5歳になりました。
改めて自分の容姿に着目。
綺麗な長い白銀の髪に、真っ赤なルビーみたいな瞳。
うん。なんかオレ、アルビノ美幼女だったわ。
ママンは悲しそうに、しかしオレをしっかりと抱きしめて教えてくれた。
今は亡きダディは人間で、オレはどうやらハーフエルフらしい。
人間の冒険者の男との間に産まれたオレは、先天的な問題でアルビノっぽくなったみたいだわ。
ああ、だから、ママン似の金髪と瞳の色じゃなく、オレの耳も長くなかったんだな、とようやく納得したよ。
ママンのエルフの里では、異種婚は禁忌であり、二人の婚姻は認められず駆け落ちしたんだそうな。
二人で安住の地を求めて旅していたが、ダディが強力な魔獣との闘いで命懸けでママンを逃がした。
その時にはもうお腹にオレがいたみたいだ。
そうしてようやく辿り着いたのがこのオレたちが住んでいるシトラネの深森という場所。
辛かったろうな、ママン。
安心してくれよ、此れからはオレがママンを守るから。
その為にはオレは強く在らねばならない。
今日も今日とて、トレーニングに励むのだ。
オレは精神を全集中し鋭敏に感覚機能を研ぎ澄ませる。
視える。視えるぞ。
魔力の流れが身体中にひた走る。周囲に満ちる魔力の方向性が手に取るように感じ取れるぞ。
「そっこだぁああっ! ふるえるぞハート!
燃えつきるほどヒート!! おおおおおっ!
刻むぞ血液のビート!!
ドッギャアアアアアアンンンッッッ
「!?」
何もない空間に素早く接近してオーラを纏う手で掴み上げると、体色が背景に溶け込んで変化していたカクレミノ森トカゲのバルバルを捕獲した。
ジタバタ暴れるバルバルをギュッと懐に抱き締めスリスリ頬擦りする。
う〜ん。この冷たいスベスベした肌触りが堪らんねえ。
最初はキモいと思ってたが、見慣れた昨今ではなかなか可愛いと思えてきたのだ。
「これでオレの勝ち越し連勝だなぁ、バルバルよ」
魔力と血液の流れをコントロールし身体能力を飛躍的に向上させる呼吸術と体術。
うむ。これは『波紋全集中法』と名付けよう。
産まれてから毎日欠かさず重ねてきた努力が身を結んだのだ。
ん? 魔法はどうしたって?
もちろん魔法の練習も続けているぜ。
ただまったくと言っていいほど回復魔法以外は使えない。
おかしいな。ママンからいろいろと教わってるのに全然開花しない。まあ、別の技能が覚醒してしまったがなっ!
抵抗することを諦め大人しくなったバルバルを抱いたままオレは台所にいるママンに言う。
「ママ〜。外で遊んでくるね〜」
「庭先の結界陣から絶対に出たらダメよ。ラウア」
「は〜い」
オレは最近の遊び場兼訓練場となっている庭先へと玄関口から飛び出していった。
******
月日の流れは早いもので、ラウアが産まれてから5年の歳月が経った。
産まれ付きの外観の変化なのだろうか、銀色の髪と紅い眼を持った美しさに溢れたお人形みたいな綺麗な女の子に成長した。
耳は本来ならエルフらしく長耳の筈だが、ハーフエルフのラウアは人間と同じサイズだった。
でも外観なんて関係ない。あの子は可愛い可愛い私の娘だもの。
当初は慢性的な魔力欠乏症で病弱だったラウアだったが、今は元気に走り回っている。
時折りはしゃぎ過ぎてクタクタに疲れてるのはちょっと心配だけど、無事に育ってくれて嬉しい限りだ。
最近のあの子は魔法を使おうと練習しているみたいだ。
私に火の魔法や水の魔法を教授してくるから、ついつい簡単な初期魔法を教えてあげたのだけれど、まだ幼い為か使うことが出来ない。
躍起になって魔法を唱える姿は大変微笑ましくて、亡き夫に可愛い娘の姿を見せてあげたくて涙が出てきてしまう。
逆に回復魔法は得意らしく、私が畑仕事で少しケガをした時は高度な回復魔法を使用して傷痕すら残さず癒されたのには驚かされた。
この世界を構築する七大元精魔法。
火、水、風、雷、土、光、闇。
その中でも光魔法は、かなりの希少な魔法だ。
それも高度な回復魔法の使い手は数が非常に少ない。
私が冒険者だった時も、貴重な回復魔法使いは数える程しかいなかったのが現状だった。そういった者たちは引く手数多で八面六臂の活躍をしている。
私はこの子が才能ある優秀な癒し手の資質に恵まれていることを嬉しく思うが、反面、不安に苛む。
この歳でこれほど技能に優れているならば、この子が成長し更に使い手になったならば、周囲が黙っているとは考え難い。
願わくば、幸ある未来がこの子に訪れんことを。
古き豊穣神アウラウアの御加護があらんこと。