走り抜ける風   作:ブリンカー

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31話

 12月中旬の阪神競バ場で行われた朝日杯フューチュリティステークス。見事勝利を収めたのはメリルナイサーだった。昼から練習がオフの3人はどこから用意したのかわからないテレビをトレーナー室にもってきて観戦していた。

 

 少し霧がかっていたのでテレビからだと見づらかったが、ゴール時には1人抜け出し文句なしの勝利を収めたメリルナイサー。友人の勝利にわくステイシャーリーン。

 

 

 

 「メリルちゃんすごい・・!かっこいいなぁ」

 

 

 

 「シャーリーンの友達の子凄かったね!この子春のNHKマイルカップとかにでてくるのかなぁ?」

 

 

 

 思わぬ強力なライバルの出現の予感に少しおじけづいたブリーズシャトル。今日のメリルナイサーはそれぐらい完璧な走りだった。短距離、マイル路線を走る身としてはどうしても気になるようだ。

 

 

 

 

 「いや。メリルナイサーはクラシック路線に進むようだ。だからどちらかと言えばステイシャーリーンのライバルになる可能性のほうが高いな」

 

 

 

 レースを見終わった後、デスクに戻って仕事をしながらブリーズシャトルの疑問に答える山内。

 

 メリルナイサーと戦う。自分とメリルナイサーが走っている姿を想像するステイシャーリーン。強いライバルに恥じないくらい、いい走りをしたい。ステイシャーリーンは焦る気持ちを抑えながら、間近に迫った自分のレースで勝つんだと活き込んだ。

 

 

 

 

 

 12月末。先日行われた有マ記念と同じ中山。来年のクラシック戦線を担うであろう15人のウマ娘が終結した。トレセン学園も冬休みに入っているので、学生であろう若いウマ娘達がお客さんもちらほらみえる。控室で勝負服に着替えたステイシャーリーンはいつになく緊張していた。

 

 

 

 「どうですか?まさか私が勝負服をきれて走れる日が来れるなんて思ってもいませんでした」

 

 

 

 「ああ。似合ってるぞ。作戦は打ち合わせ通りだ。思いっきり走ってこい」

 

 

 

 「頑張れシャーリーン!私達も応援してるからね!」

 

 

 

 「シャーリーンちゃんならきっと勝てます。頑張って!」

 

 

 

 チームメイトの励ましに力強く返事をして答えるステイシャーリーン。今日は絶対に勝つ。意気込むステイシャーリーンを見ながら山内はどこか危うさを感じていた。

 

 

 (まずいな・・気合いはいつも通り十分だが、落ち着きがない。悪い方向に転ばなければいいが)

 

 

 

 

 

 パドックにてそれぞれの勝負服のお披露目タイムとなった。12番となったステイシャーリーンは自分の出番を今か今かと待つ。次々と呼ばれてパドックに出ていく他の子。後ろから誰かの声がステイシャーリーンにかかる。しかしその声はステイシャーリーンに届かない。自分に声をかけられていたことに気が付かないほどステイシャーリーンはこの時緊張していた。

 

 

 

 ―――うぉっ。これが噂のゴールドシチー?スタイル良すぎだろ――

 

 

 ―――モデルやってるんだろ?飛び切りの美人だしこれで勝ったらまじですごいよな――

 

 

 ―――3番人気だしワンチャンあると思うぞ俺は。前回のレースも勝ってるし仕上がってるぞこれ――

 

 

 ゴールドシチーはパドックで自分の姿を華麗にお披露目すると、颯爽と裏に戻っていく。流石はモデルと言うべきか、一瞬で観客を虜にした。魅せることになれている彼女は前評判で高かった期待をここにきてさらに押し上げた。

 

 

 (よし・・!私も・・!)

 

 

 

 ついにきたステイシャーリーン。堂々と歩いて自分の勝負服のお披露目をする。破竹の3連勝を飾るステイシャーリーンは当然1番人気。大本命の登場とあって、ギャラリーはわきに湧いた。慣れてないのか、恥ずかしそうにパドックを去っていくステイシャーリーン。その様子を見ていた山内の嫌な予感がさらに強まる。事実この予感は的中し、レースで現れることとなる。

 

 それぞれの紹介が終わり、出走するウマ娘達がゲート前に集まる。自分が今まで参加してきたどのレースよりも圧倒的に観客が多いこのレース。ステイシャーリーンは自分に集中するように言い聞かせ、深呼吸をする。

 

 

 

 「ねぇ」

 

 

 

 ようやく届いた声に気づいたステイシャーリーンは、ハッとすると、声の持ち主のゴールドシチーは懐疑そうな様子でこちらを見ていた。

 

 

 

 「もしかして緊張してる感じ?さっきもパドックで声かけても返事しなかったし・・いいレースにしたいからさ、シャーリーンも全力できなよ。そんな様子じゃ多分いい――」

 

 

 

 「間もなく出走しまーす!!」

 

 

 

 ゴールドシチーの言葉を遮るように、最終準備を終えた係の人の声があたりに響き渡る。

 

 

 

 ――じゃっ、後でね――

 

 

 

 そういうとゴールドシチーは自分のゲートの前に並んでいった。

 

 

 緊張していた?私が?確かに最初の頃は緊張もしていた。だけど重賞レースも経験してレースに慣れているはずだ。そう自分に言い聞かせるが、ふと1年前のことが脳裏によぎった。選抜レースで山内のやり取りを思い出したステイシャーリーン。

 

 

 ――さっきのレースの君もあんな風な顔付きで緊張していた様子だったよ――

 

 

 (自覚していないだけで緊張しているんだ)

 

 

 自覚していないことを自覚したステイシャーリーン。気持ちを落ち着かせる時間が欲しかったが、押し込まれるようにゲートに入る形なりあれよこれよと出走直前になる。体が硬い。スタートのフォームはこれであっていったっけ?まだゲートはひらかないのか?いや、いつもどお――

 

 

 

 ガタンっ!!!

 

 

 

 (しまっ!?―――)

 

 

 

 ジュニア級NO1を決めるレースはステイシャーリーンにとって最悪のスタートを切る形になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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