走り抜ける風   作:ブリンカー

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37話

 3月中旬。マスカレードアイが出走するフィリーズレビューが開催される日となった今日。阪神競バ場は多くの観客で賑わっていた。桜花賞のステップアップレースとなる重賞レースとなるこのレースはトリプルティアラを目指すウマ娘にとってはどうしても勝っておきたいレースだ。先日行われたチューリップ賞で見事1着で勝利したマキシマムジョリーを始め、2着と3着も侮れないウマ娘が桜花賞への切符を手に入れた。そしてここ阪神以外にも今日、中山競バ場で同時に行われているアネモネステークスでも優先出走権がかかっているため、そちらでも熱い戦いが繰り広げられるだろう。クラシック戦線本番を迎えているこの季節はファンの応援も一段と熱が入る。山内はマスカレードアイがプレッシャーで押しつぶされないか心配だった。

 

 

 

 「落ち着いていこう。練習通りの力を発揮すれば勝てる。深呼吸だ」

 

 

 

 「すー・・はー・・。少しだけ落ち着いた気がします。それにしても賑わってますね。この前のクイーンCの時よりも」

 

 

 

 「桜花賞の時はこんなもんじゃないぞ。夢の舞台に立てるように頑張ろう」

 

 

 

 「はい。行ってきます」

 

 

 

 控室で打ち合わせを終えた後、パドックでそれぞれのウマ娘が次々とお披露目をし、その様子を観客が思い思いで予想しあいながらワイワイと賑わっている。ここで勝てば桜花賞の優先出走権が手に入る。そしてなにより、マスカレードアイに重賞をプレゼントすることができる。山内は祈るような気持ちでゲート入りしたマスカレードアイを見つめていた。

 

 

 

 

 

 「すみません・・私が不甲斐ないばかりに・・」

 

 

 

 「頑張ったな。それに負けたのはアイだけの責任じゃないさ。次の目標に向かって頑張ろう」

 

 

 

 結果は5着。掲示板は確保できたが、わずかに届かなかった。3着にはいるという目標さえ叶わなかったのだ。これで桜花賞に出走することが厳しくなった。今のマスカレードアイの獲得賞金であれば、恐らく出走権をかけた抽選争いには混ざることができるはずだ。しかしこの様子だと桜花賞に仮に出られたとしてもいい結果が望めないだろう。

 

 

 (ここはオークスに照準をあわせて調整するか)

 

 

 山内と一行は次の一手を考えながら阪神競バ場を後にした。

 

 

 

 3月下旬。スプリングステークスの日がやってきた。中山競バ場で行われるこのレースは皐月賞の前哨戦となる。3着までに入ったウマ娘は優先出走権が手に入るので、クラシック3冠を狙うウマ娘にとっては避けては通れないレースだ。ジュニア期に重賞を制したステイシャーリーンは恐らく抽選になったとしても出走できる可能性は高いが、それでも確実に切符が手に入るなら取っておきたい。山内はステイシャーリーンに激を飛ばすと、パドックへ向かい、出走ウマ娘達が出てくるのを待った。今日出走してくるライバルは手ごわい。何せG1ウマ娘が2人もいるのだ。朝日杯を制したメリルナイサーとホープフルS勝者のゴールドシチー。その対決が早くも前哨戦で見られるとあって、中山競バ場は多くの人で賑わっていた。

 

 

 ――今日どっちが勝つんだろうな。メリルナイサーもゴールドシチーも甲乙つけがたい。

 

 

 ――俺はゴールドシチーかな。華やかだけじゃなくてしっかり強いし勝ってほしいぜ。

 

 

 ――メリルナイサーは距離延長が少し不安か?でもそんなもん吹きとばせるぐらいの脚をもってるだろ?

 

 

 ――俺はステイシャーリーンかな。前走はぼろ負けだったけど力を出し切れずに負けたって感じのレースだったし力勝負になったら勝ち負けに加わってくるポテンシャルはあるよ。

 

 

 ――あー、前はブロックひどかったもんな。でもいまんとこ2000メートル専だろ?距離短縮がどう響くかだな。

 

 

 わいわいと予想しあう観客達。それだけこのレースの注目度合が高いのがわかる。パドックのお披露目が終わると観客席にぞろぞろと戻っていく人の群れに混ざりながら、指定の席に移動する山内。

 

 

 (頑張れよ・・)

 

 心の中でつぶやいてステイシャーリーンの出走を待った。

 

 

 

 

 

 「久しぶりじゃん?前回みたいなレースじゃなくてガチでいこうよ」

 

 

 

 「シチーちゃん!うん、私も負けないよ!」

 

 

 

 「ははっ、いい顔してんじゃん。その様子だと前みたいなへまはしなさそうだね。まっ、悪いけど今日もアタシが勝つからね」

 

 

 

 「今日は私が勝つよ!」

 

 

 

 「お2人とも盛り上がっているとこ悪いのだけど、僕もいるということを忘れてないかい?」

 

 

 

 ステイシャーリーンとゴールドシチーの会話に混ざりこんできたメリルナイサー。ジュニア級マイルの王者とあって流石の風格だ。しかしステイシャーリーンはそんなことお構いなしに気兼ねなく話しかける。

 

 

 

 「メリルちゃん!今日はいいレースにしようね!」

 

 

 

 「皐月賞の切符が掛かってるレースだからね。僕も全力で挑ませてもらうよ!」

 

 

 

 3人は束の間の会話を楽しんだ。間もなくゲート入りの合図がでてそれぞれが指定されたゲートに入っていく。8番のゼッケンを身に着けたステイシャーリーンは奇数番号のウマ娘がゲート入りした後、満を持してゲートに入った。

 

 

 

 (今日はいつも走っているレースよりも200メートル短い。ライバルも手強い。でも行ける!)

 

 

 

 気合十分なステイシャーリーン。前走と違い、集中した姿は強敵に劣らないほどの気迫を醸し出していた。

 

 

 

 ガタンッ!!!

 

 

 

 皐月賞への切符をかけたレースが今始まった。

 

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