「ねぇねぇそこの君!大野海斗くん知らない?」
一年の教室がある南校舎にてかぐやは海斗を捜索していた。
「大野海斗…このクラスにはいません。」
親切な女の子が答えてくれる。
「ありがとう!」
お礼もそこそこに次の教室に向かう。
1年C組で美優は同じことを聞く。
すると一人の男子生徒が
「大野なら窓際の一番後ろの席にいますよ。ん、あれいないな。さっきまでいたのに。」
「そう。じゃあ大野くんに伝言頼んで良いかな?」
「もちろんいいっすよ。なんて伝えますか?」
「そうだな…。放課後屋上で待つっ。折原よりて言ってくれる?」
「分かりました!」
「じゃあよろしくね。」
美優はウインクをして駆け足で去っていく。
「かわいい人だったな…。」
男子生徒はぼーとしている。彼がもう一度大野の席を確認すると大野が席でお菓子を食べていた。
「おい大野!今、かわいい人がお前をよんでたぞ。」
「かわいい人…ああ。」
海斗の脳裏に一人の人物が思い浮かぶ。
「折原って人で放課後屋上に来いってさ。もしかして告白か?」
「だったらいいんだけど。たぶん別の用だよ。」
「そうか、つまんないの。じゃーな。」
新たなペロペロキャンディの袋を開けて口に入れる。
ーセンパイから僕に初めてのコンタクトが!僕はどうすればいいんだ!…どうしよう?
心なしか海斗は嬉しそうに見えた。
「これでいいわね。」
美優は伝言が伝えられて一息つく。
海斗はなぜか今日はストーカー行為をしてこなかったので久しぶりの一人の登校だった。そのため少し寂しさを感じた。
ーやっぱりあんなことしちゃったら近づきたくないか。
美優は自分のしてしまったことを反省する。海斗に対してはあれだけ弟子に弟子にと言われていたのに急にパッタリと来なくなり拍子抜けすると共に少し複雑な気分だった。
放課後、美優は屋上に立っていた。
海斗がやってくるのを今か今かと待っていた。
しかし、待てども海斗はやって来ない。気がつくと辺りは真っ暗になっていた。
「来ないな、海斗くん。やっぱり私のことが怖くなっちゃったかな。そうだよね、怖いよね。いくら真夏の蚊以上にウザかったとしても、殴ったらダメだよね。」
美優は孤独に屋上にいることで、おセンチな気分になる。
ー私はダメなヤツだ。今日海斗くんに謝ろうとしているのも、師匠に怒られたくないからだ。本当に反省なんてしてなかった。だから海斗くんは来ないんだ。
ー反省をキチンとしよう。
「すみませんでした!すみませんでした!すみませんでした!」
美優は一人で反省会を始めた。
海斗宅にて。海斗は美味しく夕飯を食べている。豪華な食事が勢いよく減っている。
ーうーんセンパイ大丈夫かな?まさかこんな時間まで待ってたりしないよね?それよりこれすごく美味しいな~!
一瞬で興味が料理に移る。
彼の頭の中にはもう美優のことは消え去っていた。美優が屋上で孤独に待ち続けているとは思いもしない。
ーこ、来ない。もう8時なのに…。ここまで待って来ないならもうここには来ることは無いだろう。帰るか。
海斗が美味しいものを食べているその時美優は帰る決心をした。
万が一のことを考えて、置き手紙も残しておく。
“帰ったでー 折原”
そして、階段に出ようとしたときあることに気がつく。
鍵が閉まっているのだ。恐らく警備員さんが閉めたんだろう。
ーどうやって出よう?
美優は慌てるがどこか落ち着いて見える。
ーそういえば前の学校でも屋上に閉じ込められたこともあったっけ。その時は綱引き用の長い綱があってそれで下りた。ここにもあるかなあ。
美優は何かないかガサゴソと付近を漁る。
するとビニールシートとカラーコーンだそれと靴が一足出てきた。
ーこれで何ができるんだよ!というかこの靴なんだろう?そういえば前この学園で自殺者が出たって聞いたような…。いや、これ以上考えちゃだめだ。
まったく役立ちそうにない道具を見て、
ー普通に下りるか。
美優は壁伝いにおりていくことにした。
幸い壁を登ったり降りたりするのは得意だ。
なぜ得意なのか?ソレは師匠に教えられたからだ。師匠は今思い返すとケンカ以外にも色々教えてくれていた。普通に生活していたら必要ないものばかりだったが。
よっせよっせと壁を降りていく。あっという間に地面につく。
ー久しぶりにやったな。帰ろう。
美優は少しクタクタになりながら家へと向かっていく。
ー待ってるんじゃだめだ。明日はちゃんと直接話さなきゃ。