暗黒と光道   作:必殺雷撃人

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21.悪魔との取引、暴走する欲求

 

 

 俺らはとりあえずヘリポートから降りて、何故か生きていたオブライエンを救出してアカデミアに戻ってきた。

 

 途中に(ハーピィレディ)が襲いかかってきたが、ヨハンが(サファイアペガサス)を実体化させて撃退した。ナイスヨハン。

 

 精霊が実体化か……ここは異世界ってやつかな?

 

 デュエルで疲労している俺はそんな事を考えながら、十代とヨハンに両肩を担がれて保健室へ運ばれる事になった。

 

 

〜 翌日 保健室 〜

 

鏡子

 「クッ……ふぅ〜〜!」

 

鮎川先生

 「あら、起きるのが随分と遅かったわね透子さん。はい、今日の朝ごはんよ」

 

 俺の目覚めを出迎えるのは、保健室の先生、鮎川先生。そして渡されるコッペパンとペットボトル1本。とても満足できたもんじゃないが……非常事態だし仕方がない。

 

 味気ないコッペパンを水で流し込みごちそうさますると、横でレイがうなされていた。レイの腕には、黄色に輝く傷がその存在を主張していた。

 

鏡子

 「鮎川先生。レイがうなされているんですけど何があったんですか?」

 

鮎川先生

 「透子さんは寝ていたから分からなかったのね……レイちゃんは昨日の夜、何者かに襲われちゃってね。保健室にある薬品じゃ治療出来ないから、十代達に三沢くんが見つけた潜水艦に行って薬品を取りに行ってるの」

 

 なんで異世界に、しかも砂漠の中に潜水艦があるんだよ……まぁいいや。

 

鏡子

 「ところで、俺はもう動いても問題ないのか?」

 

鮎川先生

 「えぇ、特に問題は無いわ」

 

 さて、先生の許しも出たし、適当に学園内をぶらつくか。

 

 俺は鮎川先生に一礼して、保健室を出た。

 

 

〜 廊下 〜

 

鏡子

 「俺のターンドロー!俺は(ドラゴニックD)を発動!効果を発動して手札の(マジェスティM)を破壊して(真竜剣皇マスターP)をサーチ!永続トラップ発動(真竜皇の復活)!効果を発動して墓地の(マジェスティM)を蘇生!(真竜皇の復活)と(マジェスティM)をリリース!真なる竜剣士よ!数多の同胞の力を受けて今ここに覚醒せよ!アドバンス召喚!(真竜剣皇マスターP)!

 

 現れたのは、純白の鎧を纏った竜剣士。神々しく美しいモンスターだが、その見た目に反してエグい制圧能力を持つ。

 

鏡子 

 「こいつはリリースしたカードの種類、今は罠とモンスターの効果を受けない!(ミラフォ)を発動しても無駄だぜ!更に墓地の(復活)の効果を発動してお前の(ジェミナイ·エルフ)を対象に破壊!(マスターP)でダイレクト!俺のフィールドには(一族の結束)と(ドラD)がある。よって攻撃力合計1100アップ!合計攻撃力4050でワンショットキルだ!」

 

レッド生 LP4000→-50

 

 (マスターP)の一撃を受けて崩れ落ちるレッド生。すかさず俺はデュエルディスクからデッキを抜き取る。

 

 起き上がるレッド生だが、デュエルディスクを構えてカードを引く仕草をして崩れ落ちた。

 

鏡子

 「全く。デュエルゾンビの処理はめんどくさいぜ」

 

 あれは少し前の話。保健室から出てしばらくすると口調が覚束ず目に隈をこさえた、さながらゾンビの様なレッド生3人が立ちふさがりデュエルを仕掛けてきた。

 

 たまたま掴んだ真竜デッキでレッド生の1人を圧殺したが、そいつがムクリと起き上がりデュエルに乱入してきた。

 

