走り抜ける風   作:ブリンカー

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36話

 「よし。じゃあミーティングを始めるぞ。今日はステイシャーリーンとマスカレードアイの次の出走レースについてだ。まずステイシャーリーン。次に出走するレースだが、3月下旬のスプリングステークスに決めた。3月初旬の弥生賞も考えていたが流石に今からだと調整が厳しいからな。距離は1800メートルと少し短いが、場所は皐月賞と同じ中山だ。ここで勝って弾みをつけるぞ」

 

 

 

 「はい!」

 

 

 

 「続いてマスカレードアイ。出走レースは3月中旬のフィリーズレビューに出る。1400メートルとこちらも桜花賞よりも200メートル短くなるが、舞台は桜花賞と同じ阪神だ。勝って切符を掴もう」

 

 

 

 「はい!」

 

 

 山内はそれぞれの出走レースについて悩んだ。ステイシャーリーンとマスカレードアイの出走レースについて本音を言うと、それぞれ弥生賞とチューリップ賞にでたかった。しかしそのレースにはそれぞれ気になるウマ娘が出走予定なのだ。弥生賞にはモモノスター。チューリップ賞にはマキシマムジョリー。この2名を山内はマークしていた。

 

 2月末に行われたレースで5着とまずまずの結果で終ったモモノスター。だがそのレースを動画で見かえした山内は危機感を募らせていた。明らかに成長してきている。去年ステイシャーリーンと函館で会ってた時とはまるで別人のようだ。未知の敵と今ここで下手にぶつかるよりかはここは避け、少しでも勝ち負けを計算できる敵と戦って皐月賞の出走優先権を獲得したいのが本音だ。スプリングステークスには朝日杯で1着をとったメリルナイサー、ホープフルSで1着のゴールドシチーもでてくるが、対策はできると踏んでいた。ここで勝ってステイシャーリーンにいい状態で皐月賞を送り出したい。

 

 そしてマキシマムジョリー。最近トレーナーが変わったばかりだが、それでも現在2連勝中。実力に関してもティアラ路線に挑むこの世代では実力は頭1つ抜けている。まともに戦っても現時点では勝ち目はないだろう。こちらでも戦いを避ける形でフィリーズレビューに出走することにした。とどのつまり、 逃げた とも捉えれるが、それでも勝てるとこで確実に勝つ。そのことを念頭において山内はプランを組んだのだ。あくまで勝負はG1。無駄な争いは避け、大舞台で決着をつける。山内が堅実と言われるゆえんの1つだ。

 

 

 「ブリーズシャトルは前回説明した通りアーリントンCが目標。サラホウヨウはデビューに向けてじっくり体づくりをしていくぞ」

 

 

 

 残りの2人も返事をすると、今日のトレーニングに入る。今日選抜レースを走ったサラホウヨウは見学となり、3人はいつものようにトレーニングする。しかし新人が入った手前、かっこいいところをみせようと、いつもより張り切ってるようだ。

 

 

 

 「先輩達凄いですね・・いつもこんなトレーニングをしているんですか?」

 

 

 

 「今日はいつもより張り切ってるな。サラが入ったから少しでもいいとこ見せようとしてるんだろう。シャトル飛ばすな~!そのペースだと後半までもたないぞ~!」

 

 

 

 こうして新人を迎えた初日のトレーニングを終え、解散となった。次の日から基礎トレーニングだけだが、サラホウヨウも練習に加わり、山内のチームには活気があふれてきた。前も元気があるチームだったのだが、サラホウヨウの加入により、いい影響がでているようだ。そうして1週間が過ぎ、日曜日となった今日。山内と一行は中山競バ場にきていた。

 

 

 

 「月末に私もここで走るんですよね・・」

 

 

 

 「ホープフルS以来だな。一回走っているからコースはなんとなくわかるだろう。今は友人をしっかりと応援してやれ」

 

 

 

 「はい!バッチリ応援します!」

 

 

 

 「観客じゃなく競技者としてレース場にくるとまた違った感覚ですね・・」

 

 

 

 さきほど控室でモモノスターを激励しに行き、自分自身も元気になっているステイシャーリーン。テンションが高いステイシャーリーンとは対照的にどこか緊張しているサラホウヨウ。そんなサラホウヨウの緊張をほぐすかのようにブリーズシャトルとマスカレードアイは話しかけていた。

 

 

 

 (にしても・・これは仕上がってるな・・ちょっとやそっとじゃこの面子だと勝てないんじゃないか)

 

 

 山内は無言でパドックでお披露目をするモモノスターをみる。前走よりもさらに仕上がっている。事前人気はほどほどだったものの、パドックの様子をみたギャラリーは感じていただろう。――これは走る。そう思わせるぐらいの迫力が今のモモノスターにはあった。

 

 まもなくゲート入りしてスタートした弥生賞。逃げウマ娘がレースを作り、それに続くウマ娘、そしてモモノスターは中団でレースを進めていく。よどみなくレースが進んで第3コーナーに突入する。モモノスターは外に持ち出すとグイグイと位置をあげていく。そして大外から最後の直線に出た。

 

 

 「モモちゃ~ん!頑張って~!」

 

 

 

 声を必死に上げて応援するステイシャーリーン。その声援にこたえるかのようにモモノスターは加速していく。そして全てのウマ娘を差し切り1着でゴールした。友人の勝利に喜ぶステイシャーリーンと考え込むように無言になる山内。2人の反応は正反対だ。

 

 

 (これは避けて正解だったな。他のウマ娘も決して弱い競バをしたわけじゃない。モモノスターが強すぎた。直線が短い中山で前方を抜き去るあの末脚を使われたら今の同世代で勝てるウマ娘はいないだろう。それをこのタイムが表している・・)

 

 

 圧倒的なレースで弥生賞を制したモモノスター。この怪物と順当にいけば皐月賞で戦うことになるということをすっかり忘れ、山内の心配をよそにステイシャーリーンは歓喜に酔いしれていた。

 

 

 

 

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