自作のTRPGに転生したんだが、こんなクソゲー作った過去の自分を殴りたい   作:三田村功

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「合わせて28点というところかな」

 魔石を拾い終えてチリリが言う。

 

 俺とジーネは地図を描いている。

 というか、ジーネの描き方… うーん?

 

「宝箱でればねー。何倍か入ったろうけど」

 エスタが残念がる。

 

 もっとも、以前来た時の様子では、この迷宮の宝箱は駄菓子カタログからの引用のようである。

 この世界の住人にも珍味として珍重されているが、数も獲れるので、ゲームでの運用よりは安くなってたように思う。

 ゲームルールを前提に世界は生まれたが、そのあとは経済原則に従い変容しているのだろう。

 

 それでも、大袋入り数百ギルとかなるから、魔石数十点分ということで、利にはなる。

 

ビルト「そう言えば貴殿一発貰っていたようだったが」

俺「治った治った」

 既に【賭け治癒】を使ってある。

 

ビルト「え? なんでだ? どうして?」

チリリ「そういえば、前マショルカが傷を癒したときも、理由を聞けないでいたわね」

 

 あれ? そうだっけ? ユビソールを治したことがあるぞ。

 いや、あれ二人だけの時か。

 

俺「斥候系の見習い魔術として、【賭け治癒】貰ってるんだよ」

 

ビルト「あれで利用可能なものを得るのは難しいと聞いたが!」

チリリ「ということは、一人で潜行して一人で戦って一人で癒せるんだ。凄いのね、あなた」

ジーネ「でもその術、悪くすると死んじゃうって聞いたよ。大丈夫なの」

エスタ「万能選手だよな。×ンコ以外」

 

 ×ンコは関係ないだろ。探索には。

 

俺「小刻みに治す分にはそれなり使えるんだよ。

 深手を負ってからじゃやばいけど。

 そういえば、ジーネも治癒系持ってたよな。あれ【雷撃】と同級と思ったけど、心構えどうしてる?」

ジーネ「6級だから頼りにならないけど、『大けがした人がいればそっちを使う。いないなら【雷撃】使う』って決めてるよ」

俺「OK理解した」

 

 条件付け使ってたか。

 大けがの基準が気になるが。

 

エスタ「マショルカは結構そういうの気に掛けるよな」

チリリ「悪いことではないわよ」

 

ビルト「治癒持ちが二人もいるのは心強いなあ。治癒薬自体は持ってきてるが…」

チリリ「発動率は低いから怪我しちゃだめよ。高いならもっと上の迷宮に行ってるから」

ビルト「うむ。先ほども何も発動しなかったものな」

ジーネ「むきーっ」

 

俺「じゃあそろそろ次いこか」

 

 

 似たような戦術で雑魚オークの狩りを続けていった。

 

 続いて覗いた3部屋が無人。

 道を行くうち一匹のオークと遭遇。

 回復の泉。

 6匹のオークを倒して宝箱ゲット。

 次はなんとコアを発見。

 無人部屋ふたつ。

 4匹のオークを惨殺して宝箱奪取。

 1匹だけだったけど宝箱あり。

 5匹を倒すも魔石のみ。

 

ジーネ「ねえ、この出土品見たことある」

チリリ「そうね、300ギルくらいになったと思うわ」

ジーネ「魔石30点分と比べると場所とるよね」

チリリ「魔石30点があるわけではないけどね」

ジーネ「こんな軽いのに荷物にはなるんだよね」

チリリ「こんな軽いのだから荷物にはならないでしょう」

エスタ「ジーネ諦めろ。金に替えたほうがもっとモノが喰えるだろ」

 

 次に入った場所がまた回復の泉だったので、一休みして昼飯である。

 

チリリ「魔石は全部で72点。宝箱から出土品が3種。頭割りで300くらいにはなるかしら」

エスタ「今までとは雲泥の差だなあ」

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいものだ。やはり僕の腕前は認められるだけのものはあったのだな」

 ビルトソークが実に気分良さげに言い放った。

 

エスタ「変わったのはマショルカが参加してからだよ?」

ビルト「うん? 見る限りそこまでの腕ではないようだが」

チリリ「戦士としては地味でも、斥候と兼職で、治癒もできるのよ。あなたも私たちも、少し怪我したとき治してもらったばかりでしょ」

 

 そういうことがあったのである。

 

ビルト「そういえばそうか。大体僕の目指す姿の一段階ではあるのだしな。

 失礼なことを言った。忘れてくれ」

俺「怒ってはいないよ。それに一番効果が出てるのは、人数の増加だ。

 前線が二人と四人は大違いだ」

ビルト「女性陣は大技も連発しているしなあ。

 3級4級と思われるが、より上の迷宮でも安定しそうだね」

 

 エスタとジーネは顔を見合わせた。

ジーネ「そこまで高くないよ。たまたま運がいいだけだから」

エスタ「そうなんだよなあ。

 いやまて? ひょっとすると【豪打+4】は神官が間違えたかもしれないぞ?」

 

 これはいけない。エスタが実力間違えだしてる。

 しばらく出目のまま放置したほうがいいか。

 

チリリ「それよりお昼にしましょ」

ジーネ「これはどうするぅ?」

エスタ「まだ言ってる」

 

「それは麩菓子といって、昼飯の代わりにはならないぞ」

 ジーネが先ほどから弄り回している袋を見て俺が言う。

「甘味があって皮がパリッとしたもので、中はフカフカだ。

 茶請けにはなるけど飯時には合わないと思う」

 

ジーネ「マショルカは食べたことあるんだー…」

ビルト「僕も食べたことがないのによく知っているな。良いところの息子なのか君?」

 

 女性陣が堅パンを割って、中に漬物を敷き広げる。

 

「慣れねばならんとはいえ、侘しいものがあるな。いや、今日の稼ぎあれば…

 なにをしているのだ?」

 ビルトソークは三人娘がみな開いたパンを差し出しているのを見て不思議そうだった。

 

 そして俺がその漬物載せパンに、唐揚げをぼとぼと載せていく。

 

「なんだそれは?

