音を置き去りにしてマグノリアへとひた走る。
人魚の踵のマスター、ダフネの言葉が頭の中にチラつく。
「・・・間に合うか?」
体に速力を強化を付与してはいるが、付与魔法が得意ではない為付け焼き刃程度の効果しか発揮出来ていない。やはり効果は薄い。
だが、使わないよりかはマシだ。
そして・・・マグノリアが一望出来る場所に到着する。
俺はここからの景色が意外と気に入っている。
街を代表する大聖堂に、我らがフェアリーテイル、そして海が一望できるこの場所が。
しかし、今の景色は一つ欠けていた。
ギルドが・・・無惨に破壊されていた。
間に合わなかった。
いや、ギルドは所詮建物。
また建てればいい。マスターならばきっとそう言うはず。
ならば皆の安否を…。
ーマグノリアー
街に入り、幻術で俺の姿を認識できない様に施し、ギルドへと急ぐ。
だが、すぐに異変に気がつく。
「・・・魔力が別の場所に集中している?」
それは、マスターを含め恐らく今マグノリアにいるメンバーほぼ全員が、マグノリアにある広場に集まっている事。
ギルドには、もしもの時に備えとして地下が造られている。地上の酒場とほぼ変わらない、下手をしたら地下の方が機能としては上かもしれないが。てっきり地下に集まっているものだと思っていたが・・・。
広場へと続く道を進む。
俺とすれ違う町民の表情は優れない。
中には涙を流す者。
泣きながら"なんであんな卑劣な事が出来るんだ"
"惨すぎる"
などと言った声が。
まて、一体どう言う事だ?
確かにギルドはメチャクチャにされた。それは俺も悔しい。だが、また建てればいい。それに、ここまでではないにしても、メンバー同士の喧嘩でギルドの破壊なんてしょっちゅうだ。
違うのか?
貴方達が涙する理由は。
貴方達が怒る理由は。
自然とまた体が勝手に走り出す。
そして見えてきた。フェアリーテイルの皆が広場に集まっている。
広場にある大木。
ああ、そう言うことか。そう言うことだったのか。
「・・・ジェット」
広場の大木には
「・・・ドロイ」
チームシャドウギアの面々が
「・・・レビィ」
磔にされていた。
なぜだろう?音がだんだんと遠くなり終いには聞こえなくなる。
視界は狭まり、眉間に皺がよるのが分かる。
無意識のうちに拳を強く握り締めている。
俺の中の血と魔力がマグマのように煮えたぎる。
ああ、そうか・・・コレが
「ボロ酒場までなら、・・・我慢できたんじゃがなぁ。」
マスター
「
ああ、そうだなマスター。
皆が同じ思いだ。俺もこの力を存分に振るわせてもらう。
マスターの言葉と共に、三人を下ろそうと駆け寄る者、戦争の準備のを始める者、どこかへ向かって走っていく者。
俺は一旦、街を離れることを決める。
「・・・・・マスターダフネの情報が確かならば」
狙いはルーシィ。ジョゼ本人が出張って来てもおかしくはない。おそらく総力戦で来る。ギルドの構成人数で言えば向こうが上だ。ギルド支部も30以上はあったはず。それらが一気に集結して攻めてくるとあれば、質で上回っていようとも数の多さには手を焼く。
「・・・なら、俺のすべきことは決まった。」
そして俺はマグノリアから出立した。
ー幽鬼の支配者 支部その1ー
ハートフィリア家からの依頼の情報は全支部に通達され、この支部も例外はなく本部に合流するべく戦争の準備を進めていた。
「へへ、フェアリーテイルと全面戦争か。こりゃ面白くなって来たな。」
「まったくね。」
「けどよ、評議員達からなんも言われねぇかなぁ?」
「バッカ、こっちは正式な依頼として受けてんだ。裁かれるとしても、情状酌量の余地はあるさ。」
「万が一負けたら?」
「それこそ問題ねぇよ。マスターはエレメントフォーを招集したらしい。」
「マジ!?」
「それに、ガジルさんが既に何人かフェアリーテイルの奴らをのしたらしいぜ。」
「はは、ザマァねえや。」
「マカロフの奴は聖十大魔導の一人だが、それはマスターだって同じ。それにマカロフはもう歳だ。ろくに戦えやしねぇさ。」
支部内は既にこの戦争の勝利ムード一色。
その時、支部全体が大きく揺れる。
「な、なんだ!?」
「分からないわよ!」
それは普通の地震などでは考えられない揺れ方だった。
