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「明日からは……あまりカードショップに通えなくなる……少し寂しいわ」
今日で春休みが終わり、明日から中学校での新しい生活が始まる。そうするとカードショップに入り浸る時間がだいぶ減る。でも、大人になるには必要な事だからダラダラ言ってはいられない。
そんな事を考えていると、私の家に着いていた。一旦何も考えずに、扉を開く。
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「おかえり優華。今日のデュエルはどうだった?」
優華
「ただいま母さん。今日は8割勝った。残りは手札事故と罠封じ。皆デュエルする時、顔攣ってた」
目の間で笑顔で迎えてくれたのは私の母さん。古神透子。今は私を世話する為に休んでるけど、アカデミアの“修羅の世代”をくぐり抜けた、世界で活躍するプロデュエリスト。大量の罠や相手の打点を利用するといったトリッキーな戦術で相手を封殺する様から好き嫌いが別れている。
偶にゴリゴリのビートダウンをキメることもあるけど、その時の強さにはムラがある。
母さんは私と身長が大差ない。なんでも高校に入った頃から全く身長が伸びなかったらしい。そのせいで私と一緒に買い物をしていると店員に姉と間違えられてしまうことが多々ある。
ちなみに胸は尋常じゃないぐらい小さい。お風呂で一緒に入ってた時に、小さい頃の私はよく乳を飲めたなと毎回思ってしまうぐらいだ。なんなら私より小さいと思う。
透子
「それは良かったわね。私も、昔はそうやってクラスメイトの顔を顰めさせてたの。それはさておいて、ご飯はもう出来てるし、お父さんのデュエル中継がもうすぐ始まるから早く手を洗ってきて」
優華
「父さんのデュエル!?分かった。すぐに行くわ」
さっさと手を洗いリビングへ。扉を開ければ、簡素な家具で統一された我が家が出迎えてくれる。
何も考えずに、母さんと一緒にテーブルに座りテレビに目を向ける。
私の父さん、古神鏡介はその実力を一言で表すなら「気まぐれの邪神」。酷い時は5ターンもセットエンドを繰り返して負けたりすることもあるけど、回り始めたらその暴力的な展開力で数々のプロのフィールドを叩き潰す最強のデュエリスト。
そしてその時期のアカデミア3年生の4割、2年生の3割、1年生の1割をその実力でもって自主退学に追いやった、アカデミアの“修羅の世代”を作り出した張本人でもある。
当時世界チャンピオンだったデュエリストのフィールドを、瞬く間に焼け野原にしてワンキルを決めた時には大きなニュースになっていたのをよく覚えている。
母さん曰くこれでも大分丸くなったみたいで、(生還の宝札)が禁止になる前は、とある有名な世界大会で父さんが出場すると判明した瞬間に9割のプロが棄権、残りが父さんに惨敗して引退するという伝説的な話がある。
今まではバラエティ番組とかデュエル劇で人気俳優、デュエルの解説みたいな扱いだったのに……でもテレビでの父さんのデュエルを見れる貴重な機会。この時間帯は私の好きなアニメやってる時間だけど、逃す手は無い。
透子
「あら、そういえば優華の好きなアニメ……“アラメシア英雄譚”はちゃんと録画してるから、安心して父さんの予選デュエルに集中して?」
流石が母さん。よく分かってる。
司会者が現れ、いよいよデュエルが始まる。相手は……修道女みたいな格好をしている女性デュエリストだ。
エリス
「私の名はシスターエリス。貴方は神聖なる墓場を荒らす悪霊。許す訳にはいきません!」