 いい匂いがする。

 美味しそうだな。食べ物なのか?」

 

ジーネ「食べ物だよ」

エスタ「美味しいぞ」

チリリ「この人にも頼める?」

 

俺「もちろん。

 ビルトソーク、気にせず喰う気があれば、そっちのパンも出してくれ」

ビルト「何事にもチャレンジだ。探索者を選ぶ以上、好奇心の塊だよ僕は。

 よし、開いた。

 それにしてもどこに持っていて、どう出しているのだ?」

俺「むしろ召喚術に近いんだろうな」

ビルト「となると恩寵で出たのか。

 僕も知らない技なんだが」

俺「知らない技なんていくらもあると思うぞ」

 

「それはそうだが…」

 そうして彼が見回すと、すでに女子三人はパクパク食べている。

「よし、食べるぞ。

   … …旨い! これはうまい、なんだこれは驚くべき味だ! 初めて食べた。

 これほどの香辛料… バランスも素晴らしい。どういうレシピだろう? 鶏肉か?」

 

 確かにこの世界では味わえない美味しさである。

 

 そしてその半分くらいは俺たちゲーム制作者のせいではあるのだ。すまんな。

 

 

 迷宮で得られる地球の食物が、「ウマい!」と驚かれる演出はいいよな、ということで、舞台の世界設定にメシマズというのが入っていたのだ。

 それが転生後のこの世界に影響していて、調味料が微妙に不味いのである。

 

 味噌・醤油に当たるものもあるのだが、カビが違うのかクサかったり味がずれていたり。

 香辛料が遠方産で高かったり。

 サトウキビがなく、甜菜類似のものから採るので、砂糖が土臭かったり。

 

 この世界の住人はそれが当たり前なので、日常彼らが不満を持っているわけではないのだが。

 

 地球世界のものを食すと、頻りと喜び、舌が肥えてしまうのである。

 

 なお残りの半分は、作物の品種改良が進んでいないから、

 …そういう文明設定にしたんだから、やっぱり全部俺たちのせいかもしれない。

 

 肉は美味いと思う。きちんと処理してあるのは。現状でも。

 

 

 俺もやはりパンをかじるが、唐揚げは挟まずに、買ってきた茹で卵と食べていた。

 ときどきジーネの差し出すパンに唐揚げを載せ直す。

 

 ビルトソークは勢いよくパンをかじりながら、ぐいぐいと竹筒の水を飲んでいた。

「あの泉の水を補充に使えるかな」

俺「やめとけ」

 

 時間がたつと効力が切れてただの水になるのかもしれないが、絶対ではない。

 そして負傷を癒す効果のほうが出ればよいのだが、たまに当たるのである。

 

 ゲーム的にはダイスを振り、

 2D6≧5 なら1D10回復

 2D6≦4 なら1D10ダメージ

 となっている。

 

 追加HPなしだと死ぬ可能性があるのだ。

 というか負傷したとき頼る前提でいると割と死ぬ。

 頼って生き延びたことも多いが。

 

 ゲームでは笑ってたが、リアルになると凶悪な罠だよなあ。

 

 三人娘もココにはそれなり来ていたせいか、回復の泉にまつわる噂はそれなり仕入れていて、きゃいきゃい色んなことを言っていた。

 

 ビルトソークは付き合いがいいのかそれに一々相鎚打っていたが、俺はふと入り口のほうに目をやった。

 

 やがて、血まみれ傷だらけの男がぐらりと現れた。

 こちらに入ってくる。

 

 全員が沈黙し、あるいは武器を握る中、よろけながら彼は前進し、やがて泉の中に倒れ込んだ。

 

《4+1→+2》 《1+2→-5》   …

 

ビルト「死んだ?」

 

 やべぇ、何もんだったんだこいつ。

 

俺「そういやこの間蘇生薬拾わなかったか?」

ジーネ「あ、そうだ」

 

ビルト「僕も持っているが」

俺「いくつの?」

ビルト「たしか20と書かれていたな」

エスタ「それは高級品じゃん」

 

 勿体ないのである。

 

「あった。使う?」

 ジーネが荷物入れから薬瓶を見つけ出した。

 後方の彼女が細かいものを背負っているのである。

 

 以前のチームのように、蘇生を使える魔術師以外がヒト瓶ずつもつ、というパターンもある。

 

チリリ「ためらう時間がないわ」

エスタ「任せる」

 

 彼女らの相談を聴きながら、俺は出入り口によって音を探った。

 外を見る。左右を見渡す。

 右側に血の跡が続き、次の十字路で曲がっていた。

 

 振り向き死にかけ男を見ながら俺

「情報が欲しい」

 

 逃げてくるということは、最初から行動表に入れていたか、行動判定でゾロ目を出して上書きしたのか、どっちかということになる。

 この世界の住人がそういう形で理解しているわけではないのだが、少なくとも逃げる探索者というものが信用を吹き飛ばす行為であるのは確かだ。

 それでも逃げたこの男は何と会ったのだろう?

 

 問題は、男の傷が棍棒や錆び剣といった、オークの使うものではないことだ。

 あれは綺麗に研がれた剣から受けたものだ。

 

 

 

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