とある東の地に、ある少年が生まれた。
陽の光を受ければキラキラと輝く美しい銀髪に陶器のような白く滑らかな肌。そして大きくルビーのような真紅の瞳。どこか寒々しい印象を与えるものの、まだ齢5つにして確かな美貌を持つその少年は魔法界では稀有な蛇語使いであったが──両親は蛇を含め爬虫類のブリーダーだった為「なんて素晴らしいの!」と両手を上げて喜んだ。
とある西の地に、ある少年が生まれた。
太陽を思わす燃えるような真っ赤な髪に金色の瞳。日に焼けた肌は健康的な小麦色で、その身体もしっかりと引き締まっていた。
その少年は止まってしまったら死ぬのでは無いかと両親が苦笑いしたほど常に荒野を駆け回っていた。
その少年の家族は大きなサーカスを経営し、少年も自然とサーカスの一員になった。
少年は幼くして大型の魔獣使いでもあった。どんな大きな獣も、少年に平伏した。
とある南の地に、ある少女が生まれた。
柔らかな春の日差しを受ける穂のような明るい栗毛の髪を持ち、瞳は深い茶色だった。
全てのものに優しい少女は際立って目立つところは無かったが、誰に対しても──何に対しても平等だった。なによりも平等である事を美徳とし全てに優しく、全てを愛した。
また、その少女の両親は料理人とパティシエでもあり、少女の舌は幼少期から鍛えられ繊細な味覚を持ち、両親の真似事をして物心ついた頃には厨房に立っていた。
とある北の地に、ある少女が生まれた。
黒く濡れたような美しい髪と、鋭い青い瞳を持っていた。その少女の家は魔法界でも有数の古本屋を経営していた為、沢山の本に囲まれて育った。気がつけば幾つもの言語を使えるようになり、幼くして沢山の魔法を操り、誰よりも賢く聡明だった。──ただ自分よりも低脳な者に馬鹿にされるとすぐ大人すらたじろいでしまう論理で「はい論破」してしまう為、同年代に友は居なかった。
その4人の少年少女達にはとある共通点があった。生まれた場所も、環境も異なる。
ただ、4人は同じ日に同じ時刻に生まれていた。
それは奇しくも、誰も知らないホグワーツ創立記念日であったが──4人も勿論知らなかった。
各所で少年少女は明日の11歳の誕生日を控えて眠りにつく。
ある少年は明日の蛇の餌はコオロギにするかマウスにするか考えながら眠り。
ある少年は獅子の体に身を委ねその獣の優しく荘厳な匂いを胸一杯に吸い込み眠り。
ある少女は両親が自分にだけ作る特別な誕生日ケーキとパーティーディナーを考えて眠り。
ある少女は沢山の古本の独特な匂いに囲まれ明日は新しい学びがあるだろうかと眠り。
そして早朝。異なる場所で同じ時刻に目覚めた少年少女は──。
「──はっ?」
4人揃って口から盛大な疑問符を吐き出した。
─────
9月1日。
ホグワーツに新たな子供達が入学するその日、キングズ・クロス駅の9と4分の3番線では希望で輝く目、そして不安げに揺れる目ーーさまざまな思いが交差し、興奮にも似たざわめきで満たされていた。
一つのコンパートメントで少年は首元にペットの蛇を巻きつかせ物憂げな表情でその感動の別れを見ていた。
──コンコン
「なぁ、ここ開いて──」
赤毛の少年が勢いよく扉をあけた。
ばちり、と視線が混じり合う。
「──ここ、良い?」
「…あぁ」
赤毛の少年は「ありがと」と言ってその少年の前に座った。お互いに、無遠慮とも言える眼差しで相手をじろじろと見ていた。
──コンコン
「ねえ、ここ良い?」
栗毛の少女が疲れた顔をして扉を開けた。
「──どうぞ?」
少年達2人が答える。少女は目を瞬かせながら、頭を軽く下げ赤毛の隣に座った。
