自作のTRPGに転生したんだが、こんなクソゲー作った過去の自分を殴りたい   作:三田村功

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 三巡目もしょぼかった。

 結果発表はいらんだろ。

 

 出口へと戻る細道を歩きながら

「あと一周くらい? 行けて」

 ちょっと疲れた感じでジーネが、誰にともなく問う。

 

「二周はいけるんじゃないか? ただ成果が悪いと心に来るな。一度都市に戻って午後にまた来ていた場合、この結果では厳しいな…」

 

 ビルトソークは、まだ自分のアイデアの反省をしているらしい。

 

 この隧道は各部屋に入ると密閉されて、たとえなにも起きなくても次の扉が開けられるようになるまで間があるので、一度もイベントなしでも1時間くらい消費するのである。

 その間精神的疲労も続くので、そろそろ音を上げるモノが出ても不思議ない。

 

 陽の下に出ると、他のチームが歓声上げた。

 

 隧道入り口を囲むように、休憩場所が散っているのだが、そこでこちらを見て騒いてるのがいるのである。

 というか出来上がってるじゃん。酒持ってきてるな。

 

「あいつらこっちの生死で賭け事楽しんでるなー。あたしも飲みたいのに」

 エスタが愚痴った。

 というか後半が本音。

 

「空いてるのはあそこか」

 先にビルトソークが歩み出した。

 あ。

 

 休憩場所は固定というわけではなく、隧道に入っている間に利用場所は替わっていくのだが、ビルトの向かう場所の隣に、あの改造樽を持ち歩くグループがいたのである。

 

 あそこにはウヒョウが参加しているから、あまり接したくはないのだが。

 彼が嫌いとかではなく、何かの折に、前の迷宮で死んだバスティオスの話題が出ては困るからである。

 

 とはいえ今から別の場所に向かわせるのも不自然だ。

 やむなくその場所に向かう。

 皆も付いてくる。

 

 円く置かれた椅子代わりの岩に座を占め、竹筒をとって一口水を飲むと、ビルトソークは気兼ねなく声をかけた。

 

「ウヒョウ、元気にしてるようだね」

 

 隣の輪でメシを喰い終えかけていた男が、振り向いて気付き、あちらのチームに一言かけて歩んできた。

 

「やあ、ええっと、チリリさんのチームだったね。先日は助かったよ。

 そしてまあ、なんとかやっている」

 

 かわらず、陰キャの代表のような印象の人である。

 性根は悪くないと思うのだが。

 

「あ、ウヒョウ、一昨日(おとつい)ぶりー」

 やめてジーネ、日付言わないで。何この脇の甘さ。蜜でも塗ってる?

 

「そちらの皆さんとは前からの知りあい?」

 と乾燥果実をとり出しながらチリリ。

 そうだ、話題を替えよう。彼女は分かっている。

 

「いや、昨日組合で新チームを探していたら声をかけてもらえてね」

「ふーん、よかったじゃん、行き場が見つかって」

 とエスタ。チリリの差し出す果実を齧っている。

 

「そう言えばあの二人は?」

 話題を戻すジーネ。地雷原が好きなんかこの娘。

 

「彼らは他のチームから誘われてそっちに行ったよ」

「えー、君のおかげであの二人助かったんでしょー…」

 なんだかモヤっているジーネである。

 

「いや、いける場所が見つかったんだからいいと思うが」

 気にしていないウヒョウ。

 

チリリ「それならいいけど…」

エスタ「あそこから恋愛始まるとでも思ったんか? フヒヒ」

 

ビルト「今はどういう仕事を分担しているんだ?」

ウヒョウ「今は…」

 

「やあやあ。うちのチームの人間が知り合いというなら、このワタクシも挨拶をさせてもらいたい。

 クルベルトワと申す。顔と名前を憶えていただければ幸いだ」

 

 にこやか笑顔の爽やか戦士が挨拶に来た。

 俺より10くらい上だろうか。

 補強の効いた皮鎧を身に付け、拵えの良い剣を腰に下げている。

 魔道具らしい指輪を身に付け、裕福らしい。

 

「こちら、今のチームのリーダーだ」

 ウヒョウが紹介する。

 

 名乗られては仕方ない。こちらもそれぞれ名乗り、あいさつした。

 

「彼らには以前命を助けてもらったことがあるんだ」

 ウヒョウがこちらの紹介もする。

 

