遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
今回も長いので2分割します
SOLテクノロジー、幹部室。
『失敗したようだな』
チェス駒のアバター、ビショップが目の前に立つ美海に低い声で言う。
「申し訳ございません」
『先日のゴッドバードへの敗北といい、私は君を過大評価していたようだ』
「待ってください!美海は……」
「晃様」
彼女をかばおうとした晃を、美海は制止する。
「いいんです」
『君からセキュリティ部隊としての権限を剥奪する』
「甘んじて、受け入れます」
『以上だ』
景色は暗転し、周囲の風景は元の部屋に戻る。
「美海……」
晃は心配そうに見つめるが、当の美海は落ち込んだ様子はない。
「晃様」
「なんだ?」
「SOLの上層部は、どうしてイグニスを欲しているのですか?」
「私にも分からない。そもそもイグニスがどういう存在なのか……」
晃の申し訳なさそうな態度に、美海は何かを決意したように顔を上げる。
「私たちには、知らないことが多すぎます。そのことから目を反らすのは、もうやめるべきなのかもしれません」
「美海、それは……」
「……冗談ですよ」
美海はそう一言告げて、晃に背を向けた。
◆
「だぁぁぁっ!」
ある日、島がいつもより騒がしく、教室で叫び声を上げていた。
「どうしたんだ?」
あまりにおかしい彼の様子に、珍しく遊作の方から島に話しかけた。
「聞いてくれよ藤木!これを見ろ!」
彼がタブレットを遊作の顔に押し付ける。
「……なんなんだ一体」
遊作がタブレットを受け取ってその内容に目を通す。
開いていたのはネットニュースの記事だった。
見出しは『【悲報】プレイメーカーはヒールだった』、記事によればプレイメーカーが、ハノイの騎士から助けた人達から金やカードを巻き上げているらしい。
「プレイメーカーはこんなことするわけねぇよ!お前もそう思うだろ!?」
「そ、そうだな」
「絶対!プレイメーカーの偽物がやってるに違いない!」
熱くなる島に、遊作は冷めた態度で彼を見る。
すると、
「遊作」
教室の外から、美海が呼んでいた。
島のことは放っておいて、遊作は彼女について屋上にやってきた。
「念のため聞きますけど。あのニュースの件、あなたではないですよね?」
「違う」
「お前こそ、遊作に負けた腹いせにやったんじゃねぇの?」
「私、そんな性格悪い奴に見えます?」
Aiに疑われて、美海は少なからずショックを受けたようだった。
「では、単なるフェイクニュースでしょうか」
「いや、それはないな」
すると、何故かAiは自信満々に言い切る。
「さっきのニュースと似たような内容の記事が何件も見つかった。ログを調べてみたが、掲載時間はそんなに変わらない」
「つまり、コピー記事ではないということか」
「では、島くんの言うとおり、プレイメーカーの偽物がいるということでしょうか」
「きっとハノイの仕業だな。遊作に負けっぱなしだったから、腹いせにやったんだろ。あ、でもお前、リボルバーには負けたんだったんだな」
遊作は無言でデュエルディスクをミュートにする。
「それでどうするんですか?」
「言いたいやつには言わせておけ」
「私としては、友達が悪く言われるのは……」
美海の気持ちは嬉しいが、遊作はそんなことにかまけている余裕はなかった。
「SOLから持ち帰ったデータの解析結果がもうすぐ出そうなんだ」
「それ私の前で言います? 一応言わないようにしてたんですけど」
「すまん……」
「まあいいですけどね。デュエルに負けたので、文句はありません」
美海はため息を吐く。
「美海は、これからどうする?」
「……もう少し考えさせてください」
「そうか」
「では、私はこれで」
美海はそう言って、屋上を去っていった。
◆
二人のやり取りを遠くから見ていた葵は、顔を真っ赤にして口を押えた。
(なになになに今の!)
───少し、考えさせてください
(もしかして、藤木君が美海に告白したってこと!?)
物陰に隠れて通り過ぎる美海の顔を見る。
その表情は思い悩むようで、複雑な感情を孕んでいた。
(間違いないわ!あれは恋する乙女の顔!だってネットでこういうシチュエーション見たし!)