 仕方なく俺は再びレッド生を叩き潰し、気乗りはしなかったがデッキを奪い取った。するとデュエルゾンビは立ち上がるも、デュエル出来ずに崩れ落ちた。

 

 後はもう消化試合で、ほぼ完全耐性と化した(マスターP)と真竜の罠でねじ伏せた。

 

鏡子

 「ハァ……足りないな。(グラファ)がいれば、この状況でも楽しかったのに」

 

 デュエルが終わる度に脳裏をよぎる(グラファ)の姿。もっとデュエルすれば、気も紛れるのかな。

 

 デュエルゾンビがこれっきりな訳がない。今回は3人だったけど次は10人、最悪100人と同時にバトルロワイヤルルールでデュエルする事になるかもしれない。

 

 バトルロワイヤルルール。サッと説明すると、お互いの1ターン目は攻撃出来ず、お互いのLP·フィールド·墓地は別というルール。

 【プレイヤーは】という文言のカードの効果は、発動者以外の全員に届くというルール。つまり(デス・メテオ)を発動したら相手全員に1000バーンが入る。

 

 もし相手が全員バーンデッキだったら即死だが、アカデミアでバーンデッキ使うやつは殆どいないから除外する。まぁそもそも100人同時にやってたら、間違いなくデッキのリソースが死ぬ。

 

 となると(チェーンバーン)か?でもそれを使うと、全員が沈黙してもデッキを回収しきれず2戦目が始まりエナジーが足りなくなる。

 

 リソースが足りないなら無限にリソースを供給し続けられるテーマを使えばいい。そう、真竜とエルドリッチだ。真竜は(使徒)でカード戻せるし妨害効果はこの時代ではオーバーパワーそのものだ。

 

 エルドリッチも墓地の罠を除外して別の罠セットできるし、最悪事故っても真竜のリリース素材にしてしまえばいい。LPを半分にする罠もあるから馬鹿に出来ない。そうと決まれば早速デッキ組むか。

 

 俺は適当な部屋に入って。スマホを起動。異世界からカードを買ってデッキを組み始める。

 

 さぁゾンビ共。俺が満足する為の糧になってもらおうか。

 

 

 

〜〜〜

 

 俺達は潜水艦から薬を取ってきて、モンスターに襲われつつもどうにかアカデミアに帰ってきた。

 

ヨハン

 「おかしいな。バリケードの中に見張りが誰もいないぞ」

 

十代

 「明日香や剣山達もいないなんて……いったい何が起こっているんだ?」

 

 俺達が潜水艦を目指して出発する前、明日香達はまた精霊が襲ってくるかもしれないとして、生徒達と協力してアカデミアにあるものでバリケードを構築して、監視をしていた。それなのに誰もいないのは不自然すぎる。

 

 不審に思いながらも、俺達はアカデミアに入るけど中には生徒の姿が無かった。

 

ヨハン

 「おい!あそこに生徒がいるぞ!」

 

 ヨハンが指差す方を見ると、そこにはヨタヨタとした足取りでこっちに来ているブルー生が。

 

十代

 「お〜い!なんで誰もいないんだ?」

 

ブルー生

 「ウゥゥ……デュエルゥ……」

 

十代

 「う、うわぁ!なんだぁ!?」

 

 ブルー生の目の下には隈が出来ていて、口調がまるでもうすぐ死んでしまいそうな様子で苦しそうだ。

 

ヨハン

 「十代。周りを見ろ」

 

 ヨハンに言われるままに辺りを見渡すと、そこには同じく目に隈を作った生徒達が。

 

ジム

 「Wow……まるでゾンビだな」

 

ヨハン

 「ゾンビって……あの死体が歩き回ったりするやつか?」

 

 俺達がそう言っている間にも、生徒達は少しずつ距離を詰めてきている。

 

ヨハン

 「十代!今は保健室に行くことが先決だ!行くぞ!」

 

 方針は決まった。でもそうは言ってもこの生徒達は通してくれそうにない。

 

十代

 「こうなったらデュエルで!」

 

??

