迷える魂は安眠を求める   作:ハリボー

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酒場街マウ【後】

宿に戻り備え付けのシャワーを浴び眠る。

 

いつもならば。

 

宿に戻り、時間帯を見計らって再び外へ。

 

街の外に出て、街を一望できる高い場所まで登る。

 

「・・・見つけた。」

 

酒場で、去り際のナナに付けておいた俺の魔力を見つけた。

 

彼女、恐らく......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???ー

 

今宵は・・・誰を?

 

いや、あの()だ。

 

あの男にしよう。

 

ここは、あの男の泊まる宿。

 

その部屋の前まで来るが、部屋の中から気配がない。

 

まさか?

 

鍵は閉まっている。合鍵を使い中に侵入するも、男はいなかった。

 

では奴の荷物をとも思ったが、それすらもない。

 

ならば、別のターゲットにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿から出て、別のターゲットを探し、やっと見つけた。

 

さぁ、狩るとしよう。

 

魔法発動し、気絶させようとした時。

 

「!」

 

咄嗟にこちらに向けて、砂魔法でこちらを逆に攻撃してきた。

 

「やっと釣れたわ。貴方がここ最近好き勝手やっている魔導士ね?私は人魚の踵のナナ。あなたを捕らえさせてもらうわ。」

 

「・・・」

 

面倒な。

 

「いくわよ!砂鞭(サンドウイップ)

 

砂が鞭の様にしなり、襲い掛かってくる。

 

咄嗟に迎撃・・・だが

 

「かかったわね、砂霧(サーブルミスト)

 

「なに!」

 

直撃の瞬間、砂鞭が解かれまるで霧の様に周囲を包む。女の姿形すら見えなくなった。

 

「ここは私のフィールド。コレで終わりよ。」

 

仕方ない

 

「砂の霧か・・・ならばこちらも霧だ。眠りの霧(スリーピングミスト)

 

奴の砂霧に私の眠りの霧を混ぜる。

 

「しまっ・・・ぐっ!」

 

咄嗟にナナは砂霧を解除。しかし、僅かながら眠りの霧を吸い込み膝をつく。

 

「私の視界を奪うまでは良かったな?しかし、砂霧の中に隠れていたお前にこれはいささか効くだろう?」

 

「くそっ!」

 

ククク、さぁ眠れ。安心して眠れ。命はとらない。もらうのはその身に付けたアクセサリーと金だ。今晩は雨も降りそうにない。一晩ぐっすりとおやすみ。

 

「うぅ・・・せめ・・・て・・・・・・貴様の・・・か」

 

最後の抵抗虚しく、眠りに落ちた。

 

「さてと」

 

さっさと回収して戻ろう、そう思った時

 

 

 

 

リンッ!

 

 

 

 

「誰だ!」

 

馬鹿な、この周囲にはまだ眠りの霧が展開している。

 

それなのに、こちらに近づく者がいる。

 

右手に一本、その背には四本の杖を携え、顔はバンダナとマスクで隠した高身長の男。

 

それは最初のターゲットだった男。

 

「ミストガン!」

 

「・・・今宵は満月・・・・・・夢か現か。」

 

そう言ったミストガンの横に佇むナナ。

 

「!」

 

振り返れば眠ってしまったナナの姿はなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

ーミストガンー

 

「砂霧」

 

ナナが砂霧を展開した瞬間、被せる様に魔法を発動させる。

 

「影法師」

 

すると、もう1人のナナが現れる。だが、コレはただの幻術で作り出したものではない。

 

即座にナナの背後に回り小声で呼びかける。

 

「・・・ナナ」

 

「ミストガン!なぜここに!」

 

「・・・酒場で去り際の君に私の魔力をつけた。」

 

「・・・それを辿って!?ミストガン、それ見方によっては犯罪だからね?」

 

「・・・すまない。」

 

「それより、コレ私?幻術よね?でも何で()()()()が!?」

 

この魔法、影法師は対象者の魔力をも作り出せる。しかし、一度相手に魔力による干渉を受けていなければ発動が出来ない。今回は酒場で彼女の魔眼を受けていた為、発動させることが出来た。

 

「つまり、一度でも貴方に魔力による干渉を行った者は、自身の魔力までも真似られるって事⁉︎」

 

「・・・真似ではなく、この者と全く一緒な者を作れる。そしてこの幻術は、実態を持つ。」

 

「バカな!幻術は衝撃を与えれば消滅する!」

 

「・・・傷も負えば食事も出来る。ただし、魔力が尽きるまでだが。」

 

「よかった、一応弱点はあるんだな。」

 

「・・・当たり前だ。」

 

さて、そろそろ動くとしよう。

 

「・・・ナナ、今から砂霧をコイツが代わりに維持する。」

 

「もう疑問を持つのも疲れるわ。なら協力、お願いね?」

 

「・・・ひとつ聞く、なぜあっさりと協力を受諾する?」

 

「あら?根拠が必要?」

 

「・・・」

 

「そうね、私の魔眼は相手の魔力量、それに魔法の系統を色として見ることができる。貴方の魔力の色は今まで見たことがない。相手にするなら怖いけど、味方としてならこれ以上頼もしいことはないわ。名実ともに・・・そうでしょう?」

 

 

 

 

 

フェアリーテイル

 

 

S級魔導士 ミストガン

 

 

 

 

「・・・知っていたか。」

 

「逆に貴方を知らないフィオーレの魔導士はいないわよ?」

 

あの驚きの中には、俺を知っているが故の驚きも含まれていたか。

 

その時

 

「眠りの霧」

 

「不味いわ!この魔法、周囲一帯を眠らせるきよ!」

 

「・・・問題ない。」

 

 

リンッ!

