IS インフィニット・ストラトス 金と銀の瞳が見据えるモノ リメイクversion 作:フレイムバースト
「さー、一夏くん、今日も特訓特訓特訓だよー」
「わかったから磨美…少し離れてくれ…」
織斑一夏は幼馴染兼友人であるイタリアの代表候補生、磨美・アーデルハイトに頭を抱えていた。
先日のイタリアへのたった1日の出向の後からずっと彼から離れようとしないアーデルハイトは一夏の特訓に久々に付き合えることを喜んでいるのか、先程から上機嫌である。一夏の腕に抱きつきながら磨美はちゃっかり胸に触らせて、「一夏くんのエッチ」と言ってからかっていた。その瞬間、一夏とシャルルが固まったが周りは大して気にしていない。
それを後ろで呆れ顔で見るのは同じく幼馴染である篠ノ之箒とアーデルハイトの友人であるサフィ・マーキスだった。
箒はアーデルハイトが一夏にベッタリ貼り付いている状態をあまりよく思っていないが自身も幼馴染なのだからあのように一夏にべったりと貼りつくのも悪くないのかもしれない、と雑念を浮かべていた。その雑念をサフィは感じ取ったのか、箒の肩を持ち、変なこと考えていたでしょ、と彼女をおちょくっていた。
シャルル・デュノアはそれらを一歩引いた場所で見ていたが、周りの慌ただしい様子に違和感を感じていた。
「今日は何の特訓をしようか、一夏くん。近接戦?射撃戦?回避運動のれん『ドゴォン!』…今の音は…鈴ちゃんかラウラさんかな」
騒がしくしていた五人は砲撃の音に反応して、アリーナへと向かう。以前サフィが鈴とやりあう前に偵察に使っていたグラウンドに降りれる観客席へ向かいグラウンドの様子を確認しようとするが土煙でよく見えない、だがその煙を切り裂いて、3機のISが1vs2の試合を繰り広げていた。数的不利を押し退けて黒いISが二機のISを翻弄する様に呆気に取られている人がちらほらといる。
「ちょ…ラウラさん!?」
磨美は慌てながらISを部分展開し試合をしている黒いラウラのISに回線を繋ごうと試みるもあちらから拒否しているのか繋がらない。
「多分無理だよ。あの子織斑に戦線布告してるんだと思う」
サフィが椅子に腰掛けながら頬杖をつき、一夏を指差しながらそう言い、そしてラウラの顔を見ろと言う。
その顔は笑っていた。暴力を楽しんでいた。ラウラと相対する鈴とセシリアの攻撃を受けてもそれがどうしたと言わんばかりに掌底を突き出して見えない壁で受け止め、砲撃を食らわせる。たった今鈴の衝撃砲が破壊された。
「ならなおさら止めないと!」
シャルルがグラウンドに降りれば彼専用のISを身に纏い、三人の間に入り込もうとする。一夏もそれに続くようにISを展開して、ラウラへ突っ込んでいく。
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「サっちー、何か知ってるでしょ」
「さぁ、何のことかなー」
アタシに向けられた親友の質問を適当にはぐらかし、私はグラウンドの戦闘を見つめていた。ラウラが行なっている、暴虐に等しい戦闘スタイルを観察し続ける。
磨美りんがイタリアに行っている間に、ラウラさんに織斑一夏と戦う為にどうすれば良いかと相談を受けた、それに私は織斑一夏に近しい人と盛大にやりあえば彼は見てくれるんじゃないかな、とだけ答えた。
まさかそれを実行に移してしまうとはどれほど単細胞なのだろう。下手をすれば織斑一夏の方が賢いまである。
私の中でラウラさんはもはや利用のしがいがある存在であり、何の疑いもなく私の言うことをすんなりと受け入れてしまう忠犬のような存在だ。可愛がれば可愛がるほど私に対して信頼の感情を向けていく。
だが、それではつまらない。彼女には何もない。強いて言うなら傾倒する存在である織斑千冬に対する狂信しかない、かわいそうな存在だ。
「サっちー、もしかしてラウラさんを焚きつけた?」
嗅覚の鋭い親友だ。私が何をしてもすぐに嗅ぎつけるその能力は一種の才能だろう。ワタシのした事が露呈して嫌われる前に私もあの可哀想な子ウサギを止めに行こう。
「あの子に焚きつけたとしても、行動を起こしたのはあの子の勝手だから私を責めないでよね、まーみりんっ」
「…っまったく!」
ISを展開してラウラさんの元に飛び立つ。掌底を突き出している彼女に飛びかかることなど容易である。しかし派手にやったものだ、イギリスと中国の代表候補生をぼこぼこにするだけならともかく、武装を破壊して生命危険領域にまで追い込むとなると流石に唆した私も気分が悪い。
「はーい、ラウラさん、そこまで」
「サフィか、邪魔をする気か?邪魔をするならお前も…」
「織斑くんの気を引くことが目的なら、それはもう達成済みだと思うんだけど?現に彼はあなたに刃を向けたし」
「気を引くだけではない。奴を叩き潰す。」
「それをするにはまだ早いと思うけどなー。ほら、近々学年別トーナメントもあるし…いろんな人が集まる公の場で勝てば自分をアピールできて一石二鳥じゃない?織斑くんもさ、こんな私闘で自分の友達を傷つけたくないでしょ?」
「まぁ…そうだな、やるなら正々堂々、真っ正面からぶつかりたいし」
「ラウラさんはどう思うのよ?」
「余計な真似をするなと言いたいが…お前の言うことも確かに間違っていない」
そう言うとラウラさんは織斑くんから離れ、そのままカタパルトへと戻っていった。
「ふぅ…狂信者の相手は疲れるわー…」
私は本音を漏らしながらグラウンドの端でシャルルくんに守られている二人を医務室に運ぶお手伝いをすることにした。