(エクソシスターミカエリス)の衣装を身に纏ったデュエリストはデュエルディスクを構え、黒いローブを着た不気味な仮面を着けた父さんを睨む。
パスカ
「初対面の相手を悪霊呼ばわりとは中々に失礼ですね。私の名はパスカ。私は案内人の身ではありますが、多少の荒事への心得が御座います。どうか遠慮なさらず、潰すつもりでかかってくださいませ」
エリス·パスカ
「デュエル!」
エリス
「私の先攻です!ドロー!」
エリス 手札5→6
エリス
「私は(エクソシスター·ステラ)を通常召喚!効果発動!1ターンに1度、手札のエクソシスターを特殊召喚!来なさい!(エクソシスター·ソフィア)!」
軍服の様な衣装を身に纏うシスターが2体場に並ぶ。彼女らのレベルは4。それが意味する事は……
エリス 手札6→5→4
エリス
「(エクソシスター·ソフィア)の効果発動!フィールドにエクソシスターモンスターが存在するので1枚ドロー!そして(エクソシスター·ステラ)と(エクソシスター·ソフィア)でオーバーレイ!握る剣で魔を祓え!エクシーズ召喚!(エクソシスター·ミカエリス)!」
銀河の渦より現れたのは、長剣を握る金髪の女戦士。
エリス 手札4→5
エリス
「(エクソシスター·ミカエリス)の効果発動!素材の(エクソシスターステラ)を取り除き、デッキからエクソシスター魔法罠(エクソシスター·バディス)を手札に加え、カードを3枚セットしてターンエンド!」
エリス 手札5→6
エリス LP4000 手札3 伏せ3
エクソシスター·ミカエリス 素材1 攻2500
パスカ LP4000 手札5 伏せ0
パスカ
「むぅ……厄介な布陣ですね。私のターンドロー!」
パスカ 手札5→6
パスカ
「スタンバイ、メインフェイズ。私は手札から(未界域のサンダーバード)の効果発動!手札を選んで捨ててください。(サンダーバード)が当たればそのまま捨てられ、外れれば特殊召喚して1枚ドローです!」
エリス
「チェーンして(儚無みずき)を発動!このカードを手札から捨てて発動!相手がメインフェイズ及びバトルフェイズに効果モンスターの特殊召喚に成功する度に、私はそのモンスターの攻撃力分だけLPを回復します!ただし、この効果で自分のLPが回復しなかった場合、エンドフェイズに私のLPは半分になります!私は右から2番目を選びます!」
シスターの様な格好の少女がフィールドに現れると、その身体が光の粒となって拡散し、側にした犬の霊がエリスの周りを回り始めた。
エリス 手札3→2
パスカ
「選ばれたのは(暗黒界を統べる咆哮)!捨てて特殊召喚して1枚ドロー!そして捨てられた(咆哮)の効果発動!捨てられた場合、デッキから暗黒界モンスター(暗黒界の龍神グラファ)を墓地へ送る!(暗黒界の取引)発動!お互いに1枚ドローして1枚捨てます。捨てられた(ブラウ)で1枚ドロー!」
雷を纏う大きな鳥がフィールドに降り立つと、犬の霊が淡く光り、エリスの身体が緑に輝いた。
パスカ 手札6→5→4→5→4→5→4→5
エリス LP4000→6700 手札2→3→2
パスカ
「(暗黒界の門)を発動!墓地の(ブラウ)を除外して効果発動!1枚捨てて1枚ドロー!」
エリス
「チェーンしてトラップ発動!(エクソシスター·バディス)!800LPを払い、デッキからエクソシスターモンスター(エクソシスター·イレーヌ)を特殊召喚し、更に特殊召喚したモンスターにカード名が記されたモンスター(エクソシスター·ソフィア)を特殊召喚!」
パスカ 手札5→4→3→4
エリス LP6700→5900