 

 

眠りの魔法において、師匠から教えを授かったこの魔法以上のものを俺は認めない。眠りの魔法において、負けるわけにはいかない。

 

「・・・寝待月」

 

眠りの霧が発動したまま、俺の寝待月によって効力を失い眠る。

 

「ミストガン!」

 

「・・・今宵は満月・・・・・・夢か現か。」

 

相手の視線は俺から隣のナナに、そして振り返る。幻術の方を見るが、既に解除しているので跡形も無い。

 

「馬鹿な!眠りの霧があるのになぜ眠らない!」

 

「・・・簡潔に言えばお前の魔法は眠った。・・・これ以上の説明は省かせてもらう。」

 

フードを被っていて顔は見えないが、雰囲気から憎悪の念が久々と伝わってくる。

 

「ミストガン!今までどこに⁉︎」

 

「・・・俺を狙って宿の部屋まで侵入したお前に、言う必要はあるまい。・・・そして、俺がいないと分かれば次に狙われるのは、ナナだということは予想はついていた。」

 

「・・・なぜ!」

 

「・・・ナナはあからさまに高級ブランドのアクセサリーを付けていた。」

 

「まぁその通りだけど、何で普通にファッションと思わないの?」

 

「・・・着ている服とアクセサリーの値段が釣り合わない。」

 

「・・・・・・見るからに服とアクセサリーが釣り合ってないだろう?」

 

「だって、服まで揃えると・・・その・・・・・・お金が。」

 

ああ、なるほど。この任務の為、奴を釣るためにアクセサリーを買ったわけか。普段はそこまで浪費家ではないのか。

 

「クッ!」

 

逃走を図る。だが、それは無駄だ。

既に先読みして、反対に回り込んでいたナナが道を塞ぐ。

 

「逃さないわよ!」

 

「捕まるわけにはいかない!眠れ!眠りの吐息(スリーピングサイグ)!」

 

「・・・無駄だ。」

 

「そんな!」

 

「・・・眠りの魔法は全て俺の支配下だ。」

 

眠りの霧同様に眠らせる。

 

そして終わりだ。

 

 

 

 

カ カ カ カ カンッ!

 

 

 

 

これが本当の眠り魔法だ。

 

「眠れ」

 

五重魔法陣 御神楽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ここは?」

 

「貴女の宿でしょう?リリ。」

 

「・・・ナナ?」

 

「説明してくれる?何であんな事をしていたのか。窃盗魔導士さん?」

 

「・・・」

 

御神楽で眠らせ、正体を確認しようとフードを取ればその者はリリだった。なぜ、こんな犯罪を犯したのか…理由は彼女の経営する宿だった。

 

 

彼女の経営する宿は、祖父母から受け継いだものの、元から経営が上手くいっていなかった様で、受け継いだ当初から莫大な借金を抱えていた。

その借金返済の為に、今回の事を思いついたそうだ。

 

「・・・魔法は誰に教わった。」

 

「ミストガンいたんだ。お婆ちゃんだよ。お爺ちゃんとこの宿を始めるまでは魔導士ギルドに所属してたらしくて、そこそこ有名だったらしいよ。」

 

場に沈黙が降りる。

 

「あはは、やっぱり因果応報か。ナナ、私を捕らえて。」

 

「リリ!」

 

「ずっと悩んでたの。こんな事やってまで、お爺ちゃんとお婆ちゃんは続けて欲しいのかなって。元々、閉まる予定だったこの宿を無理を言って私が受け継いだの。だけど立て直せなかった。しかも犯罪に手を染めて。これでキッパリ諦めがついたよ。ナナ、お願い。」

 

「リリ貴女を・・・・・・・・・今回の依頼の犯人と断定し捕らえるわ。」

 

こうして、酒場街マウを騒がせていた謎の魔導士事件は終幕したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒場街マウでの一軒から早3日、俺はナナと共に歩いていた。

 

リリの身柄は事件で魔法が使用されていた為、評議員に渡すことになった。

 

身柄を引き渡した後、任務とは言え幼馴染を捕まえた喪失感と悲しみを漂わせる彼女を一人にしておくわけにもいかず、人魚の踵のある街まで送る事にした。

 

まぁ、道中に闇ギルドが襲ってきたり、立ち寄った町でカップルと間違われたりと色々あったが何とか辿り着いた。

 

「世話になったねミストガン。」

 

「・・・気を落とさない事だ。」

 

「ふふ、もう大丈夫。ここまでの道のりで分かってるでしょう?」

 

「・・・」

 

街に背を向け、立ち去る。

 

「あら、観光とかして行かないの?マスターにも紹介しようと思ってたのに。」

 

「・・・俺は男だ。」

 

「任務を手伝ってもらったお礼もしてない。」

 

「・・・気にするな。」

 

「・・・ふふっ」

 

「・・・フッ」

 

互いに笑い、そして俺は再び背を向ける。

 

「また会いましょう!」

 

「・・・」スッ

 

片手を上げ返答する。

 

さぁ、だいぶ予定は狂ったが一度帰るか。

 

 

 

 

 

 

 

フェアリーテイル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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