月城町   作:AIA

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交換

 

美優はとても迷惑していた。虫のように美優の周りをうろちょろしてくるガキ(高校生)に。

弟子にしてくれうんたらかんたら騒動から早くも3日。

 海斗はまだ美優の弟子になることを諦めていなかった。そのため様々な弟子にしてくれアピールを毎日してきた。

 昼休みには教室に突撃してきて、

 

「僕と一緒にお昼を食べましょう!」

 

と、一緒にお昼を食べたり、放課後には

 

「センパイ!一緒に帰りましょう!」

 

と、校門の前でスタンバイしていたり…ずっと美優といたがっていた。

 朝は朝で、いつ知ったのか家の前で美優が家を出る1時間前から待っていたり…。

 とにかくいつでもどこでも美優の周りには海斗がいる状態になっていた。

 美優が止めろと言っても、

 

「僕は弟子にしてもらえるまで付きまとう事を止めません!」

 

と、ストーカー宣言をするだけ。

 

 そんな感じなので、美優の頭には血が上っていた。まあ友達が全くできなかったことでの八つ当たりもかなりあったが…。

 そのため、ある日美優はガチ切れする。

 

「お前もう私にはつきまとうな!うざいんだよ。私の前に一生出てくるな!」

 

声を低くしてキツめの言葉を言う。

 しかし、海斗はそれをニコニコ笑って聞いているだけ。堪えている様子は一切無い。

 そんな海斗の様子に美優の頭の中で何かが切れる音がした。堪忍袋の緒が切れたのだ。

 美優の目の前が真っ白になる。

 

気がついたときには海斗が地面に寝ていた。

壁がひび割れている。

 

ーあんなのあったっけ?まあいいか。

 

「おーい、海斗くん生きてるか?」

 

海斗の顔をペシペシ叩くが起き上がる気配は全く無い。

 

「どうしよう、起きないな。家に運ぶべきかな?でも海斗くんの家がどこだか分からない。」

 

 そんなときパトカーのサイレンが聞こえてくる。

 

「やべえサツだ!逃げなければ!」

 

 警察にトラウマがある美優は慌てて逃走してしまう。

 海斗を地面に置いたまま。

 

家にて…。

美優はあることに気がつく。

 

ー海斗くんが地面で寝てたのって私のせいじゃないか?なぜだか私の記憶は飛んでいる。もしかしたらその間に私の拳が海斗くんのもとに向かって行ったかも…いや、もしかしてじゃなくて絶対にそうだ!

 

 パンピーに手を出してしまったことにショックを受ける美優。

 

ーやってしまった。理由もなく手を出さないって“ヤクソク”したのに。

 

 そこまで考えて美優は引っかかりを覚える。

 

ー約束?そんなの誰かとしたっけ。

 

今日までほとんど忘れていた言葉。無意識に思い浮かんだその言葉からスルスルと記憶が流れ込んで来た。

 

ーそうだ、私が小学生のときだ…。

 

 小学生の私はいじめられていた。

物を隠されたり、落書きされたりは日常茶飯事。たまに男子たちに暴力をふるわれることもあった。

 あの人と出会ったのはそんなときだった。

 公園で私は浦島太郎の亀のようにいじめられていた。そんなところにあの人が現れる。

 

「おい、オマエら。やめろよ。」

 

 ドスの利いた声。その声を聞くといじめっ子はヤベエと逃げていく。

 私はその時、初めて誰かに助けてもらえた。

 幼かった私は、顔を上げてその人の顔を見たとき亀を助ける浦島太郎…ではなく、王子様のように感じでしまう。

 しかし、そんな考えもすぐに消えた。

 

「なあ、オマエ悔しくねえのか?一方的にやられるだけで。」

 

その男はいじめられている私を優しく慰めることもなく説教を始めた。

 

「オマエな黙ってやられてるだけじゃ相手をつけ上がらせるだけだぜ。何も反撃してこないのをいいことにどんどんエスカレートしていく。なんでやられたらやり返さない。」

 

「やり返す?」

 

私はその言葉に首を傾げる。そんなことをする意味が分からなかったのだ。

 

「お前、思いつきすらしなかったのか。大丈夫か?」

 

「だって全部私が悪いんだもん。私が……」

 

「待て、それ以上喋るな。オマエが悪い?もしオマエがきっかけを作ったとしてもこのことに関してはオマエは悪くねえ。あいつらはもうそのきっかけなんてとっくに忘れてるだろうよ。いじめは楽しいからやっている…たぶんそれだけだ。」

 

顔は思い出せない。だけどその人はそう言ったあと後笑っていた。

 

「そうだ!俺がケンカ教えてやるよ。やり返したらスッキリするぜ。今なら無料でオーケーだ。」

 

「ケンカ?」

 

「ああ、お前が強くなれば誰もお前に手を出さなくなる。逆に出す方になれる。まあ、そんなこと俺が許さないけどな。やるか?」

 

私がその時何を考えたのかは思い出せない。だけど私は大きくうなずいていた。

 

「そうかそうか。じゃあ一つだけヤクソクだ。オレらと同類のヤツと悪いヤツ以外には手を出すなよ。」

 

「うん、分かったよ。ヤクソクする。」

 

 私はその時は意味も分からず約束していた。ただソレは私の心に強く残り、私は律儀にずっと守っていた。

 

ー思い出したよ。っていうか何で私は不良に足突っ込むことになったこのことを忘れてたんだろう。それに…師匠のことも。

 

 美優は大事なことをずっと忘れていたことにも少しショックを受ける。

 

ーそれにしても私はとんでもないことをしてしまった。師匠にバレたら何をされるか分からない。とりあえず海斗くんに土下座でも何でもして許してもらわなくちゃ。

 

美優の今後の方針が決まった。

 

 

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