 「おい」

 

 俺がデュエルでケリをつけようとしたとき、生徒達の向こう側から短い言葉が耳に入ってきた。

 その声の主を俺は……いや、場にいる全員が知っている。

 

鏡子

 「デュエルしろよ」

 

 声の主、透子はデュエルディスクを構えて準備万端。でも……

 

明日香

 「デュエルしちゃ駄目ぇ!」

 

 台車を引く剣山と共に走ってくる明日香。台車は生徒の塊に突入して、生徒を吹き飛ばしはしなかったが道を開けることに成功した。

 

 俺達は保健室へ向かうために、道を作った剣山について走っていった。

 

 

 

〜〜〜

 

鏡子

 「さて、邪魔もいなくなったし俺の糧になれゾンビ共」

 

 俺がデュエルディスクを構えると、ゾンビ共もディスクを構えてくる。数は……80くらいはいそうか?今までよりも遥かに数は多いが、早速殺戮をしよう。

 

鏡子·ゾンビ’s

 「デュエル!」

 

 ハハ、こんなくぐもったデュエルの宣言は初めてだ。

 

鏡子 

 「俺が先攻をもらう。ドロー」

 

鏡子 手札5→6

 

鏡子

 「俺は(金満で謙虚な壺)を発動!俺は融合デッキを6枚裏側除外してデッキトップを6枚捲ってその内の1枚を手札に!残りをデッキの下に戻す!」

 

捲られたカード

強欲で謙虚な壺

サベージ・コロシアム

真竜拳士ダイナマイトK

ドラゴニックD

紅き血染めのエルドリクシル

 

鏡子

 「俺は(サベージ・コロシアム)を手札に加えて残りを好きな順番でデッキの下に戻す。そして俺はこのターンカードの効果でドロー出来ず、与えるダメージは半分になる!」

 

鏡子 手札6→5→6

 

鏡子

 「俺はフィールド魔法(サベージ・コロシアム)を発動して永続魔法(呪われしエルドランド)を発動!効果発動!800LPを払って(黄金郷のワッケーロ)を手札に!(黄金郷エルドリッチ)の効果発動!手札の魔法罠カード(黄金郷のワッケーロ)と共にこのカードを墓地へ送り(エルドランド)を墓地へ!」

 

 禍々しい空気が漂う中世的なコロシアムの中。黄金で出来た城が現れるが、すぐに消滅した。

 

鏡子 LP4000→3200 手札6→5→4→5→4→3

 

鏡子

 「墓地へ送られた(エルドランド)の効果発動!デッキから(白き覚醒のエルドリクシル)を墓地へ送る!カードを3枚セットしてターンエンド!エンドフェイズに墓地の(ワッケーロ)の効果発動!墓地から除外してエルドリクシルカード(紅き血染めのエルドリクシル)をセット!更に(白き覚醒のエルドリクシル)の効果発動!デッキから黄金郷魔法罠(黄金郷のコンキスタドール)をセット!」

 

鏡子 LP4000 手札0枚 伏せ5

フィールド(サベージ·コロシアム)

 

 レッド生がドローした後、俺はリバースカードを開く。

 

鏡子

 「ドローフェイズにトラップ発動!(紅き血染めのエルドリクシル)!デッキ·墓地からアンデッドモンスターかエルドリッチモンスターを特殊召喚!よって俺はデッキから(黄金郷エルドリッチ)を特殊召喚!」

 

 空に浮かぶ赤い宝石。それが赤い光をバラマキ、気づいたら黄金で出来た高貴なモンスターが現れた。

 

鏡子

 「更にスタンバイフェイズに(幽麗なる幻滝)を発動!デッキから幻竜族モンスター(真竜導師マジェスティM)をサーチ!」

 

鏡子 手札0→1

 

 レッド生は(グレイブスクワーマー)を召喚。こいつは戦闘破壊されるとモンスターを破壊する効果があるから先に潰す!