ここは地上のはずなのに、まるで荒波を進む船の中の様な感覚。
いくらこの支部の後ろに、大きな湖があるとしても陸が割れ湖に浮かぶなどと言うことがない限りこんな揺れ方はあり得ない。
ありえないはずだった。
「お、おい!窓の外見ろ!」
「え?なんで街が動いてんだ!?」
「ち、ちがう!この支部が動いてんだ!支部が湖に浮かんでやがる!」
そう、支部は陸から離れ既に湖の中心に浮かんでいた。
そして現れる
湖の中から現れたのは、支部よりも大きくまるで、手の様であり触手の様であるナニカ。そしてそれは
『あああああああああああああああああああああ』
支部を湖の中に引き摺り込んだ。
「・・・まず・・・・・・ひとつ。」
ー幽鬼の支配者 支部その2ー
「お、おい!やめろ!一体どうしたんだお前ら!?」
「く、来るな!」
「なんだって言うのよ!なんなのこの化物共は!」
突如として、支部内に誰もが見たこともない化物共が現れそれを倒す為、支部内が戦場と化していた。
「ガァァァァァァ」
するとなんと化物共からも魔法が飛んでくる。
「ハァ!?コイツら魔法使えんのかよ⁉︎」
「やっちまえ!?」
支部内のいたる場所で戦闘が行われ、やがて誰も立つものはいなかった。
「・・・ふたつ」
ー幽鬼の支配者 支部その3ー
「し、支部が!」
「んじゃこりゃ!」
支部が大きな音をたて崩れていく。
「逃げろ!」
「あ、足が動かない!なんで!?」
誰もが退避しようとするが、誰一人として自身の意思とは反対にその場に縫い付けられたかの様に動けない。
そして支部が跡形もなく消え、誰も怪我を負うことはなかった。
安堵の雰囲気に包まれるのも束の間、足元に巨大魔法陣が展開。
その支部にいたものは、誰一人としてその場に残ってはいなかった。
「・・・みっつ」
「ヒッ・・・ヒィィィィィィィ!なんだよ・・・これ・・・・・・ぜ、全部お前の仕業なのか⁉︎」
どうやら、一人無事な奴がいたようだ。
だが、戦闘をする意欲はなく、ただただ腰を抜かし怯えるだけだ。
「・・・お前には・・・・・・いくつか聞きたいことがある。」
「え?・・・え?え?」
「・・・なぜフェアリーテイルに仕掛けて来た?」
質問をしたが、怯えていて反応が遅く。急かす様に魔力を練り上げる。
するとペラペラと話し始めた。
「ハートフィリア財閥だ!ハートフィリア財閥からの依頼だよ!一人娘のルーシィ・ハートフィリアを連れ戻せって依頼がウチに来たんだ!」
「・・・交渉、もしくはフェアリーテイル、幽鬼の支配者、ハートフィリア財閥の話し合いの場を設ける。・・・などと言ったことはできなかったのか?」
「・・・マスタージョゼはフェアリーテイルを良く思っちゃいない。ウチのギルドが、昔はフィオーレを代表するのギルドだったが、今やフェアリーテイルとウチの二つが上がって、質の差でフェアリーテイルが上だって言われ始めた。それが前々から気に入らなかったらしい。」
「・・・」
「そこにハートフィリアの一人娘が加入した。・・・マスターは、その話を聞いた時、フェアリーテイルがハートフィリア家から莫大な資金を得られると考えたらしい。」
「・・・くだらん」
「こ、これで全部だ!頼む!見逃してくれ!!!!!」
「・・・まだだ。・・・・・・ファントム側が動かした戦力は?」
「支部にいる奴ら全員に本部に合流する様に通達!エレメントフォーも動かした!当然、ガジルさんもだ!」
マスターダフネの情報と、予測に一致した。
「・・・今、ファントムの主力はどこだ?」
まだ、動いてなければなんとか急ぎファントムの本部へ。
しかし、現実は非常だ。
「エレメントフォーの天空のアリアが、マカロフの魔力を空にして戦闘不能に追い込んだ!既に戦争は始まっちまってる!俺達は、これから向かうとこだったんだ!」
「・・・」グググッ
思わず杖を握る力が強まる。
「な、なぁ・・・・・・頼む、頼むよぉ!もうこれで全部なんだ!俺が知ってることは!見逃してくれ。」
「・・・ああ」
助かった。ファントムの男は助かったと安堵した。
次の言葉を聞くまでは。
「・・・楽にしてやろう。」
「・・・え?」
ミストガンが魔法を発動させると、男は初めからそこにいなかったかの様に、パッと消えたのだった。
「・・・ファントムの本体は任せたぞ。」