──コンコン
「1人くらい入れるわよね?」
どこか苛立った様子で黒髪の少女が扉を開けた。
「──まあ、1人なら」
赤毛の少年が答える。
少女は驚愕しながら、銀髪の少年の隣に座った。
「──まさか、です」
「いや、どんな因果だよ」
「そうよねぇ」
「腐れ縁もここまで来ると…恐怖すら感じる」
4人は顔を見合わせ、少し笑った。
「僕はサラ・シェルターという」
「俺はゴードン・ブラウンだ」
「私はローシャ・ウォーカーです」
「私はルカ・テイラーよ…うーん、はじめまして?」
サラは、実はサラザール・スリザリンの生まれ変わりだった。
ゴードンは、実はゴドリック・グリフィンドールの生まれ変わりだった。
ローシャは、実はロウェナ・レイブンクローの生まれ変わりだった。
ルカは、実はヘルガ・ハッフルパフの生まれ変わりだった。
何の因果か、1000年の時を超えて彼らは再び出会った。
「ってかサラザール…じゃなくて、サラ!美少年すぎない?顔面偏差値どうなってるの?おかしいと思う!」
「僕の今の両親の顔面偏差値は…国宝級だからな」
「あら、私はヘルガ…んんっ…違いますね、ルカも愛らしくて可愛いと思いますよ」
「ロウェナ…えーと、ローシャも素敵!また会えて嬉しいわ!」
「ゴドリック…、…ゴードンは何故そんなに傷だらけなんだ?」
「あー俺今サーカス団にいるんだ」
「それより…サラとゴードン、1000年ぶりに再会して…私はもっと啀み合うかと思ってたよ」
ヘルガ──ルカが2人を見て、あまりの自然体だったことに首を傾げる。彼女の記憶では1000年前に喧嘩別れをし、決定的に訣別したはずだ、それによりロウェナ──ローシャは心労がたたり寝たきりになってしまった。
サラとゴードンは顔を見合わせる。
たしかに、過去かなり大きな喧嘩をしてそれ以来会っていない。─だが、それはあくまで過去だ。
「まぁ、俺の魂はゴドリック・グリフィンドールで記憶もある。だけど…11年間ただのゴードンだったからな」
「…僕もそうだ。過去の僕はマグルを心から軽蔑していたが…今の僕の父はマグルだ。11年間…いや、今でも彼を尊敬し、愛している。その気持ちは直ぐに覆されるものではない。──顔も良いしな」
「啀みあってないのなら、いいことです。…私は3人にあえて、心から嬉しいですよ。漸く私と対等に会話できる者と出会えたのですから」
ローシャはしみじみとつぶやき薄く微笑んだ。
彼らは魂こそ、創立者のものだったがそれに気付くまではただの──少々特別なだけの子供たちだった。何の因果か前世の記憶が蘇りこうして4人揃ったが、それでも今を生きているのは、創立者ではない。
「ホグワーツかぁ。実はさ、こっそり隠し部屋作ってたんだ、気付かなかっただろ?俺が作った隠し部屋はどうなってるかな」
「ゴードンも作っていたのか?実は…今だから言うが、僕もだ。パーセルマウスにしか開けられないようにしたが…今思えば…少々危険なペットを置いてきてしまった…流石にもう死んでいるか…」
「え?…実はわたしも秘密の部屋を作ってたの!誰か見つけたかな?」
「…皆、好き勝手しすぎてはありませんか?…ま、かく言うわたしも…秘密の部屋を作りましたが」
今初めて明かされるそれぞれのぶっちゃけた秘密に、4人は顔を合わせ苦笑した。
元々…前世の4人はとても仲が良かった、同じ志を持ち、同じ力と才能を持っていた。そして考えもどこか似ていた彼らが、自分達が作った最高傑作であるホグワーツ魔法学校にこっそりと自分の証を残さないわけがなかった。