 

鏡子

 「永続トラップ発動!(黄金郷のコンキスタドール)発動!守備1800の通常モンスターとして特殊召喚!更に(エルドリッチ)がいるので更に表側表示のカードを選んで破壊!よって(グレイブスクワーマー)を破壊!」 

 

 魔法罠ゾーンから飛び出してきた黄金ゾンビの騎兵が飛び出してきてミイラのようなモンスターを貫いた。

 

鏡子

 「更に永続トラップ(真竜の黙示録)を発動!相手ターンにアドバンス召喚を行えるので(コンキスタドール)をリリースして(真竜導師マジェスティM)をアドバンス召喚!」

 

鏡子 手札1→0

 

 その後は長い長いデュエルだった。序盤に召喚した魔法罠耐性(マスターP)と、自分以外の真竜モンスターに効果の対象にならず効果で破壊されない耐性を与える(ドライアスⅢ世)を突破出来ずに自爆を繰り返すデュエルゾンビ達。

 装備魔法で突破を狙う者も居たが、彼らは(コンキスタドール)や(ガーディアン)、(黙示録)に阻まれる事になる。

 

 特に(黙示録)は(復活)で特殊召喚した真竜モンスターを使えば毎ターン攻守半減を撃てるため、こちらのターンになる頃には攻守が一桁になっていることもザラだった。

 

 運よくバック破壊カードを引けたとしても(永久に輝けし黄金郷)が破壊から守る。

 

 こちらのターンになったら(使徒)で真竜魔法罠をデッキに戻して、何人かのゾンビを撃破してデッキを奪う。自分のエンドフェイズにも(サベージ·コロシアム)が発動するが真竜達は(ドライアスⅢ世)によって守られているから破壊されない。まぁ、(ドライアスⅢ世)自体は破壊されるが(復活)で何度でも蘇る。

 

 エルドリクシルや黄金郷罠が枯渇してくるが、(黄金の征服王)でリソース回復しつつゾンビ達のLPを半減または全破壊。更に(貪欲な瓶)で(黄金の征服王)と(貪欲な瓶)等を戻してリソースを途切れさせない。

 

 いくらゾンビが弱くても、最初は80ターン凌ぐ頃にはデッキから真竜カードが無くなってる事もあったが、どんどんとゾンビが減り余裕が生まれるようになり、遂に最後のゾンビが倒れ伏した。

 

 最後のゾンビを倒した瞬間に尋常じゃない程の倦怠感が襲いかかってきた。これもしんどいけどそれよりも……

 

鏡子

 「虚しい……あれだけ考えてデッキを組んだのに……(グラファ)……」

 

 最高の回りだった。エルドリッチと真竜の相性は悪くない事は知ってたけど、食料庫周りのデュエルゾンビを潰していた時でもここまでキレイに回ったことはなかった。

 60枚構築にしたせいで真竜だけ、エルドリッチだけで戦ってた事もあった。カードが噛み合わず死を覚悟したことすらあった。まさにあのデュエルは奇跡と言ってもいい程回っていた。

 

 それなのに、胸に溜まるのは高揚感ではなく虚無感。そして今まで(グラファ)と戦ってきたデュエルの記憶だけだ。

 

 もしかして……このデッキの満足感を、今までに回してきた暗黒界が邪魔をしているのか?もし暗黒界に関する記憶が消えれば、俺は満足できるんじゃないか?

 

???