門が開かれるなか、手を繋ぎフィールドに躍り出る2人の少女。攻撃力は1000にも満たないモンスター。
パスカ
「……捨てられた(スノウ)で(セルリ)を手札に」
エリス
「……(門)が除外するのは発動する為のコスト。逆順処理する時には既に除外を終えているからエクソシスターがエクシーズ出来ないという訳ですか……でもただでは起きません!速攻魔法(エクソシスター·アーメント)!800LPを払い、フィールドの(エクソシスター·イレーヌ)を対象に、エクシーズチェンジします!来なさい!(エクソシスター·アソフィール)!」
少女が光に包まれたと思ったら、光の弓矢を握る戦士へと変身していた。
エリス LP5900→5100
透子
「エクソシスターは相手が墓地からカードを動かすと1体でエクシーズ召喚するテーマ。暗黒界との相性はかなり悪い。でも基本的な打点は低いから、捲れればそのまま押し切れる」
父さんのデッキは異常な展開力が注目されがちだけど、その展開力から繰り出されるモンスターによる捲りも強力。まだ勝負は分からない。
エリス
「(エクソシスター·アソフィール)の効果発動!エクソシスターモンスターを素材にエクシーズ召喚した場合、墓地のモンスター効果を発動出来ない!」
墓地のモンスター効果の封印!?効果を発動しない(グラファ)は通せるけど、フィールドにはエクソシスターが1体残っている。もし(グラファ)を特殊召喚したら、更にエクソシスターエクシーズが展開される事になる。
パスカ
「ふむ……バトルフェイズ!(サンダーバード)で(ソフィア)を攻撃!」
巨大な鳥から放たれた雷が中性的な少女を容易く貫いた。
パスカ
「これで墓地から特殊召喚出来ますね?メインフェイズ2!私は(ブラウ)を召喚して戻して(グラファ)!カードを2枚セットしてターンエンド!」
パスカ LP4000 手札3 伏せ2
フィールド(暗黒界の門)
暗黒界の龍神グラファ 攻3000
未界域のサンダーバード 攻2700
エリス LP9100 手札2 伏せ0
エクソシスター·ミカエリス 攻2500 素材1
エクソシスター·アソフィール 攻2100 素材1
エリス
「私のターンドロー!」
エリス 手札2→3
エリス
「(エクソシスター·ミカエリス)の効果発動!素材である(エクソシスター·ソフィア)を取り除き、デッキからエクソシスター魔法罠(エクソシスター·パークス)を手札に!」
エリス 手札3→4
パスカ
「それを通すわけには行きませんね!カウンタートラップ発動(強烈なはたき落とし)!相手がデッキからカードを手札に加えた時に発動でき、相手は手札に加えたそのカード1枚を捨てます!よって(パークス)は捨てていただきます!」
地面から這い出た腕がエリスさんの手を叩き、それによりエリスさんは(エクソシスター·パークス)を取りこぼしました。
エリス
「ッ……ですがまだです!(エクソシスター·アソフィール)の効果発動!素材である(エクソシスター·ソフィア)を取り除き……(グラファ)を手札に戻します!」
パスカ 手札3→4
エリス 手札4→3
エリス
「今こそ切り札を切るときです!私はランク4の(エクソシスター·アソフィール)とランク4の(エクソシスター·ミカエリス)でオーバーレイ!奇跡と奇跡結ばれし時、もたらされるは希望の光。その輝きで、全ての魂を救済せよ!集え!ランク8!(エクソシスターズ・マニフィカ)!」
銀河に呑まれる2人の聖職者。渦は爆発し、2人の聖職者はしっかりとお互いの手を握り各々の武器を構えた。2体のランク4でエクシーズですって!?