ホグワーツの伝説として知られているのはサラザール・スリザリンの秘密の部屋であるが。
他の3人の秘密の部屋はどんなものなのか──それはまたいずれわかるだろう。
「楽しみだなホグワーツ!どこに組分けされると思う?」
ゴードンが流れる窓の景色を見ながら悪戯っぽく3人に聞いたが、3人は薄く微笑み「わかりきったことを」と軽く答えた。
ーーー
新入生の証である黒ネクタイを締めた4人は、他の生徒達と共に教師に引率され大広間へと向かう。
「…なんかちょっとずつ違うくね?」
「そりゃそうだよ。ほら、1000年前は水道なかったし、改造くらいしてるんじゃない?」
「…探索してみたいな」
「私は早く図書館に行きたいです」
自分達が作ったホグワーツと今のホグワーツはどこか違った。大まかな作りは同じだが、流石に1000年も経てば時代に合わせて進化していってもおかしくはないのかもしれない。
「…秘密の部屋、元の場所にあるだろうか…」
「後で探しに行こうぜ!」
サラがぽつりと呟き、ゴードンは笑って肩を叩く。ぶにっと服の下にいる蛇を叩いてしまったせいで、「しゃー!」と蛇がサラの襟元から顔を出しゴードンを威嚇した。
ゴードンは「ごめんって!」と少しも申し訳なく無さそうにからからと笑い謝ったが、周りにいた何も知らない新入生達は何でこのやたら美しい少年は蛇なんて連れてきているのか、と顔を引き攣らせた。
大広間に続く扉が開かれる。
天井近くには幾千もの蝋燭が燃え、その下では上級生達が温かい拍手で彼らを迎えた。
緊張し、顔を蒼白にする生徒たちが多い中、4人は涼しい顔をして興味深そうにあたりをキョロキョロと見回す。
懐かしい、この場はあまり変わっていないようだ。それにしても生徒の数は増えたな、昔は20人ほどしか居なかったし、机も一つだったのに。──そう、彼らは沢山の幼い魔法使いと魔女達を見て思う。
彼らが創った最高傑作であるホグワーツ魔法学校が、複数ある魔法学校の中でも最も評判が良いと知った時、彼らは確かにそれを誇りに思ったのだ。──自分達の行動に、間違いはなかったのだと。
教師が組分けの説明をする間、流石の4人も口を黙みその古びた帽子を見つめる。ゴードンは主に自分が製作したその組分けの帽子が今でも現役で使われている事がとても嬉しかった。──流石に、ぼろぼろだが。
「名前を呼ばれた者は前に出て帽子を被ってください──ブラウン・ゴードン!」
「お、1番目か」
ゴードンは軽い足取りで新入生の間をすり抜け椅子に座る。
組分け帽子が、ゴードンの真っ赤な髪を隠した。
帽子は沈黙する。組分けに数秒かかるのは当たり前であり、教師たちは何も不思議に思わず1人目の組分けを優しい瞳で見つめた。
だが、サラ達だけは首を傾げる。一瞬でグリフィンドールと帽子が叫ぶと思ったが、何か話しているのだろうか。
しん、と鎮まる大広間に、小さな声が響く、ぶつぶつと話しているのは組分け帽子を被ったゴードンであり、その声はどこか焦っているようだった。
「ちょ、困るって!おい!──言う事を聞け!この腐れ帽子が!」
「ゴドリック・グリフィンドールッ!!」
「てめっ!──痛っ!?」
帽子は高らかに宣言し、ゴードンが悲鳴を上げた。生徒や教師が帽子が叫んだ言葉に困惑する中、ゴードンは荒々しく立ち上がると帽子を脱ぎ頭を抑え、その帽子の中から輝く剣を取り出す。
「馬鹿野郎!今はいらねーよ!刺さっただろうが!」
ゴードンは片手にグリフィンドールの剣を持ちながら帽子をぶんぶんと振り回す。
