聖女の拳は異世界を征する   作:真鳥

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箱庭の暴君

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、先ずは軽くランニングからだな」

 

 庭に出たオレは抱いていたバルバルをロッキングチェアに降ろし、準備運動を始める。

 

 明けた森の天上から暖かい日射しが降り注ぐ。

 

 快晴の青空。

 

 アルビノのオレにはこれぐらいでも少々キツいがそこは魔力コントロールで身体能力を向上しカバーする。

 

 これも修行の一環。なんてことはない。

 

 家の庭と言っても畑も兼用しているから割と広い面積があり、ママンが四方に魔獣除けの結界陣を張っている。

 

 この結界陣から出ない限り、外の魔獣には襲われない。

 

 結界の魔法も便利だけど難しそうだ。いずれは憶えたいな。

 

 庭をグルグルと走り回って足腰を鍛えるぜ。走るのは気持ちいい。前生でも毎日のように走っていたからな。

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ、はぁはぁ…………とりあえず、ランニングはこれぐらいにするか」

 

 何周か庭先を走り、乱れた呼吸と息を整える。

 

 波紋全集中法で常時、身体能力を向上させ続けるのはかなりの魔力と体力を消耗してしまう。

 

 だがこの程度は序の口、次のトレーニングをやるぜぇ。

 

 オレは裏庭に移動すると、そこに聳え立つ見上げるほど大きく繁る大樹木と対峙する。

 

「今日も世話になるぜ。大木さん」

 

 オレは雄々しい太い大木から一定距離を保つ。

 

 片手を突き出し拳を握り親指を添え、体内の魔力をコントロールし、手に集束させていく。

 

 そして、拳に集まった魔力の波動を親指でおもいっきり弾き飛ばす。

 

「『指弾』ッ!」

 

 高密度に圧縮され硬質化した魔力弾の塊りが勢いよく大木目掛け、飛翔し着弾する。

 

 休むことなく次々と親指を弾き、指弾を飛ばし放ち続ける。

 

 真面な攻撃魔法が使えない今のオレの遠距離攻撃として編み出した技だ。

 

 苦肉の策だが、弾数無限、魔力が続く限り弾丸をさながらマシンガンの速射感覚でぶっ放していると言えば、その有能さが理解できるだろう。

 

 指弾の連射を受け続け、大木はガリガリと削られ穴だらけになってしまう。

 

 おっと、これ以上はいけない。流石に自然破壊したらマズい。

 

「大木さん、いつも練習に付き合ってくれてありがとうよ。ライトヒール」

 

 無残に穴だらけボコボコになった大木を回復魔法で完治させ修復する。

 

 次に畑に移動し、実った野菜にたかる蟲を次々と死なない程度に威力を抑えた小さな指弾で撃ち落とし気絶させる。野菜を傷付けないよう繊細なコントロールが要求される。

 

「『伸縮自在の愛(バンジーガム)』ッ!」

 

 すかさず落ちた蟲らを伸ばした魔力のオーラを使い捕獲して拾い集めていく。

 

「う〜ん。まだ時間はあるな。よし、今日は天気も良いし、ちょっと結界陣の外に修行しに行くか」

 

 オレは庭先に戻り、ロッキングチェアで日向ぼっこしているバルバルに手をかざし魔力のオーラを練り合わせ纏わせる。

 

「『薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)』ッ!」

 

 するとバルバルの形が変わりオレそっくりの幼女が眠っているような姿に変わる。

 

 魔力のオーラを様々な質感に変えて、物体の表面を覆い再現する能力。質感だけでなく見た目の変化も自在で、他人が見ても違和感を持てないレベルの再現度だ。

 

 だが、流石に細かく触れられたらバレてしまうし、数時間しか持たない。

 

 しかし、遠目に見たら身代わりに丁度いい。どっから見てもオレが昼寝しているようにしか見えない。

 

「留守番頼むぜ、バルバル。これはいつものオヤツだ」

 

 息のいい蟲の山を傍らに置いてやる。

 

 寝てるオレになり変わったバルバルから、任せろ、と返事があったような気がした。

 

 オレは家の中にいるママンに悟られないよう魔力を抑えて気配を消し、何処かの暗殺一家の如き隠密性を発揮する。

 

「へへ、癖になってんだ足音を殺して歩くの」

 

 庭先にある結界陣の僅かな"隙間"を魔力感知で細部を見抜き、スルリと潜って結界の外に抜け出した。

 

 さあて、ここからはもう庭のような安全地帯ではない。

 

 この先は凶悪な魔獣どものテリトリーだ。

 

 実戦相手に持ってこいの連中に、オレはニヤリと不敵に嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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