普段からネットの情報をうのみにしてはならないと、美海から言われていることも忘れて、葵は思い込みを加速させる。
(こうしちゃいられないわ。美海と藤木君の恋が成就するように、私も協力しないと!)
人知れず葵は、そんなズレた決意を固めるのだった。
◆
「というわけで!俺達でプレイメーカーの疑いを晴らそうと思う!」
放課後、デュエル部の部室を訪ねると、島がいきなりそんなことを言い始めた。
「何がというわけなんだ」
「なんだよ藤木はノリ悪りぃな。今からLINK VRAINSに行って、プレイメーカーの偽物を捕まえるんだよ」
息まいてる島を、遊作はめんどくさそうに眺める。
「二人は行くのか?」
「まあ私はSOLの人間として、迷惑行為をするユーザーを放ってはおけませんし」
とクールに答える美海、
「私もやる。プレイメーカーには借りもあるし」
葵の方はいつになくやる気に満ちている。
(財前に貸しなんてあったか?)
遊作は首を傾げるが、なんにしても、みんながやる気なら遊作も参加せざるを得なかった。
「じゃあ帰ったらすぐにLINK VRAINSにログインしろよ」
◆
そしてLINK VRAINSに集合した4人は、お互いのアバターネームを確認する。
「藤木、お前はアバターも地味だな」
遊作のアバターは当然いつものプレイメーカーではなく、黒いコートに灰色の髪の毛といういで立ちだった。
「えーっと、アバターネームはU39?」
(ああ。遊作の語呂合わせ)
美海は名前の意味に気付いて、すぐに納得した。
「なんか呼びにくいし、藤木でいいか?」
「ああ」
「いやダメでしょ」
そう突っ込みを入れる葵は、カラーリングこそブルーエンジェルと同じだが、髪は短く、ノースリーブのパーカーにショートパンツというラフな格好だった。
「アカウント名はブルーガール、もしかしてブルーエンジェルのオマージュか?」
「まぁ……」
葵は目を剃らす。
「ブルーエンジェルの真似ならもっと愛想よくしろよ」
(本人なんだけどな~)
好き勝手言う島に、美海は心の中でそんなことを思う。
「そういうお前は、変身ヒーローか?」
島のアバターは水色を基調としたアーマーのようなものを纏っており、胸の部分にはデカデカとエンブレムが装飾されている。
「おう。名前はロンリーブレイヴ。海外の映画のヒーローをモチーフにしてみたんだ。クールだろ?」
「美海のアカウント名はμか」
「えぇ、本名のもじりですけど」
「聞けよ!」
スルーされたロンリーブレイヴこと島を宥めつつ、方針について話を始める。
「どうやって偽物を探す?」
「まずは手分けして聞き込みとかどう?」
珍しくブルーガールこと葵が最初に発言して案を出す。
「じゃあ二手に分かれるか」
「では私はブルーガールと。私には彼女をお守りする役目がありますから」
「なら俺がロンリーブレイヴとだな」
「待って!」
綺麗に男女に別れようとしていたところで、ブルーガールが口を挟んだ。
「どうした?」
「え、えーっと、その……せ、せっかくだから、いつもと違う組み合わせもいいんじゃないかなと。た、例えば美海と藤木君とか」
(美海と遊作を二人っきりにする。親友として美海の恋を応援しないと)
「俺はそれでも構わないが……」
葵の考えなど知る由もない遊作は、自分の正体を知る美海となら動きやすいなどと呑気に考える。
だが、美海の思考はズレた方向に動く。
(あの様子、まさか葵様は遊作のことが……でなければ男女ペアを作ろうとするはずがありません。いきなり遊作と組みたいと言うのは恥ずかしいから、私を指名することで、自然とその流れに持って行ったと、そういうことですね)
「では、ブルーガールは遊作と組んでください」
「え?」
ブルーガールを遊作に押し付け、彼の耳元で囁く。
「葵様のこと、くれぐれもお願いしますよ」
「お、おう」
