走り抜ける風   作:ブリンカー

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クラシック期
33話


 1月。ステイシャーリーンはホープフルSの敗北に意気消沈し、元気を失っていた。その様子をみた山内はいつもなら休暇を取らせてリフレッシュさせるのだが、ステイシャーリーンを練習には参加させないものの、ブリーズシャトルとマスカレードアイの練習を自分のそばで見学させていた。

 

 

 

 「今日はフリーにならないんですね」

 

 

 

 「まぁいつもならフリーなんだが、今日はちょっとな。たまには視点を変えてみるのも勉強だ」

 

 

 

 「そういうものなんでしょうか」

 

 

 

 「そういうものなんだよ」

 

 

 

 ブリーズシャトルとマスカレードアイの併走トレーニングを山内とともに見守るステイシャーリーン。2人は競り合いながらゴールに向かって走ってくる。ゴールを切った2人にスポーツドリンクとタオルを持って行き、それぞれに渡す。

 

 

 

 「シャーリーンありがとう。なんかマネージャーみたいで部活って感じだね!」

 

 

 

 「ありがとうございますシャーリーンちゃん。ちょっとした気遣いをしてもらえるだけでこんなにうれしいものなんですね」

 

 

 

 褒められてなんだか嬉しくなるステイシャーリーン。寮に帰っても恐らく悶々として休めるものも休めなかったかもしれない。ならばここで体を適度に動かしていた方が今の自分にはいいのかもしれないと思い始めた。恐らく山内もそれが狙いで自分のそばにつかせたのだろう。気遣いに感謝しながら今日1日ステイシャーリーンは3人のサポートに徹するのであった。

 

 

 

 

 

 

 「なんだ。へこんでると思ってたら案外元気そうじゃん」

 

 

 

 「いやぁ~なんかトレーナーとチームメイトがなんか気つかってくれて・・」

 

 

 

 「んで立ち直ったって訳だ?じゃあ私がどうこう言う必要もないね」

 

 

 

 そう言いながらセットと一緒にやってきたジュースを飲みながらゴールドシチーは明るく話す。

 

 

 

 「ご心配をおかけしました・・」

 

 

 

 「まぁでも今回勝ったのはアタシだし?今回の食事代はステイシャーリーンからのお祝いってことでゴチになりま~す」

 

 

 

 「絶対そう言ってくるとおもったぁ~!」

 

 

 

 「まぁいいじゃんいいじゃん。んでホープフルSは走ってみてどうだった?」

 

 

 

 「スタートで焦っていい結果がでなくてさらに焦っちゃって・・トレーナーの作戦を序盤忘れちゃったのが響いたかな~って思った。それにあんなにかこまれるなんて初めての経験だったからどうしたらいいかわからなくて」

 

 

 

 「みんなシャーリーンが外走って中盤から抜け出す展開予想してたのにいきなり内に自分から入っていったんだもん。アタシもマジで焦ったわ。なんか新しい作戦でもあんのかな?って。にしてもあれやばかったね!アタシも近く走ってたから見たけど徹底マークっていうの?もう絶対逃がしませんって感じ?オーラがすごかったわ。まぁおかげでアタシは自由に走れて1着とれたんだけどね」

 

 

 

 あらかた飲み終えたジュースの容器に残っている氷をストローでクルクルしながらゴールドシチーは身を乗り出す。先日のレースを思い出したのか興奮している口調になっていた。ステイシャーリーンもあんなの聞いてないと言わんばかりにぶーぶーと文句を続ける。事実あれだけのマークをされたらそうそう結果を残せるウマ娘はいないだろう。それほどにきついマークをうけたレースだった。

 

 店をでていつも通り帰宅したステイシャーリーン。レースで負けた悔しさはレースで晴らせばいい。大舞台で次はリベンジしてやる。あとゴールドシチー。G1をとって調子にのっていた友人に今度は奢らせてやると意気込みながら眠りについた。ステイシャーリーンの闘志はこの日から徐々に復活していくこととなる。

 

 

 

 1月末。ブリーズシャトルが出走したクロッカスステークス。結果は4着。今まで走ってきた1200メートルから200メートル距離が伸びただけでこうも違うのかとステイシャーリーンはブリーズシャトルの走りを見て感じた。レース後、悔しそうに引き上げてくるブリーズシャトル。ひどく落ち込んだ素振りは見せず、自分の不甲斐なさに呆れたような悔しさを滲ませながら控室に入った。

 

 

 

 「あぁ~!負けた!!負けた負けた!トレーナーごめん。ちょっとペース配分間違ったかなぁ?」

 

 

 

 「いや、いい走りだった。ペースに関しては現時点でスタミナが足りてないように感じたが春の最大目標NHKマイルカップの前哨戦のアーリントンCは4月中旬。それまでしっかりスタミナを鍛えれば問題ないだろう。その前にまずは2月末のマーガレットステークスを確実に勝つぞ」

 

 

 

 「わかった!2人ともみててよ!次は1200メートルのレースだからかっこいいとこみせるからね!」

 

 

 

 そう言うと屈託のない笑顔でガッツポーズをみせるブリーズシャトル。負けは負け、ならば次で勝つ。気持ちの切り替えが非常に早いブリーズシャトルに2月初旬にレースを控えているマスカレードアイは刺激されたようだった。

 

 

 

 

 

 2月初旬。続くように出番がきたマスカレードアイ。G3レースとなるクイーンCがやってきた。マスカレードアイは3着という結果を残し、力を見せつける結果となった。同じチームに初重賞で1着をとっている者がいるので感覚がおかしくなっているかもしれないが、初重賞で3着なら大健闘だ。戻ってきたマスカレードアイを山内は褒め称えると、脚のケアにうつった。

 

 

 

 「いい走りだった。次につながる走りだ。初重賞でこれだけ結果を残せればいずれはとれるぞ」

 

 

 

 「もうちょっと上手くやれば1着もとれたかもしれません。そう考えると悔いが残るレースでした」

 

 

 

 「あれは相手が上手かったししょうがないさ。それに今日のレースをみていたらマスカレードアイの持ち味はマイルだと活かせない感じがあってな。勿論予定通りのレースプランで行くが、最大目標を桜花賞ではなく、その後のオークスにするかもしれない。様子を見て判断していこう。問題は桜花賞のステップアップレースだが・・」

 

 

 (桜花賞は阪神競バ場の1600メートル。その前哨戦中の1つチューリップ賞は条件がまったく同じ。必然的に桜花賞で勝つ見込みのあるウマ娘に経験を積ませるために速いウマ娘が集まってくる可能性が高い。

フィリーズレビューも同じく阪神だがこちらは1400メートル。それに距離が短すぎるのはマスカレードアイに恐らく合わない・・かといってアネモネステークスに出場しても開催場所は中山競バ場だ。桜花賞と同じ舞台を走らせるか、それとも確実に勝てそうなところで優先出走権をとりにいくか・・」

 

 

 

 「何かお悩みですか?トレーナーさん」

 

 

 

 マスカレードアイの声で我に返った山内は――問題ない。と返事をすると、再び口を開く。

 

 

 

 「2月いっぱいはトレーニングだ。3月頭の状態で出走レースを決めよう」

 

 

 

 「わかりました。よろしくお願いします」

 

 

 

 春に向けて動き出したチーム。3月になるとクラシック3冠、トリプルティアラの前哨戦が始まる。チームに栄冠をもたらそうと、3人のウマ娘は寒さに負けず、トレーニングを重ねていくのであった。

 

 

 

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