走り抜ける風   作:ブリンカー

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14話

 6月下旬。早い子はデビュー戦を勝利し、次のステップを踏み出す者もいれば、敗れて未勝利戦で雪辱を誓う者、じっくりと力を蓄え飛躍の時も待つもの者、様々である7月になるとこの学園では少し早い夏休みに入る。クラシック戦線もひとまず区切りがつき、舞台はサマーシーズン。地方レース場がメインになってくる。春のレースでパッとしなかった子達も夏のレースを乗り越え、急激に力をつけて秋のレースで活躍する子達も現れる。トレーナー達も自分の担当のライバルが増え始める時期でもあるため、気が抜けない時期だ。同時に遠征合宿を行うチームも多く、この時期は学園から人が消え、落ち着く時期でもある。山内のチームも合宿を予定していた。

 

 修了式を終えて、友達と別れを済ませた3人はトレーナー室へつくと、勢いよく入室する。荷物を置いてカルテに記入すると、どこか浮ついた様子で山内に話しかける。

 

 

 

 「トレーナー合宿って結局どこいくんですか?もしかしてハワイとか!?」

 

 

 

 「シャトルちゃんハワイは流石に・・・予想だと練習が比較的しやすい避暑地だと思うのですが・・やはり長野や北海道ですか?」

 

 

 

 「北海道だと嬉しいけどやっぱり海も捨てがたいし・・うーん・・」

 

 

 

 

 「なんでシャーリーンに決定権があるような喋り方をしているんだ・・アイの予想通り。合宿は北海道で行う。7月から8月の中旬まで。みっちり行うからな。同時にシャーリーンのデビュー戦もあるから気を抜かないように」

 

 

 

 学園に所属するチームの人気の合宿先は長野や北海道といった避暑地。次いでトレセン学園が提携している合宿所の近くにある海辺だ。

 前者は比較的涼しい地でのびのびと走ることができ、ウマ娘にとって快適な環境だ。後者は砂浜を利用した脚に負担が少なく鍛えることができるトレーニングを組みやすいことがメリット。どちらにもそれぞれ特徴がある。

 

 

 

 「僕がいつもお世話になっている場所があるから今回もそこにお世話になろうと思う。必要な物リストと注意事項はこのプリントに書いてある。今日を含め、出発までの3日間は休養日にするからその間に各自用意しておくように。じゃあ解散」

 

 

 

 トレーナー室を後にした3人は相談しあった後、買い物に行くことになり、近くのショッピングモールに出向いた。

 

 いつもはぶらぶらとウィンドウショッピングをするのがメインだが、今回は買う物は決まっている。足りないものをそれぞれ買い求めると、お腹もすいたので少し遅めの昼食をとることになった。

 

 

 

 「思った以上に買い物してしまったわ・・大丈夫かしら・・」

 

 

 

 「まぁ無駄な物を買ってるわけじゃないしだ丈夫でしょ!使わなかったらとっておけばいいだけだもんね」

 

 

 2人の会話にあわせてステイシャーリーンは頷く。雑談しているとそれぞれ頼んだメニューが届く。――いただきます。と3人の声は声を合わせてそれぞれ口に運んでいく。

 

 

 

 「ところで・・どうよ・・?約1カ月後にデビュー戦を控えたステイシャーリーン選手。今のお気持ちを率直にお聞かせください!」

 

 

 

 インタビュアーの真似をしたブリーズシャトルがニコニコ顔で聞いてくる。

 

 

 

 「そうですね・・万全の状態で仕上げて勝ちに行きたいと思います・・!」

 

 

 

 「御馳走もかかってるし、シャーリーンちゃんには頑張ってほしいわね」

 

 

 