なんのことか分かっていない遊作を他所に、美海は拳を握りしめる。
(任せてください葵様。従者として、葵様の恋を実らせてみせます)
「ではロンリーブレイヴ、行きましょう」
「え、あ、おう」
「あ!ちょっと!」
ブルーガールが止めるのも無視して、美海はロンリーブレイヴを連れて行ってしまった。
◆
ロンリーブレイヴと美海のチームは、手当たり次第に聞き込みを行うが、目ぼしい情報は手に入らなかった。
「くそっ、全然見つかりそうにねぇな」
「まあ元より、偽物がいるかすら不確かなわけですしね」
「なんだよ。湊はプレイメーカーが本当にやったと思ってんのか?」
「そうは言ってませんよ」
美海は息を吐く。
「……ロンリーブレイヴ、あなたはどうして、プレイメーカーに憧れているんですか?」
「そりゃあ、プレイメーカーが最高にクールだからだよ。ハノイの騎士と戦うたった一人で孤高のヒーロー、俺もそれに憧れて、名前を”ロンリー”ブレイヴにしたんだよ」
ロンリーブレイヴは決め顔でそんなことを言う。
「……それは多分、彼の表面しか見えていない」
「え?」
「人は孤独にはなれても、孤高にはなれない。いつだって誰かとのつながりを求めている。けれど、そうしたくてもできない人っていうのはいるんです」
「はぁ……」
ロンリーブレイヴは彼女の言葉を理解してはいなかったが、ここで茶化すほど彼も空気の読めない男ではなかった。
「さあ聞き込みを再開しましょう」
「お、おう」
その時、
「お前ら、プレイメーカーを探してるのか」
数人のガラの悪そうな男が彼らに話しかけてきた。
「あなた達は……」
「俺達はプレイメーカーに酷い目に遭わされたんだよ。見た目が悪そうだからとかいう理由で襲われて」
「デュエルで負けて、せっかく手に入れたサイバースカードも取られちまったんだよ!」
「どこで襲われたんですか?」
偽プレイメーカーの被害者を見つけることができたのは僥倖だ。
早速美海は彼らから詳しい話を聞こうとするが、
「待て待てーい!」
ロンリーブレイヴが割って入る。
「プレイメーカーはLINK VRAINS のヒーロー、その男が、カツアゲなんてするはずがねぇ」
「な、なんだテメェは?」
「俺か。俺はな……」
先のセリフを考えていなかったロンリーブレイヴは、しばらく迷った挙句、
「そう!プレイメーカーの弟子だ!」
そんな大法螺を吹く彼に、美海は呆れかえった。
「こいつら!プレイメーカーの仲間か!」
「だったらこの前の借りを返させてもらうぜ!」
男たちがロンリーブレイヴに襲い掛かる。
体格のわりに腕っぷしなどないロンリーブレイヴは、恐怖で目を閉じるが、
ドカァンッ
拳を振るわれたのは、ロンリーブレイヴではなかった。
「ったく、だせーなお前ら」
彼らの前に、一人の少年が立っていた。
「デュエリストなら、デュエルの借りはデュエルで返せよ」
「ゴッドバード!」
「よう。また会ったな」
「あなたは、どうしてこんなところに」
「プレイメーカーの偽物が出るって聞いて、面白そうだから探しに来たんだよ。見つければ本物をおびき出す餌にも使えるしな」
彼の目的は、本物のプレイメーカーのようで、そういう意味では目の前の男達となんら変わりはない。
美海は警戒を解くことなく、彼を注意深く観察する。
「おいおい睨むなよ。それよか、こいつらやる気だぜ」
すると、ゴッドバードに殴り倒された男達は立ち上がり、デュエルディスクを構えた。
「場所を変えましょうか。ここでは我々のデッキは目立ちすぎます」
「だな。おいそこの!」
ゴッドバードは呆けているロンリーブレイヴを呼ぶ。
「俺達はちょっとこいつらと遊んでくるから、お前はどっか行ってろ」
「いや、でも……」
「ロンリーブレイヴ。私は大丈夫ですから。ブルーガール達と合流してください」
「わ、分かった。ここは任せたぜ!」
何を任せて何の役割負ったのは分からないが、ロンリーブレイヴはそそくさと撤退した。
