迷える魂は安眠を求める   作:ハリボー

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プロローグ2

ーアイリーンー

 

アルバレス帝国。その国の皇帝に仕えるスプリガン12。その1人が私アイリーン。かつては、とある王国の女王だった。だが、何もかもを失った。失うはずがなかった物も、失いたくなかった者も。

 

失意の中、陛下は私に手を差し伸べてくださった。

 

陛下に仕え、何年目になるだろう。

 

私は、陛下の命令を賜り無事完遂をしたのちに帝国へと帰還するところに、1人の子供を見つけた。

 

普段ならば気にもとめない。

 

しかし、私でなくとも誰でも目に止まるような状態だった。

 

子供を中心に、水溜りの如く周囲に血が溜まり、髪は私の緋色にさらに黒を強くした色。元は黒髪であったのだろうが、自身の血かそれとも何か別の血で染まってしまったのだろう。周囲の血もまた、自身の血だけではあるまい。それだけでなく、右手以外の手足はあらぬ方向へと曲がり、何かに噛み付かれたかのような・・・いや、まてこんなにも大きな噛み跡を残せる程の生物がこの辺りにいただろうか?

 

では、別の所からこの子供は移動して来た?

 

明らかに重症の状態で?

 

移動系の魔法を会得しているのか?

 

魔力は感じる。

 

それも...現段階で()()()()()()()()()

 

そう、私が思わず気に留めてしまったのはそのせいだ。

 

まだ10いや、その半分にも届いていないであろう齢でこの保有量。

思わず気に留めて思考してしまうほどに。

 

・・・私の中で何を思ったのかいまだに思い出せない。

 

かつて捨てた我が子への贖罪から?

 

それとも、この子供に興味を持ったから?

 

気がつけばその子供を連れ帰り、治療を施していた。

 

そして...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ウオェ」

 

「またですか。吐いている暇はありませんよミストガン。もう一度です、構えなさい。」

 

「・・・は・・・・・・い。」

 

 

 

子供を拾って数年...私の弟子として育てた。

 

実の子を捨てた私に、この子の義母を名乗る事はない。

 

師としてこの子を魔導士にする。それでいい。

 

この子には才能がある。

 

魔力操作のみならず、体術、勉学もそれなりに出来るようだ。本人は勉強はあまり好きではなさそうだが。

 

朝の鍛錬から始まり、午前は勉学、午後は鍛錬それが終われば私たちが暮らす屋敷に戻り1日の疲れを風呂で癒し、眠るまで魔力操作技術を上げる為、魔力を練り循環させる。それを毎日行わせている。

 

陛下にはこの子の事は伏せている。

この子には、いつか旅をさせようと考えている。

世界を知り、多くのことを学んでもらいたい。

魔法、その土地その国柄とか好きな事を精一杯やって欲しい。

実の子に、させてあげられなかったら...せめてミストガンには。

 

「さぁ、いくわよ!」

 

そして、今日もこの子に修行をつける。

 

 

 

 

 

 

ーミストガンー

 

師匠に拾われ早数年。死にかけている。

コレは他に言いようがない。

 

修行は厳しい。

 

時折逃げ出したくなる。

 

何度かサボろうとしたこともあった。

 

けれども、すぐに見つかり説教されながら修行をさせられる。

 

俺には魔法の才能があるらしい。

 

ある日、なぜそんなことが分かるのかと質問した事がある。

 

返ってきたのは「お前の魔力量とその魔力操作の高さ」だと言う。

 

師匠が俺を初めて見つけた時、それはもうひどい有様だったらしい。

 

俺にはそこらへんの記憶がない。意識がハッキリした時には、今住んでいる師匠の屋敷のベッドの上で治療を受けた後だった。

 

聞けば、俺が目覚めるまで二ヶ月もかかったらしい。

傷痕は今でも体に残っている。

 

普通ならば、屋敷まで持たなかった。

 

だが、俺は無意識のうちに魔力を操作して傷口からの出血を防いでいたらしい。

 

無意識ながらもそれだけの精密な魔力操作、それを見て才があると判断したらしい。

 

さっきから「〜らしい」とばかり確証がないように説明しているが、自分自身自覚がないので勘弁願いたい。

 