 「随分苦しんでいるようだねぇ?」

 

 目の前に、オレンジ色の光で構成された子供が目の前に現れた。

 

鏡子

 「お前は確か……俺らを異世界に放り込んだ奴だな?それにその声……もしかして俺を吹っ切れさせた奴か?」

 

子供

 「まぁ、そんなとこだよ。ところで、どうしてそんなに苦しんでいるんだい?」

 

鏡子

 「どんなにエグいコンボをしても、どんなに相手を制圧しても満たされないんだ。今までは……暗黒界を回してた時にはこんな事はなかったのに……」

 

 俺の思いを語ると、子供は軽く笑って言った。

 

子供

 「ハハッ、なるほどね。ならば僕に協力してみないかい?僕はアカデミアに眠る三幻魔のカードが欲しいんだ。協力してくれれば、君に三幻魔のカードをしばらく貸してあげるし、ついでに君を精霊化させて、もう一人の君と戦える様にしてあげる」

 

 三幻魔のカード。それは十代が(賢者の石-サバティエル)とかいう3回まで毎ターン何でもサーチと、最後に攻撃力超倍加という頭のネジが全部吹っ飛んだ壊れを使ってどうにか倒したモンスター。現代遊戯王なら(ヴェーラー)とか有象無象のモンスター除去で容易く卸せるけど、この時代なら出せれば脅威そのものだ。

 

 それにあれは精霊の力を奪う能力の持つカード。それをこの世界でやったらどうなるか。少なくともただではすまないだろう。

 だが……今の俺は、満足する為なら悪魔に魂を売れるぐらいに満足に飢えていた。

 

鏡子

 「あぁ、分かった。だが1つ頼みたい事があるんだ。俺の暗黒界に関する記憶を……全部消してくれないか?」

 

 俺がそういうと、子供は心底驚き困惑した様子で問いかけてきた。

 

子供

 「本当に……いいのかい?その暗黒界はきっと君を愛している。そんな彼等との絆を断つなんて……もし僕がその立場なら2度と立ち直れないよ」

 

鏡子

 「俺も暗黒界は愛……かどうかは分からないけど大切にしてきたカード達だ。でも今は俺の満足を邪魔する存在なんだ。頼む」

 

子供

 「よかれと思って君の暗黒界のカードと関連カードを持ってきてたのに……まぁいい、後悔しないようにね。それじゃあ早速やろう。僕はこう見えても高位な精霊、記憶操作や洗脳なんかは意のままさ。まずは目を閉じて」

 

 子供は手に持つカードの束を足元に起き、手をかざす。俺は言われた通りに目を閉じると、今まで戦ってきた暗黒界達との思い出が浮かんでは消えていく。

 

 ごめんな暗黒界達。こんな浮気性なご主人で。

 

 最後に見た光景は、悲しげにこちらを見つめる(グラファ)の姿だった。

 

 

 

〜〜〜

 

透子

 「うっ……あれ?ここは……アカデミアですか?」

 

ライコウ

 「目が覚めたようだな」

 

 目が覚めると、そこはアカデミアのロビーのど真ん中でした。それにしても身体を動かすのが久しぶりです、最後に動かしたのは……佐藤先生に会った辺りでしょうか。

 

ライコウ

 「状況を飲み込めていないだろうが、時間がないから簡潔に説明する」

 

ライコウさんの言葉を纏めると

 

·アカデミアが異世界に飛ばされ、実体化した精霊が襲ってくる。

·デスベルトは健在で、デュエルしたりカードをデュエルディスクに読み込ませて実体化させるとエナジーを抜かれる。

·現在アカデミアにはゾンビ化した生徒が跋扈していて危険な状態である。

·鏡子さんが何者かについていき、行方不明になる

·ライトロードは高レベルなモンスターほど実体化するのに多大な魔力を消費する為、救援はあまり期待出来ない。(本当は説明係をライコウさんではなくライニャンにしたかったが、喋れない為妥協したらしい)

·十代達は体育館を拠点にしていて、食料庫をゾンビに占領されていて食料不足に喘いでいる。生徒たちも我慢の限界で、そろそろ暴動が起きそうである。

 

 

透子

 「なるほど。ならば食料庫を確保しに行きましょう」

 

ライコウ

 「それは危険じゃないか?我々ライトロードは短期決着が求められる。倒しても蘇るゾンビとの相性は最悪だ」

 

