自作のTRPGに転生したんだが、こんなクソゲー作った過去の自分を殴りたい   作:三田村功

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 カリテイモは鬼子母神の本名だ。

 そしてそれを元ネタの一部に、友人の作ったモンスター名でもある。

 せっかくの原典に沿った名称だが、誰かがキシモと言い出すとそっちばかりで呼んでいた。

 

 非常に強力な能力値を持ち、回避が高く、魔術が通らない。

 タフであり、攻撃命中率が低いことくらいしか欠点がない。

 

 倒すためには事前の情報収集が必要で、あの時も子供を亡くした女乞食から聞き取りして、倒し方を確信していたな。

 

   ◇ ◇ ◇

 

 なおあれを最初に見たのは、各プレイヤーが同じ基礎能力でモンスターを作ってきていて、どれが出るか情報が揃うまで未確定という方式をとっていた時だ。

 いきなり会いに行くと完全ランダムで魔物が決まる。

 特殊能力や弱点が違うので、このルートだと死にます。

 

   ◇ ◇ ◇

 

 カリテイモは子を探す母の亡霊、という設定があり、縄張りの中に子供が入ると攫いにやってくる。

 

 争う気がないなら、これを放置すればすむ。

 そうすれば残りのメンバーは安全だ。

 

 ただし攫われた子供は、カリテイモの世界の食事をとれず、水も飲めない。

 いずれも冥界のものだからだ。

 

 やがて衰弱死した遺体は、我が子を探すカリテイモについてゆき、人と出会うとその足にしがみ付く。

 

 倒す気なら、やはり子供を連れ歩き、カリテイモと出会ったら子供をぶん殴ることだ。

 

 カリテイモは子供を守ろうとする性格があり、【身を挺す2】の持ち主で、高確率で子供への攻撃を自ら受け遮る。

 回避力を無視して魔物に攻撃を当てることができる。

 

 たまには子供にもあたるので、死なないよう蘇生や回復が必要だが、うまくダメージ配分すれば、かなり楽にカリテイモを倒すことができる。

 

 カリテイモとの出会いを確実にするなら、その縄張りのうちで子供を痛めつけるとよい。

 幼子の悲鳴を聞きつけたカリテイモが、救おうと駆け付けるからだ。

 

 

 あの子連れのおばさんとやらに何があったのかは、もはや知りようがない。

 

 樽で守ったとは言っても、子供が魔物の襲撃対象となり、カリテイモが来てしまったか。

 参加したチームが、最初からカリテイモ狙いだったのか。

 

 ゲームの中の女乞食は、子が攫われかけた時、カリテイモの眷属の悲惨な姿に自分の子供の将来をみて、当てられないカリテイモより、自分の子に速やかな死を与えようと槍を突き立てる。

 

 その結果カリテイモの倒し方に気付くのだが、瀕死にまで追い込んだところで、我が子を突きとおしてしまう。

 

 同じようなことがあったのだろうか。

 

 

 こちらの世界では、その女性はクルベルトワの慰めるところとなり、その経緯を話したのだろう。

 彼女がどうなったかは知らないが、彼は今も、その知識を利用して財を蓄えているというわけだ。

 

 そう考えると、彼のチームが妙にはぶりの良い説明がつく。

 

 カリテイモが守り抜き、狩りを生き延びた子もそれなり居たはずだ。

 しかし、その子らの話を聞かないということは、始末されているのだろう。

 生かしておいて、よそに喋られるより、新しい子を求めるほうが安全だ。

 

 あるいは生き延びたのがあの三人の女戦士とかだろうか?

 

   ◇ ◇ ◇

 

「いや、あくまで想像だしなあ… 証拠はない」

「大丈夫?」

「ん?」

 

 独り言が出たらしく、チリリが心配そうに見ていた。

「もしかして呪いの影響?」

 

「あー、そんなところかな。あのおじさんとかは?」

「もう帰ったぞ。あたしたちが納得しなかったせいか、あっちで飲んでる」

 エスタが答えてくれた。

 

 テルミナもいないが、唐揚げを弟妹とやらにあげるために戻ったのだろう。

 

「ではそろそろ、もう一度挑戦するか」

 ビルトソークが声をかける。

 

 そうだな。気分を切り替えよう。

 

 どうやらクルベルトワ・チームの後に続くものはいないようで、俺たちは中に入っていく。

 だんだん怪我人や欠員のチームが増え、飲んで騒いだり、帰還するところも出始めたようだ。

 

 

 一番の部屋。コウモリ1匹。

 もちろん瞬殺だったが、宝箱が出た。

 

 ワインの200ml瓶だなこれは。

 

「なにこれ? 血の入った入れ物?」

 とエスタが言うが、吸血大コオモリなる敵からの連想だろうか。

 

「お酒の瓶だね。味見したら終わってしまう量だが」とビルト。

 

「ちっちゃいよな。飲んじゃうか」

「まてまて。これだって売れると思うぞ」

 慌ててエスタを止める俺。

 ほんまこの呑みスケは。

 

「叔母上が何本も空き瓶を並べて楽しんでおられたな。

 ヒト瓶2000ほどもしたというから、買取はその半分以下と思うが」

 それでも金になる。

 ビルトソークの情報で売却が確定し、次の部屋に移る。

 

 5部屋目でキノコ頭のクレイゴーレムが出現。

 それなりにでっかいやつで、手始めにビルトソークに当てられたり避けられたりして見せたのだが、次の瞬間ジーネが《6:2》を出した結果、けっこう特大級の雷光が輝いて、みなが目をあけたときには、ゴーレムは消し飛んで宝箱だけになっていた、

