はざまのくに   作:湯たぽん

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エルデンリングの、少しだけ昔のお話。狭間の地にある小さな国。
のちに、「接ぎ木のゴドリック」と呼ばれる事になる王様はまだ、心優しい王様でした。
王様のなやみごと その1(モンスターの生態)とは全く繋がりのない酷いお話ですので、ご了承ください…エルデンリングが題材なので仕方がないのです


王様のなやみごと その2

むかしむかし、リックという王様がいました。リック王は、その名の通り王様らしからぬ庶民のような感覚の、そしてとても深く国民を愛する王様でした。

 

 

 

ある日、王様が食べる料理を毎日作っている、お城のシェフが誤って崖から落ちて死んでしまいました。

王様はとても悲しみ、たくさん泣きました。シェフはとても料理の腕が良かったので、シェフの代わりにシェフの弟子たちが作った食事は全く美味しく感じません。それが余計に王様の悲しみを大きくしていました。

 

悲しんだ王様は考えました。

王様が治めるリムの国は、小さな国でしたが、とても医学が発達していました。王様は国1番のお医者さんを呼んで、こう言いました。

 

「死んだシェフの腕を私の肩に接ぎなさい」

 

お医者さんはとても腕がよく、死んだシェフの腕は接ぎ木のようにあっという間に王様の肩にくっつきました。

王様の肩に接がれたシェフの腕は、シェフが生きていた頃と同じ、とても美味しい料理を作ることができました。王様は王様の仕事をするのが好きでしたが、仕事と一緒に美味しい料理を作ることができるようになり、前よりも仕事と料理が好きになりました。料理を作る時にはシェフの弟子たちと一緒なので、前よりも料理とシェフの弟子たちが好きになりました。

 

 

 

またある時、王様の服やマント、靴を作る職人が死んでしまいました。職人はお爺さんで、みんなに看取られながら死んだので、シェフの時より悲しくはありませんでしたが、王様はまた国1番のお医者さんを呼んで、こう言いました。

 

「死んだ職人の腕を私の背中に接ぎなさい」

 

今度は王様は、王様の仕事をしながら、シェフの弟子たちと一緒に料理を作るのと同時に、服や靴を作ることができるようになりました。職人はとても腕が良かったので、王様に接がれた腕はとても素敵な服を作ることができました。仕事も、料理も、服や靴を作ることも大好きになった王様は、お城の外の人たちにも、料理や服や靴を作ってあげるようになりました。

 

そして王様は、仕事も料理も服や靴作りも、さらにそれらを与える城の外の国民たちも、以前よりもっと好きになりました。

 

 

 

でも、王様にとって好きなことばかりではありませんでした。

 

ある時、北の国から軍隊が攻め込んできました。王様の国の騎士たちはとても強く、勇敢に戦いましたが、それでも戦争で騎士団長を含んだ大勢の騎士たちが死んでしまいました。

王様は騎士たちの死を悲しみ、また国1番のお医者さんを呼んでこう言いました。

 

「死んだ騎士団長の腕を私の胸に接ぎなさい」

 

これまで、王様の命令には喜んで応えていたお医者さんでしたが、この時だけは反対しました。

 

「王様、あなたはこれまで愛する国民を助けるために腕を接ぎました。でも今は、戦争で敵を倒すために腕を接ぐおつもりです。私はそのためには働けません」

 

でも、王様も引くわけにはいきません。

 

「今ここで敵を倒さなければ、私の愛する国民が倒されてしまう。国民を守ることができるのは騎士団長の腕だけだ。そして騎士団長の腕に命令できるのは、私だけだ」

 

王様は、もう一度お医者さんに命令しました。

 

「そして、私に腕を接ぐことができる医術の腕を持っているのはあなただけだ。死んだ騎士団長の腕を私の胸に接ぎなさい」

 

お医者さんは、ふぅと一度ため息をついてから答えました。

 

「そこまでおっしゃるのであれば、私の医術の腕をお使いなさい」

 

そう言うと、お医者さんは自分の腕を王様の胸に接ぎました。驚く王様に向けて、両腕のなくなったお医者さんは言いました。

 

「その、私の腕で騎士団長の腕を好きな場所にお接ぎなさると良い。私はもう、医術の腕を無くしたからあなたに仕えることはできない。さようなら」

 