透子

 「それなら(ライニャン)さんはどうでしょう。(ライニャン)さんなら見つかりにくいルートを見つけてくれるはずです。レベルも2ですから消費も少ないと思います」

 

ライコウ

 「むぅ……確かにそうだが(ルミナス)から精霊化は相当な緊急時以外は出来ないと言われている出すわけには……うん?これは……」

 

 何かを見つけた(ライコウ)さん。近づいて見ると、それはそのままデッキを組めそうな暗黒界のカード達でした。

 

 手に取ると、(ベージ)3人衆と(ブラウ)さんが姿を現しました。

 

ブラウ

 「うっ……身体が……実体化している?」

 

ベージ

 「まさか暗黒世界に帰っちまったのか?」

 

ライコウ

 「残念だが、ここは別の世界。暗黒世界ではない」

 

 困惑する暗黒界達と、それを説明する(ライコウ)さん。あれ?これ問題解決したのでは?

 

透子

 「あの、暗黒界の皆さん。お願いがあるんですけど……アカデミアの食料庫が悪いデュエリストに占領されているんです。奪還する為に悪いデュエリストがいない、もしくは少ないルートを探して欲しいのです」

 

ブラウ

 「ん?あぁ了解した。元より透子殿には恩がある。主が行方不明の間、しばらく世話になる」

 

ライコウ

 「では、私はそろそろ失礼する。元より透子の説明をする事が目的だったからな。我々は透子をジャスティス·ワールドから見守っている。健闘を祈る」

 

 そういって、光に包まれ消える(ライコウ)さん。魔力の為とはいえ少し薄情な気がします。

 

透子

 「行きましょう。皆がご飯を待っています」

 

 私は(ベージ)3人衆を先行させて、(ブラウ)さんを用心棒にして先へ進みます。

 

 

〜〜〜

 

 (ベージ)さん誘導の元、食糧庫前まで辿り着きました。

 

 一度だけデュエルゾンビに遭遇しましたが、ゾンビ側がカードが引けずに崩れ落ちました。不審に思ってディスクを見るとデッキが入っていませんでした。

 

 もしかして……デュエルでゾンビを倒した後にデッキを奪えば復活しないのでしょうか。これをやったのは、きっと鏡子風に言うならリアリストのしわざなのでしょう。

 

 食料庫前には何故かゾンビがいません。早速中のダンボールを、先行させるベージさん以外の暗黒界達に持たせて出発です。

 

 勿論私も持ちますよ。少し小さめですけど。

 

透子

 「(ブラウ)さん2箱もですか。無理しないでくださいね?」

 

ブラウ

 「これくらいなら問題ありません。鍛えているので。それにもしゾンビが来ても走って逃げられます」

 

 (ブラウ)さんは私が両手を広げても届かないぐらい大きいダンボールを抱えてもなんの問題もなさそうに答えました。

 

 それなら問題ありませんが……さっそく私達は同じルートで帰路につきました。

 

 何度かゾンビに遭遇しましたが、ディスクを構えるとすぐに崩れ落ちてしまいました。

 

 な、何が起きているのやら……こんなにゾンビが無力化されているなんて……誰がこんな事を……

 

 

 

〜 体育館 〜

 

透子

 「ふぅ……ふぅ……なんとか体育館に着きましたね……あれ?なんで暗いのでしょうか?」

 

 ひとまず体育館の真ん中に荷物を置くと、脳内に声が響きました。

 

ライコウ

 『透子、聞いてくれ。十代達はどうやらアカデミア前で謎の仮面3人とデュエルをしているようだ』

 

 ッ……直接脳内に……まぁそれはさておきアカデミア前ですか……行きましょう。

 

 それしても、鏡子は今何をしているのでしょうか。無事だといいのですが……

 

 

 

〜〜〜

 

 俺はあの悪魔が取り憑いているイエロー生(確かマルタンとか言われていた)についてきていた。

 

子供

 「そういえば君。確かカードを虚空から生み出していたね?どんな手品だい?」

 

