ、わかんねぇかもな」
ゴッドバードは小さく笑う。
その表情が記憶の中の誰かと重なり、美海の心からスッと怒りが消えた。
「……バトルだ。俺はサイバース・ウィザードで、エラスモータルを攻撃」
攻撃力はエラスモータルが上。
しかし、エンコード・トーカーの効果で、サイバース・ウィザードは守られる。
「エンコード・トーカーの効果で、エンコード・トーカーの攻撃力をエラスモータルの攻撃力分アップする。エンコード・トーカーで、エラスモータルにアタック!」
エンコード・トーカーが盾を構えて突進する。
「ファイナルエンコード!」
◆
ログアウトした遊作は、回収したデータの解析を草薙に任せて、夜の浜辺でたそがれていた。
「なあ遊作、美海に正体がバレちまったけど……」
「大丈夫だろう」
Aiの心配を、遊作は一蹴する。
「あいつはあのデュエルの最中、ただの一度も、俺を遊作とは呼ばなかった。SOLに俺の正体を知られないように」
「ふーん、人間ってのはよくわかんねぇな」
「お前にも、分かる時が来るかもしれないな」
遊作はそう言って空を見上げた。