自作のTRPGに転生したんだが、こんなクソゲー作った過去の自分を殴りたい   作:三田村功

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「お腹空いた~。そこに座って、そろそろ休憩いれない?」

 

 午前の太陽が黄色い時間、西におどろしきキグヅリ鬼崩しが見える丘の頂である。

 山の表面が剥がれて落ち、村を潰した惨劇の跡地だ。

 

 道の傍らに自然石を長椅子のように据えてあるのを見て、ジーネが泣き言を言った。

 

 ほかの二人の女子も、朝食がまだだったと見えて賛成する。

 

 それぞれが固いパンにナイフで切れ目を入れて、これに漬物を挟んでいた。

 これと竹筒の水が現在の収入に見合った食事のようだ。

 

 俺は左右を見て、特に人影がないのを確認する。

 同じ場所に探索に向かうものはいるはずだが、常連ならもっと早く発っているのだろう。

 

「ここで俺がまったくの芸無しではないことを証明したい」

 両手を広げ、タネのないことを示す。

 

「別にそんなこと思ってないけど、なに?」

 チリリ・リーダーが優しく問うてきた。かわいい。

 

「そのパンの切れ目をもう一度開いて」

「こう?」

 

 そこに俺は唐揚げを落とした。

 

「え?」「なにこれ?」「美味しそうな匂いがする。食べ物?」

 

「喰える。唐揚げという。これを、俺は召喚できる。

 毒ではないアカシに今俺が一口あちあちあちアッツ」

 久しぶりに手のひらに出してヤケドする。

 揚げたてなのだ。

 

「いつもパンの上に出すのにしくじった」

 

「おいしー! おいしーよこれっ」

 俺がヘマしてるうちに、チリリが唐揚げ鋏んだパンをヒト齧りしていた。

 

「やーん」「なによチリリだけ? あたしらは?」

 

「いくらでも出すぞ。欲しいものはパンを開け」

 

 三人娘がみなパカリと開いて差し出してきた。それに挟みやすい数の唐揚げを落とす。

 

ジーネ「なんでー。なんであたいだけ数が少ないのー?」

「人に先んじて喰ってるから、パンの面積小さくなってるせいだろっ。唐揚げだけ喰うなら数足してやるわい」

「ありがとー」

 

 三人とも久しぶりの熱い料理、油とタンパク質だったらしく、それはもう美味しそうに食べていた。

 

「ふー、ごちそうさまでした。これ美味しいね。

 それにしても、マショルカは霊格1と、信頼できる防具屋さんから聞いたんだけど、なんでこんなことができるの?」

 

 思い出した、防具屋の親父の言っていた、乳のでかい娘とはチリリのことか。

 

「霊格1でも、すでに霊格満たしている人でも、こうした特性を手にするチャンスはある」

 

「へー。どうすんの」

「もぐもぐ」

 

 エスタが訊いてきた。隣でまだ食っているのはジーネだ。

 

「呪われることだ」

「「呪われる!?」」「もぐもぐ」

 

 そう。

 呪いも個性の一種だが、霊格が満ちていても獲得できるのだ。

 

 なぜなら、多くの呪いは必要とする霊格の枠がゼロだから。

 

 呪いを避けるために霊格を満たしておくという裏ワザ使われたので、それへの対処でこうなった。

 裏ワザ使ったのは前世の俺だが。

 

 これ以外も、誰かへの片思いとか親の仇への復仇の念とか、ままならない激情も必要枠ゼロの個性として獲得できる。

 

 やる気なら無制限に獲得できるともいえるが、何かしら厄介であるか、雰囲気付けの要素ばかりである。

 

 そして必要枠ゼロの個性は、プレイヤーであっても自由に削除できない。

 だからふつう積極的に増やすようなことはなかった。

 

 

 それはともかく、つい最近「枠制限なしの呪いって、霊格1でも何かの能力を持っている言い訳として使えるじゃないか」、と気付いたのである。

 

 自分でもミニダンジョンで一つ拾っていたのに、発想の転換が遅れた。

 もっと前にこれを説明に使っていれば、何か変わったろうか。

 

 

「この揚げ物が出てくるのが呪いなの?」

「勝手に出てくるとかじゃないでしょ? あたしだって欲しい」

「もぐ」

「代償に寿命が半分になった」

 

「「えっ」」「治せるのっ!?」

 

「ジーネ、口にモノ残して叫んではいけない」

「ハイ…」

 食べかすまみれになりながら俺はマナーを注意する。

 

「なのにその呪い、気にしてないみたいだけど?」

 チリリが問う。

「いや、代償払ったのに使わないの勿体ないだろ。使わないと戻るわけでもなし」

「それもそうかあ」

 

「外せば戻ってくる可能性あるんじゃない?

