走り抜ける風   作:ブリンカー

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15話

 ロビーに集合した一行は、山内が手配していたレンタカーに乗り込み目的地に向かう。少し車に揺られた後、だんだんと近づいてくる目的地に3人のウマ娘は興奮した様子で窓から眺めている。

 

 

 

 「ここが・・私のデビュー戦を迎える場所・・」

 

 

 

 「そうだ。今はもうお昼だから今日あるメイクデビュー戦は終わってしまったが、何レースかみていこう。それにここ、函館競バ場は海の見える競バ場として有名な所だ。上の席に登れば海も遠くにみることができるぞ」

 

 

 

 「せっかくなので海もみたい!と言いたいところですけどレースは間近で見たほうが雰囲気でますもんね・・でもここのターフシート?って場所はレースが良く見えますね!」

 

 

 

 ブリーズシャトルがそう言ってピョンピョンと跳ねながら こっちにこいよ と言わんばかりに大きく手を振って誘導する。3人は芝生の上に腰掛けるとちょうど始まったレースに目を向けていた。

 

 現在行われているのは未勝利戦。メイクデビュー戦で敗れたウマ娘達が雪辱を果たすためにみな懸命に走っている。皆一度はレースを経験しているためか、選抜レースで走っていたウマ娘達とは違い、落ち着いているようにみえた。

 

 

 

 「ここの函館競バ場は4コーナーを回った後のゴールまでの直線が短い。その点では差しや追い込みを得意とするタイプのウマ娘には少々不利なレース場だ。つまりステイシャーリーンにとっては嬉しくないレース会場だな」

 

 

 

 

 「それでもここを選んだのには理由があるのですよね?」

 

 

 

 「その通り。選んだ理由は帰ってから話そう」

 

 

 

 マスカレードアイが投げかけた質問にお預けする形で答えなかった山内。もしかしたらステイシャーリーンと同じレースに出場する可能性があるウマ娘やトレーナーも近くにいるかもしれないのだ。みすみすこちらの手札を明かすような真似は山内も流石に避けた。それをわかっているためか、マスカレードアイもこれ以上追及してこなかった。

 

 

 

 レースを見終わった後、レース会場の売店でご飯を済ませた一行はトレーニングトラックに向かった。旅館からの距離は5分程度の所にあるここのトラックはそれなりに賑わっているようでトレセン学園のジャージを着ている子達もちらほら見かける。トラックのまわりは観客も多数おり、公園も併設されている施設のためか、親子連れが多いように見えた。

 

 ざっと下見が終わった後、旅館に戻り、トレーニングウェアに着替えて再びトラックに戻ってきた一行は早速トレーニングに取り掛かる。アップを始めた3人はトラックを駆けていくうちに違和感を感じていた。謎が解けないまま戻ってきた3人は山内に指示を仰ぐ。

 

 

 

 「よし。じゃあ本格的にトレーニングを始めるぞ。といっても今日はあまり時間がないので軽めになるが。ところで走っていて何か違和感を感じなかったか?」

 

 

 

 「なんか・・重い?ような・・気のせいかな?いつもより足が回らないというか・・」

 

 

 

 「私もそんな風に感じました。環境にまだ慣れてないだけかもしれませんが・・」

 

 

 

 「私もそんな風に感じたけど問題に感じるほど気になりませんでした」

 

 

 

 「北海道のレース場や練習用で使われるトラックの芝は種類が違ってな。それのせいだろう。違う環境になれるという意味もかねてしっかりトレーニングしよう」

 

 

 

 3人のそれぞれの回答にうんうんと頷きながら山内は答えた。2人は戸惑っているようだが、時期になれるだろう。そんな中ステイシャーリーンだけは問題なく走っていた。(読み通りだ)山内は自分の思惑が当たり、心の中でほくそ笑んだ。

 

 

 

 練習が終わり、へとへとな3人は車内に乗り込む。北海道とは言え季節は夏。うへぇと言いながら窓を全開にして風を浴びて涼んでいた。

 

 

 

 「そうえいば競バ場で言っていたここを選んだ理由って何ですか?」

 

 

 「さっきも話したが、札幌競バ場と函館競バ場は洋芝と呼ばれる芝を使っていてな。他の競バ場で使われている芝よりも馬場が荒れやすくて道悪になることが多い。雨が降ればなおさらだ。しかしシャーリーンのパワーであれば問題なく走れる。そう思って函館を選んだんだ。それに函館のコースは高低差もある。少なからずスタミナも要求されるコースだ。最後の直線が短いから差しで勝負する点、そこだけ注意すれば今のシャーリーンにとっては力を発揮できるレース場と言っていいだろう。だから選んだ」

 

 

 

 「地元って言う理由以外にもちゃんとあったんですね~」

 

 

 

 「お前・・これでも僕トレーナーだからね。君達が勝つためにしっかり考えているんだよ。もっと感謝しなさい」

 

 

 ―――はーいと力ない返事を返す。ステイシャーリーンは自分のことをしっかりみてくれているのが嬉しくなった。と同時に期待に答えようと明日からの練習に気合いをいれていこうと誓った。

 

 

 

 宿に戻った一行は山内に脚のケアをそれぞれ受けると、温泉に向かった。湯治も期待できるようで、山内としてはゆっくりしてほしかったのだが、そんな親心は行方知れず。3人は修学旅行にきた学生のようにきゃっきゃとはしゃぎながら温泉を楽しんだ。

 

 その後、旅館が用意してくれた料理に舌鼓をうち、満足した3人はこのまま寝る勢いになったが、ミーティングがあることを思い出し、山内の部屋を訪れる。ミーティングで合宿の細かい練習内容や調整メニューを確認し、解散となった。

 

 部屋に戻った3人。泣いても笑っても残り1ヶ月。なおもワイワイしている3人だったが、旅の疲れや環境の変化でつかれたのであろう。うとうととし始めてから眠りについたのは一瞬だった。本格的な合宿が始まる。ぐっすりと眠れた3人は普段とは少し違う肌寒い朝を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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