 

「やはり力強いな、味方にこれほどの魔術師がいるのはありがたい」

 ビルトソークがしきりと感心・感動している。

 

 ジーネとエスタが輪になって踊る脇で、チリリが首をひねった。

「今度ふたりとも人相見に見てもらう? 本当にどちらも6級の技なのかしら?」

 

 うーむ、疑問に思いだしたか。介入しすぎてるかも知れない。

 とはいえやらねば誰かが死ぬかもしれない。また自分の能力と言い出せば、信じるにせよ信じないにせよ、不都合が生じるからしないけど。

 

「以前は二人とも発動しなかったからなあ。たまたま運が続いただけとは思うぞ。

 たしかに村の神官様には、特技の名前しかわからないといわれたけどさ」

 エスタが答える。

 

 神官も、試練を通じその職に適した恩寵を得ることができる。

 が、とりあえず戒律を守れば一番大事なこと、つまり神殿の維持はできるので、皆が獲るわけではない。

 霊格枠数の鑑定は、人の人生設計に大きくものを言うのと、楽に取得できることで、得ている神官が多いが。

 

 特技の説明まで読める鑑定力を取得するのは、けっこう難易度高くなりがちである。

 

 

 それでもあまりズレがあるようなら、彼女ら三人が探索稼業を続けるなかで、誰かが指摘していたことだろう。

 

 …だめじゃん、今指摘してるわ。

 

「貰った恩寵が途中で使いやすくなるとかいう話あるの?

 ねぇ、ビルト?」

 ジーネが尋ねる。きっと名家なら庶民より学習しているはずと思っているのだろう。

 

「全然聞いたことないが…

 あるとしても相当上の方の恩寵と思うがなあ。

 もちろん初級のダンジョンで最上級の恩寵得ることもあり得るが」

 

「人相見に確定してもらった方がすっきりはするけどね。そのためにも稼がないとならないな。するんだろ結構」とエスタ。

「私が払ったわけではないけど、親には大変だったと言われたわね」

 チリリが返す。

 

 人間のデータを見通せる専門職を、人相見とか人物鑑定士と呼ぶ。

 神官と被るが、神官より楽にそれに向く恩寵を得られる。

 人の一生で何度も頼られるわけではないから、人数はいないし、一回の診断は高いようだ。

 

 なお探索者も鑑定の恩寵を得ることはあるが、本職ほどの精度はない。

 宝箱から出た換金賞品の、設定された買い上げ価格がわかる程度で、しかも現実化したこの世界では需要に応じかなりズレが生じているようである。

 この鑑定の恩寵、得やすいのは斥候だが、他の職でも得られる。

 

「じゃあ稼ごうぜ」

 話題を替えるためにも、クレイゴーレムの残した宝箱をカチャリと開ける。

「あ」

 

「どうした? これは、本か」

 覗きこんだビルトソークがいう。

 

チリリ「本? あら? 綺麗だけど戦士の絵?」

エスタ「なんて書いてあるんだ?」

チリリ「『ベルセルク』って」

 

 ベルセルクの4巻だった。

 

ビルト「あー、そういえば見たことある!」

ジーネ「知ってるの? ビルト」

ビルト「精密な絵が主体の古代の物語と言われている。ひと連なりの物語が、何巻にもわたって存在しているんだ」

ジーネ「へー」

ビルト「ほかにも何種ものシリーズが見つかっているが」

 

 懐かしい。

 が、4巻だけかあ。

 

俺「他の巻もあるのか?」

ビルト「僕は続き物として9巻まで見せてもらったことがある。

 貸してくれた方も次に持つのが15巻だそうでな。間がたいそう気になるそうだ。

 僕もまた見てみたいと思う」

 

 だよなー。俺もまた読んでみたい。

 

俺「これ揃えるとしたら高いのかな?」

ビルト「最初のほうの巻はそれほどでもないな。発掘数が多いから。

 二ケタ、それも30代になると、万は必要なんではないかな」

俺「それはきつい。

 全巻揃えた人はいるのかな?」

ビルト「いや、まだまだ続くということで、ファンは楽しみにしている」

 

 そうだね。夢は大事だ。

 

エスタ「どんな話なんだ?」

ビルト「あー、発掘書物というものは、奇妙な文様であちこちの文字が潰されているのを知っているかな」

ジーネ「きいたことあるよ」

 

 潰れているのではなく漢字だけどな。

 

ビルト「だからそのまま読むことはできない。

 そのため読み師という人らが、その部分を埋める仕事をしていて、こちらが本を開いてる間に、僕の背後で読みあげていくんだ。

 今どこの場所を読んでいるのか示しながらね。

 だから読み師によっては、随分物語が違っていたりするようだ」

 

 『空欄を埋めなさい』を一冊丸ごとしているようだ。

 

「ねえ、あまり同じ場所にいてはよくないんじゃないの?」

 チリリ・リーダーから一言が入った。

 

ビルト「そうだな。あとがつかえているかも」

エスタ「このまま居座っていたらどうなるんだ?」

ビルト「また魔物が召喚される。しかも魔石も何も落とさないそうだ」

ジーネ「うわぁ、無駄な戦いはイヤ、次行きましょっ」

 

 ということでまた部屋を替えていった。

 

 7部屋目が6匹のスケルトン出るも、カス魔石のみ。

 8部屋目がオークでちょっと稼ぎ、

 9部屋目ではコウモリだったが大物は混じっていなかった。

 

 そして11部屋目。

 

 

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