 それに寿命が半分の意味って何だろう?

 残り寿命が半分? 生まれた時からの計算?」

 今度はエスタ。

「どうだろうな。その辺わからん」

 

 たぶん種族ごとの限界寿命が、呪われている間半減する、という処理と思う。

 が、なぜそれがわかるのか説明できないので、「わからん」というしかない。

 ゲームではそうしていたというだけだ。

 

 

「この能力あれば、お店やれるね」

「商品これだけだとなあ」

「これだせるのに、なんでうちの店に来たの?」

「連日食ってみろ。飽きるぞ。

 一時期は銭無くてこれしか食べるものなかった」

「なんだ、じゃあ寿命伸びてるね」

「飢え死にせずに済んだという意味では、そうだけど。

 油ものだけだと健康寿命が」

 

 ジーネとだけ会話のレベルが違うな。

 

「霊格1でも呪いなら得られるというのはわかったけど、それで?」

 チリリが先を促した。

 

「流れを戻してくれてありがとう。

 そうしたわけで、俺にはいくつか、使いものになる呪いが付いているのだ」

 

「えー? そんなに都合よく役立つ呪いが得られるもんなの?」

「最初に受けたのが【使える呪いにかかりやすい】という呪いだったんだ」

「そういうのがあるんだ」

 エスタが適切な質問をしてくれたから、流れるように誤魔化す。

 

チリリ「使える部分があると言っても、何かしら悪い点があるんでしょ?」

「ある」

「それでマショルカは困らないの?」

「困るとしても、今回は平気だ」

「具体的には何が?」

「それは俺の弱点でもあるのだから、解説する気はない。

 だけどそちらの三人に悪影響があるものではないから気にせんでくれ」

 

「うーん」

 チリリが心配そうに考え込んだ。

 

「男っぽさがない、ってのはそのせい?」

 とエスタがいってくる。

「え? なに男っぽさって」

「ジーネが言ったんだよね。いかにも安全牌な男子がいたから誘ってみたって」

 

「言わないでっていったじゃーんっ」

 ジーネが抗議する。

「聞いてないよ」

「いま言った」

「あたしはそういう男こそ、二人っきりになると豹変してくるから気を付けろと言ったんだけどさ」

「してくるかな」

「してくるよ」

 

俺「してないよ。してから言ってくれ」

 

エスタ「してくるって」

ジーネ「してくるんだ。へー」

 

俺「まて。言い間違えた」

 

エスタ「実際会ってみると、存在感というか、男性オーラゼロなんで、これはなあ、と思ったんだけど、呪いと言われると納得する」

 

 呪いじゃなくて素だぞ。

 

「やめなさい。マショルカ唖然としてるじゃない。

 それで今それを明らかにする理由は?」

 

 チリリだけだわマトモに会話続くのは。

 

「とりあえず、俺の言うことがでまかせ、っていう思い込みは外してほしいというだけのことさ。

 なんか疲れた」

 

 『虚言癖のある霊格1の戦士』、と先入観持たれると、何を提案しても聞いてもらえないものだ。

 

 話を聞いてもらうためには、「少しは使えそう」と思ってもらうことがいるのである。

 

「思わないって。おかず一品増えるのってすごいことだぞ」

「唐揚げサイコー」

 イェイ、とエスタとジーネがハイタッチしている。

 チリリも、そうねと頷いてる。

 

 あれ? このあと俺が【賭け治癒】を持っていたり、発動率を変えられるのを上手いこと呪いで説明しようと思ってきたのだが…

 

 話の枕だった『唐揚げ』能力で盛り上がっちゃったから、もういいか。

 あったかい肉が喰えるだけで受け入れてもらえてるし…

 

   ◇ ◇ ◇

 

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