さて、最近になって師匠にそろそろ魔力操作を極める修行から、俺自身に合った魔法を探す方へと修行をシフトすると伝えられた。

 

「・・・俺に合う魔法ですか?」

 

「そう。コレばかりはその者の感性だったり感覚、はたまた直感などがあります。自然に発現する事例もありますが、極めて稀です。だからと言って、合わない魔法というものは存在はしません。この場合の合わないは、その魔法をどこまで極めることができるのかという事です。」

 

なるほど。例えば、俺が師匠と同じ高位付与魔法を覚えたとしても、師匠と同じ域にまで鍛えられるか分からない。恐らくは無理だろう。

 

「・・・俺に合う・・・魔法か。・・・・・・うっ!!」

 

「ミストガン!どうしました!?」

 

俺に合う魔法は何か?それを想像しようとした瞬間、頭にあの夢が浮かび上がる。その事を師匠に言う。

 

 

 

さて、少し話は変わるが、個人的な話をさせてもらう。

 

皆は夢を見るか?

 

偶には見る者もいるだろう。では、質問の仕方を変えよう。

 

皆は、同じ夢を毎日見るか?毎晩毎晩一つの夢だけを数年間欠かさずにだ。

 

俺は、毎晩死ぬ夢を見る。

 

場所はこの世界ではないどこか。

 

塔のような建物が多く立ち並び、夜だというのに昼間のような場所で多くの人に囲まれ、何かを叫ばれ己自身はそれを嘲笑う。そして頭に衝撃を受け、目が覚める。

 

目が覚めると、とてつもない疲労感に加え水をかけられたかのように寝汗...いや、この場合は冷や汗か?まぁどちらでも変わらないが。

今は慣れたものだが、最初の頃は酷かった。目が覚めれば吐き、魔力が制御出来ずに暴走。その度に師匠が助けてくれた。感謝しても仕切れない。

 

勿論、夢の内容は師匠も知っている。

 

「・・・」

 

師匠?

 

「ミストガン」

 

「・・・はい。」

 

「お前が、ここ最近で1番長く眠っていた時間はどのくらいだ?」

 

「・・・二時間程かと」

 

「そうか。では...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本格的な魔法の修行を始めてはや一年が経った。

 

「・・・風よ。」

 

吹く風に切断を付与したのだろう。不可視の刃となって俺を襲う。

 

ならば

 

「三重魔法陣 鏡水」

 

見えずとも、俺に襲い掛かるのであれば、その攻撃を跳ね返せばいいだけの事。

 

「前ばかり見ててもいいのかしら?」

 

「・・・!」

 

師匠の言葉でようやく気がつく。

 

頭上からの攻撃。不味い!攻撃範囲が広すぎる!

 

「がぁぁぁぁぁぁあ!」

 

直撃し、周囲も土煙が舞う。

 

「まったく。周囲にも気を配れと何度言えば分かる。設置型の魔法もあれば、超遠距離魔法、時限式で発動するものまでもあるのだ。いついかなる時も、警戒を...「それは今のあなたにも当てはまるのでは?」っ!」

 

いつの間にか、アイリーンの体を縛る拘束具。

そしてミストガンが煙が集まるようにして現れる。

 

「先程までのお前は幻術か。」

 

「はい。思念体では貴女にはすぐに見破られてしまいますので。」

 

アイリーンは、どのタイミングでミストガンが幻術を用いて隠れていたかを考える。

 

(まずは、私に気が付かせなかった事は合格ね。思念体みたく、触れられれば気がつかれる、なんてこともなさそうね。後はどれだけ維持出来るのか。私を拘束している魔法、恐らくはコレも幻術。魔法を併用しているところを見ると、それほど魔力消費は大きくないとすれば、数はそれなりに作り出せそうね。)

 

「では、そろそろ眠って下さい。」

 

眠りの属性を持たせた魔力をアイリーンにめがけ放つ。

 

「大気に爆破をエンチャント!」

 

「!」

 

無差別爆破攻撃。

 

「ぐっ!」

 

「チェックメイトよ」

 

喉元に杖を突き立てられる。コレが命をかけた戦いだったならば俺は今死んだ。

 

「まいりました。師匠」

 

「今日は終わり、帰るわよ。」

 

え?おかしい、まだ実戦訓練を始めて1時間と少ししか経っていない。それに、いつもなら俺が魔力切れ、もしくは戦闘不能になるまで続けるのに...なぜ?

