酒場に飛び交う注文の声。
笑いや、食器の割れる音。
ステージでは、白のスーツを着込んだ男が下手くそなギターを弾きながら歌う。
喧嘩、飲み比べ、食事に語らい。
それぞれが思い思いに英気を養うここは
魔導士ギルド、フェアリーテイル。
だがそれは、普段のお話。
「まったく、お前さんは毎度毎度。」
「・・・」
「もうええじゃろうが。エルザとナツには見られてしまったのだろう?」
普段なら馬鹿騒ぎの絶えないギルドがたった2人だけの語らいの声しか聞こえない。
ギルドマスター、マカロフ
そして
「帰って来るたびに全員眠らせおって、余計に疲れはせんのかミストガン。」
「・・・」
「んぐっ・・・プハァ〜、今宵の土産酒も中々に美味いのー」
「・・・なによりです。」
「で、どうじゃ最近は?」
「・・・?」
「ここ最近、評議院の依頼ばかり受けとるそうじゃのう。」
「・・・ええ。・・・報酬が良かったので。」
「気をつけろよミストガン。」
突如、魔力のこもった重く厚みのある声での一言に思わず姿勢を正す。
「やつらは、魔法界の秩序と銘打って何を言ってくるかわからん。依頼を受けるなとは言わん。だが、疑え。慎重に、真意を見定めろ。お前ならやれる。よいな?」
「・・・はい、マスター」
「ひょっひょっひょっ!お主も頼んだぞいラウム」
「げっ!気づいてたのかよ」
「幻術で姿を消しても、見られているという不快感は拭えんわい。」
(・・・視線だけで気がつくか。)
マスターが土産の酒を飲み干し、ギルドの酒を数本空け酔い潰れてしまい頃合いだとミストガンは席を立つ。
一階におり出入り口へ向かう途中、テーブルにふして気持ち良さそうな寝息をたてている少女が目に入る。
「・・・」
「あぁ、デカくなったもんだな。」
「・・・記憶を読むな。」
「魂を分けてんだ、勝手に頭の中に流れて来るんだよ。」
ウェンディ。
かつて、短い間ではあったが一緒に旅をした少女。
ドラゴンに育てられたと聞いた時は疑ったが、真っ直ぐな瞳に少女の性格から本当に育てられたのだろうと信じた。
ギルドに来てからはナツが加入して、同じくドラゴンに育てられたと聞いた時はドラゴンスレイヤーはみんなドラゴンと人の混血かとも思ったが・・・。
「・・・本当に大きくなった。」
聞けばミストガンをずっと探していたらしく、ギルドに加入したのもそれが一つの理由だとか。
「まさかギルド全てが嘘だったなんてな。」
「・・・嘘ではないさ。・・・ギルドとは心だ、ケット・シェルターは確かにあそこにあった。」
(まさか預けた人物が・・・過去の影だったとは。生前はおそらくマスターといや、師匠と同等の魔力と技量だったのではないだろうか?)
数日が経ち、そろそろ仕事を探すべくギルドを訪れる。
「・・・ふむ。」
「おい、さっさと選んで行こうぜ?」
「・・・ああ、そうしたいのは山々なんだが。」
「何が問題なんだよ?」
「・・・マスターがいない。」
「だから?」
マスターがギルドにいない。
ミストガンにとってこれ程までに間が悪い事はない。
ミストガンが受ける仕事は殆どがS級、そうなればギルドを長期間離れる事は珍しい事ではないのだ。
故に、大抵の場合帰って来ればマスターは高確率でいたし、もし不在でも少しばかり休もうと休暇日にすることも出来た。
しかし、今回は長めに休みを取って仕事を再開しようとした矢先。
ギルドの全員を眠らせてしまう為、仕事の受注を出来ない。
「・・・うーむ」
「完全に自業自得じゃん。」
ラウムの言うことがもっともな為何も言うことができない。
「しゃーねーな。」
そういうと、ラウムはどこかは飛んでいきすぐに戻って来た。
「仕事は決まってんのかよ?」
「・・・一応は」
クエストボードから取ったのは、教会を乗っ取った謎の宗教団体の殲滅。
報酬は700万J。
たかだか宗教団体なら捕縛などで良いとは思うが、何か裏がありそうな内容だ。
「あいよ。うんじゃそれを・・・こうで・・・あとは」
「・・・は?」
ポンッと、どこかから持って来た書類に魔法でペンを操り必要事項を記入し、最後に魔法印を押す。
これって・・・
「・・・お前、手続きのやり方なんてどこで覚えた?」
「オレ様は、お前と違ってギルドの奴らとは交流を持ってんの。やり方はミラに習ったんだよ。前に依頼受注が何件も重なって、手伝って欲しいってな。」
素直にすごいなコイツ。
器用なんてもんじゃないぞ、無駄に達筆だし記入も迷う事なくしていた。
お前受付嬢ならぬ受付鳥なれるぞ?
「おっしゃー‼︎書類は提出して来たからこれで仕事行けるぜ!・・・おん?何固まってんだ?」
今後、仕事受ける時はラウムに受注してもらおう。