エリス
「(エクソシスターズ·マニフィカ)の効果発動!お互いのターンに1度、素材である(エクソシスター·ミカエリス)を取り除き、相手のカードを選んで除外します!私は(未界域のサンダーバード)を除外します!鎮魂の光を受け消え去りなさい!」
二人の聖職者から放たれた強烈な光が(サンダーバード)を呑み込むと、その姿は跡形も無く消え去っていた。
エリス
「(エクソシスターズ·マニフィカ)は2回攻撃が出来ます!このモンスターの攻撃力は2800!これで終わりです(エクソシスターズ·マニフィカ)でダイレクトアタック!」
パスカ
「トラップ発動(マインドクラッシュ)!私の手札には自己蘇生出来る暗黒界モンスターが1枚存在します。よって当たれば生存、外れれば敗北です。私が宣言するのは(魔法使いの里)!」
こんなにもピンチな状況なのに、父さんは笑っている。仮面で目が見えなくても雰囲気で分かる。きっと強い人と戦えて嬉しいんだろう。
地面から湧いて来た手から閃光が放たれる。エリスの手札からは手札が落ちず、逆に父さんの手札から(暗黒界の軍神シルバ)が捨てられた。
パスカ
「捨てられた(シルバ)の効果発動!墓地から特殊召喚!」
エリス
「チェーンして(エクソシスターズ·マニフィカ)の効果発動!相手が効果を発動した時に発動!素材である(エクソシスター·ミカエリス)をEXデッキに戻し、その後そのモンスターを自分フィールドのこのカードを素材にしてX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚します!エクシーズチェンジ!(エクソシスター·ミカエリス)!」
2人の修道女は銀河の渦の元に1つになり、剣を握る戦士へと変化した。そして墓地から(シルバ)が飛び出してくる。
パスカ 手札4→3
エリス
「(エクソシスター·ミカエリス)の効果を発動!エクソシスターモンスターを素材にエクシーズ召喚に成功した場合、相手のフィールド·墓地のカード。今回はフィールドの(暗黒界の軍神シルバ)を除外!」
女戦士がその手に握る剣を掲げると、眩い光がフィールドを包み(シルバ)を消滅させた。
エリス
「バトルフェイズに特殊召喚されたモンスターは攻撃出来るので(エクソシスター·ミカエリス)でダイレクトアタック!」
女戦士は影すら見えない速度で剣を振るい父さんを切り裂いた。
パスカ LP4000→1500
エリス
「私はカードを2枚セットしてターンエンドです!」
エリス LP9100 手札1 伏せ2
エクソシスター·ミカエリス 攻2500 素材1
パスカ LP1500 手札3 伏せ0
パスカ
「フフフ……返せるか否かは引き次第。私のターンドロー!」
パスカ 手札3→4
パスカ
「……天は私に微笑んだ!私は手札から(暗黒界の案内人パスカ)の効果を発動!手札の(暗黒界の龍神グラファ)を見せて発動し、このカードを特殊召喚して2枚捨ててその後捨てた枚数分、つまり2枚ドロー!」
父さんのフィールドに降り立ったのは、父さんと瓜二つのモンスター。世界に1つしかない父さんだけのカード。
パスカ 手札4→3→2→4
パスカ
「捨てられた(グラファ)と(セルリ)の効果発動!(セルリ)はそちらのフィールドに守備表示で特殊召喚され、(グラファ)で(ミカエリス)を破壊!」
エリス
「チェーンしてトラップ発動(エクソシスター·バディス)!800LPを払い(エクソシスター·エリス)と(エクソシスター·ステラ)を特殊召喚です!」
エリス LP9100→8300
黒い瘴気に飲まれて(ミカエリス)が破壊されると即座に2人のシスターがフィールドに降り立った。
これで父さんの墓地からの展開を牽制するつもりなんだろうけど……父さんは焦っている様子を全く感じない。
パスカ
「相手フィールドの(セルリ)の効果発動!私は手札の(ゴルド)を捨てます。捨てられた(ゴルド)の効果を発動!墓地から特殊召喚して、相手に捨てられたのでさらに2枚のカードを対象に破壊!私は(エリス)と(ソフィア)を対象に破壊!」
エリス