その剣の意味を知っている者はごく僅かであり──ダンブルドアは驚愕し、咄嗟に何も言うことが出来なかった。
「そ…その剣は?」
「は?…あー…片付けますねー…。…ほら帽子、空気読んで飲み込め!」
「うぐぅ…」
ゴードンは引いた目をする教師──マクゴナガルに愛想笑いをすると帽子の奥深くに剣を入れ、さっさとグリフィンドール生の待つ机へ向かった。
マクゴナガルは一瞬、彼が本当にグリフィンドール寮なのか──少し悩んだが、きっと帽子は一年振りの組み分けでうっかりして創立者の名前を言ってしまったのだろうと思い、気を取り直して組分けを続けた。
次に呼ばれた生徒はまさか自分の頭にも剣が降ってくるのでは無いかと思ったが、なにも降る事は無かった。
帽子は創立者の名前を叫ぶこともなく「グリフィンドール!」といつものように組分けをした。──ただ、その言葉を聞いてグリフィンドール生とスリザリン生がどよめいたが、ゴードンの時の困惑がまだ残っている彼らの反応は少し薄かった。
「…まさかあの帽子…」
「そうでしょうね。…どうします?」
「…製作者のゴードンでも止められ無かったんだ。…僕たちの話を聞いてくれるかどうか…」
ゴドリック・グリフィンドールと叫ばれた意味がわかった3人は頬に冷や汗を流し苦笑いを浮かべる。
まさか、あの帽子は自分達の真の名前を叫ぶつもりだろうか。いや、どうかゴードンだけであってくれ。
「シェルター・サラ!」
サラは無言のまま少なくなった新入生の間をゆっくりと歩いた。
美しいサラを見た少年少女達はすぐに道を開け、ぽっと頬を赤めたがその肩に蛇が乗っていることに気付くとすぐに顔を青くする。
椅子に座り、帽子を被ったサラは脳に直接帽子が語りかけてくるのを感じた。
「な、なんと!!ゴドリック様だけでなく、サラザール様まで生まれ変わられていたとは…!こんな奇跡、まさかあるとは…」
「千年ぶりだな、帽子よ。頼むから寮の名前を叫ぶだけにしてくれ」
「記憶までもお持ちなのですね…!いやいや私はいつか貴方様達の魂が戻られた時、高らかにこの言葉を述べると決めていました!」
「ちょっ…ま、待て!」
「サラザール・スリザリンッ!!」
組分け帽子は本日2度目の創立者の名前を叫ぶ。
流石に今度は大広間中がざわついたが、サラは自分で帽子を外すと何も言わずに椅子の上に置き、スリザリン生のいる机へ向かう。
ちらりとまだ組分けが終わっていないルカとローシャに、「あきらめろ」と魔法で思念を飛ばし伝えれば、2人は重々しいため息をついた。
「テイラー・ルカ!」
ルカは、跳ねるような駆け足で壇上に上がり椅子の上に座る。
そして、また帽子は「ヘルガ・ハッフルパフ!」と叫んだ。
これは組分け帽子の言い間違いでは無いと、誰もが薄々感じ始めていた。勿論それがわかったところで、彼らは答えを見つける事は出来ず困惑しきっていたが。
これはきっとホグワーツ始まって以来初めての事だろう。
だが組分けの儀を執り行うマクゴナガルは内心で動揺しつつも表情には出さずしっかりと職務を全うした。──本音を言えば後少しの組分けをさっさと終わらせて何事なのかとダンブルドアに聞きに行きたかったが。
「ウォーカー・ローシャ!」
ローシャはツンとすましたような表情で帽子のあるところまで向かう。くるりとふりかえり、きっちりと背筋を伸ばして椅子に座り。組分け帽子が頭に乗せられた途端帽子は「ロウェナ・レイブンクロー!!」と叫ぶ。
ついに4人、全ての名前が言われた。
ローシャは「何か?」と言いたげな目で生徒達を一瞥するとすぐにレイブンクロー生の待つ机に向かう。
