走り抜ける風   作:ブリンカー

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23話

 10月。ブリーズシャトル、マスカレードアイと立て続けにデビュー戦を勝利した。これで現在山内が担当しているウマ娘は全員勝利を挙げたことになる。そしてこれから難関となるオープンウマ娘を目標として3人は挑戦するのだ。トゥインクルシリーズで勝利をあげることができる確率は全体のおよそ35パーセントだ。そして次のステップとなるオープンウマ娘。ここで一気に難易度が跳ね上がる。なんと3パーセント。この数字がトゥインクルシリーズで数回の勝利を重ねることがいかに難しいかを表している。G1ウマ娘は全体の1パーセントにも満たない。夢のまた夢というわけだ。

 

 少人数とかいえ、全員が勝利をあげるとこができたのだ。めでたいことである。トレーナー室ではささやかながらお祝いパーティーが開かれていた。

 

 

 

「みんなおめでとう。3人が無事勝利することができて本当に嬉しい。最低限の仕事ができたと僕もほっとしている。次の目標はオープンウマ娘だ。特にステイシャーリーンは約3週間後にレースが控えている。ここで勝って弾みをつけていこう」

 

 

 

 「トレーナーありがとう!次も勝利を目指して頑張ります!」

 

 

 

 「本当にありがとうございます。トレーナーさんのおかげで勝利することができました。次もいい結果をのこせるよう頑張ります」

 

 

 

 

 先行位置をとって先行抜け出しで勝利したブリーズシャトル。じっくりと展開をを見極め、後方から一気に抜け出す追い込みの形で勝利したマスカレードアイ。それぞれが持ち味を活かした勝利だった。それぞれの競バ場でも記念写真はとったが、改めて写真をとる流れになり、4人は飾りつけした部屋を背景に写真をとった。携帯のカメラタイマー独特の間に山内はなれてないのか、目をつぶったりしていた写真が多く、とり直しになることが多くなり、3人にぶーぶーと文句を言われる。

 

 そうこうして祝勝会も落ち着いてきたので、部屋の片づけに入る。簡易な飾りつけだったので、片付けも手早く終わり、はしゃいでいた3人も徐々に落ち着いた。

 

 

 

 「じゃあ明日と明後日は予定通りお休みだ。学校も土日で、ないからゆっくりしてくれ。じゃあ今日はは解散だ」

 

 

 

 今日はもうお開き。山内は〆ると残りの仕事にとりかかろうとする。そんな山内にステイシャーリーンは恐る恐ると言った感じで質問した。

 

 

 

 「あのぉ・・トレーナーさん。そのお仕事ってまだ長くなりそうですか?あと今日の夜予定とかってありますか?」

 

 

 

 「いや。・特には。この仕事も特段急ぐものではないな。どうかしたか?」

 

 

 

 なにかある。何とも言えない予感を感じた山内は冷静に返事を返した。その返事を聞くな否や、ステイシャーリーンを筆頭に山内は3人に囲まれた。

 

 

 

 「トレーナーさん覚えてますか?私がデビュー戦の前に言ったこと」

 

 

 

 「なんかいってたっけな・・?」

 

 

 

 山内はそう答えるも、その時のことを徐々に思い出してきた。

 

 

 

 ―――そうえいばトレーナーさんたまには奢ってくださいよ。こんなに可愛い愛バがお願いしてるんだから~お願いします!―――

 

 

 

 ―――ステイシャーリーンのデビュー戦の結果次第・・かな・・―――

 

 

 

 「私だけじゃなくてここにいる全員がデビュー戦を勝ちました!トレーナーさんも忙しくない。そして明日は休み!つまりそういうことですよね!?」

 

 

 

 「いや確かに約束したがそれはそれとして・・」

 

 

 

 「男らしくないぞトレーナー!私達頑張ったんだから少しぐらいいいじゃんか~」

 

 

 

 「あの言葉を信じて頑張ったのに・・ひどいですトレーナーさん・・」

 

 

 

 クレームの嵐だ。山内は何とか抑え込もうとするが客は止まらない。腕をつかんで子供のように駄々をこねて揺さぶってくる。思った以上の力で掴まれていたため、山内はちょっとだけ腕が痛かった。

 

 

 

 「今日こうして祝勝会したじゃん!これでも足りないのか!?」

 

 

 

 山内はこの日、有名なケーキ屋に午前の時間を使って並んで買ってきたのだ。それも1個や2個じゃない。それなりの量は買ってきたはずだ。

 

 

 

 「美味しかったですよ?」

 

 

 

 答えになっていない。いや、この返事はまだ足りないということだろう。山内は悟ると、観念したように質問をしていく。

 

 

 

 「それにもう夕方前だぞ?夜ご飯は入るのか?」

 

 

 

 「大丈夫です!」

 

 

 

 「月曜日からの練習は頑張れるか?」

 

 

 

 「頑張ります!」

 

 

 

 「今日のお店で節制ある食事ができるか?」

 

 

 

 「・・・・・」

 

 

 

 美しい3重奏の返事が返ってきていたが、最後だけは沈黙が響いた。

 

 

 

 「じゃあ今回はな―――」

 

 

 

 「できます!できますよ!ねぇ2人とも!!」

 

 

 

 「当り前じゃんか!おしとやかの化身のと言われている私ですよ!よゆーです!」

 

 

 

 「はい。適度にお腹いっぱい食べるだけなので大丈夫です」

 

 

 

 矛盾だらけの援護射撃を背にステイシャーリーンはぐいぐいと押してくる。

 

 

 

 「わかったわかった。じゃあ寮に一度戻ってとりあえず、今日の晩御飯はいらないと寮の人に報告してきなさい。その後またここに集合。行く店をきめよう」

 

 

 

 短い返事をした後、嬉しそうに部屋を飛び出して去って行った3人。今のうちにある程度目星をつけておくかとパソコンで調べていると、あっという間に3人が戻ってきた。

 

 

 (早すぎだろ・・・)

 

 

 心で呟くと3人の中ではすでにきまっていたようで、食べ放題!食べ放題!と合唱している。節制する気、全く持ってゼロである。

 

 

 (まぁいいか・・明日からメニュー制限しばらくかければいい話だ)

 

 

 後日カウンターをくらうことを知らずにはしゃぐ3人。予約したお店で腹が膨れるほど食べた3人は幸せそうな笑顔だ。

 

 食べ放題のお店で助かった。通常とは別に3人分は食べ放題(ウマ)の値段だったが思った以上に出費がすくなくてすみ、山内は帰りのタクシーで安堵した。

 

 

 

 「また行きたいですね~」

 

 

 

 腹をかかえながらにこにことステイシャーリーンが話す。―――そのうちな。と山内は言うと、学園前で分かれ、それぞれ帰宅する。山内は家に着くと、早速パソコンを起動し、月曜日のメニューを組み立て始める。休み明けの3人は、ひーひー悲鳴をあげながらトレーニングをこなす。今度からは控えようと、それぞれの心の中で誓った。

 

 

 

 

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