「ッ……チェーンして速攻魔法(エクソシスター·アーメント)を発動!800LPを払い、自分フィールドのエクソシスターモンスターをエクシーズチェンジします!私は(エリス)を対象にエクシーズチェンジ!来て!(エクソシスター·ミカエリス)!」
墓地から(ゴルド)が飛び出すと、その手に持つ大きな斧で2人の修道女を両断しようとするも、1人が光に包まれ回避された。
エリス LP8300→7500
パスカ 手札4→3
光が止むと、仇を見るような目で睨む(ミカエリス)の姿があった。
エリス
「(エクソシスター·ミカエリス)の効果発動!墓地の(グラファ)を除外!」
剣を掲げる女戦士。剣から強い光が放たれ墓地の(グラファ)を消し去った。
パスカ
「(未界域のビックフット)の効果発動!さぁ!手札を選んでいただきます!」
エリス
「真ん中です!」
パスカ
「選ばれたのは(暗黒界の龍神グラファ)!捨てて特殊召喚して1枚ドロー!捨てられた(グラファ)の効果発動!(ミカエリス)を対象に破壊!」
フィールドに降り立つ大きな猿。それと同時に墓地から黒い瘴気が立ち込め(ミカエリス)を破壊した。
パスカ 手札3→2→1→2
パスカ
「フィールドの(ゴルド)を戻して墓地のこのカードを特殊召喚します。いでよ!暗黒界を統べる者!(暗黒界の龍神グラファ)!」
パスカ 手札2→3
地面を割って出てきたのは、刺々しい姿をしたドラゴン。でも悪魔族。
(グラファ)はフィールドの(暗黒界の門)の光を受けて、重厚な咆哮をあげる。
パスカ
「ドローしたカードが強いですね……私は(魔界発現世行きデスガイド)を通常召喚!効果発動!デッキからレベル3以下の悪魔族モンスター(魔サイの戦士)を特殊召喚!そして私はレベル3の(デスガイド)とレベル3の(魔サイの戦士)でオーバーレイ!いでよ!異次元を繋ぐ海蛇!(虚空海竜リヴァイエール)!」
オーバーレイネットワークから飛び出してきたのは、羽の生えた青色の海蛇。除外から下級モンスターを帰還させる便利なモンスター。
そして素材の(魔サイの戦士)には優れた効果がある。
パスカ 手札3→2
パスカ
「(リヴァイエール)の効果発動!素材の(魔サイの戦士)を取り除き、除外されている(スノウ)を特殊召喚!更に墓地へ送られた(魔サイの戦士)の効果発動!デッキから悪魔族モンスターを墓地へ送る!よって私は(グラファ)を墓地へ送り、即座に(スノウ)を戻して(グラファ)特殊召喚!」
パスカ 手札2→3
パスカ
「私は(グラファ)と(ビッグフット)でオーバーレイ!高潔なる騎士よ!今こそ聖なる力を以て、我を守護する盾となれ!エクシーズ召喚!ランク8!(神竜騎士フェルグラント)!更に(門)の効果発動!墓地の(ブラウ)を除外して1枚捨てて1枚ドロー!捨てられた(スノウ)で(暗黒界の援軍)を手札に!」
フィールドに巨大な剣を握る騎士が現れると、(門)が半開きになり怪しい光が強く放たれる。
パスカ 手札3→2→3→4
パスカ
「(フェルグラント)の効果を発動!素材の(グラファ)を取り除き、自身の効果を無効にして完全耐性を付与する!セイントバリア!」
パスカ
「(暗黒界の援軍)を発動!(スノウ)を特殊召喚して1枚捨てる!捨てられた(セルリ)の効果を発動!そちらに特殊召喚され、私は手札を1枚捨てます!」
パスカ 手札3→2→1
エリスのフィールドに降り立った小柄な悪魔は、不気味な魔法を放ち父さんの手札を1枚消した。
パスカ
「相手に捨てられた(パスカ)の効果発動!墓地から特殊召喚して除外されている悪魔族モンスターを2体まで手札に加えるか特殊召喚出来る!よって私は(グラファ)と(ブラウ)を手札に加えます!(スノウ)を戻して(グラファ)を特殊召喚!」
パスカ 手札2→4→5
パスカ
「私は(グラファ)2体でオーバーレイ!大いなる龍よ、その身に聖なる力を刻み込み、我らに盾突く愚者を焼け!エクシーズ召喚!ランク8!(聖刻神龍エネアード)!効果発動!素材の(グラファ)を取り除き、手札の(グラファ)をリリースして(セルリ)を破壊します!」