ダンブルドアはそれぞれ4人の偉大な創立者の名前を叫ばれた子ども達を、静かに見つめる。──いや、まさか、そんなことがあるだろうか。あったとしても、4人同時だなんて。
かの偉大な魔法使いであるダンブルドアは、すぐに一つの真実に辿り着いたが自分の考えを打ち消し、組分けが終わった後いつものように新入生を歓迎する言葉を告げ数々のご馳走を出現させた。
4人はご馳走を見ながら、無言で思念を飛ばしコソコソと話し合う。
「どうする?」
「まじであの帽子燃やす」
「やめなよ、みんなで作ったでしょ?」
「しかし…何か対策を取らなければ、面倒な事になりますよ?」
「よし、こうしよう。知らなかったが創立者の血筋らしい、と」
「それはどうでしょう。子孫は多分、ある程度いますよ」
「じゃあどうするんだよ!」
「…仕方ない、その作戦でいくしかなさそうだ。…皆、生まれ変わりだと言う気は無いんだろう?」
「まぁね、今のパパとママがびっくりして倒れちゃいそうだし…」
「ですが、あのダンブルドアはうっすら気付いてそうですね」
「後で、あいつにだけ言うか?」
「そうしよう」
4人は無言で頷き合う。
彼らは生まれ変わりだと言うつもりは毛頭も無い、面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だったし、せっかくホグワーツに来たのだから、一生徒として学生生活を楽しみたかった。
しかし、この奇妙な組分けをされた4人は既にかなりの注目を集めており、彼らに話しかける勇気ある者は残念ながら居なかった。──今はまだ。
それぞれの寮生が監督生に連れられて寮へ向かう中、4人はこっそりと列から抜け出し校長室へ直行した。
「えーと。確かこの辺だったよな?」
「場所が変わってなければな」
「そうそう、ああ!このガーゴイルですよ、あー懐かしいですねぇ、特別な守護は今もきれてませんね」
「合言葉なんだろうね…ま、いいか!」
ルカはガーゴイルに「どいてねー」と言い手を降る。途端にガーゴイルは飛び退き道を開ける。
「さて、ダンブルドアはいるかな?」
ルカはうきうきと楽しそうに笑い、一番乗りで螺旋階段を駆け上がる。
サラ達は顔を見合わせたが、すぐにその後を追った。
平凡な者が多いと評価されるハッフルパフ。しかし、彼ら創立者はそれを今知った時「嘘だろう」と思った。
何故か?──簡単だ、彼ら創立者の中で、ヘルガ・ハッフルパフという女性は誰にでも優しく分け隔てなく、公平だった。人外にまでも。そしてなによりも許容範囲がかなり広い彼女は、サラザールやゴドリック、ロウェナが躊躇う事も何食わぬ顔でやってのけた。
城にゴーストを招き、森に魔法生物を連れ込み、時には躊躇うほど危険な事にも飛び込む。
ヘルガ・ハッフルパフという女性は、そんな好奇心あふれる魔女だった。
「おじゃましまーす!」
「へえ、流石に当時とは違うなぁ」
「まあ、私たちは校長では無かったですもんねぇ」
「……物が多すぎる」
わいわいがやがやと社会見学をする様にやってきた4人を見て、ダンブルドアは目を見開き──流石に目をキラキラさせる事は出来なかった。
「君たちは、何故ここに入れたのかのぅ」
「そりゃあ…扉を作ったの私だもん!」
ルカは「当たり前の事聞いてどうするの」と言うように首を傾げる。
あまりに説明になっていないその言葉に、ダンブルドアは閉口した。
「ルカ、それではわからないでしょう?…はじめましてアルバス・ダンブルドア。そして今から私達が言う言葉を直ぐに理解しなさい」
