「『幼女活殺拳 二重の極み』」
5歳児の繰り出した小さな拳が緑色の醜い小鬼の顔面を穿つ。
緑色の小鬼の頭がスイカのごとくひしゃげ爆ぜ、粘った脳髄をぶち撒けながら後方に吹き飛ぶ。
「へっ、汚え花火だぜ」
ニヤリと凶悪に嗤うは白銀の幼女。
「『幼女活殺拳 居合手刀 火月』」
身を翻し、オーラを纏う手刀を繰り出し、小鬼の首を切り飛ばす。
森の樹々から射す陽光に照らされ煌めき白いワンピースの幼くも美しい姿は精霊か妖精を夢想させる。
「オラオラっ! どうしたっ! かかって来いよっ! その程度か?雑魚どもがっ!!」
馬鹿にし挑発するその幼女を取り囲む小鬼の集団、ゴブリンたちが熱り怒り手に持つ粗末な棍棒を振り上げ一斉に飛び掛かり襲い来る。
幼女は両の拳に魔力のオーラを纏わせ、親指を超速で弾きまくる。
「『幼女活殺拳 北斗虚無指弾』」
小さな両手の握り拳から無数の弾道が軌跡を描き発射され、襲い掛かるゴブリンたちは身体に次々と風穴を空けられ葬り去られていく。
「よーし、ここら辺のゴブリンは粗方片付けたかな?」
可憐な可愛らしい声色で可愛くないセリフを吐き、首をコキコキ鳴らす幼女。
幼女の周りには何十とおびただしい数のゴブリンたちだった成れの果てとなった骸が重なる。
なす術もなく幼女によって駆逐されたことが窺い知れる哀れな惨状だ。
「んんっ! あぁ〜良い運動したなっ! ゴクゴクッ! ぷっはぁあっ!」
腰に下げていた水筒を手に取り、母親お手製のミックスジュースを仰り飲むラウア。
「さあて、どうすっかな。大分日も落ちてきたし、そろそろバルバルの変化も解けるころだな。ママンにバレる前に帰って────」
背伸びをし、ゴブリンの屠殺現場から去ろうとした時、森の樹々を薙ぎ倒し、巨大な影が突貫を繰り出した。
まるでダンプカーのごとき巨影に幼女のその小さな身体は路端の小石のように弾き飛ばされた。
森の奥茂みへと勢いよく吹っ飛ばされた幼女。
背後に迫る樹木。
そのまま叩き付けられ惨たらしい肉片のシミになるかと思った寸前、くの字に曲がった身体を丸め、ギュルルルルルッ! と高速回転、樹木に衝突することを阻止し緩やかに地面に着地する。
白かったワンピースは最早ボロ切れと化し、銀髪は乱れボサボサになり全身に裂傷を負った血だらけの幼女は、手傷を負ったのにも関わらず愉快そうに笑った。
「ははっ、来ると解ってたぜ。ゴブリンとやり合ってる時からビンビンに殺意を感じてたからなぁ。ぺっ!」
オレは口中に溜まった血ダレを吐き捨て、目の前に憤然と佇む巨大な影を見上げた。
それは巨大な猪の姿をした魔獣。
針山のように鋭利に逆立つ黒い毛並みは、全身を槍で覆った鎧のよう。
潰れた隻眼の対になる瞳は憎しみと怒りと殺意の色に染まり血走っている。
口元からは二本の湾曲した剣刃の大牙が長々と突き出され、もう片方は真ん中から折れていた。
バスターソードボア。
魔獣の正式な名前など知らないから、オレが勝手にそのように名付けた。
緑色の小鬼はまんまゴブリンだからそのままだ。
「その様子だと、お前も随分修行してきたようだな。前と戦った時よりだいぶ強くなってるのを感じたぜ」
ブシューと鼻息を荒げ、ソードボアが太い後ろ脚の蹴爪で大地を掻き毟る。
コイツは2年ぐらい前に森で出会した気性が一段と荒々しい魔獣で、そん時ボコボコにしてやった。
そしてオレはコイツを殺さずある程度傷を治しわざわざ逃してやった。
もちろんトレーニングの相手にするためにだ。
案の定、コイツはオレを目の敵にし、隙あらば襲ってくるようになり、その度にぶっ倒して逃した。
そうしてリベンジし闘うごとにコイツは強くなっていた。
「まっ、強くなってるのはオレ様もだが。敬虔なる我が手に、祝福の光の恵みあらん! ハイヒール!」
オレは自身に回復魔法を掛ける。
たちまち傷は癒されて受けたダメージは消える。
「さあて仕切り直しだ。たゆとう光よ、見えざる鎧となりて堅牢なる守護となせ……プロテクション! 森羅万象の神秘を宿すものたち、その生命分かち、共に在れ……リジェネレーション! 」
連続詠唱にて防御力アップの魔法と自己治癒速度を上げる魔法を唱え、淡い光の奔流がオレを幾重にも重ね覆う。
「………待たせたな。お楽しみの時間はこれからだぜ」
ゴゴゴゴゴゴ………ッッッ
幼女のオレと猪魔獣の一騎討ちのタイマンバトルが開始された。