所々に金の光が輝く真っ赤な龍のブレスに飲まれて消える小柄な悪魔。これでフィールドはガラ空きになった。
パスカ
「(パスカ)を戻して(グラファ)!バトルフェイズ!(エネアード)でダイレクトアタック!ヒエラティックシュート!(グラファ)2体でダイレクト!暗黒の吐息ニレンダァ!」
パスカ 手札5→6
エリス
「私の負け……ですか……」
真っ黒なブレスがエリスを呑み込み、LPを消し飛ばした。
エリス LP7500→4500→1500→-1500
デュエルが決着するが、観客からの歓声は大きくはない。多くの観客はエリスの逆転を望んでいたんだと思う。
その後、簡単なインタビューが終わってニュースが始まった。
優華
「やっぱり父さんは凄いね。墓地封じを仕掛けてくる相手にも勝てるんだから」
透子
「まぁね、でもやっぱり私は全盛期と比べちゃうわ。(生還の宝札)を積んで、60枚デッキで手札交換し続けて、相手を巻き込んで融合モンスターを出していたあの頃を……」
時々母さんが話す父さんの全盛期。私が物心ついた時にはすでに(生還の宝札)は禁止になってたから、その時の事は分からない。
母さんの夕食を食べ終えた私は、食器を片付けて歯を磨いて自分の部屋のドアに手をかけた。
ドアを開ければ、ある程度片付いた部屋が私を出迎えてくれる。私は何も考えずにベッドに飛び込み寝転がる。
優華
「明日から新しい生活が始まる……そこに私のデッキを受け止めてくれるデュエリストはいるのかな」
自分で言うのも変だけど、私はデュエルが強い。両親がプロデュエリストだからカードに恵まれてるのもあるけれど、相手のデッキをすぐに把握してマストカウンターに妨害を当てるのが他の同級生よりも上手いという自負がある。
それは相手からしたら、自分の展開を封殺され、貧弱極める攻撃力のモンスターにじわりじわりと追い込まれる風に見えるらしく、多くはデュエリストとしての自信を無くし、酷いとトラウマのあまり自分の愛用していたであろうデッキをゴミ箱に投げ捨ててしまう事もあった。
優華
「……このデッキを受け止めてくれるデュエリストはいるのかな」
机の端に乗っているのは、カードショップでも使わない私のお気に入りのデッキ。使わなくなったのは小学校3、4年の時ぐらいからだっただろうか。
初めて父さんからカードを貰って、読めない漢字を解読しながら、父さんの助力をほんの少し借りながらなんとか組み上げたデッキ。今思うと荒削りとすら呼べない様なデッキだったけど、当時の同級生相手にはオーバーパワーもいいところだった。
除外、モンスターの大量破壊、エクシーズ召喚の無効、破壊肩代わり。ただでさえ2000超えの打点を越えるのに手札を2枚か3枚使うぐらい苦労するなか、ターンを重ねるごとに増えていく最上級モンスター。相手のフィールドがガラ空きで、コチラのフィールドが最上級モンスターで埋まっていることもザラだった。
それから学校で私とデュエルする人はいなくなった。一応お気に入りのデッキも調整はしているけどデュエルで使ったことはない。
でももしも、もしも今までよりもずっと強いデュエリストがいるのなら、きっとこのデッキもオーバーパワーじゃなくなって、楽しくデュエルが出来る。今はそんな人がいるのを願うしかない。
優華
「私よりも強いデュエリストが居るならば……力を貸して。私の“王様達”」
私は明日からの生活に思いを馳せて、静かに眠りについた。
これにて暗黒と光道は完結です。
初めて小説を投稿して思った事は、感想が来ると凄く嬉しくなるという事です。余りに嬉しすぎて、投稿して感想が来てないか何回もページを開いてしまうぐらい嬉しかったです。
そして遊戯王小説の難しさも感じました。手札の管理、墓地のカードの把握、キャラクターをどう動かすか、どうやって追い込んで逆転させるかもかなり悩んだものです。これらを上手く表現出来る他の遊戯王小説作家の凄さを強く実感できました。
最後に、この作品をご愛読していただき、本当にありがとうございました。番外編であるイリアステル介入編をつくるために5D'sを見てくるので、期待しない程度にお待ち下さい。