ローシャはルカに対する柔らかな口調をガラリと変え、冷ややかな声でダンブルドアに告げる。少し顎を上げて見下すようになっているのは、もはや彼女の癖だろう。
「私はロウェナ・レイブンクローの生まれ変わりです」
「私はヘルガ・ハッフルパフの生まれ変わりだよ!」
「俺はゴドリック・グリフィンドールの生まれ変わりだ」
「そして、僕はサラザール・スリザリンの生まれ変わりだ。…お分かりかな?ミスター・ダンブルドア?」
「信じられないならあの組分け帽子に聞きな。あいつは魂を読むからな、バレちまった」
どこからどう見ても幼い少年少女である彼らの言葉に、ダンブルドアは自分の勘が本当に正しかったのだと理解したが──理解したくは無かった。
1人ならまだわかる、魂の輪廻は当然のようにある。だが、彼らは4人揃って同じ年に生まれ変わり、尚且つ過去の記憶もあるような物言いをする。
前世の記憶がある、という報告は稀有な事だが無いわけではない。だが、それも断片的なものであり──彼らのように全てを思い出しているのは、あり得ない。
「本当に…?…創立者じゃと…?」
「そうです、何度も同じ事を言わせるつもりですか?私、時間を無駄にする愚行がこの世で1番嫌いです」
「ミスター・ダンブルドア。僕たちはただ平穏にホグワーツ生として暮らしたいだけだ。確かに今の僕たちには──過去のように叡智があり何よりも秀でた力があるが、…まぁそれを開け出すつもりはない」
「え?俺決闘して無双したかったんだけど」
ゴードンの残念そうな呟きをサラは無視し、ダンブルドアを見つめる。
「…このホグワーツで、サラザール・スリザリン…貴方は何も企んで居ないと?」
「僕が?…勿論、ない。僕たちは最高傑作であるこのホグワーツを楽しみたいだけだ」
「…サラザール・スリザリンの魂を持ちながら、混血の多い今のホグワーツに不満は無いのかのぅ?」
ダンブルドアの瞳が鋭くサラを射抜くが、サラは肩をすくめるだけで全く気後れする事はない。偉大な魔法使いの1人であるダンブルドアも、彼らにとってはそれこそ赤子のようなものだった。
「ほらほらーサラが生前あんなだったからだよ」
「な?やっぱ純血思想なんて面倒いの掲げるからこーなるんだよ、サラ!」
「あの時の貴方はまぁ、かなり頑固でしたからねぇ。…当時のマグル達の迫害を知れば、まぁ…仕方のない事でしたけど」
「…ミスター。僕の今の父はマグルだ。そして僕は父を尊敬している。それが答えじゃないかね?」
ダンブルドアはその言葉を聞き、静かに4人の子供たちを見つめる。
創立者、確かに、そうだろう。
しかしそれならば何故これほどゴドリックとサラザールの生まれ変わりは打ち解けているのか。魂は彼らのものであっても、この時代を生きる彼らにしがらみは本当に無いのだろうか。
「…わしに、何を望むのかね?」
「少しだけさ。俺らが生まれ変わりだと言う事は…この5人の秘密にしてくれ」
「この図書館の禁書棚の閲覧する許可を勿論くれますよね?くれなくても読みますけれど、元々私の図書館ですし」
「あ、今日の料理は80点ね、私のレシピが多かったけど少し隠し味が変わってたもの!ねぇ後で正しいレシピを教えるからハウスエルフに指示して?料理が美味しくないなんて耐えられない!」
「そうそう、俺の剣は暫く置いといてくれよ、卒業するときに引き取るけどな、置き場所に困るし」
「とりあえず、自由に歩き回る許可さえ頂けるのなら僕たちは…大人しくすると、約束しよう」
もはや、職権濫用の脅迫ではないか。
晴れやかで、一寸の曇りもない笑顔を浮かべる彼らを見て、そうダンブルドアは思った。