王様は、今まで王様と一緒に国民のためを想って働いてくれたお医者さんが、腕を失い去っていったのをとても悲しみました。しかし、そうも言っていられない、と新たに増えた医術の腕で、騎士団長の腕を自分に接ぎ、自ら戦場に立ちました。

 

騎士団長の腕を接いだ王様はとても強く、いくつもの戦場で敵を倒し、勝つことができました。それでもやはり、何人かの騎士は死んでしまいます。王様は、勇敢に戦った騎士達をたたえ、彼らの腕をまた自分に接ぎました。

戦場から王様が戻ったとき、出迎えた国民たちは、また腕が増えた王様を見て喜びました。

 

「王様ばんざい!王様の腕になれた騎士たちもばんざい!!」

 

国民たちは、みな王様の腕になりたいと願うようになりました。戦争はまだ続いていたので、みんなが兵士に志願し、勇敢に戦いました。そこで命を落としても、優秀な兵士の腕は王様が接いでくれるからです。

 

それからというもの、王様は戦いに明け暮れました。

 

戦いの中で、王様は死んだ騎士、兵士の腕を自分の身体に接ぎました。王様のために武器を作り続けて、過労死してしまった武器職人の腕も、王様は自分に接ぎました。

王様は軍隊の食事を作りながら、服も作りながら、ケガ人を治しながら、武器も作り、そして最前線で戦いました。

 

そんな王様の戦いぶりのおかげでリムの国は北の国との戦争に勝ち、国の領土は広がりました。ますます国は豊かになり、王様はさらに尊敬されるようになりました。

 

戦いが終わり、久しぶりに帰ってきたお城で王様は考えました。

 

…みんなの腕のおかげで勝てた…。優秀な国民たちで良かった…。でも…

 

王様は、戦争に勝たせてくれた国民を愛していましたが、どこか今までと違う気持ちがしていました。

そんな時、お城に戦争に勝ったお祝いを持ってくる国民の中に、王様のことをとても尊敬している男の子がいました。

 

男の子は、なけなしのお小遣いで買ってきた小さなリンゴ1つを王様に捧げながら言いました。

 

「王様、ボクの腕を王様に接いでください」

 

王様は驚きました。男の子に同調して、他の国民たちも口々に自分の腕も接いでくださいと言い始めたのですから。

 

「いや…待ちなさ…」

 

思わず拒否しようとして、王様は気付きました。

 

(子供の腕など接いでも、役に立たない…私は、そう言おうとしたのか?)

 

その瞬間、王様は国民に対する愛がこれまでと違う気持ちになっていた理由が、分かりました。もともと、全ての国民が大好きだった王様は、いつの間にか「優秀な」国民の「腕」だけを欲するようになっていたのです。

 

王様は、その場で集まっていた国民たちのお祝いの品を全て返しました。そして、戦争で勝ち取ったお金やキレイな服や美味しい食べ物を全ての国民たちに与えました。

王様がしたかったことは、この国民たちを守ることであって、領土や戦利品が欲しくて戦ったわけではないのです。

 

そして、王様は思い出しました。王様に接いだ腕の中で、一対だけ腕の持ち主が生きているものがあることを。

 

王様は、国中にお触れを出しました。

 

「両腕のなくなった、この国1番のお医者さんを探しなさい」

 

王様に医術の腕を接いだ、国1番のお医者さんを探させました。王様は、お医者さんに腕を返したかったのです。そして、お礼を言いたかったのです。1番最初に、王様の心の変化に気付いたのはお医者さんで、お別れと一緒にそのことを教えてくれていたのですから。

 

ですが、両腕のないお医者さんは見つかりませんでした。それもそのはず、国1番のお医者さんは、自分の両腕を王様に接いだ後、戦争に巻き込まれて死んでしまった友人のバーテンダーさんの両腕を自分に接ぎ、美味しいカクテルを作りながら秘かに、そして楽しく生きていたのです。

 

 

 

こうして、再び国民を愛するようになった王様に守られて、リムの国はもうしばらくの平和を取り戻したのでした。

王様が龍と戦いその首を自分に接いだり、元・国1番のお医者さんがお酒を貯めていた壺に生命が宿って動き出したりするのは、また別のお話…

 

 




エルデンリング、難しいですね。そして楽しいですね。このお話を書き終えた2022年4月9日現在、まだクリアできていません。さて、プレイステーションの電源をつけにいくとしますか…
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