やると決めた以上真剣に取り組むとしようか。
S級、他の魔導士とはどいつもこいつも一線を画す実力者達。
パーティーを組むメリットは、互いの苦手な部分を補える事が大きな利点の一つ。その他にも、多数の敵に対しこちらもある程度数で対抗できる。
だが、S級はその圧倒的な力と知識を持ってそれらを単独で一掃する。
「・・・ようやく休憩は終わりか。ずいぶんと長い休みだったな?」
ならばこの4人の何を鍛える?
答えはシンプルだ。
「・・・影法師」
4体の俺が現れる。
「・・・さぁもう一度、一対一の対人戦・・・・・・この程度で根を上げるなよ?」
少し厳しめに、腹の底から凍えるような低いトーンで軽く脅しておこう。
殺気は込めてないとはいえ、実力が上の者の脅しというのは効く。
現にカグラ・ミカヅチ以外のナナ、リズリー・ロー、アラーニャ・ウェブは引け腰だしな。
「あの4人ある程度は動ける様になってきたな。最初はサッサとお前の幻術にハマってグースカ寝てたのにケケケケケケケッ。」
「・・・ああ。アレでだいぶ時間を無駄にした。」
「私が来る前の話?」
ダフネが来る前に今と同じように影法師を作り出し戦わせたが、4人とも初手の幻術にかかり眠ってしまった。それから一時間程眠ったままだったのだ。
「・・・アレは俺が4人の実力をもう少し上だと考えていたのが仇になった。本来なら長くとも5分程度で起きたはずなんだが。」
「遠回しにあの子達の実力がないって言ってるわよね。」
「・・・事実だ。」
「ケケケケケケケッ」
「一対一の対人戦か。と言う事はなるほどね。ひたすらに個の実力を伸ばすのが目的なのね。」
そう、この修行の目的はダフネの言う通りひたすらに戦闘経験を積ませ個人の実力を伸ばすことにある。
4人は魔法の技術は中の下といったところ。それと圧倒的に戦闘経験が少ない。咄嗟の判断、敵の得手不得手に対し自分の強みを活かせるか。周囲の状況判断や対処の仕方を体で覚えてもらう。そうすればおのずと・・・。
「ハァアアアアアアアアアアアア!」
「・・・ほう。・・・上手いな。幻術の無数の飛来するナイフ、それを重力魔法をかけることによって実体を持つものと持たぬものを選別したか。」
「実体があるのならこの世の摂理は当然受けるはずだからな。あとはそれを刀で払いのけるだけでいい。」
「・・・一応は褒めておこう。・・・だが」
「うっ!?」
カグラはヒヤリとした感触を感じ視線だけを後ろに向ける。
そこには無数のナイフ。
「・・・ナイフは全て俺の幻術。ならば実体を与えるも与えないも俺の自由。」
「そうか・・・コレは私が重力をかけた時には実体を持たなかったナイフ!クソッ。」
カグラは4人の中では頭ひとつ抜けてはいる・・・が。
「もう一度だ!」
負けん気が強いのは結構だが、無理なさすぎで自滅するタイプだな。
「はーいダメよカグラちゃん。」
「マスター。」
ここはダフネに任せるか。さて他は。
「・・・」
「ハイハイハイハイッ!」
「・・・どう言う原理だ?」
「分身なのに実体があって喋る方がどんな原理か知りたいね。」
「・・・変身魔法か?まぁ、攻撃の主体はカグラと同じ重力魔法みたいだが。」
「その通り!なんだって私に重力魔法を教えたのはカグラだからね!」
「・・・ふむ。」
原理は知らないが、スリムになり自身にかかる重力を軽減する事で速度を上げている。まぁ、使い方としては悪くはないが。
「・・・近接技術が稚拙だな。」
「グッ!」
「・・・決めては必ずと言っていいほどの利き手が利き足。それさえ分かればわざと隙を作ってやれば・・・この通り、お前は簡単に乗ってきてカウンターを土手っ腹に喰らってる。少しはフェイントも混ぜろ。」
「ゔぅ・・・おぇっ!」
2人目ダウン。次
「捕らえた!」
「・・・そうだな。」
「えっ?なんで光って‼︎ああああああああああああああっ!」
「・・・雷魔法の初級ライトニング。それを幻術で俺の姿を模していただけだ。」
「し、痺れる。と言うか魔法に姿を!?」
「・・・さっさと立て」
「グッ・・・やっぱり腕がまだ少し痺れる。けど・・・今度こそ捕らえたわ!」
「・・・いいぞ。お前の糸魔法は工夫次第で多彩な事が可能な魔法だ。今のように肉眼では見えにくい後を相手に気づかれずに撒くことができれば文句はない。」
「へ?アブっ!」
「・・・捕らえたあれも分身だ。」
脳天直撃のチョップによりダウン。ラストはナナか。
「サンドカーテン」
こちらの視界を封じてきたな。
「・・・敵の視界を封じるのはいい。だが、俺のような幻術を使って絡めてでから敵に対してはあまりお勧めはしない。」
背後の砂が揺れる。
「デザートウェーブ!」
「・・・ほう。」
「相手に分身を増やしたり、トラップを仕掛けられたりする可能性が高いからでしょ!ならまとめて埋めてやるわよ!」
まさに砂の津波が押し寄せてくる。
そしてミストガンを飲み込んだ。
「や、やった!」
「・・・」
「フフフ、つーいにーやったーうひひひひ。ムニャムニャ。」
「あーあーイイ顔で寝てんな。相棒どんな夢見せてんだ?」
「・・・俺に勝利した幻想」
「納得。」
サンドカーテンは姿を暗ますのはいいが、俺は幻術にエリア内にあるものに掛かるよう発動させたため、ぶっちゃけ意味はない。
「・・・全滅5回目。」
「フフフ、清々しいほどのやられっぷりね〜。」
「アドバイスの一つでもしてやったら?」
目の前には死屍累々の者達。
けど1人だけ、ギラギラと眼を光らせる女。
「・・・やる気は結構。・・・だが、何度やっても今のお前は苦悩するだけだ。カグラ。」
「なんだと!」
「・・・焦るな。・・・ある一定の値まで伸び、誰しもが大きな壁に阻まれる。今のお前はそれだ。・・・今一度、己の技、心を落ち着かせゆっくり鍛え上げろ。」
「アドバイスはアドバイスだけど。」
「うふふ。その意味は人によって異なってくるからねぇ。」
まだまだ発展途上。これからさらに伸び「もう一度だ。」・・・おん?
「聞こえなかったか?もう一度だ!覆面!」
「ケケケケケケケッ」
「若いわねぇ」
「・・・ハァ〜」
言っても聞き入れはしない・・・かっ!
「隙ありだ!」
視線だけを動かせばピンポイントで俺に重力魔法をかけている。
この女!
「動かず立っているだけの貴様ならピンポイント潰せる!
「ナイス!全員で叩くよ!」
ナナ⁉︎それに他2人も‼︎
さっきまでダウンしたふりを!?
「そらっ!」
ダメ押しと言わんばかりに糸を巻きつけられる。
しかもかなり魔力が込めてあるのか、ちょとやそっとでは抜け出せそうにない。
「これで完全に身動きは取れないでしょう。」
「アタシらを舐めちゃいけないよ!カグラ!」
「ゆくぞ!」
あの2人何を⁉︎
「フフッ」
「ありゃ?相棒ピンチか?」
ミストガンがいた部分のみが陥没。
地中に引き摺り込まれたのか姿は見えずそこには人一人分の深い深い穴が出来ていた。