 正直誰にも話したくない話題が来たな……ヘソ曲げられると困るからしかたない。話そう。

 誰もついて来ていないを確かめて、俺は話を始める。

 

鏡子

 「誰にも話さないでくれよ。実は俺、全くの別世界からカードと魂だけやってきたんだ。んで、その別世界からカードを購入している」

 

子供

 「へぇ……ちなみに君がいた世界ではどんなデュエルが繰り広げられていたんだい?」

 

鏡子

 「この世界から見たら世紀末そのものだぜ?ソリッドビジョンはおろかデュエルディスクもないけど、カードプールが広すぎてほぼ何でも出来る。先攻が作ったライフコストのない(神の宣告)が3枚以上伏せられているような制圧盤面を、後攻がそれを崩すゲームさ。(羽箒)も(サンボル)も制限だし、(ミラフォ)や(リビデ)、(ブラックホール)は無制限なんだが、採用しないデッキも多いぐらいにインフレしている」

 

神の宣告

カウンター罠

(1):LPを半分払って以下の効果を発動できる。

●魔法・罠カードが発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。

それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

子供

 「ほ、本当に世紀末だね……デュエルゾンビをたった1人で3割無力化したのは伊達じゃないわけだ」

 

 そんな事を話しながら歩くと、発電所近くで子供が止まった。

 

鏡子

 「ここは……発電所か?」

 

??

 「マルタン!」

 

レイ

 「マルっち!」

 

 子供を見て叫ぶレイとナポレオン教頭。その近くには、十代と透子の姿もある。

 

十代

 「な、なんで透子が2人いるんだ!?」

 

透子

 「鏡子!なんでマルタン君と一緒にいるの!」

 

鏡子

 「まぁ紆余曲折あって彼に身体を精霊化させてもらってね。見返りとして協力しているんだ」

 

 俺がそう答えると、子供は唐突に禍々しい右腕を地面に突き刺しオレンジ色の光を放つ。

 

 そして地面が裂け、辺りに七精門が生える。

 

十代

 「こ、これは七精門!?なんで!?」

 

 近くにいたファラオが口を開けると、そこから大徳寺先生が霊となって姿を現した。

 

大徳寺先生

 「十代君。ここは三幻魔のカードが封印された場所なのにゃ」

 

子供

 「面白い友達がいるねぇ十代。でも今は邪魔だよ、消えて」

 

 子供が瞳を光らせると、大徳寺先生はビビってファラオの口に収まった。

 

鏡子

 「それじゃあ。俺が三幻魔のカードを取ってきてもいいのか?」

 

子供

 「いや、君では三幻魔を覚醒させる事は出来ない。でもついてきてもらうよ」

 

 俺と子供は、裂け目に飛び込んで階段を降りていく。くぅ〜足がビリビリするのに走るのキツイんだが!

 

 

 

〜〜〜

 

十代

 「透子!マルタン!クソォ……」

 

 十代さんはもう一人の透子とマルタンを追いかけようとしますが、デュエルゾンビが後ろから迫ってきてて逃げ道がなくなりそうです。

 

十代

 「ナポレオン教頭、レイ、透子!俺はマルタンを追う!皆のところへ逃げるんだ

!」

 

ナポレオン教頭

 「ムッシュ十代……頼むでアール……息子を!」

 

 ナポレオン教頭の悲哀に満ちた言葉に、十代さんは頷いて裂け目へ飛び降りていきました。マルタンさんはナポレオン教頭のお子さんだったのですね。

 

 後ろを振り向くと、もう手が届くぐらいに近づいたゾンビ達。足元にいた猫ちゃんことファラオがゾンビの群れに飛びかかり、道を開きました。

 

ナポレオン教頭

 「我に続けぇ!テヤアァァァ!」

 

 ナポレオン教頭が手を広げて更に道を広げ、私達はアカデミアへと走り出しました。

 

 

〜 アカデミア 〜

 