 

「・・・師匠?」

 

俺の問いかけに答えてはくれず、師匠は背を向け屋敷へと戻っていく。疑問に思いながらも、俺も後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

夜、なぜか師匠に呼び出された。

 

「ミストガン」

 

「・・・はい」

 

「私がお前に勧めた魔法、なぜその魔法だったか分かりますか?」

 

「師匠はあの時、俺に合う魔法と言っていました。そして俺の見る夢の話。」

 

「私は貴方が、いいえこの場合は貴方の魂が安らかな眠りを求めていると思った。」

 

俺の魂が?

 

「コレは私の想像だけれど、もしかしたら貴方の見る夢は実際に起こったことかもしれない。貴方の魂に実際に起こったこと、それを貴方に夢として見せている。」

 

それって...。

 

「俺の前世に起きた事・・・と言う事でしょうか?」

 

「確証はないけれどね。」

 

そんな事、想像もしていなかった。

俺の前世、俺の魂の前の記憶。

 

「貴方の髪・・・結局元の色に戻ることがなかったわね。」

 

「なんですいきなり?・・・・・・まぁ、最初こそ黒と赤が入り混じっていましたが・・・今は深緋色(こきあけいろ)ですね。」

 

「私より黒みが強いわね。」

 

「・・・元が黒ですから。」

 

そう、何かの返り血と俺自身の血が髪に染み込んだかのように、俺の黒髪?は深緋色に年々変わっていった。

 

「それで要件は?」

 

「・・・ミストガン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方旅に出てみる気はないかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明朝、まだ薄暗い中、屋敷の前で俺と師匠の姿。

 

師匠はいつものヘソだしスタイル。

 

一方の俺は、一目で旅の服装だと分かる。

 

昨晩、いきなり旅に出る気はないかと問われ困惑していた。

 

即座に俺は、質問した。

 

すると

 

「貴方は、十分に力をつけた。それこそ、そこいらの魔導士など歯牙にもかけないほどに。それに、貴方の魔法も教えられる事は全て教えたわ。ただ、私の使う魔法とは違うから、教えた以上の事を教える事はもう出来ない。その先は貴方自身で極めていくしかない。今の貴方は、井の中の蛙と言っても過言ではないわ。旅をして世界(大海)を知りなさい。そして、返ってきた時は、成長した姿を見せてちょうだい。」

 

「・・・でも、俺は」

 

まだ、貴女に魔法を教わりたい。貴女と語り合いたい。貴女と食事をしたい。貴女と歩きたい。

 

貴女に・・・・・・命を助けられた恩を返せていない。

 

「・・・」ツゥー

 

涙が静かに流れる。しょうがない子だとでも言いたげな優しい目。

何を言うわけでもなく、ただ抱きしめてくれる。

 

そしてそのまま眠りに落ちる。

 

初めての、夢を見ない眠りに。

 

 

 

 

 

 

それが昨夜の出来事。

 

さて、そろそろ行くか。

 

「では、師匠・・・「まて」?」

 

いきなりで鼻をくじかれる。

 

「コレを」

 

渡されたのは一本の杖。

 

触れずとも分かる。この杖に込められた魔力、使われた素材、何よりも俺の魔法に最適化され、俺の魔法のためにあるような杖。

 

「コレは⁉︎」

 

「私が素材から一から作り、そして私の魔力を込めた。もしもの時の保険程度ですがね。そして、免許皆伝の意味も含めています。受け取りなさい。」

 

渡された杖を、両手でしっかりと受け取る。

 

「・・・行って参ります!」

 

「ええ、行ってらっしゃい!」

 

貴女の期待に応えられるよう、そしてこの杖に恥じぬよう強くなると誓う。

 

「行ってらっしゃい。・・・あの子の分まで世界を見て来なさい。バカ弟子(息子)。」

 

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