「それは素晴らしい。信頼できるチームと知り合えるのは神々の御導きだ。

 我々とても善き仲間には善き仲間でありたく思っている。ぜひとも友誼を結んでいただきたい」

 感動した風にクルベルトワが両の掌を広げて見せる。

 大げさすぎてどこか芝居じみている。癖なのかもしれないが。

 

「こちらこそどうかよろしく。どうにか最近うまく回るようになった弱小チームですが、皆さん方とは仲良くしたいと思っていますわ」

 代表としてチリリが好意を返す。

 

 さらに、あちらのチームの残りのメンバーもやってきた。

 

「リーダー、仲良くするのはいいが、力量が揃っていないと不公平になるぜ。

 アンタらはどの程度の力量よ。持ってる特技を教えてもらおうか」

 いきなりぶしつけである。

 悪意を感じる御面相の魔術師風人物で、黒いマントの下には質良い皮鎧がチラ見えしていた。

 

「そうしたことは、もっと仲良くなってから言いだすモノじゃないの?」

 ムッとしたエスタが反応する。

 

「フンッ」鼻で嗤ってきた「俺は言えるぜ。【閃光】と【眠りの雲】が3級だ。【治癒】もある。その俺が相手に同格の能力求めて何が悪い。

 さあ言ってみろ」

 ふんぞり返った。

 マントが割れて、色鮮やかな腰袋と、二つの腰籠が露わになった。

 

「やめなさい、名乗もしないで。

 ああ、こちらサビョンデイル、うちのサブリーダーです。

 どうにも人当たりが悪くてね。申しわけない。

 もちろんそちらが特技を言う必要なんてありませんよ」

 慌ててクルベルトワ・リーダーが手で抑え、諫める。

 

「そうさせてもらうよ。それより、」

 とビルトソークが素直に応じた。強い。

「そちらがここの怪物、カリテイモの退治の仕方を知っていると聞いたんだ。よろしかったらそれをご教示願いたい」

 堂々と結構図々しいことを言っているな。そのためここに来たのか。

 目標ができるとそれ以外見えない人だなあ。

 

「はぁ? そんなの知ってたっていうわけないだろうがっ」

 まずサブリーダーのサビョンデイルが、呆れた声で反発した。

 それはそうだ。狩り方の知識が広がれば、より強いチームに狩場を奪われることもある。

 

 あちらのチームの後ろの三人も驚いている。

 というか、彼女ら全部女性だ。

 こんな稼業だからだろう、女気を消す化粧なしの短髪ぞろいである。

 いずれも安い鎧だが、一人は薙刀持ちだな。

 

 美人・普通・不美人とおいでだったので、美醜で選んだわけではないらしい。

 

 リーダー・クルベルトワも瞬時驚いたようだが、すぐに柔和な表情に切り替えてみせた。

「ここで見られるという最強の魔物ですね。

 しかしここしばらくはまったく姿を見かけないとか。

 もちろんワタクシたちも出会ったことがありません。

 どなたからその噂を聞かれたんでしょう?」

 

 そのとき

「おーい新入りども、そいつらは子供殺しだ! つるんでると貴様らも迷宮の魔物に堕ちるぞーっ!」

 という声が聞こえてきた。

 

 見ると酒瓶片手に持った、酔いどれバクチ打ちの一人である。

 

「うるせぇ! この酔っ払い!」

 美人の女戦士がにわかに沸点に達して、腰籠から石をとって投げつけていた。

 すわ、戦闘か? と思ったが、あちらのオジサンは「うひゃあ」と情けない声を出しながら、戦闘状態に入らず逃げていった。

 

 黒マントの魔術師も「ち、」と舌打ちしている。

 

「ああ、もしかして、あの人ですか…」

 何か都合よく、勘違いしてくれたようなので、曖昧にうなづいておく。

 

「なぜかあの方、ワタクシたちを見ると癇に障るようでして、いろいろあることないこと言いふらされておるのですよ。

 皆さま方と親しく話したいところですが、また割り込まれたりしてはかえってご迷惑。この場は立ち去らせていただくといたしましょう。

 では皆さま方のうえに神の祝福がございますように」

 

 向こうのリーダーは腹を立てているチームメンバーを抑えつつ、自分の陣地に還っていった。

 

 ウヒョウもこちらに手を振って立ち去り、やがて彼らは改造樽を持ち上げて迷宮に入っていく。

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 

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