「それでは、こちらへ」
美海とゴッドバードは、男達を路地裏に連れ込んだ。
「では、手早くすませてしまいましょう」
「舐めんなよ!」
「俺達はこれでも、LINK VRAINSランキングで200位以内に入ったことがあんだぜ」
「それ凄いのか?」
「まあ、母数を考えればそれなりには」
とはいえ、二人がその程度の相手に負けるつもりなど毛頭なかった。
「「デュエル」」
◆
一方その頃、ブルーガールと遊作はLINK VRAINS内を並んで歩いていた。
「……」
「……」
もとより人付き合いの苦手な遊作はもちろん、アバターになったことで多少話しやすくなったブルーガールこと葵も、二人っきりでは会話も弾まない。
(さすがに、この状況で俺が出ていくわけにもいかねぇしな)
遊作のデュエルディスクの中のAiも、静観することしかできずにいる。
そして問題はそれだけではない。
コミュ障二人は、未だに誰にも聞き込みができていないのだ。
(草薙さん、もう解析終わったって言ってたな)
もとよりやる気のなかった遊作は自発的に行動しない。そんなことより、家に帰ってSOLから持ち帰ったデータの中身を確認したい。遊作の頭の中はそのことで一杯だった。
そして、プレイメーカーへの借りを返すというモチベーションのあった葵も、
(なにこれ。美海と藤木君を二人っきりにするはずが、どうして私が藤木君と!? しかもこれ、まるでデ、デ、デー)
男子と二人きりという状況でそれどころではない。
「財前」
「ひゃうぅっ!」
突然声をかけられて、葵は奇妙な叫び声を上げた。
「ど、どうした?」
「え、何が?」
だが次の瞬間には、いつもの能面に戻る。
「いや、今変な声を」
「幻聴じゃないの?」
「……そうか」
勢いに押された遊作は、これ以上追及しなかった。
「それでどうしたの?」
「あれを見ろ」
遊作の指さす先には、物陰をこそこそと動き回る怪しい人物がいた。
二人は互いの顔を見合わせて頷き、怪しまれないように、物陰に身を隠しながら後を追う。
そして、二人はセントラルエリアのはずれにある人気のない場所までやってきた。
「あれって、ハノイの騎士?」
そこには数人のハノイの騎士が集まっていた。
「もしかして、プレイメーカーの偽物の正体はハノイ?」
「いや、まだそうと決まったわけじゃ……」
遊作の言葉を聞かず、ブルーガールは物陰から飛び出す。
「ん?」
ブルーガールはハノイの騎士にビシッと指さす。
「ハノイの騎士!これ以上の悪事は私が許さないわ!」
「なんだお嬢ちゃん? 俺達が誰だか知ったうえで言ってるのか?」
「もちろん。さあ私とデュエルよ」
ブルーガールはデュエルディスクを構える。
「あいつあんなキャラだったか?」
「いや……」
Aiと遊作は、いつもと様子の違う葵の姿に困惑している。
「どうする? お前はサイバースのデッキ使えないだろ?」
「やるしかないだろう」
さすがにここで葵一人に任せるほど、遊作も薄情ではない。
「ブルーガール、俺も手伝おう」
「えぇ」
「カップルか? こりゃ後が楽しそうだな」
「か、カップル!?」
ハノイの騎士の茶化すような言葉に、ブルーガールは顔を真っ赤にする。
「お、おい。大丈夫か?」
「だ、大丈夫。それじゃあ……」
「「デュエル!」」
◆
「バトルだ!コンパイル・ブラスターでダイレクトアタック!」
「ぐぁぁぁぁっ!」
コンパイル・ブラスターの雷撃が、一気に相手のライフを削り切り、ゴッドバードは勝利、そして、
「
こちらもモンスター効果で、相手モンスターを3体デッキに押し戻し、盤面を開ける。
「プレシオルタでダイレクトアタック」
美海も危なげなくデュエルに勝利した。
「さーて、テメェら、プレイメーカーとはどこで会った。吐け!」
ゴッドバードは、倒れた男の胸倉をつかんで問い詰める。