 私達が帰って来たとき、生徒たちの我慢が限界になっていました。

 

 レイさんが明日香さん達に、十代さんが三幻魔が眠る地下洞窟へと向かうマルタン君を追っていった事を話すと、うっかりクロノス先生がこのアカデミア前でやっていたらしいデュエルが囮だった事を漏らしてしまいました。

 

 これにより生徒たちの我慢は限界を超えてしまい、アカデミア内部の食料庫へ突入しようとしてしまいます。

 

透子

 「待って下さい!食料なら体育館に置いてきました!だから皆さんは体育館へ行って下さい!」

 

 持ってきて良かった食料品。これにより、生徒たちは我先にと体育館へと駆けていきました。

 

透子

 「ヨハンさん、ジムさん。彼らの誘導をお願いします。私が持ってきた食料は、全員分あるかすら怪しいので上手くまとめて下さいね?」

 

ヨハン

 「あ、あぁ……」

 

 ちなみに、私が食料庫から持ってきたのはなんとドローパンでした。見つけた生徒たちは我先にと袋を開けたのですが、中身が(せんべい味)、(チョコミント味)、(クサヤジャム味)、(世紀末激辛カレー味)、(ドリアン味)etc.とゲテモノのオンパレードだったので生徒たちは阿鼻叫喚し、飢餓を極めた生徒のみが摘まむものになってしまいました。

 

 私って……運が無いのでしょうか?

 

ベージ

 「いや、これに関しては運で片付けられる問題じゃないと思いまっせ?」

 

 (ベージ)さんの返事を聞いて、生徒たちが普通のパンを笑顔で頬張るなか、私は未だに余っているドローパンをただ眺めるのでした。

 

〜〜〜

 

鏡子

 「ハァ……ハァ……フゥ〜」

 

 子供を追いかけてどれくらい経ったか分からない頃。ようやく最深部にたどり着いた。

 そこでは、竜の唸り声の様な音が響いていた。

 

 子供が三幻魔が封じられていそうな装置に手をかけると、俺以外の足音が鳴る。

 

鏡子

 「お前は確か……アモンだったか?顔を合わせるのは初めてだな」

 

アモン

 「透子か……今はそんな事はどうでもいい!お前は三幻魔のカードで何をするつもりだ!」

 

 アモンは子供を指さして問いただす。

 

子供

 「さらなる力を手に入れる為さ」

 

アモン

 「なんの為に力を求める」

 

子供

 「あの人に……喜んで貰うため」

 

アモン

 「クッ……俺はマルタン、いやお前の真意を探ってやる!デュエルで!」

 

 こうしてアモンと子供とのデュエルが始まった。

 

 結論だけを言うと、デュエル中に(ラビエル)が現れ、子供がそれを抑える形でゲームは持ち越しとなった。

 

 子供の手には、エクゾディアパーツが4枚揃っていて、謎のトラップカードを使えば最後のパーツが揃う状況だったようだ。

 手札交換を2枚しかしてないのに、なんで揃えられたんだよ。悪魔の所業だよ。

 

 てか、“君の中の神は君には崩せない。神を崩すのは悪魔の仕事だ”ってかっこよすぎんだろ。

 

 子供はオレンジのオーラを放ち、(ラビエル)の闇の瘴気の様な物を払い、三幻魔のカードをデュエルディスクに取り込んだ。

 

子供

 「はい、これが三幻魔のカード。君には約束通り少しの間だけ三幻魔のカードを貸してあげるよ」

 

鏡子

 「ああ、これで俺は満足出来る筈だ」

 

 子供から手渡された三幻魔のカード。俺は早速、こいつらが輝けるデッキを作り出そう。

 

 待ってろよ、十代。そして透子。俺はお前らとデュエル出来る時を楽しみに待っている。

 

 でもなんでだろうな。何かが足りない気がしてならないのは。




ゲテモノ枠にチョコミントが入っていますが、私は普通に美味しいと思います。
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