 無難な答えでまとめたステイシャーリーンと食い気が若干でているマスカレードアイ。その後もわいわいと雑談しながら食事を終え、ショッピングモールを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 3日後。合宿が始まる日。学園前に集合した3人は駅に向かい、新幹線に乗り込んだ。最初は物珍しさにうきうきの2人だったが、すでに経験済みのステイシャーリーンは(子供だな)と謎マウントをとり愉悦に浸っている。その様子をみて山内が内心でつっこみをいれるという構図が出来上がっていた。

 

 函館ついた一行は、駅を降りて合宿所へタクシーで向かう。市街地から少し離れた場所にある合宿所は賑やかな市街地とは裏腹に静かな場所だった。合宿所となる旅館は特別新しい建物というわけではないが、綺麗に手入れされている。市街地の近くなら遊べたのになと甘い気持ちでいた3人は管理が行き届いている建物を見て安心感覚え、気持ちを切り替えた。

 

 

 

 「こんにちは。竹井さん今年もよろしくお願いします。」

 

 

 

 「よくきてくれたね山内君。後ろにいるのが君のチームの子かい?」

 

 

 

 「はい。今は3人の子を預からせてもらってます。こちらの方は僕が昔からお世話になっている竹井さん。ここの経営者だ。しばらくお世話になるから失礼のないようにね」

 

 

 

 3人はそれぞれ自己紹介を済ませる。優しそうな顔立ちをしていて3人は好印象を覚えた。

 

 

 

 「初めまして。竹井と申します。山内君とは昔からの縁でね。ありがたいことに毎年うちに来てくれて本当に嬉しいよ。そういえばシャーリーンちゃんは8月にここのレース場でデビュー戦を迎えるんだってね。ウチとしても全力でサポートさせてもらうからよろしくね」

 

 

 竹井と握手を交わした3人は旅館の従業員に案内され中に入っていった。荷物だけを従業員にあずけて先に行ってもらうようにした山内。旅館特有の落ち着いた空気が残された二人を包む。

 

 

 

 

 「本当にいつもありがとな。俺もお前の顔を毎年みれてほっとしとる」

 

 

 

 「先生こそ。お元気そうで何よりです。どうですか今年のうちの子は。」

 

 

 

 「いい子達だ。お前の人を見る目はいい。上手くいけば重賞を狙えそうな感じの子達だな」

 

 

 

 「先生が鍛えてくれたおかげですよ。おかげでこうやって恥ずかしくない顔でここにこれます」

 

 

 

 「お前はいつも謙遜ばかりだな。だがそこがお前のいいとこだ。これからも精進しろよ」 

 

 

 

 「はい。これからも頑張っていきます」

 

 

 

 「じゃあまたあとでな。そろそろいかねぇと愛バ達が待ちわびてる頃だろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 「うわっめっちゃ広い!しかも温泉もあるってさ!」

 

 

 

 「落ち着いた、いい場所ですね。練習にも身が入りそう」

 

 

 

 荷物を置いたステイシャーリーンは2人と同じようにくつろいでいた。思わず携帯カメラで写真をとって保存していた。ウマスタグラムやウマッターに後で投稿しよと思いながら携帯をポケットにしまい、3人でいつもの雑談を始めた。

 

 

 ―――入っても大丈夫か

 

 

 入口のドア越しに山内の声が聞こえる。――はーいという3重の返事を聞いた山内が部屋に入ってくる。

 

 

 

 「どうだ。市街地から少し遠いがいいところだろう?近くにはウマ娘専用のトレーニングトラックもある良い立地の宿なんだ。それに竹井さんは俺が新人のころトレセン学園でお世話になった方でな。今はここの旅館を経営しているんだ。」

 

 

 

 「だからすごく親し気だったんですね。納得しました」

 

 

 

 ステイシャーリーンは解決したと1人納得してうんうんと頷いた。

 

 

 

 「そうゆうこと。この後は練習用トラックと函館競バ場の下見に行くから準備してロビーに集合で。僕も部屋に戻って準備してくる」

 

 

 そう言って部屋を後にする山内を見届けた3人ははしゃぎながら準備をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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