次の日、美優は家を出て学校に向かう。
いつもより早い時間に出たため、まだまだ眠い。
「ふわぁ」
と、あくびがこぼれる。
いつもより早く家を出た美優。それには理由がある。
友達たくさん計画を進めていた美優は結局、友人ができなかった。
昨日は、誰かに話しかけてもことごとく無視され、話せなかったのだ。
ただ、朝早くに行けば人も少なく話してくれる人がいるのではないか?
足りない頭でそう考えた美優は、早速試してみることにしたのであった。
「今日こそ友達を作ってやるぞー。」
昨日と同じ土手から大声で叫ぶ。
土手から叫ぶことによって気合を入れている。
その時、また後ろから声をかけられる。
「おはようございます!今日はとってもいい天気ですね!」
気がつくと背後にちっちゃな子供らしきものがいた。
ーだれだっけ...?
ちっちゃな子供ー海斗はピンと来ていない様子の美優を見て慌てる。
「センパイ忘れちゃったんですか!?僕ですよ僕、昨日ここで弟子にしてくれって言った!」
「あれ、そうだっけ...。最近記憶力が悪くてすぐ忘れちゃうんだよね。今思い出すから待っててね。」
美優は首をひねって考える。
ーああ、思い出した。昨日も夕日に向かって叫んでいた時に話しかけられたんだ。
「思い出したよ。あなたは昨日会った小学生...。」
美優がそこまで言ったところで海斗の瞳にうるうると涙が浮かんでくる。
「センパイ、、」
その様子を見て美優はやっと全て思い出した。そしてあわてて続ける。
「...に見えるけど、実は立派な高校生の海斗くん。昨日会ったよね!いきなり弟子にしろってにじり寄ってきた。」
美優は笑顔をふりまき海斗の涙を止めようとする。
「そうです、海斗です。でも、結局うやむやなまま逃亡されてしまって。」
しゃっくりをしながら言う。
ーていうか、弟子にしろって急に言われて逃げない奴はいるのか?
美優は脳内でつっこむが気にしない事にした。そんなの些細な問題だ。
「で、どうしたの?立派な高校生の海斗くん。」
「ええと僕、センパイと一緒に学校に行きたくて待ってたんです。僕がどれほど弟子になりたいと思っているか、道中で力説しようと思って。」
曇りなき眼で海斗は美優のことを下から見つめてくる。
手を胸の前で合わせながら可愛く「ダメですか?」とお願いしている。
美優は「くそっ、可愛すぎるぜ!」と、胸をドキドキさせながらも、
「嫌だよ。そんなことをされても弟子なんて作らない。しかも、昨日のあれは私のそっくりさんの仕業だ。誤解を解いてほしいね。」
海斗の熱い視線から目を反らしながら大きな声で言う。
「なんで弟子にしてくれないんですか!僕がこれだけ熱い思いを見せているのに!それとバレバレの嘘つかないでください。」
ーチッ、誤魔化せなかった。
「なんでって…そりゃあ、まあ色々とあったんだよ。」
ーあ、マズイ、口が滑った。いろいろだけじゃ何もわからないだろうけど、勘ぐられたら面倒くさいぞ…。
美優は自分のミスに慌てる。そして、
「いろいろあった?」
案の定、海斗は反応した。
急に瞳が怪しく輝き始め、好奇心があらわになる。
ーやべっ
「いろいろって…いったいどんなことがあったんですか?詳しく、詳しく教えて下さい!」
美優に顔を近づけながら早口でまくしたてる。
「な、なにもないよ…。」
美優は小声で誤魔化そうとするが、海斗の耳には全く届いていない。そして、海斗は謎の妄想力を発揮させ始める。
「もしかして、前に本当に弟子を取ってたり!?だけど、弟子が闇落ちしてもう一生弟子なんか取らないと誓ったとか?!」
ーなんだソレ……どうしたらそんなところに話が行くのか。
美優は謎の妄想を語り始めた海斗に引きながらも、その常人離れの想像力に畏敬の念すら抱いた。
「ソ、そんなことはなかったし。」
「えー本当ですか?絶対にそうだと思ったのに…。」
意外とあっさり引いた。
「じゃあなんだろう、教えてくれないんですか?」
「教えるもなにも、海斗くんが勘ぐるようなことは何もないよ。色々っていうのは自然に口から出てきただけで、さっきの話とは関係ない。」
「自然と出た…。何もないはずなのにそんな一言が発せられたんですか。不思議ですね!」
フフフと海斗は笑う。ただその目は笑っていない。
ー誤魔化そうとしてるのがバレている!
「まあ、そういうことにしといてあげます。」
上から目線でえっへんとそう言う海斗。
美優は一発殴れば大人しくなるかなぁと考えたが、自分は不良に逆戻りしたくないので無駄な暴力はふるわないようにしていることを思い出す。
ーやめとこ。
ちなみに学校に行く道中、海斗はほんとうに自分がどれだけ弟子になりたいか、自分を弟子にすることでどんなメリットがあるのか語り尽くしていた。
正直、魅力的な内容もあったが、だめだだめだと思い直す。
ー私は、もうあんな目に、遭いたくないんだ。