とある村の、はずれにある小さな教会。
そこには、陽の光がさしステンドグラスは美しく輝く。
こじんまりとはしているが、美しく多くの村民が結婚式や葬式を行なってきたであろう歴史ある教会。
皆から愛されてきた教会。
「・・・時々、・・・思う事がある。」
「ああ?」
「・・・もし、本当に神がいたとしよう。・・・神父は言う、神とは常に人を見ている。・・・それはどこから?・・・天から見ている?それは正しい。・・・心の中?・・・それも正しい。・・・神に祈るとは、すなわち神と自身との心の真の声を理解するための行いだと。」
「へぇ」
「・・・俺は、神などは信じちゃいない・・・が、今この時だけは信じようと思う。・・・だから」
どうか神様、この廃墟同然となってしまった教会を元に戻して下さい。
「いや無理だろ」
「・・・黙れ。信じるものは救われるのだ。」
「アホか!現実見ろよ!そもそもやったのお前だからね?」
「・・・だからこうして祈っている。」
「どこが?どの視点から見て、槍携えながら十字架を踏んづけて神に祈る奴がいるんだよ。どしたの?バカになっちゃった?」
「・・・あ、やべ。」
「気づいてなかったのかよ。」
教会地下に、いくら投じたのか分からない程の設備に、薬品類そして実験に使用されていた人間の死体の山。
四肢は組み替えられたもの、薬漬けにされたもの、死後に教団の慰みものにされた者。
神聖なる教会の地下の惨状を見て、天国と地獄だとそう思ってしまう。
故に、依頼主からはなるべく建物に被害を出さぬよう強く言われていたにもかかわらず、瞬間・・・廃墟に変えてしまっていた。
「・・・今回の報酬は無しだな。」
「まぁ、仕方ねぇよ。」
修繕・・・いや、ここまで来たら一度完全に解体し、新たに建て直す他はない。解体撤去にかかる費用、さらに建築費用。
一体、いくらかかる事やら・・・。
今回の報酬700万Jでは足りないのは確実。
「・・・はぁ・・・・・・・・・クソッ」
こいつらの研究資料がそれなりの量がある為、それなりに長く続いていた組織なんだろう。
帳簿とかがあれば、こいつらの資金提供者や運用の流れが掴めるのだが、探すのが一苦労だな。
「・・・こいつら奴隷売買までやってたのか。」
実験素体に適さない者たちを売り捌いていたのだろう。
実験体に適していそうな奴隷がいれば買う、合理的だな。
「・・・」
ペラ ペラ ペラ
「・・・」
ペラ ペラ ペラ
「・・・」
こっちは・・・競売のリストねぇ
「・・・」
ペラ ペラ ペラ
「・・・」
ペラ ペラ ペ・・・・・・・・・!
「ハァっ!?」
滅多に声を荒げる事のないミストガンが出した声に、ラウムも驚きすぐに戻って来る。
ミストガンが読んでいた競売リストの一点を穴が開くくらいに見つめている。
「おい、どうしたんだよ」
「・・・くぞ」
「え?」
「急ぐぞ!」
「え?は?おいおいマジでどうした!?てか、こいつらどうすんの!?」
「ほっとけ!」
今まで見た事のないミストガンの姿に、開いた口が塞がらず置いていかれてしまう。
ようやく追いついた時には、今日はもう飛ぶのは不可能なほどに疲労してしまっていた。
・・・あのリストに載っていた・・・あの写真は間違いない。
「・・・・・・・・・本当に生きているのか。・・・それとも赤の他人か・・・・・・だが、確かめなければ」
もし、本当に生きているのなら
「・・・リサーナ」
数年前、フェアリーテイルにリサーナという魔導士がいた。
3人兄妹の1番下。
姉と兄からの無償の愛、仲間達からも愛されるそんな存在だった。
だが、悲劇は突如として兄妹を仲間を絶望に追いやる。
長女は、3人の中で当時1番の実力者でギルド内でも屈指の実力者だった。
当然、高額報酬の仕事を受けることもできる。
2人は何度か姉の仕事に同伴した事がある為、危険度、難易度も理解していた。
今回も難しい仕事だが3人揃って帰って来られる。
誰もがそう思っていた・・・・・・のに。
「おい!どうだ?そっちは見たかったか⁉︎」
「ダメだ!戦闘の影響なのか周囲がメチャクチャで探せない!」
「もう少し捜索範囲を広げましょう。」
あの日、帰って来たのは姉と兄だけだった。
S級クエストとなれば、イレギュラーが起きる確率は普通のクエストとは比にならないほど跳ね上がる。
イレギュラーが起こった時の対応力は、実力者であろうと低ければ即座に命を落とす。
姉は憔悴し、兄はトラウマを抱えてしまうほど。
原因は兄の魔法制御が上手くいかず暴走。
それを止めるために立ち向かったと言うもの。
原因が自分にあると、食事も睡眠も取らず只々泣き崩れていた。
野営をしながらラウムに語り聞かせるミストガンの顔は、険しく今でも嗚咽を漏らしそうなほどだった。
「え、ミラって昔はそんなやんちゃだったの?」
「・・・そこ?」
「まぁ、それはいいよ。で?過去の競売リストに載ってたのがその行方不明になったリサーナってヤツなんだな?」
「・・・他人の空似かもしれんがな。」
「けど、言っちゃあアレだがよぉ・・・そのミラの妹なだけあって容姿は整ってるし・・・・・・その〜」
「・・・当時にはもう買い手はついて、行方はわからないだろうな。そもそも奴隷商に何年も買い手が付かない奴隷を置いておく理由もない。」
せめて買い手が誰なのか分かれば・・・その先を終えるかもしれない。
僅かな希望と諦めを秘め、奴隷商へとむかう。