「ぱ、パークエリアだ!あそこで襲われたんだよ!」
「どの辺だ?」
「ち、地図送るからー!」
男は涙目になりながら、ホログラムウィンドウを操作する。
「これじゃあどっちが悪役か分かりませんね……」
ゴッドバードの一連のやり取りを見て、美海はため息を吐く。
「俺様のおかげで情報が得られたんだ。むしろ感謝しろ」
「はいはい。ありがとうございます……念のため聞きますけど、プレイメーカーの偽物ってあなたじゃないですよね?」
プレイメーカーに化けるなら、サイバースのデッキは必須だ。
ゴッドバードが起こした騒動のおかげで、サイバースカードを持つ人間はそれなりにいるようになったが、サイバースのデッキを所有するのはそう多くはないはず。
その点でいえば、彼はデッキも実力も、適しているといえる。
「はぁ? んなことして俺に何の得があるんだよ?」
「あなたが自分で言っていたでしょ? プレイメーカーの偽物を捕まえれば、プレイメーカーをおびき出す餌に使えると。なら偽物を用意するメリットはあります」
「けっ、誰がそんな狡いことやるかよ。俺が本気でプレイメーカーに嫌がらせするなら、もっとえげつないことやる。俺はプレイメーカーの垢を特定する直前まで行ったんだからな」
「ちなみにその後は?」
「ああ。警戒されてんだろうな。あれ以上情報を掴めねえ」
ひとまず遊作の正体がバレていないことが分かり、美海は心の中で安堵する。
「では、やはりハノイが……」
「それもあり得るが、もっと怪しいのはSOLだな」
「何故そう思うのですか?」
「そりゃ、プレイメーカーの評判が落ちて、一番得するのがSOLだからだよ。今プレイメーカーを捕まえようにも、世論はプレイメーカーの味方だ。だから評判を落として、立場を逆転させる。そうすればプレイメーカーに関する情報も集まりやすくなる」
「一応、筋は通っていますね」
ゴッドバードの言う通り、イグニスを手に入れたいSOLにとって、プレイメーカーの味方が孤立してくれれば都合がいい。
「つーかお前、SOLの人間だろ? なんか知らねぇのか?」
「私はもうセキュリティ部隊を外されたので」
「ああ。プレイメーカーに負けたから」
別に後悔はしていない。自分はプレイメーカーに、遊作に負けた。それは自分の実力不足に他ならない。
むしろ、デッキを取り上げられなかっただけマシだとすら思っている。
「答えは見つかったか?」
「いいえ」
あの時もそうだが、ゴッドバードはどうしてこんなことを言ってくるのか、美海には分からなかった。
この男が自分の何を知っているんだと思うのと同時に、どこかそれに懐かしさを感じていた。
「……では、私はそろそろ行きます」
ゴッドバードは、何も言わずに彼女の背中を見送った。
◆
「トリックスター・ホーリーエンジェルの効果!相手にダメージ!」
「電影の騎士ガイアセイバーでダイレクトアタック!」
遊作とブルーガールは、特に危なげなくハノイの騎士を撃破する。
「ブルーガール、デッキもブルーエンジェルのコピーなんだな」
「ま、まあ……」
ブルーガールは話を逸らすように、倒れたハノイの騎士に詰め寄る。
「さあ観念しなさい。プレイメーカーの偽物はあなた達でしょ?」
「な、なんのことだ!」
「この期に及んでとぼける気?」
「俺達は、この辺りでサイバース狩りをしていただけだ!」
ハノイの騎士は必死に弁明を繰り返す。
その様子を見て、遊作とAiは怪訝な表情を浮かべる。
「Ai、お前はどう思う?」
一度物陰に身を潜めて声をかける。
「データを食えれば分かるんだけど……ていうか、せっかくハノイを倒したのにちょっと勿体ないな」
「我慢しろ」
「へいへい。けどハノイがこの状況で嘘をつくメリットがないな」
「同感だ。だが、だとすれば一体誰が……」
その時、不意に遊作は顔を上げた。
「どうした?」
「いや……」
気のせいかと、遊作は視線を戻した。