走り抜ける風   作:ブリンカー

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38話

 一斉にスタートしたウマ娘達。スター直後にすぐ緩やかな坂に入り下っていき、第1コーナーにさしかかる。そのわずかな直線の間に先行争いをする者、下手に争わず様子を見る者と綺麗に分かれた。

 

 

 (今回は1800メートル。距離はいつも走っている距離よりも短い。私後半のスピード勝負についていけるのかな)

 

 

 ステイシャーリーンは先行争いに無理に加わらず、後ろのからのレースを行う。第2コーナーを曲がり、向こう正面に入った隊列は大きく動かず、第3コーナーに向かって進んでいく。

 

 ステイシャーリーンは短い距離が得意なウマ娘ではない。理由は1つ。瞬発力がないのだ。加速するのにどうしても時間がかかるので、直線の短いコースや、短距離、マイルのレースだとスタミナよりもスピードが優先されるので得意な分野をいかせないのだ。この1800メートルという距離もあまり好ましい距離ではないが、やりようはある。とはいってもいつも通りの後半から捲ってスタミナ任せのごり押し勝負をするというものだ。今回のレースステイシャーリーンは後方に控えたまま第3コーナーに向かっている。ということはそういうことだ。周りのウマ娘は勝負は第3コーナーから始まるだろうと予測し身構える。と同時にそれぞれ自分のトレーナーの指示をまちつつ、他のウマ娘の反応を伺っていつでも仕掛けられる態勢を整えた。

 

 向こう正面の直線を駆け抜け、第3コーナーにはいる。ステイシャーリーンは山内の方を一瞬みて指示を確認する。GOサインだ。ステイシャーリーンは力強い一歩を踏み出した。

 

 ステイシャーリーンは外を回って少しずつ加速していく。外にでることで多少のロスはあるものの、有り余るスタミナを使って、徐々に加速していくスピードを維持しつつコーナーリングがしやすくなるというメリットもあるため、ステイシャーリーンにとっては悪い策ではない。最近は先行策や死んだふり作戦など奇策を取り入れていたが、今回は自分の一番自信のあるスタイルで勝負する。そのことがステイシャーリーンの闘志をより膨れ上がらせた。

 

 

 (ここからすり潰す。勝負だ!)

 

 

 中山の直線は短い。第4コーナーを超えた後の直線は310メートルしかない。だが最後の直線には心臓破りの坂と言われる最大高低差2.2メートルの坂が控えている。ここに来るまでに他のウマ娘のスタミナを削ってバテさせようという作戦を山内はとった。これはステイシャーリーンをマークしている他のトレーナーにはおそらくバレバレの戦法だが、今回のスプリングステークス、朝日杯王者のメリルナイサーとホープフルSの王者ゴールドシチーがいるのだ。マークはステイシャーリーンではなく、当然その2名に行くようになる。現状ステイシャーリーンに対抗できるだけのスタミナを持つウマ娘はいない。それこそホープフルSの時のように完全にマークしていれば封じることができるのだが、強者2名のおかげにより前回よりも大幅にフリーになったステイシャーリーンは自由に仕掛けることができるだろうと踏んだのだ。

 

 

 (後は思いっきり走るだけだ。いけ!シャーリーン)

 

 

 山内は加速してカーブを曲がっていくステイシャーリーンを静かに見つめていた。

 

 第4コーナーを曲がり切り、続々とウマ娘達が直線に入っていく。ステイシャーリーンは外を通ってきたため、最短コースの内側には入ることができなかったが、内よりも外の方が芝は生え揃っている。基本的に全てのレースで、出走するウマ娘はロスなく走りたいので内側を走る。1、2レースだけなら問題ないのだが、これを何週間も毎週行っていれば、当然芝は傷む。その結果不揃いな芝やむき出しの土があらわれるようになり、足場が安定しなくなる。つまり全力で走ることができないのだ。ステイシャーリーンは良好な状態の芝のルートを選ぶと、勢いそのままにゴールに向かって走っていく。そして坂に差し掛かるも、グイグイと前に進んでいく。スピードは衰えない。そしてわずかな争いの後、先頭にたった。

 

 

 (はっ、マジしんどっ!シャーリーンここでバテないとかマジバケモンかよ・・!アタシは精一杯だっつーの!)

 

 

 (速い・・!いや、僕達のスピードが落ちているのか!1800メートルならこちらに分があると思ったけど・・これは・・)

 

 

 「やあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 坂を上り切り、なおスピードが衰えないステイシャーリーン。追いすがるゴールドシチーとメリルナイサーを振り切ってステイシャーリーンがゴールした。1バ身差の文句なしの勝利に観客は大きな歓声を上げてそれぞれのウマ娘の健闘をたたえた。その中でも一番沢山の声をかけられたのはもちろんステイシャーリーンだった。

 

 

 「ありがとうございまーす!!」

 

 

 呼吸が荒くはなっているものの、元気に受け答えするステイシャーリーン。ウィニングランの後、ゆっくり歩いて呼吸を整える。勝つことができた。前回敗れたホープフルSと同じ中山で勝てたのは非常に嬉しい。ステイシャーリーンはリベンジに成功したことに喜んでいると後ろから声がかかる。

 

 

 

 「シャーリーンまじでどんなスタミナしてんの。スタミナオバケじゃん。あんなの追いつけないって」

 

 

 「今回はしてやられたね。次もここ中山でのレース。その時は僕が勝利を頂くからね」

 

 

 「まぁ今回は勝ちを譲るって形で。でも次はアタシも負けない。負けっぱなしはダサいでしょ」

 

 

 「次も私が勝つよ!絶対に勝つ!」

 

 

 

 ライバルたちとワイワイと言いあいながら控室に戻っていくステイシャーリーン。苦手イメージが付く前に中山で勝利ができたのは非常に大きい。控室に戻ったステイシャーリーンは仲間達に大きな歓声で迎えられたのであった。

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