私が大学に入学して和くんと付き合うようになって一週間が経った頃に私は彼にあった。和くんは私の恋人になった事を大々的に皆に知らせていた。ただ自慢したかっただけなのは分かっていた。でも、それに関しては別に何とも思っていなかった。私も和くんに対して特別な感情を抱いてなければ、付き合っていっても特別な感情を抱く事はないと断言できる。だって私は別に和くんのことを好きではないから。
別に和くんが恋人である必要はなくて誰でも良かった。只、お手頃な存在が和くんであっただけでそれ以上でもそれ以下でもない。和くんは本気にして喜んでいたようだけど、私にその気はない。
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午前中の大学の講義を終えるチャイムが鳴り響いた。今日は朝から講義を取っていたのでかなり疲れた。
「麻美ちゃん」
私はいつものように和くんが話し掛けてきたんだと思って振り返ると…そこには勿論、和くんも居たけどそれ以外にもう一人立っていた。私にまったく興味がないのか、こちらに視線を向けさえしない。
そんな彼を一目見た瞬間から私は彼から目が離せなくなってしまった。今までこんな状態に陥った事はなかった。まるで金縛りにでもあったかのようだった。
「……その人は?」
「あ、こいつは俺の友達の…夏川っていうんだ」
和くんは隣に立っている、彼のことを指さしながら答えた。和くんと付き合うようになって友達を紹介されたのは今回が初めてだった。
「別に紹介してくれなくていいよ。どうせ関わりも無いだろうし」
「そういうなよ。お前だって彼女が出来たらダブルデートしようぜ!」
和くんがノリで彼に言うが彼は表情を崩すことはなかった。まるで鉄仮面のように表情が動かない。
「悪いがそんな予定はない。俺の性格からして彼女が出来るような感じじゃないしな。それに一人で居た方が気楽でいいよ」
「お前は相変わらずだよな……顔は悪くないんだから彼女作ろうと思えば作れるだろうによ」
「さっきも言ったけど、俺は別に彼女が作りたいわけではない。自分が好きだなと思った人じゃない人と付き合うなんてことをするのは相手に失礼だからな」
「麻美ちゃんも彼女作った方が良いと思うよな?」
「…………」
「麻美ちゃん?」
「あ、ああ、うん」
私は和くんからの呼びかけに反応できなかった。なぜなら、夏川くんを目にしてからずっと視線を変えられない。こんなことは生まれて初めてのことで私も動揺を隠せない。
「ほらな。麻美ちゃんも言っているし、お前も彼女作れよな」
「だから、さっきから言ってるだろ。彼女を作る気はない」
その後も和くんと夏川くんは同じやり取りを繰り返していた。そんなやり取りの間も私はずっと夏川くんのことを見ていた。顔立ちは普通よりも少し整っている方で髪も整えられている。服はカジュアルでよく似合っている。
それになんか彼を見ていると心臓の鼓動が早くなっているのを感じる。ドクン、ドクンという心臓の音も聞こえてくる。なんか顔も赤くなってきているし、いつもの私じゃないみたい……なんか、おかしい。
彼女が一目惚れをしたことを知るのはもう少し後のお話。